モーヴァン
Morvern Callar
監督・脚本:リム・ラムジー
出演:サマンサ・モートン、キャスリーン・マクダーモット
2002年イギリス/92分/配給:アーティストフィルム、東北新社
公式サイト http://www.morvern.jp/  チラシ 1

 クリスマスの朝、モーヴァンの恋人が自殺した。「君のために書いた」という、彼の遺作であり処女作の小説と、「君のための音楽」というラベルの貼られたカセットテープを遺して。“この小説を出版社に送ってほしい”という彼の遺書を読み、モーヴァンは、著者名を自分の名前に書き換え、出版社に送る。そして、彼の口座からお金をおろし、職場の同僚であるラナとスペインへ旅に出るのだが……。
 とっても言葉少ないヒロイン、モーヴァンと同じく、この作品自体がとても寡黙でした。何故、恋人は自殺したのか? そんな理由はまったく説明なし(ただし、監督によれば、“死後の名声によって伝説的な人物になろうとしたから”らしい)。大事なのは、恋人に自殺されたモーヴァンが、これからをどう生きるか。それだけ。過去は振り返らず。彼女のとる行動は、結構、残酷。でも、それはきっと彼女なりの過去との決別の方法だったのか、自分を保つための方法だったのだと思います。悲嘆に暮れることはできるけれど、そうしたところで人生なんてどうにもならない。きっとモーヴァンはそう考えているのだと思います。そしてそのために静かに行動を起こすのです。その様子が、研ぎ澄まされた演出によって(観る者にも感情移入できないくらいに)描かれているわけですが、それだけ突き放される感じで、正直にいうとちょっと眠くなってしまうような感じ。台詞もなにも少ないですから。そういう意味で好き嫌いの別れる映画な気がしました。出来は素晴らしく良いのですけど。


モーターサイクル・ダイアリーズ
Diarios de Motocicleta
監督:ウォルター・サレス 原作:エルネスト・チェ・ゲバラ 製作総指揮:ロバート・レッドフォード
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ
2004年イギリス+アメリカ/127分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.herald.co.jp/official/m_cycle_diaries/  チラシ 12

 1952年、アルゼンチンのブエノスアイレス。喘息持ちだが活発で情熱的な23歳の医学生エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナは、7歳年上で生化学者の陽気な友人アルベルトとともに、おんぼろバイクの“ポデローサ号”で、南米大陸縦断の旅に出る。
 キューバ革命の指導者で、今なお世界中から敬愛されるカリスマ、チェ・ゲバラが、青年時代の冒険旅行を日記に綴った「モーターサイクル南米旅行日記」を映画化。そこに描かれているのは、あくまでエルネストというひとりの青年の成長と友情の物語であるのだけれど、このエルネストが後のチェ・ゲバラであるということを知っていればこそ、そのある種の普遍的な好青年像にいい意味で期待を裏切られるのではないかと思いました。ただ、僕自身はチェ・ゲバラについて造詣が深いわけではないのですが、やはりゲバラのことを知っていれば知っているほど、この映画には深く感銘を受けられるのではないかなと。ただ、ゲバラを知らなくても、彼が革命という闘争に身を投じることになった、その原点となる体験を飾らずに丁寧に描いてくわけで、一本のロードムービーとしても優れた作品として楽しむことができると思います。描かれているのは50年前の出来事であり、これらの国々の実情が今はどうなっているのかわかりませんが、描かれている根本的な部分は変わらないわけで、出発するときは単に明るい青年だったエルネストが、サン・パブロのハンセン病の隔離施設で最後に語った言葉は、シンプルであるけど胸を打つことは間違いない。


もののけ姫
Princess Mononoke
監督・原作・脚本:宮崎駿
声の出演:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、西村雅彦、上條恒彦、島本須美、美輪明宏、森繁久彌
1997年日本/135分/配給:東宝

 山里の村に住む青年アシタカは、怒り狂い、“タタリ神”となった猪神に死に至る呪いをかけられてしまう。呪いを解く方法を探して西方の地へ旅立ったアシタカは、エボシ御前が率いるタタラの村に辿り着く。タタラの村は鉄を生産して生計を立てていたが、それは同時に神々が住まう森を破壊することであり、森に住まい、山犬に育てらた少女サンは、森の破壊を食い止めようと人間たちに戦いを挑んでいた。彼女を“もののけ姫”と呼ぶ村の人々と、サンの争いを見たアシタカは……。
 人間と自然の共存という「ナウシカ」的な宮崎駿のテーマを描き、日本映画史上最大のヒットとなった作品(後に『千と千尋の神隠し』に興行記録は抜かれる)。人間の腕や首が吹っ飛ぶ描写があったりと、今までになく生々しくはあるが、それだけの力がこもっているようには感じた。そういう意味で今までとちょっと違う雄々しさのような印象を受けましたね。テーマ的にも「ナウシカ」の直系にくるものであるだろうし、見応えはあるし、だからこそ個人的には好き。


モンスター
Monster
監督・脚本:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ
2003年アメリカ/109分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/monster/ チラシ 12

 1986年、フロリダ。ヒッチハイクをして男に体を売る生活に疲れたアイリーンは、有り金の5ドルを使ってから死のうとバーに入るが、そこで出会ったセルビーと意気投合し、一緒に暮らすことに。そして、生活費を稼ぐために再び体を売り始めたアイリーンだったのだが……。
 アメリカ犯罪史上初の女性連続殺人犯として2002年に処刑されたアイリーン・ウォーノスの過酷な人生を描いたドラマ。13キロの増量に特殊メイクでその美貌を投げ棄て、まさに体当たりでアイリーンを演じたシャーリーズ・セロンが、アカデミー賞主演女優賞を獲得した話題作(ついでに言うと製作も自ら担当してる)。まあ、顔を崩すとオスカーが取りやすいという通説があるものの、その通りオスカーを手にすることができてセロンも報われたでしょう。確かに迫力はあった。あの顔が迫ってくるのは怖かったが、それはメイクだけのおかげでもあるまい。監督は今回が初の長編となる女性だが、演出は手堅い印象で、時々非常に鋭さ、激しさも感じられたような気がする。実際のアイリーンは、もっと悲惨な人生を歩んでいたそうだけれども、それに対して同情的になるというよりも、この映画では、アイリーンがそうならざるを得なかったアメリカの社会こそが“モンスター”であるかのように描いている。確かにかわいそうな生い立ちではあるが、だからといって許されるべき行為ではなかったと、この映画は事実通りの結末をアイリーンに与え、偏った描き方になっていないのは好感が持てると思った。でも、とにもかくにもシャーリーズ・セロンの化けっぷりに注目が集まってしまうのは致し方なく、それこそがこの映画が注目される要因でもあるわけだが。
 ところで、セロンはともかくクリスティーナ・リッチ(相変わらずの不安定少女の演じっぷりはお見事なり!)は、一度やせたはずなのに、また太ったね……。これも役作り?


モンスターズ・インク
Monsters, Inc.
監督:ピート・ドクター
声の出演:ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、メアリー・ギブス、スティーブ・ブシェミ
2001年アメリカ/92分/配給:ブエナ・ビスタ
公式サイト http://www.disney.co.jp/movies/monstersinc/ チラシ 1

 「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」のディズニーとピクサーが送るフルCGのファンタジーアニメ。子供たちを怖がらせるのが仕事のモンスターズ株式会社(Monsters, Inc.)。夜な夜なクローゼットの扉から子供部屋へ入り込み、子供たちを怖がらせる。その悲鳴を集めて発電するのがモンスターズ・インクの事業だ。サリーとマイクのコンビは、そんなモンスターズ・インクでトップの成績を誇る怖がらせのプロ。しかし、あるとき、あろうことかサリーは人間の女の子をこちらの世界に連れ込んでしまう。子供たちを怖がらせている彼らの、最も苦手なものは、実は他でもない人間の子供なのだ。そんなモンスターの街に、子供が本当に来てしまったというから街は大混乱。サリーとマイクはなんとか事態を収拾させようとするのだが…。
 ディズニーなだけあって、夢と冒険と優しさに満ちたストーリー。笑いあり涙ありの物語は、とてもわかりやすいし、また、上映時間も短めだからよくまとまってます。でも、もうちょっと長くしてもいいんじゃないかって思うくらい、出来は良かったです。笑える箇所が結構たくさんありますから。見ていて楽しんです。なんの毒気も嫌な現実もない(もちろん嫌味なライバルキャラなんかはいるんだけど、それは問題ではない)、まさに心躍る、そしてちょっぴりホロリとくるファンタジーなのです。また、今更言うまでもないですが、CGの出来もすごいですし。滑らかで軽やかで、それでいてキャラクターに確かな生命力を感じます(大袈裟な表現だけど)。徹底的にリアリティを追求した「ファイナルファンタジー」よりも、こちらのほうがキャラクターの“温度”が伝わってくるものがあります。フルCGのアニメーションなら、こういったファンタジーもののほうが(「FF」もファンタジーか…)いいんじゃないかな、と思いました。良質な作品…って、こういうもののことを言うんだなぁ、と思います。ケチのつけどころがどこにもないんですもの。いい作品です。


モンタナの風に吹かれて
The Horse Whisperer
監督・製作:ロバート・レッドフォード
出演:ロバート・レッドフォード、クリスティン・スコット・トーマス、スカーレット・ヨハンスン
1997年アメリカ/167分/配給:ブエナ・ビスタ

 落馬事故で親友と片足を失った少女グレースは、心身ともに傷つき、堅く心を閉ざす。さらに彼女の愛馬ピルグリムも事故の影響で凶暴な暴れ馬になってしまった。グレースの母アニーは、モンタナに、馬の心を癒すことができる伝説のカウボーイがいることを知り、ピルグリムとグレースをつれてモンタナの牧場にいる、その男・・・トム・ブーカーのもとを訪れた。
 モンタナの大自然の中で、次第に癒されていく少女の心・・・なのだが、この作品はちょっと長い(167分)。最初のほうはかなり雰囲気に引き込まれるのですが、時間がたつにつれて、正直ちょっと飽きがくるというか。ただ、モンタナの大自然は本当にすごくって、夕焼けの草原にたたずむシーンとか広大な草原を馬が走るシーンとか、美しいです。そういうものをカメラに収めただけでも、この映画はいいというか。個人的には少女と馬とカウボーイの関係だけでうまく展開させてほしかったのに、トムとアニーの恋愛関係が絡んできたのははっきりいって余計という他ないです。グレースを完全に主人公にして癒されていく過程をもっと重点的に描いたほうが個人的には感動できたんですけど・・・。でも、大自然のもつ雄大さと偉大さと、のびやかに生きる人間というものを感じさせてくれたことは良かったです