A.I.
A.I. Artificial Intelligence
監督・製作・脚本:スティーブン・スピルバーグ 原案:スタンリー・キューブリック 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント、ジュード・ロウ、フランシス・オコナー
2001年アメリカ/146分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.ai-jp.net/ チラシ 1

 とにかくいろんな面で話題作であり、いざ公開されると賛否の分かれが激しい気もしますが・・・。僕としては、エンターテインメントな 映画になったな、という思いが強いです。公開前に下手に情報がなく、しかも、“キューブリックの作品をスピルバーグが撮る”ということに無意識にも余計に期待を大きくさせられたようです。しかし、僕はこの映画を否定する気はありません。単に、期待がでかすぎたから、といいたいだけで、むしろ普通の話題作としてみていればもっと楽しめたかな、というところです。
 主人公デイヴィットに感情移入できれば泣ける映画だと思います。ラストの展開に、僕も一瞬、え・・と思いましが、すぐに気を取り直して、映画の世界に戻れたので良かったですが。役者陣の演技には文句なし。ハーレイ少年は相変わらずだし、個人的にはジュード・ロウが良かったです。あとは注目のCGやらSFXやら。全編を通して、画面にCGが使われているところはないだろうと思われるほどで、それが見事に世界観の構築に役立っていると僕はとりました。そのへんがスピルバーグ的ともいわれるかもしれませんが、CG好きな僕として満足。語る事が多い作品ですが、僕は、一級のエンターテインメント作品としてみて、面白いと思いました。難を言えば、シナリオに人物や設定の背景を語る物足りなさは感じましたところでしょうか(でもそれをやりすぎると、普通の映画になってしまう)。
 これを言ってはなんですが、キューブリックが生きていてら、どんな作品になったのだろう・・・と思わざるをえませんね。なんだか、製作者も観客も、“スタンリー・キューブリック”という名の亡霊に縛られすぎてしまった作品であるという面は否めないと思います。あ、あとはテディがすごく欲しいです・・・。あんな高性能なのに“玩具”だなんて(“スーパートイ”だとは言ってましたが)。僕としてはテディがいてくれりゃ、OK(?)です。


エイミー
Amy
監督・製作:ナディア・タス 出演:アラーナ・ディ・ローマ、レイチェル・グリフィス、ベン・メンデルソーン
1997年オーストラリア/103分/配給:パルコ

 人気ロックミュージシャン・ウィルの娘エイミーは、父の事故死を目前にしてしまったときから、耳が聴こえず、言葉も失ってしまった。それから4年たっても、回復しないエイミーに児童福祉局から圧力がかかる。母タニアは、エイミーを連れ、メルボルンの下町へ逃れる。 新しい家の向かいに住むロバートは、音楽一筋の青年。毎日へたくそな歌を歌っていたが、エイミーは彼の歌に反応を示す・・・。エイミーの歌声が、これ以上にないほどに心に突き刺さり、染み入る作品です。もちろんそれだけではないのですが、もはやそれ以上は言えない。 素晴らしい作品です。無垢な歌声は、いつまでも心に響き渡る。


エキゾチカ
Exotica
監督・製作・脚本:アトム・エゴヤン 撮影:ポール・サロッシー
出演: ミア・カーシュナー、ブルース・グリーンウッド、イライアス・コティーズ、ドン・マッケラー、サラ・ポーリー
1994年カナダ/104分/配給:ヘラルド

 税務局員のフランシスは、夜な夜なナイトクラブ“エキゾチカ”に通い、ダンサーのクリスティーナを自分のテーブルに呼び、踊りに魅入っていた。そんな2人を嫉妬深く見つめるDJのエリックは、フランシスを陥れて店から追い出す。フランシスは、仕事で知り合ったペットショップ店を経営するトーマスを客として店に潜り込ませ、事実を突き止めようとするが……。
 カナダの新鋭アトム・エゴヤンが、1994年カンヌ映画祭で国際批評家賞を受賞した異色のサスペンス。全編に謎がちりばめられ、登場人物たちが何故そのような行動を取るのか? その動機が徐々に明らかになっていく構成だが、サスペンスといっても恐怖感や危機迫るといったような緊迫感はない。一部では「サイコ・セラピー」とも呼ばれているが、登場人物たちは、皆、何かに傷付き、他者を求め、傷を癒そうとしている……。そんな話を複雑にした構成で謎めかして描いてるわけで、最後になってネタが明かされてみれば、実はそんなに大したことではなかったような気も……。ただ、ナイトクラブ“エキゾチカ”の怪しげな雰囲気や、冷め切った色調の画面、そこに時折挿入される過去シーンでの緑豊かな草原が広がりと、その清々しさと、雰囲気だけでも十分に惹きつけられる秀作。クリスティーナ役のミア・カーシュナーの制服姿のダンスは、そうした記号的な意味ではエロティックなんだが、全体に官能的なものは感じさせられない。それが意図されていないからだが、でも、あれはカワイイですよ(笑)。


エスカフローネ
Escaflowne
監督:赤根和樹 声の出演:坂本真綾、関智一、三木眞一郎、中田譲治
2000年日本+アメリカ+韓国/110分/配給:オメガプロジェクト
公式サイト http://www.nifty.com/escaflowne/

 96年に放映された「天空のエスカフローネ」の劇場版。テレビ版と話のつながりはなく、新しい物語として製作された。テレビ版に登場したキャラクターやキャストはほぼ同じ。何事に対しても無気力になっていた高校生、神崎ひとみ。ある日彼女は、不思議な声に導かれ、異世界ガイアに入り込む。そこは、力で世界を制圧する黒竜族と、それに対抗する人々との戦乱の世界だった…。わけもわからぬまま翻弄されるひとみだが、孤独な少年バァンをみて、自らを振り返り、次第に彼と心を通わせる。
 まず思ったのは、97分では短い。どうもキャラクターの心の変化が急いでしまっているような気がして、そこにちょっと違和感を感じました。どうせ映画なのだから、120分くらいにして、そのへんをもう少しじっくりやってほしかった。不満といえばそのくらいだろうか。画面の美しさはもはや言うことはないだろう。日本のアニメなのだから。しかも劇場版となれば、そのクオリティはさらに高まる。キャラクタを描くシーンは、割と暗い画面が多く、それと逆に青い空や緑が印象に残っています。CGももちろん使われているのですが、あくまで特殊効果などに限定し、セルアニメーションの色合いを濃く残して、逆にそれが絵の完成度の高さを際立たせる。僕は実はテレビ版を一度も観たことがなかったのですが、これはこれで楽しめましたが。テレビ版のファンからすると、どう見えるんでしょうか。


エターナル・サンシャイン
Eternal Sunshine of the Spotless Mind
監督・原案:ミシェル・ゴンドリー 原案・脚本:チャーリー・カウフマン 原案:ピエール・ビスマス
出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キスルテン・ダンスト、イライジャ・ウッド、マーク・ラファロ、トム・ウィルキンソン
2004年アメリカ/107分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.eternalsunshine.jp/ チラシ 12

 別れた恋人クレメンタインが、部分的な記憶除去手術を可能にするというラクーナ社で、自分に関する記憶を消したと知ったジョエルは、自分もクレメンタインに関する記憶を消すため記憶除去手術を受ける。しかし、手術が進むうちに、記憶を消したくない深層心理が働き出して……。
 チャーリー・カウフマン脚本とミシェル・ゴンドリー監督の『ヒューマンネイチュア』に続くコラボレーション2作目。第77回アカデミー賞で脚本賞を受賞したとおり、やはりその出来は秀逸で、記憶の中を時間軸を無視してたどっていくという物語を破綻なくまとめ、それを映像化したミシェル・ゴンドリーの映像も面白い。ただ、個人的にはどうもキレイにまとまりすぎたというか、今までのカウフマン脚本のようにはじけた(ぶっとんだ?)部分が少なかったように思う。最後は切なささえこみあげてくるような、今までにない恋愛モノにできあがっているんだけど、主人公も気弱だけどごく普通の男なのだ。だからこそ、今までよりは感情移入がしやすいキャラクターになっているんだけど、そのことに対する評価をどう受け止めるかで、本作への評価も変わってくるだろう。個人的にはやはり、もっとヘンテコな世界(というかキャラ)を期待していた部分はあるので、そこでちょっと肩透かしではあったが、構成の妙にはなるほどと舌を巻いたし、演技派揃いのキャストも、この上なく魅力的だ(キスルテン、かわいい)。


X-ファイル ザ・ムービー
The X-Files: The Movie
監督:ロブ・ボウマン 製作・脚本:クリス・カーター
出演:デビッド・ドゥカブニー、ジリアン・アンダーソン、マーティン・ランドー
1998年アメリカ/121分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/x-files/

 テレビシリーズのシーズン5と6の間に位置する物語。X-ファイル課が閉鎖されて現場任務にまわっていたモルダーとスカリーは、ビル爆破事件の責任を問われて引き離されそうになる。そんな時、モルダーに父の友人と名乗る男が近づき、情報を与えるが……。
 テレビシリーズをそのまま映画にしたという感じで、正直、目新しさはないんですが、「X-ファイル」が好きな人であれば、そこそこ楽しめる出来です。ただ、わざわざ映画にしなくてもなぁ…という感じはあります。テレビシリーズの中で3話連続くらいでやったほうが、逆に盛り上がるような気が。といっても、ラストに出てくるアレを観ると、映画というスケールを感じさせられますが。


X-メン
X-Men
監督:ブライアン・シンガー
出演:ヒュー・ジャックマン、アンナ・パキン、パトリック・スチュアート、イアン・マッケラン、フォムケ・ヤンセン、ハル・ベリー
2000年アメリカ/104分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/x-men/

 世界的人気の同名アメリカンコミックを映画化。遺伝子の突然変異によって、様々な超能力をもって生まれる“ミュータント”。社会から恐れられ疎まれる彼らの一部は、人間たちに復讐を企んでいるが、一方では人間たちのために戦う“X-MEN”と呼ばれるミュータントたちがいた。原作コミックをまったく知らないので、どの程度忠実なのかはわかりませんが、映画単体では、なかなか良くできた娯楽アクション作品だと思います。SFXの使い方もしつこすぎず。ただ、アクションシーンはもうちょっとだけ派手にしてくれてもよかったかな、と思いましたが、概ね及第点ですね。各キャラクターの能力の違いもうまく表現できていたと思います。ストーリー的には、明らかに続編を意識しているようなので、2や3もでるんでしょうか?


X-MEN2
X-Men 2
監督:ブライアン・シンガー
出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュアート、イアン・マッケラン、フォムケ・ヤンセン、ハル・ベリー、アンナ・パキン、アラン・カミング、ブライアン・コックス
2003年アメリカ/136分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/x-men2/ チラシ 123

 人類を抹殺しようと試みたマグニートー率いる“ブラザーフッド”との戦いを制した“X-MEN”。しかし、彼らもまた、人類からは恐れられるミュータントでしかなかった・・・・・・。ある時、テレポート能力をもつ謎のミュータントが大統領抹殺未遂事件を起こす。これを機に、反ミュータント活動急進派のストライカー大佐は、行動を起こす。監獄のマグニートーのもとを訪れたプロフェッサーXを捕らえ、エグゼビア・スクールに兵を送り込む。旅から帰省していたウルヴァリンは、スクールの子供たちを守りながら戦うが、その中でストライカーと出会い、彼が自分の失くした過去と関わりがあることを知る。
 全世界で大ヒットを記録した(日本ではそれほどでもない)前作から3年、今回は過去最大規模、世界93カ国同時公開というビッグタイトル。ストーリーもほぼ極秘で進められたわけですが、なるほど、最後にちょっと意外なキャラが・・・・・・。前作はビデオ鑑賞だったし、まだ映画にも詳しくなかったし、ってことでそんなに感動しなかったんですが、今観てみると、このシリーズってまずキャストが凄い。というか、前作のときはまだそれほどでもなかった人たちが、この3年でかなりのネームバリューをつけたから、そういう人たちがこぞって出演しているのを観るだけでも面白いです。で、ストーリーとしては一応、「2」だけでも楽しめるように出来ていますが、各キャラクターを詳しく知るためにも、やはり「1」を観ておくことは必須かなと。そうすれば面白さが格段に違うと思います。今回、面白いと感じたのは、新しい世代のX-MENたちも現れたところ。前作で登場したローグも、ちゃんとX-MENとして成長しつつあるしね。さらに、敵だったマグニートーやミスティークと共闘するという設定も萌え。ただし、あくまで今回は共通の敵がいたからであって、彼らの目指すところはやはり違うんだなぁ・・・・・・と思うと、最後は一体どうなるのか? というのが気になります。そうそう、やっぱりこのシリーズはまだ続きそうですよ。それはご覧になればわかると思いますが。これだけひっぱったなら、最後にきちんと完結させるときがそれなりのものでないとファンは納得しないんじゃないかと、そこが心配といえば心配ですが、まぁ、そんな心配はまだまだ早いですか。今回は、各キャラクターに一応のドラマが用意されているので、個人的には期待以上でした。その分、各キャラの描き方が薄くなってしまっている感は否めないので、逆に不満に思う方もいると思いますけど。次回作では、若いやつらがどう動くのか? あのキャラは本当に? などなど、気になる要素がいっぱいです。っつーか、ローグ(とアイスマン、パイロ)で1本作れそうな感じ。なんか、ウルヴァリンやストーム、ジーンたちは今回で一応、完結させて、次回からは視点を次世代(ローグたち)に置いたほうが楽しいかもって気がします。でも、ウルヴァリンにはもっと暴れてほしいとも思うんですけどねー。


悦楽共犯者
Consporators of Pleasure
監督・製作・脚本:ヤン・シュワンクマイエル
出演:ペトル・メイセル、ガブリエラ・ヴィルヘルモヴァー、バルボラ・フルザノヴァー
1996年チェコ+イギリス+スイス/87分/配給:ユーロスペース

 チェコ・アートアニメ界の巨匠にして稀代のシュルレアリスト、ヤン・シュワンクマイエルが25年間温めていた企画を実現させたという1本。それぞれの欲望につき動かされていく6人の男女の姿を描き、関係ないような6人がそれぞれ繋がっている群像劇なわけだが、もちろん一筋縄ではいかない。台詞を一切排除していながら終始惹きつけられる魅力というか魔力。画面に人が映るだけで怪しく、恐らくシュワンクマイエルほどに人間というのものを不気味に描くことに長けた人はいないだろう。一見すればありふれた世界に生きる登場人物たちだが、ブラックなユーモアと言い知れない気色悪さが同居する世界が徐々に明らかになっていき、終盤でそれまで封印されていたアニメーションが挿入されたところで頂点に達する。いろんな意味で(笑)。


エピデミック〜伝染病
Epidemic
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー 出演:ニルス・バゼル、ウド・キア
1987年デンマーク/107分/


 トリアー監督十八番のドキュメンタリー手法でとられた、それでいてストーリーは少し不思議。画面もほぼ、モノクロに近い色がずっと続く。とにかく淡々としていて、それがいかにも監督らしいというか。なにか語るものがあるんだろうなぁ・・・と思うが。かなり退屈でございます…。それでも、監督が好きだっていうのなら、やはり見てみるのも良いかも。やっぱりこういうのを撮る人なんだなぁ・・・っていうのがなんとなくわかる気がします。


エボリューション
Evolution
監督・製作:アイバン・ライトマン
出演:デヴィッド・ドゥカブニー、ジュリアン・ムーア、オーランド・ジョーンズ、ショーン・ウィリアム・スコット
2001年アメリカ/103分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.evolution-jp.net/ チラシ 12

 アリゾナの砂漠の真中に謎の隕石が落下。近くの大学で生物学を教えるアイラは、同僚のハリーとともに調査にでかける。隕石に付着していた細胞を採取した二人だが、その細胞は、みるみるうちに進化を遂げる未知の生命体だった。ノーベル賞ものだと喜ぶ二人は再び調査に訪れるが、隕石は軍に占拠されてしまう。しかし、謎の生命体はさらに分裂、進化を続け、街に被害が広がっていった…。
 驚異の進化を遂げる生命体との攻防をコメディタッチで描き、さらにその“進化”を最新のVFXでばりばり見せる。ストーリーも簡単で、これはお気楽にみられる娯楽作品ですね。確かにギャグもなかなか面白いのだけど、ちょっとつめが甘いというか。笑えるところはとても 笑えるのだけど、ギャグが滑ってるな…ってところもあって、全体的に少々テンポが乗り切れない感じも受けました。もっとテンポよく笑わせてくれれば、より楽しめたけど。でも、長さとしてもちょうど良いし、とりあえず楽しめました。ドゥカブニーは、やっぱりモルダーの癖が抜けないのか、コメディなんだから、もうちょっと表情を動かしてほしい。X-ファイルのようなシリアスものならいいけど、コメディにはちょっと不向きかな…? なんて思ったり。


エニグマ
Enigma
監督:マイケル・アプテッド 製作:ミック・ジャガー
出演:ダグレイ・スコット、ケイト・ウィンスレット、ジェレミー・ノーザム、サフロン・バロウズ
2001年イギリス/119分/配給:松竹
公式サイト http://www.enigma-movie.com/ チラシ 1


 第2次大戦下の1943年、ナチスドイツが使用する暗号機エニグマの暗号コードが突如変更される。すでに暗号を解読していたイギリス軍は、この突然の事態に衝撃が走った。折りしも、アメリカからイギリスへ物資を運ぶ輸送船団が大西洋上を横断中で、暗号が変更されたことにより、敵のUボートの位置をつかめなくなってしまった。これでは、輸送船団が敵を避けることができず、撃沈されてしまう。暗号解読のエキスパートで天才的数学者のジェリコは、急遽、ロンドン北のブレッチリー・パークにある暗号解読センターに呼び戻され、4日のうちに新しい暗号を解読しろと命じられる。しかし、ドイツ軍が暗号を変更した時と同じくして、ジェリコの元恋人のクレアが失踪。このタイミングを不審に思ったジェリコは、独自にクレアの行方も追うことになるのだが……。
 あのミック・ジャガーが自身のプロダクションを設立し、初めて製作に取り組んだのがこの作品。ドイツ軍の暗号を解くパートと、クレアを捜索するパートが交互に作用しながら物語を織り成して、意外な結末に結びつく……わけなんですが、ちょっと説明が足りない部分も多いのか、わかりにくい印象です。まあ、大まかな筋は理解できますけど、真犯人もわりと唐突だし。どうも、観客の裏をかいているつもりもあるんでしょうが、効果的でないです。ある種のミステリ小説的な映画なんですが、誰が? 何故? と思わせる部分が弱いような気がします。それに途中、暗号解読のパートのほうがおろそかにされているような感じがしてしまって、主人公は結局、恋人探しのほうが大事なのか? と。そもそもの目的はそうじゃないだろ、と。まあ、この2つが互いに絡んでいるわけですから、一方を解読することで、もう一方も解読できるってわけですから、いいといえばいいんですけど、どうも“あと4日で暗号を解かなければいけない”という緊迫感が伝わってきません。前に暗号を解いたときは10ヶ月もかかったものを、今回はたったの4日でやらなければいけないはずなのに。でも、全体的な出来はスマートで、割と展開も早く(だから理解が追いつかないというのもありますが)、悪い作品だとは思いませんが、ちょっと地味。


エリ・エリ・レマ・サバクタニ
Eli, Eli, Lema Sabachthani?
監督・脚本:青山真治 撮影:たむらまさき 音楽:長蔦寛幸
出演:浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、筒井康隆、戸田昌宏、鶴見辰吾、岡田茉莉子
2005年日本/107分/配給:ファントム・フィルム
公式サイト http://www.elieli.jp/

 感染すると突発的に自殺してしまう原因不明の伝染病が蔓延してしまった近未来。しかし、ミズイとアスハラの2人が奏でる音楽には、その発病を抑制する効果がった。あるとき、2人のもとに大富豪ミヤギが訪れ、感染した孫娘ハナを救ってくれと懇願するが……。
 実は初めて見た青山真治作品。で、語れる人ならいくらでもこの作品について語れることはできるのだろうけど、残念ながら自分にはその言葉がない。ストーリーは一応あるけど、驚きにあふれたものではないし、やはり言及するなら“音”についてだろうけど、ともかく圧倒的な“音”の力というものは、それを浴びせることで観客の神経を麻痺させ、それだけでインパクトを与えることができるわけで、この映画にもそれは同じことが言えるかなと。正直かなりウルサイと言ってしまえる大音量の、しかも人によっては耳障りともいえるがなりたてるような音楽が、やがてそんな感覚を通り越したものに昇華される。クライマックスにあたる浅野忠信による草原でのライブシーンは、まさにその真骨頂というか。言葉はなにもいらず、ひたすら奏でられる“音”(“音楽”にあらず)の迫力に、それを奏でる浅野忠信の無表情な姿に圧倒されるのみ。
☆☆☆★★


エリザベス
Elizabeth
監督:シャカール・カプール 出演:ケイト・ブランシェット、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ
1998年イギリス/124分/配給:日本ヘラルド映画

 25歳で即位し、「ヴァージン・クィーン」と呼ばれた英国女王エリザベス1世。ヘンリー8世の愛人の子として生まれ、周囲からは異教徒として投獄された彼女が、英国女王の座に就く。最初は恋愛に夢見る少女であった彼女が、女王の座を追おうとする者たちの謀略から己を守り、英国を守るため、次第に強固な意志と決断力を身につけ、反対勢力を駆逐していく。歴史的舞台を題材にしたサスペンスの要素をもった映画。衣装やセットなど、とても荘厳に作りこまれ、映画全体のもつ重厚な雰囲気とあいまって、非常によく作られていると思います。個人的には、その作りこまれた中世ヨーロッパの荘厳さと、主演のケイト・ブランシェットがお気に入りの映画です。もちろん内容も好きですが。


エリザベスタウン
Elizabethtown
監督・脚本・製作:キャメロン・クロウ 製作:トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
撮影:デビッド・モリッツ 音楽:ナンシー・ウィルソン
出演:オーランド・ブルーム、キルステン・ダンスト、スーザン・サランドン、ジュディ・グリア、ジェシカ・ビール、アレック・ボールドウィン、ブルース・マッギル 
2005年アメリカ/123分/配給:UIP
公式サイト http://www.e-town-movie.jp/

 心血を注いで取り組んだプロジェクトが失敗し、会社を大損害を与えてしまったドリューは解雇され、恋人とも破局する。全てを失って自殺を図ろうとした矢先、さらに追い討ちをかけるように父の死が知らされる。葬式のために故郷に戻ったドリューは飛行機のなかで知り合ったクレアや、現地の人々との交流のなかで、次第に自分を取り戻していく。
 『ザ・エージェント』『あの頃ペニー・レインと』のキャメロン・クロウが描く青春ドラマ。オーランド・ブルームが現代劇に挑戦という触れ込みだが(本当は『カルシウム・キッド』っていうビデオスルーもので現代劇やってるけど)、それも悪くない。予告編とか見ていると、もっと父親との思い出話的なものも多いのかと思ったらそれほどでもなく……。それよりもやっぱりクレアとの出会いによって、周囲を違ったふうに見つめていくことで自分を取り戻していく話だから、彼女の存在がとても印象的でしたな。そんなクレアを相変わらずの素敵な笑顔で演じたキルスティン・ダンストは、『スパイダーマン』もそうだけど、悩める青年を救うのはお手の物ですね(笑)。監督の音楽へのこだわりは本作でも健在なんですが、ちょっとBGMの切り替わりが細かすぎる気も。それぞれ知ってる人が聞けば意味わかるんでしょうけどね。
☆☆★★★


エリン・ブロコビッチ
Erin Brockovich
監督:スティーブン・ソダーバーグ 出演:ジュリア・ロバーツ
2000年アメリカ/131分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.spe.co.jp/movie/erinbrockovich/

 巨大企業の地下水汚染問題を巡って訴訟を起こし、企業側にアメリカ史上最大の賠償金を支払わせることに貢献したという実在の女性、エリン・ブロコビッチの活躍を描いた作品。なかなかスカッとさせてくれる映画です。なんといってもジュリア・ロバーツ演じるエリンの魅力が見物。感情的ですぐカッとなったりするんだけど、子供を想う優しい母親であり、自分の信念を貫く女性であり、汚染によって病を余儀なくされる女性や子供達に、母として女としての立場で同情することができる。そんな彼女だからこそ、人々から信頼を得て、勝訴にいたることが出来るわけでしょう。もちろん、その奔放な性格のおかげで、苦労させられることもあって、悩んだりする。そんな当たり前の人間臭さも漂わせながら、成功への道を歩んでいく。ジュリア・ロバーツは本作にして念願のアカデミー賞主演女優賞を得たわけだが、それもしごく当然であろうなぁ、と思わず納得させられちゃいます。
 個人的には、シーンごとに全て違うファッションを見せてくれるするジュリア・ロバーツも見所かな、なんて思った。しかもかなりのお色気ファッション。ハリウッドが特別に開発したブラジャーつけてるらしい(笑)。そうそう、それからウェイトレス役でちらっと登場した女性が、実は本物のエリン・ブロコビッチさんなんだって。しかもそのウェイトレスの名前はジュリアだそうです。ジュリアがエリンで、エリンがジュリアなわけですね。



■2005年4月29日公開■
エレニの旅
Trilogio: To Livadhi Pou Dhakrisi
監督・脚本:テオ・アンゲロプロス
出演:アレクサンドラ・アイディニ、ニコス・プルサニディス
2004年ギリシャ+フランス+イタリア+ドイツ/170分/配給:フランス映画社
公式サイト http://www.bowjapan.com/eleni/ チラシ 1


 1919年、ロシアのオデッサに移住し、革命と赤軍のオデッサ入城で再びギリシャに逆移民として戻ってきたギリシャ人の一行がいた。少女エレニは、オデッサで両親をなくし、一行に連れられてギリシャへやってくる。10年後、一行の長であるスピロスの息子アレクシスと通じて双子を産んだエレニだったが、スピロスに知れないようにと双子は裕福な家庭にもらわれていく。スピロスは、妻の死後、若いエレニを娶ろうとするが、エレニはアレクシスと手を取り逃げ出すのだった……。
 言わずと知れた映画界の大巨匠テオ・アンゲロプロスの『永遠と一日』以来6年ぶりの新作。実は恥ずかしながら、初めて観たアンゲロプロス作品。噂に違わず、いろんな意味でこたえる映画でしたが、今の僕にはアンゲロプロスをおいそれと語る口はないので、これにて。


エレファント
Elephant
監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
出演:ジョン・ロビンソン、アレックス・フロスト、エリック・デューレン
2003年アメリカ/81分/配給:東京テアトル、エレファント・ピクチャー
公式サイト http://www.elephant-movie.com/ チラシ 1


 1999年にコロラド州コロンバイン高校で起きた銃乱射事件を描いたドラマ。俳優はすべて素人の高校生を使い、役名もほぼ彼らの本名そのままで、最初は一応脚本もあったらしいが、台詞などは結局即興で生まれたもので撮っていったという、ほとんどドキュメンタリーに近い手法と映像。いつもと同じように学校に通う高校生たち。何人もの学生の視点から時間軸を交差して描くことで、誰にでもある「どこでもある日常」が強調されているようで、ひたすら彼らの歩くあとを追うカメラが、何もないのに、この先に訪れる惨事を暗示しているようで不気味にも感じられた。彼らは何も知らずに歩いてるその先に、世にも悲惨な事件が待っているから。そして、あくまで淡々とした中で突如としてはじまる狂気の沙汰。過剰な演出も糾弾もなく、それゆえに「衝撃」だけが重くのしかかる。「何故?」という問いを監督自身がまだ答えを見出せないままに、観客とともに探っていこうとする姿の現れのようなフィルムだと思いました。カンヌ映画祭史上初のパルムドール&監督賞をダブル受賞。