Ray/レイ
Ray
監督・製作:テイラー・ハックフォード 脚本:ジェームズ・L・ホワイト
出演:ジェイミー・フォックス、ケリー・ワシントン、レジーナ・キング、クリフトン・パウエル、ハリー・レニックス
2004年アメリカ/152分/配給:UIP
公式サイト http://www.ray-movie.jp/ チラシ 12

 1948年、17歳のレイ・チャールズ・ロビンソンは、南部からバスに乗ってシアトルへ向かった。ジョージア州の貧しい母子家庭で育ったレイは、7歳のときに弟が目の前で溺死し、何もできなかった自責の念と緑内障が重なって視力を失っていたが、気丈な母親に支えられ成長していった。幼い頃、近所の老人に教えてもらったピアノで成功しようとシアトルに出たレイは、ほどなくして才能を認められ、ステージやツアーを次々と成功させていくが……。
 2004年6月10日に永眠した“ソウルの神様”レイ・チャールズの人生を描いた感動の伝記映画。監督のテイラー・ハックフォードが、15年に渡るレイ・チャールズ本人との親交の中で、本人へのインタビューなどからストーリーを仕上げ、映画化に至ったが、しかし、なんという皮肉か映画の完成間近にレイ・チャールズは他界してしまう。主演のジェイミー・フォックスも、レイ・チャールズ本人の指名でこの役を演じることになったというが、まさにレイ・チャールズ本人の魂が乗り移ったかのようななりきりぶりは、現時点(2004年12月)でアカデミー賞最有力候補と言われているが、彼以外にはありえないだろう。僕自身はそれほどレイ・チャールズのファンではなかったけど少しは聞いているし、名曲と疑わない楽曲が誕生した裏に、このような苦しみがあったのかと思えば、感動もしてくるというもの。本当にどうしてこのような素晴らしいフィルムの完成を待たずして本人が他界してしまったのか……それが悔やまれるというか残念でならないのだが、一方で、それだからこそより感慨深くもあるのは確か。レイ・チャールズは、ジェイミー・フォックスだけでなく、この映画そのものに魂を与えたといってもいいだろうと思う。


レイン
Rain
監督・原案・脚本・編集:オキサイド・パン、ダニー・パン
出演:パワリット・モングコンビシット、プリムシニー・ラタナソパァー、ピセーク・インタラカンチット、パタラワリン・ティムクン
2000年タイ/106分/配給:クロックワークス
公式サイト http://www.klockworx.com/rain/

 タイ、バンコクで生まれつき耳の聞こえないコンは、殺し屋のジョーに拾われ、自身も殺し屋として育てられる。そしてジョーとコンビで仕事をする日々だったが、ジョーは利き腕を怪我してリタイアする。そんな時、熱を出したコンは薬を求めて薬局を訪れるが、そこで働く少女ファンに惹かれる。
 香港生まれの双子兄弟オキサイド&ダニー・パンの初兄弟監督作。評判になっているとおり、映像や編集がスタイリッシュで見ごたえあり。ただ、まだまだ低予算な感じでちょっと粗いんですけど、これがもうちょっと(いい意味で)お金かけられれば、さらに磨きがかかるんじゃないかなぁ…と思ったり。ただ、殺し屋にしては恋愛部分があまりにスウィートすぎるような気はしましたけど、逆にコンという青年の生来の優しさが垣間見えてよかったかな。エンディングも含めてね。


レオン
Leon
監督・脚本:リュック・ベッソン
出演:ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン
1994年フランス+アメリカ/133分(オリジナル:111分)/配給:日本ヘラルド映画

 一匹狼の殺し屋レオンと、家族を殺された少女マチルダの微妙な関係を描くドラマ。 劇場公開時のものに20分のシーンを足したものが「完全版」であり、この完全版がその名の通りの この映画の真の姿だろう。殺し屋が主人公といっても、派手なアクションが主体ではなく、 あくまでレオンやマチルダの心の動きが主体のヒューマン・ドラマだと思います。 ジャン・レノはいうに及ばす、もう一人の主役ナタリー・ポートマンの演技も少女とは思えぬ存在感を発揮し、彼らの敵役たるゲイリー・オールドマンの切れた悪役ぶりがドラマを盛り立てる。 この三人がまさに絶妙というべきか、最高の配役で、各々がそれぞれの役と個性を発揮して いることで、この映画をより一層完成度の高いものにしています。


レクイエム・フォー・ドリーム
Requiem for a Dream
監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー 原作・脚本:ヒューバート・セルビー・Jr 音楽:クリント・マンセル
出演:エレン・バースティン、ジャレット・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ
2000年アメリカ/102分/配給:ザナドゥー

 孤独な未亡人サラは、ある日、大好きなテレビのクイズ番組から出演依頼を受け、思い出の赤いワンピースを着て出場するためにダイエットに励む。一方、息子のハリーは友人のタイロンから麻薬の密売を持ちかけられ、ハリーはドラッグ欲しさと恋人マリオンのためにもその話に乗るのだが……。
 それぞれに孤独を抱えた男女がドラッグに溺れて次第に凋落していく様を、エッヂの効いた映像で描く。監督曰く「モンスターの出ないホラー映画」だそうだが、なるほど、一時はうまくいきそうになった各々の人生がいつの間にか徐々に狂っていく様や、その末に訪れる結末は、下手なホラー映画よりも空恐ろしいものがあるかもしれない。希望を持つことが絶望の始まり……というのは言い過ぎかもしれないが、そんなやるせなさに襲われそうだ。ただ、希望をかなえるために始めたことが、いつの間にか当人を陥れてしまったということなのだが。


レザボア・ドッグス
Reservoir Dogs
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ハーベイ・カイテル、ティム・ロス、スティーブ・ブシェミ、マイケル・マドセン、クリス・ペン、クエンティン・タランティーノ
1991年アメリカ/102分/配給:ヘラルド・エース

 宝石店の襲撃に失敗した強盗たちが、落ち合った倉庫の中で繰り広げる裏切り者探しの確執を描く。タランティーノのデビュー作。豪華な俳優陣も見所ですが、時間が入り混じる構成と、様々な登場人物の視点から見る物語は面白いです。これをさらに進化させたものが『パルプ・フィクション』といった感じで、その意味でいうとプレ『パルプ・フィクション』(?)。これを観てからあっちを観ると、より楽しいかも。相変わらずのダラダラ会話がなぜか楽しくて(でも、途中ちょっと飽きたかも…)、でも最後は切ない…。


レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
Once Upon a Time in Mexico
監督・製作・脚本・撮影・編集・音楽・プロダクションデザイン:クエンティン・タランティーノ
出演:アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、ジョニー・デップ、ミッキー・ローク、エヴァ・メンデス、ウィレム・デフォー
2003年アメリカ/102分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.sonypictures.jp/mexico/ チラシ 1

 ギターケースを抱えた伝説のガンマン、エル・マリアッチ。彼は愛する妻子を失い、今は失意の中で静かに暮らしていた。しかし今、メキシコでは軍部のマルケス将軍と麻薬王バリロによって密かにクーデター計画が進行していた。それを鎮圧にしにやってきたCIA捜査官サンズは、マリアッチに2人の暗殺を依頼する。マルケス将軍こそ、マリアッチの妻子を奪った憎き仇敵だったのだ……。
 ロバート・ロドリゲスの出世作『エル・マリアッチ』『デスペラード』に続くシリーズ第3作。ただし、これらは登場人物の名前などは一緒だが、キャラクターの設定は微妙に異なっていて話に連続性はなし。それぞれ単独で楽しめるようになっています。セルジオ・レオーネの「名無しのガンマン」3部作のようなものだとか。個人的に『デスペラード』は大変好きな作品なんだけど、今回はキャラクターが増えすぎてやや収集がついていない様子。有名俳優がたくさん揃ったことで、それぞれに見せ場が必要だったのかもしれないけど、もうちょっとキャラは整理したほうがよかったんじゃないかという思います。エヴァ・メンデスの役とか必要か? マリアッチの活躍がかなり散漫になってしまった印象です。アクションシーンは相変わらずいいのに、そのつなぎ目があっちこっちにいってしまって、テンポが殺されてしまっているような気がしました。バカバカしくもカッコイイのがロドリゲスのいいとこなんだけど、案外シリアスに走ってしまったような気もしましたし。やっぱファンとしてはマリアッチの活躍が物足りないというのが正直なところ。


レッド プラネット
Red Planet
監督:アンソニー・ホフマン
出演:ヴァル・キリマー、キャリー=アン・モス、トム・サイズモア、ベンジャミン・ブラッド、サイモン・ベイカー、テレンス・スタンプ
2000年アメリカ/106分/配給:ワーナー・ブラザース映画

 2050年。火星に藻類を送り込み、酸素を作り出す、火星地球化計画(テラ・フォーミング)が 順調に進んでいたが、ある時、原因不明の酸素量低下が発生。それを調査しに、マーズ1号が 旅立つ。火星に近づいたとき、太陽フレアによってマーズ1号は破損。クルーは、ボーマン船長を 船に残し、火星に降り立つのだが・・・。
 SFXがいい感じだし、宇宙船やロボットなどのメカ類もなかなかよくできている。特に、ロボットの動きが良かったです。滑らかだし、殺人マシンとしての、妙な怖さが動きから伝わってくる・・・んだけど、それもちょっと薄い。全体的にもっと盛り上がってくれてもいいんじゃないかと思うのだが。これといったオリジナリティがあまり感じられませんでした。結局あれは何だったのだろう? というのもあるし。 火星の赤い雰囲気はよく出てますよ。なんとなく「ミッション・トゥ・マーズ」と比べてみてしまうなぁ・・。それに、宇宙船の船長で“ボーマン”って名前は、どうよ? 「2001年宇宙の旅」のボウマン船長が有名すぎるのになぁ。僕はSF好きなので、そういう雰囲気を味わうなら、この映画もそれなりに良いが、ストーリーやドラマとしては、どうもいまいちといったところでしょうか。


■2005年5月3日公開■
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events
監督:ブラッド・シルバーリング 脚本:ロバート・ゴードン 原作:レモニー・スニケット
撮影:エマニュエル・ルベッキ 音楽:トーマス・ニューマン
出演:ジム・キャリー、エミリー・ブラウニング、リアム・エイケン、カーラ&シェルビー・ホフマン、メリル・ストリープ、ジュード・ロウ
2004年アメリカ/109分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://fushiawase.jp/ チラシ 12

 発明の天才で14歳の長女ヴァイオレット、11歳であらゆる本を読破し、知識をものにしている長男クラウス、そして4本しか生えていない歯でなんでも噛むことが大好きな1歳の次女サニー。そんあボードレール家3姉弟妹は、ある日突然、火事で両親も住む家もなくしてしまい、後見人のオラフ伯爵のもとに連れられる。しかし、性悪な伯爵は彼らの膨大な遺産を手に入れようと企てて……。
 原作者レモニー・スニケット自らの「ハッピーエンドが好きな方には、本書はおすすめできない」という書き出しで有名な人気ファンタジー小説「世にも不幸せな物語」シリーズ第1弾「最悪のはじまり」を映画化。原作は、欧米では「ハリポタ」に迫る人気ぶりだそうだけど、日本ではいまいち。僕も第1巻は読んでいましたが、発想はユーモアだけど、「ハリポタ」に比べると完全に子ども向きな印象で、大人が読むには少々物足りない。「ハリポタ」の場合は原作を映画に収めきれるのか!? という心配があるけど、本作は逆。映画にするには内容が薄いんじゃない? と思っていたら、映画は結構脚色されていて、最初と最後以外はかなりオリジナルな展開。その味付けも面白いし、プロダクションや美術もお見事(アカデミー賞ノミネートも納得)。ただ、話の展開がやや平板で、里親(?)のもとを訪れた3人に伯爵の邪魔が入り、困難が訪れるがなんとか脱して、また次……という繰り返しな印象があって、終盤にかけて盛り上がっていく感じがあまりしない。原作を読んでいると、その比較などで十分に楽しめる出来なんだけど、そうでない人にはどうなんでしょうか? キャストは皆はまり役で、ジム・キャリーもしかりだが、子役たちが素晴らしく、いかにも薄幸そうな表情に加えて、演技力も「ハリポタ」3人組より上じゃないかな? めちゃくちゃ凝ってるエンドロードなど最初から最後まで、個人的にはかなり楽しめた作品で、ファンタジー映画としてはかなり秀作かと。