理想の結婚
An Ideal Husband
監督・脚本:オリヴァー・パーカー 原作:オスカー・ワイルド
出演:ケイト・ブランシェット、ジュリアン・ムーア、ルパード・エヴェレット、ジェレミー・ノーサム、ミニー・ドライヴァー
1999年イギリス/100分/

 1895年のイギリス。政治家ロバートとその妻ガートルードは、誰もが認める理想の 夫婦だった。しかし、ロバートの過去を知る女性が現れて…。
 理想の夫をめぐる、女たちの物語。シリアスな雰囲気も漂せているけど、そんなに重くはない。 基本的にはちょっとしたコメディ的要素もは含んだラブロマンスという感じ。 序盤のころ登場人物の区別がつきにくくてわかりづらかったけど、主な5人の関係が メインなわけで、そこが微妙に絡み合って面白く、最後に見事に集約されるところが 良いです。理想っていうのは、あくまで理想でしかない。現実は、そんなに綺麗なこと ばかりじゃないよ…ってことですね。


理想の女
A Good Woman
監督:マイク・バーカー 原作:オスカー・ワイルド
出演:スカーレット・ヨハンスン、ヘレン・ハント、トム・ウィルキンソン
2004年イギリス+スペイン+イタリア+アメリカ+ルクセンブルグ/97分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/goodwoman/ チラシ 1

 ニューヨーク社交界の若き華として知られるメグ・ウィンダミアは、夫のロバートとともに南イタリアの避暑地へバカンスに訪れ、そこで、同じくアメリカから渡ってきた女性アーリンと出会う。アーリンは奔放な恋愛遍歴を重ね、周囲から常に好奇の目で見られていたが、彼女はその生き方を変えようとはしないのだった。
 オスカー・ワイルドの戯曲「ウィンダミア卿夫人の扇」を映画化。ただし、時代設定や舞台となる場所は異なる。イタリアの街並みは非常に美しくて(ロケ地は世界遺産に指定されている街だそうです)、そこで繰り広げられる対照的な2人の女性のドラマも簡潔でいてツボは押させえているから、観ればそれなりに楽しめるが、正直それだけで終わってしまう感じもした。イタリアが舞台で主人公はアメリカ人でも、オスカー・ワイルド原作というだけで、英国貴族的な佇まいがうかがえるのは、それだけオスカー・ワイルドの原作が優れているからか、あるいはそれを脚色してもきちんと雰囲気を損なわずに伝える監督の演出手腕によるものか。ちなみにタイトルは『理想の女(ひと)』と読む。
☆☆☆★★


リターナー
Returner
監督・脚本・VFX:山崎貴 出演:金城武、鈴木杏、岸谷五朗、樹木希林
2002年日本/116分/配給:東宝
公式サイト http://www.returner.net/ チラシ 12

 闇の世界で行われる取引を壊し、その現金を奪って依頼人に返却する“リターナー”ミヤモト。彼はある日、大陸からさらわれてきた子供たちが売買される現場を襲う。しかし、その取引を仕切っていたのは、彼の仇敵である溝口だった。怒りに燃えるミヤモトは溝口を追い詰めるが、そこに突如一人の少女が現われ、気を取られた瞬間に溝口に逃げられてしまう。その少女ミリは、ミヤモトの腕を見込んで頼みごとをもちかけてくるのだが・・・。
 「ジョブナイル」でそのVFXが高く評価された山崎貴監督の最新作。予告編の段階から、「これってマトリックス?」と思うほどのアクションをみせており、期待していたのですが、なかなかどうして、その期待を裏切らずに楽しませてくれました。過去、これほどのSFアクションエンターテインメントな作品が、邦画としてあったでしょうか? この作品は、その点で評価に値すべきでしょう。ハリウッドのものであれば、前述した「マトリックス」を始めとして沢山あるし、最近はフランス映画でも韓国映画でも、こうしたアクションを効かせた娯楽大作が生まれている中、ついに日本映画からもそれが生まれたのだと嬉しく思います。アクションだけでなく、ストーリーや脚本もそつなくまとまっていますし(台詞はやや漫画っぽいところも見受けられたんですけど、設定やら作品自体が、コミックやゲームの影響がありそうな感じですし)、キャストも良いです。特に主要人物がみんなハマッていてよかったです。主演2人は言うに及ばず(金城武は台詞がやや棒読み気味だった気がしますが、外見がはまってるから良しでしょ。この映画の場合)、悪役に徹した岸谷五朗も良し。ストーリー展開はわかりやすいし、所々につっこみどころがなきにしもあらずですが、ラストの展開には、ちょっとやられました。一本取られた感じです。欲をいえば、もっと“マトリックス級アクション”(こういう表現しか見当たりませんが)を見せてほしかったとは思いますけどね。何はともあれ、邦画としてこれだけの娯楽大作が生まれたのだということに、高く評価したいと思います。もっと複雑に大人向けなストーリー展開でもいいんじゃないかと思ったのですが、単純に観て楽しめる。ただそれだけですけど、それだけのことがなかなか難しいものなんですよね。とりあえず、続編あるでしょ? ないの? いや、たぶん続編ありそうな雰囲気がしますけど、どうなんでしょう。


リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
The Assassination of Richard Nixon
監督・脚本:ニルス・ミュラー 脚本:ケビン・ケネディ 撮影:エマニュエル・ルベッキ
出演:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ドン・チードル、ジャック・トンプソン、マイケル・ウィンコット
2004年アメリカ/97分/配給:ワイズポリシー、アートポート
公式サイト http://www.wisepolicy.com/the_assassination_of_richard_nixon/ チラシ 12

 善良だが小心者のサム・ビックは、愛する妻に去られ、事務製品のセールスマンとして就職するも思うように成績をあげられず、思い悩む日々を送っていた。あらゆることに失敗し、社会に認められないサムは、折りしもウォーターゲート事件で揺れ動くリチャード・ニクソン大統領に対し、歪んだ社会システムの諸悪の根源を見出す。そして彼は、ある計画を思いつく。それは、民間機をハイジャックしてホワイトハウスに墜落させることだった……。
 あまりに繊細でナイーブすぎるがゆえに、社会で成功することができず、かといってやはりその弱さから一念発起することもできない哀しい男が至った結論は、己ではなく社会そのものへのささやかだが恐ろしい反抗だった。この男の物語は約30年前のものだが、現代の社会にも十分に通じるテーマ性を持つ。社会に出て働いている人なら、誰もが一度ならず思ったことだろう。優しすぎる人間は……優しいだけがとりえの人間は、資本主義の社会で成功することは困難なのだ。サムの場合は心が弱すぎたが、果たして何が悪くて何が正しいのか? この映画はそのこと自体をテーマにしているわけではないが、社会のシステムのなかでもがきながら、力及ばずに滅んだ男の哀切を、ショーン・ペンが見事に体現。彼なくしては、この映画の成功はないだろう。改めてその演技力に感服。
☆☆★★★


リトル・ヴォイス
Little Voice
監督・脚本:マーク・ハーマン 
出演:ジェーン・ホロックス、ユアン・マクレガー、マイケル・ケイン
1998年イギリス/99分/配給:アスミック・エース

 伝書鳩を愛する無口な青年ビリーは、電話配線の工事で訪れた家で、 自閉症気味で自分の殻に閉じこもっている少女に出会う。 彼女は人を極端にさけているが、慕っていた亡き父が こよなく愛した歌とレコードのことは心から愛していた。 そして、彼女は素晴らしい歌声の持ち主で、LittleVoice―LV(エルヴィ)― と呼ばれていた。決して人前で歌わないLVだが、母親が家に連れ込んでいた 自称プロモーターのレイが、偶然、歌声を聴き、彼女にステージに立つよう 説得する・・・。
 イギリスの小さな街を舞台にして、歌と亡き父の愛情のみを支えにして いた少女が、同じ無口な青年との交流などを通して、外の世界へ 飛び立つまでを描く。彼女の異常なまでのかたくなさに、しばらくは じれったくも感じるが、歌を歌うシーンと、彼女が母親に対して 感情を吐露するシーンは、とても印象的で、かつグッときました。 もっと父親と彼女の過去のことを少しでも描いてくれれば、とも 思いましたが、それはそれでなくてもいいものなのかしら。 この作品は、もとはミュージカルだそうで、主演のジェーン・ホロックスは そちらと同じ。また、やはり彼女の虹色の歌声が、この映画の 見所のひとつでもあることは、間違いないでしょう。あれだけの 声を全て彼女自身が演じているそうですから、驚きですね。


リトル・ダンサー
Billy Elliot
監督:スティーブン・ダルドリー
出演:ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲアリー・ルイス、ジーン・ヘイウッド、ステュアート・ウェルズ、アダム・クーパー
2000年イギリス/111分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.herald.co.jp/movies/little-dancer/ チラシ 1

 1984年、炭鉱ストライキで失業中の父と兄をもつ少年ビリーは、ボクシングやレスリングで強い男に育ってほしいという厳格な父の望みとは裏腹に、クラシック・バレエに惹かれていった。女の子に混じってコッソリ練習する毎日だが、ある日、父に見つかってしまい・・・。
 バレエを夢見る少年の、ひたむきな姿を描いたヒューマン・ドラマ。 長く続くストライキで町全体が重苦しい雰囲気をした中で、夢を見つけて、一生懸命になるビリーの姿は 見ていてとてもすがすがしい。ところどころに笑えるシーンがちりばめられつつも、 芯の通ったドラマとして出来上がっている。当時イギリスで流行した、グラム・ロックの 名曲が随所で効果的にBGMとして使われているのも印象的で、ビリーがバレエに 惹かれ、懸命に練習して喜びを覚え、また、時には壁にぶつかって苦悩する… というシーンが、あたかも本物のバレエのように、静と動といったテンポを 映画に与えているような気がしました。ストーリーはもちろん、登場人物やそれを演じる役者陣もすばらしく、ジェイミーのダンスを観ていると、感情の噴出をまさに体で表現するってこういうことか、と感じるくらいだし、父親役ゲアリー・ルイスのいい頑固親父っぷり! さらにビリーの親友マイケル(演じるはステュアート・ウェルズ)もすっごく良いです。ビリー君ってば、すごくマイケルに優しいんだもの。そういうところも男としてカッコイイ! とってもほほえましく、でも感動的で、前向きで・・・。観終るとこっちも踊りだしたくなってしまう傑作です。


リトル・ニッキー
Little Nicky
監督・脚本:スティーブン・ブリル 製作・脚本:アダム・サンドラー
出演:アダム・サンドラー、ハーヴェイ・カイテル、パトリシア・アークエット、リス・エヴァンス、オジー・オズボーン
2000年アメリカ/93分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.nicky-jp.com/

 ニッキーは地獄の魔王サタンの三男。冷酷な長男、暴れん坊の次男に続く・・・とっても心優しい悪魔。 父である魔王は在位一万年を向かえ、次の魔王が即位する時がきたのだが、三人の息子はまだ未熟。 そこで次の一万年も在位するとしたから、二人の兄は不満が爆発。人間界を地獄に変えてやろうと 飛び出してしまった。彼らを止められるのはニッキーしかいない! でも人間界を知らない彼に 案内役としてつけられたビーフィーは・・・犬だった。
 最新のSFXを駆使して、地獄の様子や住人を表現。 犬のビーフィーも、人間の言葉を喋るのだが、ちゃんと口がそれにあわせて動いているところが すごい。本当に犬が演技してるというふうに見える。コメディ映画なので、深い意味はなく、 ところどころで笑える箇所もあるので、コメディとしてはよいだろう。ただし、全体的に ビジュアル面などでアクが強くて、少し騒々しいと感じなくもない(BGMもヘビメタやロックが多い)。


リトル・プリンセス
A Little Princess
監督:アルフォンソ・キュアロン 原作:フランシス・ホジソン・バーネット
出演:リーセル・マシューズ、エレノア・ブロン、リーアム・カニンガム
1995年アメリカ/97分/配給:ワーナー・ブラザース映画

 母親を亡くし、愛情深い父とインドで暮らしていたセーラだが、父が戦地に赴くことになり、セーラはニューヨークの厳格な寄宿学校で生活することになった。インドで育った奔放な想像力と天真爛漫な性格で人気者になるセーラだったが、ある日、父が戦死したという知らせが届く。
 ご存知、バーネット原作の世界的名作「小公女」の映画化。映画化にあたって、ずいぶんと省かれている部分はあるし、何よりお父さんの設定が微妙に異なっていて(軍人なのは変わらないけど)、それによって結末まで原作と違っています。でも、このアレンジは結構好き。考えてみれば、原作よりもハッピーじゃないか? と思うのですが。ただ、時間が短くて、もう少し、“近くにいるのにすれ違う2人”とかをじらして描いてほしかったし、お隣のインド人にしても、説明が少なくて、原作読んでいない人(しかも子供向けでしょ? この映画)にはわかりづらいかも。学校のセットとか、セーラの空想世界の映像なんかは、すごくきれいだし、お話もやっぱり好きです。それは原作の良さなんですけど。2年前の「秘密の花園」と比べると、あちらのほうが“より自然な映像の美しさ”みたいなのを感じますけど、こっちも悪くありません。そして毎度のことですが、こういう映画には大切な子役のキャスティングもうまいですし。


■2006年3月4日公開■
リトル・ランナー
Saint Ralph
監督・脚本:マイケル・マッゴーワン
出演:アダム・ブッチャー、キャンベル・スコット、ゴードン・ピンセット、タマラ・ホープ、ショーナ・マクドナルド
2004年カナダ/98分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.little-runner.jp/

 1953年、カナダのハミルトンにあるカトリックスの学校に通う14歳のラルフは、病気で入院していた母が昏睡状態に陥ってしまう。「奇跡でも起きない限り目覚めない」という医者の言葉を聞いたラルフは、半年後に開催されるボストンマラソンで、史上最年少で優勝するという奇跡を起こすと決意するが。
 母親のためにひたむきに頑張る少年の話で、タイトルもあらかさまに『リトル・ダンサー』を意識していることからもわかるように、要はそういう話。この手の話は以下に主人公の少年(または少女)に共感し、彼らを応援したくなるかという点が重要だと思うのだけど、残念ながら今回はあまりそう思えず。というのも、この主人公はよくいえばユーモラスなんだけど、それがどうも真剣味に欠けるようにみえてしまって、言っちゃ悪いが顔の造形もあまりよろしくないので、口ではお母さんのためと言ってるわりに、本当に真剣にそれのために行動しているのかがいまいち伝わってこない。で、そのままクライマックスのボストンマラソンになだれ込むわけだが、それまでコミカルに描いていたのがこのラスト30分になっていきなり感動的な演出にされても、なんだかなぁ……と。もちろん話自体は悪くないんですけどねぇ……。
☆☆☆★★


リバティーン
The Libertine
監督:ローレンス・ダンモア 原作・脚本:スティーブン・ジェフリーズ
撮影:アレクサンダー・メルマン 音楽:マイケル・ナイマン
出演:ジョニー・デップ、サマンサ・モートン、ジョン・マルコヴィッチ、ロザムンド・パイク
2004年イギリス/110分/配給:メディア・スーツ
公式サイト http://www.libertine.jp/

 1660年代、イギリス。権力をこき下ろしたり卑猥な内容の作風で、世間から眉をひそめられている第2代ロチェスター伯爵=ジョン・ウィルモットは、ある日、観客のブーイングを浴びていた舞台女優エリザベス・バリーに目を留め、彼女に隠された才能を見出したウィルモットは、演技指導を申し出るが……。
 先鋭的な作風で“放蕩詩人”と呼ばれたジョン・ウィルモットの半生を映画化。サド侯爵にも通じるのかなと。リアリティを重視したからか全体的に暗い色調で、それゆえかカメラが始終寄り気味なのが気になったところだが……。美顔をわざと崩すあたり、ジョニー・デップはあいかわらずこういう役をやらせるとハマる。しかし、まあ、天才と呼ばれる人のこうした振る舞いは凡人の自分には理解しがたし。クライマックスにあたる舞台劇(巨根祭?)は必見か。
☆☆★★★


リプリー
The Talented Mr. Ripley
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ 原作:パトリシア・ハイスミス
出演:マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ジュード・ロウ、ケイト・ブランシェット
1999年アメリカ/140分/配給:松竹

 アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」(1960)として映画化された、パトリシア・ハイスミスの原作を再映画化。造船所を営む富豪のグリーンリーフ氏から、ヨーロッパで遊び暮らす息子ディッキーを連れ戻すように頼まれたトム・リプリー。イタリアのディッキーを訪れたトムは、ディッキーの魅力に次第に惹かれていき、彼と彼の恋人マージとの生活に溶け込んでいくのだが・・。
 かつての「太陽がいっぱい」があまりにも有名であるため、それとの比較は避けられないが、僕はそちらを見たことがないので、こちらのほうを単体で見てみると、なかなか良くできた作品であると思います。サスペンスの要素も持ちつつ、語られるべきテーマはトム・リプリーの内面。自分も輝いてみたい・・・と願う人間の心理。しかし、何故そう思うようになったのかというような、リプリーの変化といいましょうか、そういったものが、いまいちわかりにくい気がしました。その辺をもっとちゃんと描いてほしかったなぁ・・と。その割に後半が 長くてちょっと疲れる。マット・デイモンの演技力に助けられているけども。


リリィ
La Petite Lili
監督・脚本:クロード・ミレール
出演:リュディヴィーヌ・サニエ、ニコール・ガルシア、ベルナール・ジロドー、ジャン=ピエール・マリエール、ロバンソン・ステヴナン、ジュリー・ドパルデュー
2003年フランス/101分/劇場未公開(ビデオリリースハピネット・ピクチャーズ)

 映画監督志望の青年ジュリアンは恋人リリィを主演に撮った作品を、親戚や隣人たちに見せることに。しかし、女優で母のマドリーヌは一度も作品を褒めたことがなく、ジュリアンはそれが気にかかっていたのだが……。
 リュディヴィーヌ・サニエがまた脱いでるらしい……ということで下心満載でみたところ、案の定ちょっとだけ(笑)。別に『焼け石に水』や『スイミング・プール』を観ていれば今更驚くことでもない。まあ、それは冗談半分として、内容はまったりしているが筋は良い感じで、個人的には嫌いじゃない。ちょっと小さくまとまってしまっている感じがあるけれども、最後に全員を惹き付けたリリィの演技は、劇中劇ながら本物のようで登場人物さながらに見とれてしまう美しさだ。2003年の第56回カンヌ映画祭コンペティション部門正式出品作品。


猟奇的な彼女
My Sassy Girl
監督・脚本:クァク・ジェヨン
出演:チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン
2002年韓国/122分/配給:アミューズピクチャーズ
公式サイト http://www.ryoukiteki.com/ チラシ 1

 両親から女の子のように育てられ気弱でお人よしの大学生キョヌは、ある夜、地下鉄のホームで泥酔した“彼女”に出会う。電車内で倒れた彼女を成り行きから介抱することになったが、彼女はかわいい顔とは裏腹に、口も手も出る凶暴で曲がったことが大嫌いな性格で、キョヌも散々振り回されてしまうが……。
 原作はインターネットに掲載された大学生の実体験。どこまで忠実かはわからないけど、これと似たような体験談だったのだろう。それが面白くて映画化されて大ヒットし、ドリームワークスもリメイク権を獲得済みだそうな。さて、観終わって図らずも泣かされてしまいました。とにかく型破りな“彼女”(最後の最後まで観客に対して名前が明かされない。これまた面白いですね)と、尻にしかれっぱなしのキョヌの2人が絶妙。映画の視点はキョヌで、“彼女”が何故、キョヌに対してあのような行動を取るのかは最後になるまで説明されないんですが、観ているこちらも、キョヌと同じ視線でミステリアスな彼女の虜になることができるから楽しいです。突拍子もない言動でキョヌを困らせる彼女の魅力は、麻薬のようなもので、なんでかわからないけど、もっと彼女に振り回されたいと思ってしまうのです。で、いつしかそんな楽しい時にも終わりがくるわけなんですが……ここから先は、ご覧になってのお楽しみ。物語は「前半戦」「後半戦」「延長戦」と3部に別れているのですが、この後半戦の終盤にかけてから延長戦で泣かされてしまいました。意外な展開に舌を巻きながらも。ただ、全体的に長い気はするんですけどね…。やっぱ一応、ラブコメなわけですから、2時間超えるのは個人的にどうかなと。でも、それを差し引いたとしても、キャラクターの魅力と最後の展開で十分楽しめる作品でした。


リンダ リンダ リンダ
Linda Linda Linda
監督・脚本:山下敦弘 脚本:向井康介、宮下和雅子
出演:ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織、三村恭代、湯川潮音、山崎優子、甲本雅裕
2005年日本/114分/配給:ビターズ・エンド
公式サイト http://www.linda3.com/ チラシ 12

 文化祭の3日前にバンドが空中分解してしまった恵、響子、望の3人は、韓国人留学生のソンをボーカルに迎えた即席バンドを結成。ブルーハーツのコピーをやることになるが……。
 主演に韓国の人気若手女優ペ・ドゥナを迎えておくる青春学園ドラマ。まだ若いのに絶賛されている山下監督のオフビートで淡々とした演出は変わらないようだけど、その中に笑いあり、ドラマあり。キャスティングも絶妙で、ブルーハーツの「リンダ リンダ」という誰もが知っていて盛り上がりやすい選曲もいい。アイデア勝利だけど、それだけで終わっていない映画でしたね。あくまで日常性を強調し、派手な演出も事件もないかわりに、些細な感情のぶつかり合いが今の若い世代らしいというか……そんな気もしましたが。映画を観終わったら、ブルーハーツが聞きたくなったのは言うまでもありません(笑)。
☆★★★★