2003年4月4(金)〜6(日)

路上ライブ

於:京都川端四条上る白川南通り
  桜並木の下


曲目

ambient society

季色(きしき)

 

このライブを思い立ったのは興行1週間前、たまたま白川南通りを二人でぶらぶらと歩いていたときである。
ライトに照らされて闇夜に浮かび上がる桜の木々の下には広い遊歩道的なスペースがあり、「この夜桜の下でやってみたい!」という衝動がわきあがった。
そしてこの無謀(?)な思いつきを遂行するため、1週間のうちに、チラシを作ったりデッキを買ったり曲をミックスダウンしたりと急ピッチで準備が進められたのである。

そして迎えた初の路上ライブの試みは、まさに山あり谷あり、とにかく中身の濃〜い 、思い出深い3日間となった。
この間に得た経験や教訓を忘れないためにも、3日間に起こったことをなるべく詳しく書き記しておこうと思う。


ライブ初日  ライブ中止の危機!しかし人との出会いに救われる

迎えたライブ 初日は無常にも朝からしとしとと雨が降っていた。仕事をしながら「はよ止んでくれ〜!」と念を送り続けていたが夕方になっても止む気配はなく、しかも2月並に寒い。それでもできないほどの雨ではなかったので、仕事からダッシュで家に帰り、支度をして目的地に向かった。

着いてみると桜はほぼ満開で、さすがに人数は少なめだが、屋根のあるところで宴会をしている人などもいて、観てくれる人もいそうな感じだったので、イントロ用の新曲を流しながら気合を入れて準備にとりかかった。
そしてさあパフォーマンスに入ろうとしたその時、若いねーちゃんがクレームをつけてきたのである。その人は監視役の人だったらしく、すぐにおえらいさんらしきおっさんを連れてきた。なんでもこのライトアップは商工会議所が主催しているらしく、音を出されてなにか問題になったらすべて自分たちの責任になるのでやめてくれというのである。うるさくしないとか10分で終わるとかいってもまったく耳を貸してはくれず、そのおっさんは裸足で雨の中つったっている私に「寒くないですか?」と言い残して去っていってしまった。
思いがけないトラブルに、少しの間二人して途方にくれていた、
というのもこのライブの告知をいろいろなところでやっていたからである。
とりあえず今から始めるライブに興味を示してくれていた宴会のグループに、ライブができなくなった旨をしらせに行った。
するとそこのリーダーっぽい人が、私たち二人を宴会の席に呼んでくれたのである。
寄寓にも、その人は歌舞伎役者を祖父にもつ芝居書きの板東善吉氏で、路上パフォーマンスの経験なども持つ人で、私たちにアドバイスや自分の経験などをいろいろと話してくれた。
その人いわく、やはりなにをするにも「世間と折り合いをつけながら」やらなくてはならないというのだ。
馬鹿正直にいちいち許可をもらおうとしていたらなにもできなくなってしまう。しかしだからといってまったくの自己中心的な行動では世間には受け入れられないのだ。
酒やお弁当を振舞われながらそのような話を聞いていたのだが、今回の出来事に落ち込む私たちを不憫に思ったのか、やにわに板東さんが、「よし、おまえら、パフォーマンスやってみるか?」と言い出した。なんでもこの近くに「ちゃんばら屋」という芝居人なのどのたまり場のような飲み屋があり、そこでやらせてくれるから今から行こう、というのである。突然の展開にびっくりしつつも一行についていくとほんとうにすぐそばにその店はあった。
店の中はやや狭く、細いカウンター席と、雛壇のような座って飲むスペースがあり、他のお客さんがいるにもかかわらず女将さんがそこにスペースを作ってくれた。
そして準備した2曲のうち、「季色」をやらせてもらった。

紆余曲折はあったものの、やっと用意したものを他人に観てもらえたと
思うと、少し安堵感と、やる気のようなものが出てくる感じがした。
正直いって板東さんのグループの人たちにはそんなに反応はなかったが、他のお客さんが興味をもってくれ、また飲みにきたホンモノの詩人とも知り合うことができ、ここのお店でまた人間関係を広げることができた。
皆さんにお礼を言って店を出たときにはもう12時をまわっていたが、気持ちの方はまたやる気がでてきて、明日も同じ場所で(ただし昼間に)やってみよう、ということになった。人との出会いに救われた一日であった。

ライブ予告を見て行こう思ってくれていた方々にはほんとに申し訳ありませんでした。



ライブ2日目  まずまずの感触を得る

ライブ2日目、この日も我々のやる気をくじくがごとく、さらに寒く、小雨が降っていた。しかしやらないわけにはいかない。準備したものを無駄にしたくはなかった。
昨日と同じ場所にいってみると、監視の人らしきものはなく、できそうな感じである。観に来てくれたk君を迎えに戻った後、準備を始める。しかし前回のことがあるので今回はイントロ用の音楽はかけず、チラシなども置かずにあっさりとパフォーマンスに入った。そして無事「ambient society 」を踊りきることができたのである。
この曲は5年前に鍵本氏が別のユニットのために作曲したもので、今回真帆が新たに音を加えてリミックスしたものを使った。
この曲のパフォーマンスのために新しい仮面をつくったのだが、鍵本氏の要望するままに仮面に色を乗せていったらかなりグロテスクな配色になってしまい、一般客にひかれるのではないかとちょっと心配したが 、桜の中で色が映えて意外に悪くなかったようだ。

今日はお客さんもあまりいなかったので、1曲だけで終わらせ、そして明日こそは本気でライブを行うことにした。
あとで撮影したビデオを見てみると、あまりじっくり見てくれるお客さんはいなかったようだが、風が強かったおかげで桜吹雪が美しく、また衣装の着物もきれいにはためいていて、外でやることの効果がよく出ていて、なかなかおもしろかった。


ライブ3日目  ようやくの晴天・桜満開の下、興行!

この日は「3度目の正直」の言葉のごとく、みごとな晴天となった。 今日こそは・・・。そんな気持ちで出かけていった。
四条通りは人・人・人でごった返していたが、白川南通りはそれほどでもなく、なんとかライブをするスペースは確保できそうである。何人か知人も観に来てくれた。ポスターを貼り付けて、宣伝の準備も整ったところで、ライブを開始した。踊っているうちに人がどんどん集まってくる。昨日と違って長いこと見てくれる人もたくさんいたようで、踊りながら本当にうれしかった。

あとで映像を見てみると、ポスターを覗き込む人、近くで怪訝な顔をしてみるおっさん、まったく素通りしていく人、など、いろんな反応がいちいちおもしろい。
鍵本氏はいつ誰かにいちゃもんをつけられはしないかと、気が気ではなかったようだが、踊っている私の方は本当にライブを楽しむことができた。
準備したチラシをお客さんに配るという目的も果たせて、この日ようやくライブの目論見を果たすことができたのである。
お客さんの年齢層も子供から老人まで幅広く、普通のライブとはまったく違う、新鮮な感覚だった。

観に来てくれた人たち、助けてくれた人たちにはただただ感謝、です。