ラーゼフォン/多元変奏曲
Rahxephon: Pluralitas Concentio
総監督・原作・脚本:出渕裕 監督・構成:京田知己
声の出演:下野紘、久川綾、坂本真綾、桑島法子
2003年日本/113分/配給:松竹
公式サイト http://www.rahxephon.com/ チラシ 1

 2002年に全26話で放映されたテレビアニメに、30分以上の新作カットを加えて再編集した劇場版。キャラクターの設定が若干違っていたりして、大筋は同じでも細部が微妙にTV版とは異なってます。というのも、こちらは“綾人と遥のラブストーリー”をメインに据えたからであるし、そもそも2時間に収めるためにはそのくらいしないと、ってことで。基本的に綾人と遥が主役の恋物語っていう意味ではわかりやすくはなっていると思います。特に開巻すぐに中学時代の2人が描かれている新作シーンは満足。でも、中盤はやはりTVのつなぎが多く、ストーリーも急ぎ足でそれをたどっているから、かなり苦しく感じました。そもそもこの作品って、詰め込まれた情報量が半端じゃなく、そこが魅力でもあったのですが、2時間の映画じゃそれを再現することも難しいですし。かといって、ぺらぺらと簡単に謎を解き明かしてくれても、これはあくまでTV版を見ていた人に対する補完的な意味合いにはなるけど、果たして劇場版が初見の人にはどれだけのことが伝わるのだろうかと疑問でした。
 綾人と遥に焦点を絞って描いたのは正解だと思うけど、その見せ方に問題ありかも、と思いました。中盤がちょっときついです。この手の総集編物はある程度、こうなることはどうしても予測済みではありますが。設定も違うのだったら、いっそ別物で一から作ってくれたほうがよいのかも(例えば「エスカフローネ」のような)と思いました。個人的にはオリジナルのTV版が好きなので、まあこれでいいですけどね。


ライフ・アクアティック
The Life Aquatic with Steve Zissou
監督・製作・脚本:ウェス・アンダーソン 脚本:ノア・ボーンバッハ 撮影:ロバート・D・イェーマン
出演:ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、マイケル・ガンボン
2005年アメリカ/118分/配給:ブエナビスタ
公式サイト http://www.movies.co.jp/lifeaquatic/ チラシ 1

 海洋学者でドキュメンタリー映画監督でもあるスティーブ・ズィスーと、彼の仲間“チーム・ズィスー”は、新作の撮影に取り掛かる。そこへズィスーの息子と称する青年ネッドや、ズィスーを取材したいという妊娠中の女性記者ジェーンが現れ、彼らも一緒に探査船ベラフォンテ号に乗ることに。しかし、彼らの行く手には様々な困難が待ち受けていて……。
 『天才マックスの世界』『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のウェス・アンダーソン監督が描く人間ドラマ……といったら語弊があるというか、父と息子や夫と妻といった人間関係も描かれているんだけど、相変わらず(いい意味で)ヘンテコで独特の世界が、単純なジャンル分けを許さない。まあ、サスペンスとかでないのは確かだが、くすりと笑える小ネタが満載のコメディでもあり、今回は爆発や銃撃戦まで登場する冒険アクションでもある……!? この人の作品の独特のテンションは、観ている間はなんとなくついていかれないような気がしながらも、鑑賞後に思い返すと、あの非常に細部までこだわって作りこまれたセットやら小道具やらの世界観が、なぜか無性に恋しくなってしまう。そんな不思議な魅力を備えている作品だ。もちろん、分かる人にはすごく分かる世界で、そういう人にはたまらない世界なんだろうけどね……。結構、一部に熱狂的なファンを抱えてる監督ですから。でも、僕も『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』よりこっちのほうが好きかな。可笑しいよ。英語が分かれば、もっと面白いんだろうな。
☆★★★★


ライフ・イズ・ミラクル
Life is a Miracle
監督・製作・脚本・音楽:エミール・クストリッツァ
出演:スラヴコ・スティマチ、ナターシャ・ソラック、ヴク・コスティッチ、ヴェスナ・トリヴァリッチ、アレクサンダル・ベルチェク、ストリボール・クストリッツァ
2004年セルビア=モンテネグロ+フランス/154分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/lifeismiracle/ チラシ 12

 1992年、セルビアの国境に近いボスニアの片田舎に暮らす鉄道技師のルカは、息子ミロシュが軍に招集され、妻は他の男と駆け落ちして家を出てしまう。さらに紛争が激化し、ミロシュが敵の捕虜になってしまったという報せが届くが、そこへルカのもとにはムスリム人の看護師サバーハが捕虜として連れてこられる。ミロシュと交換するつもりで、彼女と一緒に暮らし始めたルカだが……。
 『黒猫・白猫』『アンダーグラウンド』でヨーロッパの映画賞を総なめにしているエミール・クストリッツァの新作。戦争とそれによって引き裂かれる家族という一見すると暗くて重たいバックグラウンドでありながらも、それをとことん突き抜けた明るさとユーモアと破天荒さでもって描いてしまう力強さとハイテンションさは、クストリッツァが絶大な支持を受けつづける由縁だろう……と。彼の故郷であり、テーマでもあるボスニア、サラエボという地域性は確かに唯一無二といってもいいし、かの地の悲しい紛争の歴史を目の当たりにしてこそ、このような映画を撮りつづけているんだろうということで、遠い日本で何も知らずに暮らしている自分のような人間では、どこまで理解できるかという課題もあるけれど。まあ、単純にみても全編にあふれる陽気な音楽と動物たちが楽しい。ただ、さすがにちょっと長いかもしれないなぁ……。
☆☆★★★


羅生門
In the Woods
監督・脚本:黒澤明 脚本:橋本忍 原作:芥川龍之介
出演:三船敏郎、京マチ子、志村喬、森雅之、千秋実、本間文子、上田吉二郎、加東大介
1950年日本/88分/配給:東宝

 ある山中で、貴族の女とお供の侍が盗賊に襲われる。その侍の死体を発見した樵が検非違使のもとへ届け出、事件の目撃者や、盗賊、生き残った女たちによって、事件が吟味される。だが、盗賊と女の言い分は異なり、さらに巫女によって死んだ侍の霊を呼び出して証言を得るが、その内容もまた、2人のそれとは全く異なっており……。
 芥川龍之介の小説「藪の中」を原作に映画化し、ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した黒澤明の代表作。人間の恐ろしさ、底暗さを見事に描いた。徐々に明らかになっていく狂気が薄ら寒ささえ感じさせるが、最後にちょっとした救いもある。ただ、それはあったほうがよかったのか、あるいはなかったほうがいいんじゃないかとも思うんだが、そうすると本当に人間を信じることが難しくなってしまうんだろうか……。もちろん、多少の突っ込みどころはありそうなものなんだけど、それは野暮ってもんでしょう。


ラスト サムライ
The Last Samurai
監督・製作・脚本:エドワード・ズウィック 脚本:ジョン・ローガン、マーシャル・ハースコヴィッツ 製作:トム・クルーズ
出演:トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪、ティモシー・スポール、ビリー・コノリー、トニー・ゴールドウィン、原田眞人
2003年アメリカ/154分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.lastsamurai.jp/ チラシ 12

 南北戦争で活躍し、英雄と称えられたネイサン・オールグレンは、しかし、自らの行った戦いに意義を見出せず、既に自分を見失っていた。しかし彼は、西洋戦術を伝授するためにやってきた明治維新直後の日本で、近代化の波に抗い、最後まで武士として生き抜こうとする男・勝元に出会う。最後まで“侍”であろうとする勝元らと時間をともにするうち、オールグレンはその生き様に失われた何かを取り戻していく。
 ハリウッドが描く日本の時代劇ということで話題の本作、製作者や出演者が口を揃えて自信のほどを述べているけど、確かに、今までのアメリカ映画にあったヘンテコな日本描写はあんまりないと思いました。もちろん、時々は突っ込みたくなるところはありますが、それはストーリー自体に言えることであって、風俗描写なんかは結構キチンとしているかと。そのストーリー自体は至ってわかりやすく、また、感動路線まっしぐら。正直、ここまで感動の超大作を狙っていたとは思っていなかったので、ちょい面食らった感じはしましたが、それでも思ったよりは良くできた作品だと思いました。ただ、どうにもこうにも侍たちがカッコよすぎというか、あんなに完璧に描いてくれちゃっていいんですか?と、ひとりの日本人として疑問に思ったりも…。とにかく侍を美化しすぎっていうか、彼らは一糸乱れず、最後のひとりまで、本当に侍であろうとする。その生き様はかっこよすぎます。もっと、侍たちの中にも、時代の波に翻弄されて戸惑う人々もいてもいいんじゃないかと思ったんですが、彼らの信念は強すぎ。「近代化推進派VS最後の侍たち」という対立の構図が、あまりにもはっきりしているから、まぁ、観ていて迷うことなく、映画に身を委ねれば、感動できるんじゃないかな。ハンス・ジマーの音楽もめちゃくちゃ感動的。トム君もがんばっているし、渡辺謙もほとんど英語の台詞で見所たっぷりの超美味しい役どころ、真田広之は寡黙だがひたすらかっこよく、小雪も台詞が少ないけどこの上なく美しく、色気がある! キャストは文句なしだし、戦闘シーンも迫力あるし、観れば楽しめると思います。好意的に捕らえるならば、トムの目を通して、既に現代の日本人も忘れ去ってしまった、本来の日本人がもっている崇高さを教えられたような気がしますし…。ただ、それにしたって突っ込みたくなっちゃうところはいろいろあるんですけどねー。ラストシーンとかさ。これを観た人はどんな感想をもつか、意見交換してみたいですね。


ラスベガスをやっつけろ
Fear and Loathing in Las Vegas
監督・脚本:テリー・ギリアム 原作:ハンター・S・トンプソン
出演:ジョニー・デップ、ベニチオ・デル・トロ、トビー・マクガイア、キャメロン・ディアス、クリスティーナ・リッチ
1998年アメリカ/118分/配給:東北新社

 映像化不可能といわれていた1971年のハンター・S・トンプソンの同名原作を映画化。一見するとドタバタ劇のようなものだが、コメディというわけでもないドラマ。スポーツジャーナリストのラウル・デュークと弁護士のドクター・ゴンゾーは、バイクレースの取材のため、トランク一杯に「治療薬」と称したあらゆるドラッグを詰め込み、一路ラスベガスへ向かった・・・。とにかく主人公の二人がヤク漬けで、始終ラリっ放し。どちらかが醒めていれば、どちらかがイっちゃってて、それでなんとかやってる二人組。彼らの目的などが結局よくわからずじまい。映像化不可能といわれた原作がどんなものなのかわからないが、それを映像化したからこそ、このよくわからない映画ができたのでしょうか。現実の虚構の区別がわからなくなったり、時間軸の乱れが観ているものを惑わすようなものは、「未来世紀ブラジル」でも存分に発揮してくれたテリー・ギリアムの得意技でしょうし。デューク役ジョニー・デップのイカレタ演技も見所…かな。テリー・ギリアムやジョニー・デップが好きな人は観ておいてよい作品かもしれませんね。それにしても、この作品はあれだけ麻薬だらけなところがちょっと怖いけど。あれをみて興味をもってしまう人がいないかどうか・・・。闇雲に麻薬をだして何を語りたかったのか、ちょっと理解に苦しむ作品ではありますね。まぁ、ラリッた状態を映像にしたかった…と思えば、これだけのものはテリー・ギリアムじゃなきゃ撮れないよ、って気もしますが。
 ついでにいっときますと、トビー・マクガイア、キャメロン・ディアス、クリスティーナ・リッチの出番は少ないです、ホントに。そのへんを期待してみる人はご注意を。でもクリスティーナ・リッチはかわいかった。


ラッシュアワー2
Rush Hour 2
監督:ブレット・ラトナー
出演:ジャッキー・チェン、クリス・タッカー、ジョン・ローン、チャン・ツィイー、ロセリン・サンチェス、ドン・チードル
2001年アメリカ/90分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.rushhour2.net/

 98年に公開されたアクションコメディ「ラッシュアワー」の第2弾。 休暇で香港にいたリーとカーター。その時、アメリカ大使館で爆破事件が発生。 香港警察はリーに捜査を委任し、リーは香港マフィアのボス・タンに目をつける。 しかし、捜査は思わぬ事件へと発展し、カーターも結局は巻き込まれて…。
 アメリカで公開されるや、前作を大きく上回るヒットになった今作。 でも、前作を見てないので、それと比較はできないです。ただ、想像していたよりも アクションも笑いも控えめだったような。やはり、ジェッキー・チェンのアクションと クリス・タッカーのマシンガントークに期待していたのですが、思ったよりも それらが少なかったような。ジャッキーにはもっとばったばったと敵を倒してほしいし、 クリス・タッカーにはもっと早口でまくしたててほしかった(笑)。 まぁ、そうはいっても、笑えるところは笑えますし、 チャン・ツィイーが冷徹な悪役として出演してるのもよいです。それが 結構はまってますしね。ちゃんと北京語しか話さないところがこだわりみたいで 良かったです。彼女の見せ場も、これまた思ったより少なかったような気がしましたけどね。
 そして、おまけのNGシーン集が面白いです(ジャッキー・チェン映画お約束?)。本編よりもこっちのほうが…なんていっちゃいかん。


LOVERS
House of Flying Daggers
監督・製作・脚本:チャン・イーモウ 脚本:リー・フェン、ワン・ビン 衣装:ワダエミ 音楽:梅林茂
出演:金城武、チャン・ツィイー、アンディ・ラウ、ソン・タンタン
2004年中国/120分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.lovers-movie.jp/ チラシ 1

 “飛刀門”と名乗る反政府組織が勢力を増す9世紀中頃の中国。唐王朝の捕史である劉(リウ)と金(ジン)は、遊郭の牡丹坊で一番の売れっ子と言われている盲目の踊り子・小妹(シャオメイ)が、飛刀門一味であるという情報を聞きつけ、彼女を捕らえる。しかし、小妹が飛刀門の秘密を明かさないため、2人は策略を打つ。それは、金が裏切りを装って彼女を連れ出し、飛刀門のアジトを探り出そうという計画だった。早速その計画を実行し、小妹の手を取って逃げ出した金だったのだが……。
 『HERO』に続くチャン・イーモウの武侠アクション大作第2弾。スタッフもほぼ『HERO』と同じで、脚本も初稿の段階では『HERO』でチャン・ツィイーが演じたキャラが主人公になった続編モノだったそうだけど、それが結局は別物になってチャン・ツィイーは残ったと。主演はほかに金城武、アンディ・ラウと、今回も豪華スターの競演。ちなみに最初はアニタ・ムイもキャスティングされていたが、彼女が撮影1週間前に他界したため、彼女への献辞が記されています。『HERO』が“真の英雄とは?”といった命題に対して崇高な精神性をもって解答を導き出したのに対して、今回のテーマはずばり“愛”。そのぶん『HERO』ほどの精神性(?)のようなものはないけど、男女3人の愛と苦悩、策略と運命が華麗なアクションと色彩のものに描かれていて、『HERO』からよりエンターテインメント性が増した感じがしました。追う者と追われる者というプロットも、回想の連続で成り立っていた『HERO』に比べればストーリーの流れとして親しみやすいとは思います。……と、まあ、どうしても『HERO』との比較になってしまうんですが、どちらも甲乙つけがたい作品です。設定やアクションにツッコミどころはあるにして、その荒唐無稽さも魅力のひとつだと思うし。基本的にアクションシーンなんかは、そんな荒唐無稽さの上になりたっているんですが、それでもハリウッドのアクションなんかにはない、人間本来の肉体の美しさや動きのしなやかさなどが際立っていて、『HERO』から続く様式美が貫かれていると思う。ストーリー展開も、『HERO』同様、観客の予想を裏切る部分がちゃんと用意されている。そんなわけで、俳優、アクション、ストーリー、美術などなど見るべきところはたくさんあると思いますし、個人的にはかなり満足。あー、それにしてもチャン・ツィイーのかわいさときたら……。僕も全てを捨ててチャン・ツィイーを連れ出して逃げたいですね(笑)。


ラブストーリー
The Classic
監督・脚本:クァク・ジェヨン
出演:ソン・イェジン、チョ・スンウ、チョ・インソン、イ・ギウ、イ・サンイン
2003年韓国/129分/配給:クロックワークス、メディア・スーツ
公式サイト http://www.klockworx.com/lovestory/ チラシ 12

 演劇部の先輩サンミンに憧れる女子大生ジヘは、同じくサンミンに夢中になっている友人スギョンに頼まれて、彼宛のメールを代筆したことからサンミンと知り合う。そんなある日、ジヘは自宅の押し入れから、母の古い日記と手紙を見つける。そこには、母の初恋の物語が綴られていた。
 昨年『猟奇的な彼女』がヒットしたクァク・ジェヨン監督の最新作。あんまり語れないけど、『猟奇的な彼女』でもそうだったように、意外な展開つき。パターンとしては似ているかもしれないんで、僕も最後のほうでは何かあるだろうと思ってみていましたけど、なるほどねって感じ。それはともかくとして、こういうのを撮れるこの監督って根っからのロマンチスト? あるいは、わざとそういう風に見せているのかもしれないけれど、根底にはそういうものがあるはず。本作で描かれる母の恋は、(今時の子供らはどうなのかしらんが)若者の甘酸っぱい恋を見事に再現。ただただ好きな男の子、女の子と一緒にいるのが幸せな日々。なんだかこっちも懐かしい気持ちが呼び覚まされるような純愛物語。やがて時代の流れや互いの家の違いから、すれ違うようになる母の恋は哀しみにかわる。そして、現代の娘のほうの恋は……というところは、見てのお楽しみとして、例えベタな展開だとしても……いや今時描かれなそうなクラシカルな恋だからこそ(原題も「The Classic」)、思わずググッと引き込まれてしまいます。また、『猟奇的〜』ほどではないにしても、ところどころにコミカルなギャグで笑いを忘れないところも良し。ただ、時々カットが長すぎる傾向があるんで、人によってはしつこく感じてしまうかもしれませんが。また、『猟奇的〜』も本作も、結果的に似通った部分もなきにしもあらずなので、次回作はどうでるのか注目したいところです。でも、とりあえず期待通りの見ごたえはあって僕は好きだし、主演のソン・イェジンもかなり好み。


ランド・オブ・プレンティ
Land of Plenty
監督・原案・脚本:ヴィム・ヴェンダース 原案:スコット・デリクソン 脚本:マイケル・メレディス
撮影:フランツ・ラスティグ 音楽:トム&ナクト
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ジョン・ディール、ウェンデル・ピアース、リチャード・エドソン、バート・ヤング、ショーン・トーブ
2004年アメリカ+ドイツ/124分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://landofplenty.jp/

 アメリカで生まれ、アフリカで育ったラナは、伯父に会うために10年ぶりにアメリカへ戻ってくる。伯父ポールはベトナム戦争で経験した恐怖が9・11テロによって再び呼び覚まされ、国を守るためとひとりで毎日ロサンゼルスの街をパトロールしてまわっていた……。
 ヴェンダースが9・11以後のアメリカに対する思いを描いたドラマ。新作『アメリカ,家族のいる風景』の撮影中断の間に、衝動にかられてわずか16日間で撮りあげたそうだ。それだけにストーリーはやや冗長というか散漫な気もしなくはないが、テーマは非常にわかりやすかった。アメリカ人でありながら、長らく外側からアメリカを見ていた主人公の少女は、ドイツ人でありながらもアメリカを見つめ続けたヴェンダースに重なるわけで、頑なにアメリカを守ろうとする伯父との対比はわかりやすいくらい。テロリストを殲滅せよと声高に叫び戦争に繰り出すアメリカに、ヴェンダースは「周りの声に耳を傾けよう」と促すが、そこにあるのは批判の精神ではなく、むしろ今のアメリカを憂う気持ちあってこそだろう。ラナ役のミシェル・ウィリアムズが、カワイイってだけでなくて、強さと優しさを秘めた女性像を嫌味なく、ごく自然に体現していて非常によかったです。
☆☆★★★


ラン・ローラ・ラン
Lola Rennt
監督・脚本・音楽:トム・ティクヴァ
出演:フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライブトロイ
1998年ドイツ/81分/配給:コムストック、パンドラ

 ある日の11時40分、ローラの元に恋人マニから電話がかかってくる。マニは麻薬を売って得たボスのお金を全てなくしてしまい、12時までにとりもどさなければ殺されると、ローラに助けを求める。ローラは20分間で10万マルクという大金を作るため、走り出した!
 とにかく走る、走る。たった20分間しかないできごとを80分で描くのか? と思ったら、なるほど、こういうことかと。つまり20分×3。これは巧いと思いました。そして微妙に異なるそれぞれの20分。アイディアとそれをまとめあげた監督のセンスが勝利した映画ですね。面白かったのは、ローラがすれ違った人の人生をあっという間にみせてしまうところでしょうか。音楽のテンポがとてもよくて、全編を通して得られる疾走感にぴったり。ただ、それにしても個人的には80分は長いという印象。もっと短くしちゃっていいんじゃないかなぁ……と思いました。そうなると劇場映画とはまた異なってくるんでしょうが、どうせ実験的な意味合いの強いフィルムですし。