ケイナ
Kaena: The Prophecy
監督・脚本:クリス・デラポート、パスカル・ピノン
声の出演:キルステン・ダンスト、リチャード・ハリス、アンジェリカ・ヒューストン
2003年フランス/85分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.kaena.jp/ チラシ 1

 遠い銀河の遥か、惑星アストリア。ある時、豊富な樹液が多くの生命を育むこの星に、宇宙探査船が墜落し、その衝撃から生態系に異変が起こり、巨大な樹木“アクシス”が生まれる。アクシスはアストリアの樹液を吸い取り急激に成長を続ける。……それから600年。人々は星を覆ったアクシスの上で暮らしていたが、今まさに樹液が枯渇の危機を迎え、それは惑星そのものの危機でもあった。ただ神に祈るばかりの人々の生き方に疑問をもつ少女ケイナは、禁じられた地へと自ら足を踏み出すが……。
 ヨーロッパ初のフルCGアニメとなるフランス産SFアドベンチャー。今ではフル3DCGのアニメなんて珍しくないとお思いかもしれませんが、実はアメリカ(ピクサー社など)で作られたいくつかと、日本の『ファイナル・ファンタジー』の全部で10本に満たない程度なのです(あくまで商業用の長編作としての話)。で、今回、ヨーロッパ初ということで作られたのが本作で、監督は根っからの日本アニメのファンだそう。確かに随所に日本のアニメっぽいところがいくつかあったりして(少女が主人公ってのも)、日本のアニメをたくさん見ている人であれば、話の設定とかには違和感なく入っていかれるかもしれません。が、かといって斬新さがあるわけでもなくキャラの造形なんかもどっかで見たことがある漢感じ。しかも85分しかないので話に広がりがないし、一方で85分なのに途中、眠たくなったりと、どうも惹きつけられるものがなくて困りました。陰影が効いてる色彩なんかはいい感じなんですが、かえってそのせいで見づらかったりする場面もあるし、やっぱりなんといってもキャラクターに魅力が感じられないのがいまいちだった理由かもしれません。キャストは何気に豪華で、CGの質もそんなに悪くないと思いますが(樹液の雰囲気とか)、ピクサーに比べちゃうと厳しいかもしれないし。まぁ、ピクサーは非人間型のものを動かすから上手いというのがあるんだけど。


KT
KT
監督:阪本順治 音楽監督:布袋寅泰
出演:佐藤浩市、キム・ガプス、チェ・イルファ、筒井道隆、ヤン・ウニョン、原田芳雄
2002年日本+韓国/138分/配給:シネカノン
公式サイト http://kt-movie.com/ チラシ 12

 1978年8月8日、韓国の元大統領候補・金大中(現・韓国大統領)拉致事件を映画化。フィクションではあるが、限りなく実話に近いかたちをとって進行する。
 この歴史的大事件を映画化した本作を観た感想は、久々に骨のある日本映画だな…というところです(といっても、全然邦画を観ない僕がいうのもなんですが)。重い題材なだけに、映画自体も重いのですが、かなりしっかり作りこまれた70年代の雰囲気や、人物の描写、演出等、どれも見るものがあると思いました。派手さはなく、どちらかといえば地味といえるのですが、それだけ堅実。それでいて重厚にひきつけられるものがあります。じりじりとせまる緊迫感や人々の見えない思いが随所に漂わされて、単に事件を追っただけでない、人間ドラマとしてできあがっています。近年、いい意味でも悪い意味でも、なにかと騒がれる日韓関係ですが、そんな時だからこそ、この映画が生まれたのでしょう。「今、この映画をつくらないと、この事件は歴史に埋もれてしまうと思った」という監督の言葉どおり、こんなときだからこそ、日本にとっても、韓国にとっても、重大なこの事件を映画化することに意義があったのでしょう。こういうことがあったということを忘れずに、日韓関係は歩みを続けてほしい…といいましょうか。映画の話からずれましたが、とにかくいい感じ。日本、韓国、そしてアメリカも関与する国家間的な大事件でありながら、あくまで主人公たちの視点で描いてるところが人間ドラマになってる、といえるところ。ただ、そうでありながら一番の主人公たる、富田の動機がいまいちはっきりしかねるというのも感じました(劇中で本人が語ってはいましたが、本当にあれだけで事件に関与するのか?)。もう一人の主人公、金車雲のほうが人物としての描かれ方はよかったと思いますが。そんなことはありますが、全体としては、骨太で見ごたえは十二分の傑作。布袋寅泰の音楽も良いですし。