カーテンコール
Curtain Call
監督・脚本:佐々部清
出演:伊藤歩、藤井隆、鶴田真由、奥貫薫、津田寛治、橋龍吾、井上堯之、藤村志保、夏八木勲
2004年日本/111分/配給:コムストック
公式サイト http://www.curtaincall-movie.jp/

 ある事件がきっかけで九州のタウン誌に異動させられてしまった見習い記者の香織は、昭和の映画全盛期、幕間芸人という仕事に就いていた男の話を知り、記事にしようと、自身の故郷でもある下関へ足を運ぶ。
 『半落ち』の佐々部清監督が、『チルソクの夏』に続いて自身の地元・下関を舞台に描く人間ドラマ。昭和30〜40年代の古き良き時代と現代を交錯させて描くが、しかし、それは単なる懐古趣味に留まっているのではなく、また幕間芸人の話が主体かと思いきや、物語は意外な方向に進み、次第に2つの時代が繋がっていき、いつの間にか親子の物語になっている。劇中、橋幸夫と吉永小百合の「いつでも夢を」が重要な曲として何度も奏でられるが、当時を知る人たちにはさぞかし郷愁を誘うことだろう。ただ、僕のようにその時代を知らなくても、感動のドラマとして楽しめるはず。
☆☆★★★


ガール・ネクスト・ドア
The Girl Next Door
監督:ルーク・グリーンフィールド
出演:エミール・ハーシュ、エリシャ・カスバート、ティモシー・オリファント
2004年日本/110分/劇場未公開(ビデオリリース:20世紀フォックスホームエンタテインメント)

 間もなく卒業が近い高校生マシューは生徒会長を務める優等生だが、せっかくの青春をはじけることができずに悶々とした日々を送っていた。そんな時、向かいの家にダニエルという名の美少女が引っ越してきて、マシューは彼女と急接近。しかし、ひょんなことから彼女がアダルト女優だったことを知ってしまい……。
 ドラマ「24 TWENTY FOUR」でブレイクしたエリシャ・カスバートがお色気をふりまいて送る青春ドラマ。まあ、内容はそれだけ(?)のティーンムービーで、見るといったらエリシャ目当て意外ありえないでしょう。そんなわけで、彼女の魅力が堪能できればそれでOK。逆に言えば、彼女が気にならなければ見なくてOK(笑)。ただ、扱っている内容がAVであ、いい意味でバカバカしい設定ながら、爽やかなエンディングに仕立て上げているのは好意的。それにしても『イノセント・ボーイズ』で脚光を浴びたエミール・ハーシュには、もっとちゃんとしたドラマに出てもらいたいものであるが。


害虫
Harmful Insect
監督:塩田明彦 
出演:宮崎あおい、田辺誠一、沢木哲、天宮良、石川浩司、蒼井優、りょう
2002年日本/92分/配給:日活
公式サイト http://www.nikkatsu.com/oldmovie/gaichu/

 中学1年生で13歳のサチ子は、父親のいない家庭で母親が自殺未遂を起こしたり、小学校の担任だった緒方との恋愛関係が後を引いており、現実に対処できず、登校拒否になっていた。不良少年のタカオ、精神薄弱の中年男キュウゾウと知り合い、日々を送るうちに次第に変化が訪れたサチ子は、友人の夏子の誘いもあって再び学校に通うようになるのだが……。
 思春期の心の混乱を冷徹といえるほどに冷めた視点で描き、ベネチア映画祭の現代映画部門に正式出品、ナント三大陸映画祭コンペティション部門審査員大賞&主演女優賞受賞など、高い評価を受けた青春ドラマ。内容としては書いてあるとおりなんだけど、最初はこれ、高校生の話かと思ってみていたら、途中で中学生の話とわかってちょっとビックリ。13歳にしてこうも特殊な環境に育つことはありうるのか……特に物語の根幹をなしている、小学校教師との恋愛は現実感に乏しいんだが、もし宮崎あおいが演じているサチ子という13歳が、そのまま現実に存在しうるのであれば、それもあるかもしれない。要は、大人びて美しいがゆえの罪というか。そんな現実についていけない心が静かに暴走していく過程を追っているわけなんだけど、こうも痛々しくなる前になんとかできんものだろうか……と映画に向かって本気で感想を述べてしまいたくなる。それにしても宮崎あおいは制服姿が萌え……じゃなくて、この微妙なあどけなさと大人びた雰囲気と、優等生と劣等生の狭間を揺れる動くような危うげな雰囲気が非常に印象的だ。


カウボーイ・ビバップ 天国の扉
Cowboy Bebop: Knockin' On Heaven's Door
監督:渡辺信一郎
声の出演:山寺宏一、林原めぐみ、石塚運昇、多田葵、磯部勉、小林愛
2001年日本/114分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.cowboybebop.com/ チラシ 12

 98年に放映されたTVシリーズの劇場版。基本的にテレビシリーズの間の話なので、設定なども変わっていないし、ファンとしても安心してみられました。TV版は、話ごとに、時にはハードボイルドだったり、時にはコミカルなアドベンチャーだったりと、違った魅力を見せてくれるのが楽しかったのですが、映画版は話一本だから、そればっかりはどうしようもないですが。
 多少の中だるみ感を感じないわけでもないんですが、そこらへんは、ビバップらしい“けだるさ”を演出しようとしたのかしないのか・・・。あと、スパイクはいいんですけど、他のキャラ(特にジェット)に動く機会を与えて欲しかったかなぁと思ったり。基本となる四人と一匹に、今回のゲストのメインキャラ二人だけくらいでドラマを展開してくれれば、もっと面白かったかな、と個人的には思います。警察だとか軍隊だとかはちょっと余計だったかも。
 と、まぁ、思い入れがあるぶん、思うところも多いですが、つまらないなんてことは全くなく。映像、音楽、演出、役者の演技・・・どれをとっても一級品。劇場版だからといって、むやみに凝った映像に偏ったりせず、じっくりと安定したビバップが作り上げられています。TV版を意識しすぎた? と感じるかもしれないけど、下手に冒険するよりも、今まで積み上げてきたものをしっかりと受け継いで、丁寧に作り上げたという感じがあり、そこには製作者の真摯な姿勢が伺えて好感がもてます。つまり、なんと言いましょうか、長く待たされただけあって、それだけじっくり煮込んだカレーのような美味しさが味わえる作品なのです。ああ、これはカウボーイビバップなんだな、と思える良質な劇場版。


隠し剣 鬼の爪
The Hidden Blade
監督・脚本:山田洋次 脚本:朝間義隆 原作:藤沢周平
出演:永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦、田畑智子、高島礼子、田中泯、小林稔侍、緒形拳
2004年日本/131分/配給:松竹
公式サイト http://www.kakushiken.jp/ チラシ 123

 幕末の庄内。海坂藩の下級武士で、独り身の片桐宗蔵は、かつて片桐の家で奉公していた百姓の娘きえと再会する。商人の伊勢屋に嫁いでいたきえは、すっかりやつれてしまい、宗蔵はその物寂しげな姿に心を痛める。そして、きえが病に臥せって伊勢屋がまともな看病もしてないとこを知った宗蔵は、怒ってきえを強引に連れ帰ってしまう。再び片桐家に戻ってきたきえは、次第に元気を取り戻していったが、そんなある日、藩の江戸屋敷で謀反が発覚する。主犯格の狭間弥市郎が江戸から連れ戻されてくるが、狭間とは同じ門下生であった宗蔵は、否応にも騒動に巻き込まれてしまう。
 『たそがれ清兵衛』に続き、山田洋次が藤沢周平の小説を映画化した時代劇。原作は「隠し剣鬼ノ爪」「雪明かり」の2つの短編。『たそがれ〜』も、藤沢周平原作の短編をまとめたものだったが、そのせいかとても似ているなというのが第一印象。あえてそうした題材を選んだのか、藤沢周平の原作を読んだことがないのでなんともいえないが。ただ、似たようなものであることが悪く働いていないのが不思議なもので、ものすごく安心してみられる。山田洋次といえばなんといっても『男はつらいよ』シリーズだが、ひょっとすると今後は藤沢周平原作シリーズに移行するのかもしれないし、そうだとすると、毎回似たようなパターンでも、それが安心して観られる自然さが売りになるのかもしれない。下手をすると、どうしようもないやるせなさと悲しさに満たされてしまいそうな物語のなか、宗蔵ときえの迎える結末が心温かく、大きな流れの中の一滴のような幸せを約束し、僕らに安らぎを与えてくれる。『たそがれ〜』が好きな人には、間違いなくオススメしたい。日本人の良心がここにあり。


華氏911
Fahrenheit 9/11
監督・製作・脚本:マイケル・ムーア
出演:ジョージ・W・ブッシュ、マイケル・ムーア
2004年アメリカ/122分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ、博報堂DYメディアパートナーズ、日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.kashi911.com/ チラシ 12

 2000年の大統領選挙から始まり、ビンラディン一族とのビジネス上での癒着関係、そして9・11とイラク戦争に至るジョージ・W・ブッシュ大統領の言動を追い、検証。戦争反対と打倒ブッシュを掲げたドキュメンタリー。第56回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したほか、ディズニーによる配給拒否など、様々な騒動を巻き起こして世界的に大注目を浴びた超話題作。
 アメリカから遅れること2ヶ月後に公開された日本だが、それまでにももう十分すぎるとほどメディアに取り上げられたこの映画。だからこそ、詳しい紹介などしなくても、もう皆さんご存知でしょうけれど……。個人的には思ったほど感じ入ることが出来なかった。そもそも、マイケル・ムーアは、ユーモアと笑いを武器に、突撃アポなし取材を敢行するのが持ち味だったんじゃないかと思うんだけど、今回はちょっと笑いの要素が薄れていて、むしろかなりシリアスな印象。だからか、ちょっと肩透かしをくらった気もしなくもない。ただ、そのぶんブッシュや彼が引き起こした無意味な戦争に対する大きな怒りのようなものは感じられたし、それを訴えるには十分なんほど感情的でかつ現実的で痛々しい映像も盛り込まれていました。これを見れば、いかにイラク戦争が無駄であったかということが感じられたような気がして、その意味では衝撃的だったかもしれません。かなり中立性を欠いていて、ドキュメンタリーではなくてプロパガンダだというような批判もありますが、使われている映像はホンモノで、実際に起こったことでアメリカのメディアが報道しなかった断片を集めただけ。つまり逆説的に言えば、開戦時に右傾化したメディアも、真実を伝えないプロパガンダみたいなもんだろ、とムーアは批判しているんだろうと。それは実際にアメリカに住んでいるアメリカ国民でなければ、その意図を感じ取るのは難しいかもしれないけれど、我々日本人にしても、知らなかったことや、知っていてもうやむやになっていた部分を改めて見せられることで、考えさせられるものはあると思いました。
 ムーア自身は、この映画をきっかけにしてみんなが考え、議論してくれればいい……と言っていますが、まさにその通りで、この映画を鵜呑みにするのでも、全面否定するのでもなく、あくまで考えるきっかけになればよいと思いました。そういうわけで、小泉首相もとりあえずはこの映画を観なさいな。


風の絨毯
The Wind Carpet
監督:カマル・タブリージー
出演:柳生美結、榎木孝明、工藤夕貴、三國連太郎、ファルボー・アフマジュー、レザ・キヤニアン
2002年日本+イラン/109分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.kazeju.jp/ チラシ 1

 飛騨高山の祭を指揮する中田は、400年前、シルクロードを渡って伝えられたペルシャ絨毯が祭の神輿に飾られたという伝統を復活させるため、画家の絹江に絨毯のデザインを依頼する。しかし、デザインが完成し、あとは縫い上げるだけというとき、絹江は事故で他界してしまう。残された夫の誠は、悲しみで心を閉ざしてしまった娘さくらとともにイランへ赴き、絨毯を完成させようとする。そして、さくらも異国の地での人々との交流で、徐々に心を開いていく。
 日本とイラン合作で両国の文化の交流を描くドラマ。話は当然ながら悪くないですが、やや中だるみな感じ。絹江が死んでからイランに旅立つまでの件をすっぱりと省略しているあたりにかなり好感をもちまして、また、終わり方も実にすっぱりしていて潔い感じでした。始めと終わりは良い感じなのですが、その分、途中がやや力のない感じに。それにやっぱり言葉の壁で俳優たち自身が、演技にのめりこめていないんじゃないかという違和感もありました。まあ、その言葉・文化の違いを逆手にとったギャグもあって、意外にも笑えたりするシーンもあるんですけど。それに、主人公はやっぱり少女さくらなわけで、彼女はイランの少年ルーズべなどとの交流によって徐々に打ち解けていくのに、ストーリーの本筋では、イランの人たちが団結して絨毯を編み上げていく過程がメインになっているわけで、その2つがうまくかみ合っていない感じはしました。そういうとこが残念だし、なにより父親役の榎木孝明の薄〜い演技がちょっと許せない感じでした。話はいいんですけどねぇ…、でも、これではちょっと満足できないです。うーん。


風の谷のナウシカ
Nausica of the Valley of Wind
監督・原作・脚本:宮崎駿 プロデューサー:高畑勲
声の出演:島本須美、榊原良子、松田洋治、納谷悟朗、京田尚子、永井一郎
1984年日本/116分/配給:東映

 文明が滅びて1000年がたった世界。“腐海”と呼ばれる瘴気を発する森やそこに住まう蟲たちによって人々の生活圏は狭まれていた。海からの風で腐海の瘴気から守られている「風の谷」。平和なこの小さな国に、ある日、巨大な飛行船が落下する。その船には、かつて世界を滅ぼしたという伝説の“巨神兵”が積まれていた。やがて、その巨神兵を追って、大国トルメキアが風の谷に攻め入り、王妃ナウシカもその戦乱に巻き込まれていく…。
 もはや今更あれこれいうようなこともないでしょうね、この作品に関して。腐海や王蟲といったものの描写も素晴らしく、宮崎監督は本当にフィルムの中に“世界”を作るのがうまい。人間と自然の共存というテーマも、宮崎作品の根幹をなしているものでしょうし、それをただ説教くさく語るのではなくて、大人も子供も楽しめる、またとない娯楽作品として仕上げいるところがすごいです。しかし、それら以上に、やはりこの作品は、ナウシカというヒロインの魅力。どこまでも自然と人を愛し、自己犠牲の愛に満ち、そして何よりもそれを実行する強さをもち…。何度見ても泣かされる映画です。


ガタカ
Gattaca
監督・脚本:アンドリュー・ニコル 出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ
1997年アメリカ/106分/

 遠くない未来。遺伝子の優劣によって全てが決められる社会。子供は受精卵の段階で遺伝子操作を受け、有害な要素は排除されて生まれてくる。しかし、ビンセントはそうした遺伝子操作を受けずに生まれた。心臓に疾患をもち、寿命も30年と判断されたビンセント。やがて遺伝子操作を受けた弟ができるが、兄でありながらもビンセントは弟に勝てない。劣等感から宇宙飛行士を夢見るようになったビンセントだが、いくら頭脳が優れた彼でも、劣勢な“遺伝子”の前にはなすすべもない。下級階層の生活を続けながら宇宙飛行士訓練施設「ガタカ」の清掃員になった彼は、ある時、闇ブローカーを介して、優秀な遺伝子をもちながらも事故で下半身付随になったジェロームに出会う。 契約によりジェロームになったビンセントは、ガタカにエリート社員としてもぐりこみ、念願の宇宙飛行士に抜擢された。旅立ちの日の一週間前、ビンセントの正体を疑っていた上司が殺されて・・・。
 低予算であろうと思われるつくりながらも、SF映画の傑作ともいえる作品になっていると思います。遺伝子によって夢を立たれたビンセント。エリートありながら挫折し、夢を失っていたジェローム。この二人の関係が泣かせます。ジェローム役のジュード・ロウの存在が僕にとっては一番泣けたのですが。彼の表情。多くを語らないが、心の底にはビンセントに対する友情のようなものを抱いていたであろう、彼の寂しさ。また、ビンセントも、嫌が上でも劣等感を抱かされながらも、切ないまでに宇宙を夢みる、そんな彼の姿・・・。SF映画の傑作にして名作。是非、ご覧あれ。


カナリア
Canary
監督・脚本:塩田明彦 撮影:山崎裕
出演:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、りょう、つぐみ、甲田益也子
2004年日本/132分/配給:シネカノン
公式サイト http://www.shirous.com/canary/ チラシ 1

 テロ事件を引き起こしたカルト教団“ニルヴァーナ”の施設で、母親に連れられ妹とともに生活していた12歳の光一は、事件後、児童相談所に預けられていた。やがて妹が祖父に引き取られ、自らは引き取りを拒否された光一は児童相談所を脱走し、妹を取り戻すため、東京にある祖父母の家を目指す。その途中、家出少女の由希と出会った光一は、彼女と道中をともにすることになるが……。
 1995年に起きたオウム真理教の地下鉄サリン事件に衝撃を受けた監督が、温め続けた企画を映画化。実在の事件にインスピレーションを受け、モチーフにされてはいるが、一応フィクションである。教団の施設内の生活なども描かれているが、それは監督の想像でもあるとのことで、実在とどの程度近いのかはわからないが、遠からずといったところなのだろうか。ただ、この映画はオウムやサリン事件といったものに対する何か監督なりの答えを提示しているわけではなく、あくまで大人社会の身勝手に翻弄され、生き方を見失っている子どもたちが、未来を見据えて五里霧中でも前進しようとするドラマである。ただ、だからといって不用意に希望に満ちているなんてことはい。かといって完全に現実を悲観しているのかといえば、それもまた否といえる……かもしれない。全体の雰囲気は重たく、決して明るいものではないが、子どもたちの目は力強い。迷いはあるが、生きることを選択する。詳しくは述べられないが、ラストのあの展開は一気にファンタジーになってしまったのか?と思って、一瞬面食らってしまったのだが……。あれはどういうことだったのだろう……。ただ、確実なのは光一も由希も自ら歩み出したということだ。彼らのその後は決して平坦ではないのは、想像に難くないが。


カミュなんて知らない
Who's Camus Anyway ?
監督・脚本:柳町光男 撮影:藤澤順一 音楽:清水靖晃
出演:柏原収史、吉川ひなの、前田愛、中泉英雄、黒木メイサ、田口トモロヲ、玉山鉄二、阿部進之介、本田博太郎
2005年日本/115分/配給:ワコー、グアパ・グアポ
公式サイト http://www.camusmovie.com/

 都内のある大学。文学部の映像ワークショップのカリキュラムで、高校生による老婆刺殺事件の映画化に取り組む直樹たちだったが、事件の犯人への共感や反発、また私生活の人間関係による様々な感情が錯綜していく……。
 『さらば愛しき大地』『火まつり』で知られる柳町光男監督の『旅するパオジャンフー』以来10年ぶりとなる監督作。これがまた、なんといったらいいのか非常に言葉に困る映画でした、とても惹きつけられるんだけど、ある意味“変な映画”でもあり、そういう意味で一見の価値あり。映画製作に没頭する主人公たちのあわただしい日常を、淡々と描きながらも、次第に一部の人物たちの精神が危うい方向に流れていくような不気味さも漂う。そしてクライマックスとなる映画の撮影現場のシーンでは、あたかもこれが現実なのか妄想なのかの区別が曖昧で、どちらともとれるような出来になっていて、一転して言葉にできない怖さがにじみ出る。でも、その大事な場面で実は主人公が不在というのが、また“変な映画”と僕が言いたい所以でもあるんですが……。物語の舞台のほぼ9割が僕の母校の大学で撮影されており、ロケーションが手にとるようにわかるのが、個人的には面白かった。あとはシネフィルな人なら、いろんな映画の名前が登場するから、そういう部分も楽しめるかも。
☆☆★★★


亀は意外と速く泳ぐ
kame wa igai to hayaku oyogu
監督・脚本:三木聡
出演:上野樹里、蒼井優、岩松了、ふせえり、要潤、松重豊、松村利史、嶋田久作、伊武雅刀
2005年日本/90分/配給:ウィルコ
公式サイト http://www.kamehaya.com/ チラシ 12

 夫が単身赴任中で、飼っているカメに餌を与えるだけが日課の主婦・片倉スズメは、ふとしたことで“スパイ募集”の張り紙を見つけ、応募してみる。すると、自らを某国のスパイだというクギタニ夫妻から「平凡なところがスパイ向き」と素質を認められ、晴れてスパイに。しかし、やることはとりあえず今までどおりの日常を続けるだけだったが……。
 人気バラエティ番組の演出家・三木聡の長編監督第2作。全編に満載のユル〜いギャグが面白く、全体のストーリーはどうでもいいようなもので、とにかく日常の細々としたところにちりばめられた小ネタに笑えればそれでOK。……まあ、そういう意味で非常にTV的なもので、映画として“観る”と思うとちょっと物足りない気も。お金のかかってなささも、撮り方も非常にTV的だし。妙に画面が汚かったのはいただけないというか、あれはちゃんと35mmのフィルムで撮ってないよね? そいうところが終始不満で、やっぱり“映画”ではないのかなぁ……と。ネタは面白いんですが。
☆☆☆★★


かもめ食堂
Ruokala Lokki
監督・脚本:荻上直子 原作:群ようこ
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、ヤルッコ・ニエミ、タリア・マルクス、マルック・ペルトラ
2005年日本/102分/配給:メディア・スーツ
公式サイト http://www.kamome-movie.com/

 フィンランドの首都ヘルシンキの街角にある、日本人女性サチエがひとりで経営する“かもめ食堂”。街の人々は日本人女性がひとりで開いた食堂を物珍しげにのぞくが、なかなかお客が入らない。それでものんびりと店を開くサチエのもとに、訳ありげな旅行者のミドリやマサコも加わり、徐々にお客が入り始めて……。
 『バーバー吉野』『恋は五・七・五!』の荻上直子監督の第3作。今回は初めて原作小説(群ようこ)があるが、映画のために書き下ろされたものなので、基本的にストーリーはオリジナル。相変わらずの独特のユーモアに加えて、フィンランドののんびりとした空気が加わり、なんともいえないほのぼの感。一応、散発的に事件が起こる(?)が、それでも不思議とペースが変わらない、でも飽きない。最終的になにかを成しえたりする物語ではないのだけど、この雰囲気だけでも味わえればOKって感じの作品でした。主演3人がベストマッチだが、特にもたいまさこのわけわからなさが見ているだけで可笑しい。
☆☆★★★


花様年華
In the Mood for Love
監督・製作・脚本:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン、マギー・チャン、スー・ピンラン、レベッカ・パン、ライ・チン
2000年香港/98分/配給:松竹

 1962年、香港。新聞社の編集者チャウと商社で社長秘書として働くチャンは、同じアパートの隣同士に同じ日に引っ越してくる。チャウの妻は仕事で夜が遅く、チャンの夫も海外出張などで不在がちだったが、やがてその2人が通じ合っていることに気がついたチャウとチャンは、次第に距離を縮めていくのだが……。
 トニー・レオンとマギー・チャンの色気がなんともたまらない大人の恋愛ドラマ。トニー・レオンがカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞。この作品の英題は「In the Mood for Love」となってるんですが、まさにその通りといったところじゃないでしょうか。全てのカットが美しく計算されていて、言い知れないムードを漂わせていて……。台詞もそんなに多くないし、説明的な描写をかなり省いているんで、場合によっては退屈になってしまったかもしれないですが、その独特のムードに魅せられましたね。なんかやっぱりこの監督は音楽の使い方も効果的で上手いし、クリストファー・ドイルの撮影は相変わらず絶妙に色と空気を捉えているし、美術も綺麗なんですよねぇ。


カンフーハッスル
Kung Fu Hustle
監督・製作・脚本・出演:チャウ・シンチー
2004年中国/95分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.sonypictures.jp/movies/kungfuhustle/ チラシ 1

 文化革命前の中国。強大な権力や悪がはびこる中、強くなるために悪に憧れる負け犬のチンピラ、シンは、街で恐れられるギャング団・斧頭会に入れてもらうために悪さを働こうとするがうまくいかない。そんなある日、貧民街の豚小屋砦にやってきたシンだったが、そこの住民たちは何故かカンフーの達人で、彼らとギャングたちとの戦いに巻き込まれてしまう……。
 あの『少林サッカー』のチャウ・シンチーが、敬愛するブルース・リーへの思いを映画化したアクション……といっても、チャウ・シンチーの映画ですから、これがまた、とんでもないコメディ。宣伝のキャッチコピーが「ありえねー。」って一言で、そんなキャッチコピー自体がありえないだろと突っ込みたくなるが、意外やホントに「ありえねー」を連発したくなるくらいのおバカ映画で、まあ、とにかくこれは観るしかない! 『少林サッカー』の2匹目のドジョウかと思うとある程度衝撃は薄いかもしれないが、バカバカしさがよりパワーアップ。とにかく漫画の世界をそのままやってるようなアホらしさが抱腹絶倒(チャウ・シンチー曰く「ドラゴンボール」「ドラえもん」の影響があるとか)。ストーリーなんて、あってなきがごとくのもので、何しろ終盤まで全然主人公が活躍しなくて、影が薄っ!(笑) でも、何故かとってつけたように最後は急に強くなったり、ロマンスも用意されていたりで、そのへんのバランスは『少林サッカー』に比べると悪い気がするんだけど、何よりバカバカしさに腹抱えて笑うためなら、そんな細かいことは気にしなくても良い気もする。