猫が行方不明
Chaucun Chrche son Cat
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ 出演:ギャランス・クラベル
1996年フランス/91分/配給:フランス映画社

 3年ぶりの休暇でバカンスにでかけることになったクロエ。ところが、同居人でゲイのミシェルは男にふられたショックで、クロエの飼い猫グリグリの面倒をみてくれないという。仕方なしに、猫を預かってくれるという噂のマダム・ルネにグリグリを預ける。ところが、バカンスから帰るとグリグリが迷子になっていて…。
 迷子になった猫を探す…というだけの映画なんだけど、これがなんだか素敵な映画。お洒落なフランス映画だけど、いかにも、という感じはなく、ドキュメンタリータッチで結構淡々としています。猫を探すだけ…なんだけど、猫探しに協力してくれる様々な人との交流でクロエもちょっとだけ変わっていき、実はそっちのほうがお話のメインなんでしょうね。その様が、とっても自然にさりげなく描かれているところが好きです。最初は、猫の行方はどうなるんだろう? ということを頭に入れて観ていたのに、実は猫がどこにいったということよりも、クロエと周りの人々を描いているんだ、ということに気がついていく感じが、観ていてなんだか快かったです。
 クロエは、着飾ることに興味がなくて、たまにお洒落をしてみたら嫌な目にあって、後悔するエピソードがあります。それなのに、いつの間にかお洒落なスカートをはくようになっています。そういう自然な流れが実に良いと思いました。かわいいんだ。最初と最後に、ソファーに横になっているクロエが映るけど、その対比がもっとも端的に表していると思います。あ、この子もちょっと変わったんだ…って。彼女を取り巻く人物も魅力的で、僕は優しい同居人がお気に入りです。あんな同居人がいたら面白いかもなぁ〜…って、ちょっと羨ましくなったり。全体的に画面がちょっと粗いような気がしたのは残念ですが(せっかくお洒落な映画なんだから、画面も綺麗ならなぁ)、わざとらしくなく、かつ、キュートで微笑ましい作風はとても好きです。ポップなオープニングも○。「屋根から落ちた猫は心に傷をもっているの」だって。なんか素敵な台詞。


猫の恩返し
The Cat Returns
監督:森田宏幸 企画:宮崎駿
声の出演:池脇千鶴、袴田吉彦、渡辺哲、丹波哲郎
2002年日本/75分/配給:東宝
公式サイト http://www.nekonoongaeshi.com/ チラシ 12

 宮崎駿が「耳をすませば」の姉妹作をと企画し、同作の原作者である柊あおいが書き下ろした「バロン−猫の男爵」を映画化。監督は本作が初となる森田宏幸。ただなんとなく日々を過ごしていくことに退屈さを感じているが、かといって何かをするわけでもない、ごく普通の高校生ハル。ある日、彼女はトラックに轢かれそうになった猫を助けるが、その猫はなんと猫の国の王子様。その恩返しのためにと、猫たちに無理矢理、猫の国へ連れていかれたハル。しかし、日がな一日、ごろごろと過ごすことができる猫の国をちょっと羨ましく思った彼女は、なんとその瞬間から徐々に体が猫になっていってしまったが・・・。
 ジブリ作品特有の、誰がみても、あぁジブリの絵だ、というのから今回は離れて、なんだか今風なキャラクターデザインになっているんですが、それはそれで、明るく軽い感じがあっていいのかも。ジブリ作品が重いというわけではないんですが、これはジブリの作品なんだ、って気構えちゃうところがあったかもしれないと思うのですが、今回は新しい画風のために、それがあまりなかったですね。で、明るくて軽い・・・というのも、上映時間が75分しかないからなので、ついつい軽く感じてしまうのですが。全体的に、高校生が主人公といえども子供向けな印象は受けました。無理に2本立てにして上映時間を短くしなくても、これ1本でもっと作りこんでもよかったんじゃないかと思います。そう思うだけに、ちょっと惜しいな、と思うところもあります。“自分の時間を生きろ”というテーマが、いまいち明確に見えてこない気もしましたが、観終わってみると、この上なく楽しく、嬉しく、元気になれるところは、さすがジブリ作品だな、と。小粒だけど良質。また、無理に2本立てにしなくても・・・とは言いましたが、その同時上映作品「ギブリーズ episode2」も極めて面白いものでした。妙にカタルシスのあるものから、切なく懐かしいものまで、ショートストーリーが全6本。


ビョークの『ネズの木』〜グリム童話より
The Juniper Tree
監督・製作・脚本・編集:ニーツチュカ・キーン
出演:ビョーク・グズムンドゥスドゥティル、ブリンディーズ・ペトラ・ブラガドゥティル、ヴァルディマール・オルンフリーゲンリング、ゲイルロイグ・スンナ・ポルマル
1986年アイスランド/78分/配給:コムストック

 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でカンヌの主演女優賞に輝き、以後映画には出演しないと公言したビョークの映画デビュー作。アイスランドの片田舎で、母親が魔女裁判によって処刑された姉妹カトラとマーギット。荒野を逃げ延びた先で、ある父子に出会う。姉カトラは魔力によって父ヨハンを魅了し後妻になる。彼の子供ヨナスはカトラに懐かないが、マーギットとは次第に姉弟のように仲良くなっていくのだが・・・。
 グリム童話の「ネズの木」をもとにしたストーリーを、モノクロの映像で綴る。魔女や呪文といったものが、ごく当たり前のように存在しているように感じさせ、またグリム童話らしい残酷さと、なんとも言いようのない不思議な雰囲気を醸し出しています。個人的には、エンターテインメント性を排し、かつモノクロで美しい画面構成というのが好みの映画。しかもビョークの歌声と魅力が、アイスランドの荒涼とした自然とこの上なく相まっていて、それこそ現実ではないような神秘的なものすら感じさせてよかったです。


ネバーエンディング・ストーリー
The Neverending Story
監督・脚本:ウォルフガング・ペーターゼン 原作:ミハエル・エンデ 出演:ノア・ハサウェイ
1984年西ドイツ+イギリス/95分/配給:東宝東和

 本が大好きな少年バスチアンが、ある日、いじめっ子に追いかけられて逃げ込んだ古本屋さんで、一冊の本を手にする。それは、架空の世界ファンタージェンを舞台に繰り広げられる冒険物語だが、バスチアンはその本を読んでいるうちに、いつしか不思議な本の世界に入り込んでしまう。
 これぞまさしく、正真正銘のファンタジー映画ともいうべきもので、ストーリーも画面も全てが見事なまでにファンタジーになっていて、架空世界の冒険を見せてくれる。登場人物たちの造詣が印象的。特に、犬の顔したドラゴン、「ファルコン」のキャラクター性も十分にその魅力の助けとなっていると思います。完全にお子様向けな感じも受けますが、それはそれで、この映画の持ち味でしょうね。できるなら、もっと幼い頃に見たかった映画です。そうすれば、もっとワクワク見られたんだろうな。ただし、あの有名なテーマソングは、今でも心躍りますね。

ネバーランド
Finding Neverland
監督:マーク・フォースター
出演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、ラダ・ミッチェル、ジュリー・クリスティー、ダスティン・ホフマン、フレディ・ハイモア
2004年イギリス+アメリカ/100分/配給:東芝エンタテインメント
公式サイト http://www.neverland-movie.jp/ チラシ 1

 1903年、ロンドン。新作が不評で落ち込んでいた劇作家のジェームズ・バリは、散歩に出た公園で若い未亡人シルヴィアと彼女の4人の息子たちと出会う。少年たちはすぐにバリになつくが、三男のピーターはどこか冷めた目でその様子を見ている。ピーターが、父親をなくしてから自分の殻に閉じこもりがちだということを知ったバリは、少年らしさを取り戻してもらおうと空想の楽しさや物語を書くことを彼に勧める。
 永遠の少年の物語「ピーター・パン」の生みの親、ジェームズ・バリがどのようにして「ピーター・パン」の物語を生み出していったのか……その背景を事実に基づきながら(一部脚色あり)描いた感動のヒューマンドラマ。全体を通してとても丁寧に描かれていて、キャラクターの心理描写なんかもしつこすぎず、かといって不足もなくといった感じで、物語は自然に流れるべき方向に流れていくという印象。抑制の効いた演出で、現実の物語でありながらもファンタジックな雰囲気を保っている優しい雰囲気が良かったです。現実を脚色した物語なので、史実とは多少異なるところがあるということだけども、それにしても主人公のバリが、少年の心をもったままの大人であると同時に、一方でやはりどうしようもなく現実では大人であるということが描かれていて(例えば妻との問題とか)、あまり騒ぎ立てたりはしないが、ちゃんとそれぞれに主張があり、苦悩があり、成長がある。役者も良いし物語も良い。押し付けがましい感動ではないが、ちょっと気が緩んでいるとホロリときそう。