老人と海
The Old Man and the Sea
監督・脚本:アレクサンドル・ペトロフ 原作:アーネスト・ヘミングウェイ
声の出演:三國連太郎、松田洋治、納谷悟朗
1999年ロシア+カナダ+日本/23分/

 ヘミングウェイの同名小説をアニメーション化した短篇映画。 全編、オイルペインティングによるガラス絵をアニメーションさせているという 独特の手法を用いている。それによって油絵がそのまま動いているようであり、 その映像美は一見の価値あり。ストーリーは原作そのものなのですが、油絵が動いているような映像手法は斬新でオリジナリティにあふれながらも、この普及の名作を温かく映像化することに成功してると思います。さらに渋い声優陣が落ち着きと深みを与えていて良いです。第3回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞作。


ロード・オブ・ウォー
Lord of War
監督・脚本・製作:アンドリュー・ニコル 撮影:アミール・M・モクリ 音楽:アントニオ・ピント
出演:ニコラス・ケイジ、イーサン・ホーク、ジャレット・レト、ブリジット・モイナハン、イアン・ホルム
2005年アメリカ/122分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.lord-of-war.jp/

 ウクライナに生まれ、少年時代にアメリカに移住したユーリー・オルロフは、両親が切り盛りするレストランと同じように、世界では武器が必要とされていると気付き、弟のヴィタリーと2人で武器売買の事業を始める。やがて世界有数の武器商人へと成長していくユーリーだが、インターポールのバレンタイン刑事がそんな彼を執拗に追い求める。
 例え同胞を殺すことになるであろう銃でも、それが商売なら売るという武器商人たちの姿を描いたドラマ。主人公の最大のクライアントは合衆国の大統領だと豪語したり、いろいろと物議を醸しそうな内容ではありますが、残念ながらそれほど話題にもならず。ただ、彼らのような存在がもしいなければ……この世の争いは多少は減るだろうか。それとも争いが減らないから彼らのような存在が自然と生まれたのか。鶏が先か卵が先かといった問題ですが、扱っているテーマは極めて真面目なのに、ところどころにコメディっぽい要素を入れてしまっているから、いまいち重みに欠ける。あるいはもっと徹底的にブラックジョークの方向に走ってもよかったのかもしれないが、つまりはどっちつかずといったところで、訴えたいこともわかるし、難しいテーマに挑んだ心意気も買いたいが、どうにもあと一歩及ばずといったところなのだ。オープニングの"弾丸の旅"は非常に面白かったです。
☆☆★★★


ロード・オブ・ザ・リング
Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring
監督・製作:ピーター・ジャクソン 脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、ピーター・ジャクソン 原作:J・R・R・トールキン
出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、リヴ・タイラー、ケイト・ブランシェット
2001年アメリカ/178分/配給:日本ヘラルド映画、松竹
公式サイト http://www.lotr.jp/ チラシ 12

 J・R・R・トールキン原作にして全てのファンタジーの原点「指輪物語」を映画化。かつて闇の帝王サウロンが創ったひとつの指輪。邪悪な力と欲望のこめられたその指輪を、再びサウロンが手にすれば世界は闇に包まれる。その指輪を養父ビルボから譲り受けたホビット族の青年フロドは、ビルボの友人で魔法使いのガンダルフらの助言により、指輪を“滅びの山”の火口へ投げ捨て消滅させるため、旅に出る。世界の危機を救うこの旅に、ホビット、人間、エルフ、ドワーフという種族を超えた9人の仲間が集結する。
 とにかく、素晴らしい、の一言につきる。この感動! この興奮! 間違いなく映画史上に残る傑作でしょう。僕は原作を読んではいませんが、それ以外のファンタジー物にはたくさん触れてきたので、そうした人間からしてみれば、トールキンの「指輪物語」がどれだけの物かは重々承知の上。それが映画化されるというなら、半端なもので許されるはずがありません。しかし、この映画は、トールキンの「指輪物語」というあまりに大きな存在を映像化しただけあって、その原作の大きさに負けない、とてつもなく大きな映画です。3時間という上映時間もなんのそのです。はっきりいってあと1時間や2時間くらい長くてよかったと思えるくらい。それだけ世界に浸れる作品でした。もはや、ここであれこれ言う必要もないでしょう。見事なまでの映像。壮大なストーリーを絶妙なテンポで3時間に収めた脚本と編集。文句ナシのキャスティング。どれをとっても、「指輪物語」という大作ファンタジー映画にふさわしい。もちろん、欠点も探せばあるでしょう。だけど、そんな粗探しは野暮。褒めても褒めたりないくらいの、よくぞここまでやってくれましたという気持ちでいっぱいです。
 3部作を一挙に撮影してしまって、順次公開していくという映画史上初の試みも嬉しいですね。1年後、まったく同じテンションですぐに第2作を観ることができるなんて(やはり撮影に間があると、役者にも微妙に変化がありますからね)。原作が3部作だから、映画も3部作。それは当然かもしれませんが、3時間×3本ではもったいない。1部につき6時間で描くくらいがちょうどいいんじゃないかって気がしますよ、ホントに。


ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
Lord of the Rings: The Two Towers
監督・製作:ピーター・ジャクソン 脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、ピーター・ジャクソン 原作:J・R・R・トールキン
出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、アンディ・サーキス
2002年アメリカ/179分/配給:日本ヘラルド映画、松竹
公式サイト http://www.lotr.jp/ チラシ 12

 J・R・R・トールキン原作にして全てのファンタジーの原点「指輪物語」を映画化した前作より続く第二部。オークにさらわれたメリーとピピン。彼らを追うアラゴルン、レゴラス、ギムリ。そして指輪を消滅させるためにモルドールへ向かうフロドとサム。それぞれの道に分かれた旅の仲間たちの行く末に待つものは…。
 前作からそのまま続く第二部の幕開け。よくある続編ものと違って、これは本当に“3本で1本”の映画なので、最初に今までの簡単な紹介とかは一切なしです。彼らがどうして旅しているのかなんていう説明はあるはずありません。一応、それだけはお断りしておきましょう。それを知らずにみて文句を言うなんて言語道断ですので、あしからず。で、もう今更あれこれいうこともないかなぁ…っていうのが正直なところ。とにかく観るべし。特に今回は大きな合戦シーンがあるのでスペクタクルは前作以上。アラゴルンたちはこちらに参加し、画面を盛り上げてくれます。レゴラスとギムリの友情もよし。特に今回はギムリおいしい。そしてフロドとサムに、本作で最も注目すべきキャラ、ゴラムの3人がドラマ部分を担当してくれます。僕はこの3人の三角関係(笑)が面白かったです。ゴラムのキャラが立ちまくり! フロドは主人公なんですが、話を追うごとにヘロヘロになっていくのでかわいそう…。どんどん台詞も元気もなくなっていく主人公って…。メリーとピピンのほうはちょっと出番が少なめですが、彼らの行く先では、これまた見逃せないエント(森人)が登場します。彼らの戦いのシーンも必見! なのですが、ここはちょっと物足りない感じはしましたが…。もっと暴れまわってほしかったなぁ。メリーが急にマジな顔になっちゃって、キャラ違うぞ〜と思ったり。他にも感想はあれこれとありますけど、上手くまとめられません。
 前作は劇場公開版と、DVDのスペシャル・エクステンデッド・エディション(未公開シーンを追加したやつ)を観たので、この壮大なスケール感に見慣れてしまった感が多少あるにはあるんですが、一方で細かいところにもより目がいくようになって、例えば衣裳やら建築やらの細かさに、改めて感嘆の息を漏らすことができました。撮影地は主にニュージーランドですけど、本当に“中つ国”が存在して、そこに彼らが存在するようなほどにのめりこめるのは嬉しいところです。新キャラクターも続々と登場して、ますます目が離せなくなってくるんですが、あと1本でおしまいなんですよね。ホント、もったいない。


ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
Lord of the Rings: The Return of the King
監督・製作:ピーター・ジャクソン 脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、ピーター・ジャクソン 原作:J・R・R・トールキン
出演:イライジャ・ウッド、ショーン・アスティン、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン、リヴ・タイラー、アンディ・サーキス
2003年アメリカ/204分/配給:日本ヘラルド映画、松竹
公式サイト http://www.lotr.jp/ チラシ 123

 J・R・R・トールキン原作にして全てのファンタジーの原点「指輪物語」を映画化した3部作の最終章。ヘルム峡谷の戦いに勝利し、ローハンにひと時の平和をもたらしたアラゴルンやガンダルフらは、エントたちの力を借りてサルマンのアイゼンガルドを陥落させたメリーとピピンと合流する。一方、ゴラムの案内でゴンドールからモルドールへと歩みを進めるフロドとサムだったが、ヘルム峡谷で敗れたサウロンの軍勢は、次の狙いをゴンドールへ向ける。ガンダルフはメリーを連れ、ゴンドールへ戦の忠告に行くが、ゴンドールを統治する執政官デネソールは、最愛の息子ボロミアを失った悲しみから、ガンダルフの申し出を受け入れようとしないのだった…。
 ついに…ついに完結した偉大なる3部作。本当に何と言っていいのか言葉が見つからないくらいに感慨深い。前2作からさらにスケールが増し、第2部「二つの塔」のクライマックスであったヘルム峡谷の戦いをさらに上回る合戦――ペレンノール野の戦いは、20万以上の人間とオークが入り乱れているという。もう、その迫力は筆舌に尽くし難い。とにかくその迫力を劇場で“体感”してください。ただ、「二つの塔」では、そのスペクタクルな合戦シーンがもっとも盛り上がるところだったけれど、今回は違う。もちろん、見た目の迫力ではペレンノール野の戦いが一番すさまじいけれど、本当の……本当の戦いが最後の最後に繰り広げられるのです。それが、この長い長い3部作の全てがここに向かっていた、「フロドが指輪を捨てる」その戦いです。「二つの塔」では、ある意味でアラゴルンがほとんど主人公でしたが、今回、やっぱり主人公はフロドだったということが間違いなく示されるわけです。もちろんアラゴルンも活躍しますが、その活躍も、ペレンノール野の大戦も、全ては「フロドに指輪を捨てさせるために」という一点に集約されていきます。もっとも小さき者、もっとも力なき者が、ただただ重荷に耐え、ボロボロになっても全てを「指輪を消滅させる」その一点に向かって進む……。そのクライマックスには涙なしには観られません! 力も技ももたない小さな者が、その勇気と心の強さで真のヒーローになる。まさにトールキンがなげかけたメッセージがここに示されたわけです。もう、あとは細かいところまでいくらでも語るべき点はあると思いますけれど、もう何も言いますまい。ただひとつ言えることは、間違いなく、この3部作は映画史に残る傑作にして名作に他ならないということでしょう。これで終わってしまったのは、本当に本当に寂しいけれど、この3年間、毎年1作ずつ公開されていったこの3年間は、とても心に残る3年間でありました。


ロード・オブ・ドッグタウン
Lords of Dogtown
監督:キャサリン・ハードウィック 脚本:ステイシー・ペラルタ 製作:デビッド・フィンチャー
出演:エミール・ハーシュ、ヴィクター・ラサック、ジョン・ロビンソン、マイケル・アンガラノ、ニッキー・リード、ヒース・レジャー
2005年アメリカ/107分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト http://www.sonypictures.jp/movies/lordsofdogtown/

 1975年、カリフォルニア州ベニスビーチ。“ドッグタウン”と呼ばれる吹き溜まりの街でサーフィンやスケードボードに明け暮れるジェイ、ステイシー、トニーの3人は、スケボーの全国大会に出場し、一躍注目を浴びるようになる。
 スケボー界に革命をもたらし、ストリート・カルチャーに絶大な影響を与えたスケボーチーム“Z-BOYS”の青春の日々を描いたドラマ。『DOGTOWN & Z-BOYS』という同じ題材のドキュメンタリー映画を製作したZ-BOYSのステイシー・ペラルタ本人が、脚本を担当。個人的にストリート系の文化がそれほど好みなわけではないけれど、そうでなくても優れた青春映画として十分楽しめました。主人公たちがそれぞれ家庭や友人関係で悩み、将来性のない街の生活に悶々とし、唯一のはけ口であるスケボーでは、その抜群の実力ゆえに、利潤ばかりを求める大人たちにふりまわされる……。そうした悩みを抱えながらも、好きなことに打ち込み、友情の決裂や再生を通じて成長していく。監督は、これまた青春映画の秀作『サーティーン/あの頃欲しかった愛のこと』のキャサリン・ハードウィックだが、この人はこの手のジャンルが得意なんですかね。全編を通して熱いし、スケボー板にカメラを取り付けたりして撮影したスケボーシーンは迫力満点。
☆☆★★★


ロード・トゥ・パーディション
Road to Perdition
監督:サム・メンデス
出演:トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウ
2002年アメリカ/119分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/roadtoperdition/ チラシ 1

 1930年、イリノイ州ロックアイランドの街は、ギャングのボス、ジョン・ルーニーによって仕切られている。彼のもとで殺し屋として働くマイクは、幼い頃、貧しくて住む家もなかった身の自分を育ててくれたジョンとは親子のような絆で結ばれていた。美しい妻と2人の息子と暮らすマイクは、子供たちに自分の仕事を明かしていなかったが、ある日、長男のマイケルは父親の跡をつけ、殺しの現場を目撃してしまう。ジョンの息子、コナーは、秘密が漏れるのを恐れてマイクの妻と次男を殺害。マイクは生き残った長男マイケルを連れて復讐の旅にでる。
 初監督作品『アメリカン・ビューティー』でいきなりアカデミー賞を受賞したサム・メンデス監督の第2作。『アメリカン・ビューティー』は、「すごい作品だろうけど、個人的にはいまいち入り込めなかった・・・」というのがあったので、今回もどうかとは思いつつも、前作が現代社会における、ある種の家族崩壊劇を描いたのとは逆に、こちらは父子が絆を深めていく様子を描いてたヒューマン・ドラマの側面ももっていたので、まあ良いかなと。で、実際に観てみたら、これがまた良くって感動。前作ほどの複雑な(狂った?)人間心理というのはないけど、そのぶんわかりやすいですし。俳優の演技がまた良し。トム・ハンクスは個人的にはそれほど入れ込んでないんですけど、こういうのを見せられると、やっぱりさすがなのかと思うし。ポール・ニューマンやジュード・ロウも当然良いのですが、それ以上にマイケル役のタイラー・ホークリン(2000人のオーディションで選ばれたという13歳)が泣かせてくれます。そして、名撮影監督のコンラッド・ホールによる画面が美しいとも評判ですが、確かに。陰影の強い顔は、それだけでその人の苦悩を表しているようで。ギャング映画として永遠に名を馳せる『ゴッドファーザー』と比較され、それにも劣らぬ出来といわれていますが、そう思うとそっちのほうを未見なのが悔やまれます。そちらを観ていたなら、この作品の観方も変わったかもしれませんが、しかし、現状ではこちらにも十二分に満足できるものがありましたので。


ローマの休日
Roman Holiday
監督・製作:ウィリアム・ワイラー 出演:オードリー・ヘップバーン、グレゴリー・ペック
1953年アメリカ/118分/

 もはや解説など不要であろう世界的名作。 “銀幕の妖精”オードリー・ヘップバーンのアメリカデビュー作で、 全世界に名を知らしめた作品。古典的ロマンスにあふれたその作風と、オードリーの 容姿が最高にマッチしている。なんてことない内容かもしれないが、それこそが古典であり、 また、これは「ローマの休日」なのである。もはやそれ以上は言えないし、 それ以下でもない。「ローマの休日」は「ローマの休日」なのだ。
 それにしてもやはりオードリーはかわいい! このお話は、単純なロマンスであって、 現実には起こり得ない。でもだからこそ、誰でも憧れるものなのではないでしょうか。 これは最高のおとぎ話だと思います。


ローレライ
Lorelei: The Witch of the Pacific Ocean
監督:樋口真嗣 原作:福井晴敏 製作:亀山千広
出演:役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇、石黒賢、佐藤隆太、ピエール瀧、堤真一
2005年日本/128分/配給:東宝
公式サイト http://www.507.jp/ チラシ 1

 1945年8月。広島に原子爆弾が投下され、もはや敗北しかありえない日本。そんな中、帝国海軍の絹見少佐は、秘密裏にドイツから接収した戦利潜水艦“伊507”の艦長に任ぜられ、さらなる原爆投下を阻止するため、寄せ集めの乗組員たちを率いてB29発進基地襲撃の指令を受ける。一見すると無謀な任務だったが、“伊507”にはその作戦を可能にする「ローレライ」と呼ばれる謎の秘密兵器が搭載されていた……。
 「亡国のイージス」の原作者・福井晴敏と、本作で長編監督デビューを飾った樋口真嗣が、映画のために共同でプロットを生み出し、それぞれ小説と映画というかたちで発表した戦争ドラマ。先に発表されたのは小説版「終戦のローレライ」なので、やはりそちらを原作としてみてしまうわけだけど、映画のほうはよくある小説の映画化での失敗とは違い、いい具合に換骨奪胎されずに映像化されていると思った。もちろん、細かな描写や物語の展開において、時間の限られた映画が小説に敵うはずはないのだけど、小説ではわかりにくかった様子を見事に具現化した本作は、むしろ小説を補完するかたちでうまく作用するのではと。もともと福井小説のファンである自分としては、どうしても原作と比較してみてしまうわけですが、原点が映画のために考案されたストーリーであると考えれば、これは小説と映画をワンセットで楽しむエンターテインメントなんだなと思う。どちらか一方だけではなくて、両方見ることで「ローレライ」という作品世界を十二分に堪能することができるわけです。映画単体としてみても、芸達者な役者たち(役所広司は素晴らしい!)が、時として説明不足気味な人物の背景に血肉を通わせ、CGっぽさが残ってしまってはいるものの、現時点での日本映画では最高峰といえるだろう、戦艦・潜水艦によるバトルシーンの迫力(スカイウォーカーサウンドは伊達じゃない!?)など、楽しめる要素もいっぱいでした。息詰まる潜水艦の戦闘シーンと人間ドラマが程よいバランスに成り立っていたと思うけど、個人的にはもっとバンバン戦闘シーンも欲しかったところですが、十分及第点。アニメ、実写、舞台などの様々な分野から集まったスタッフが生み出した、新たな可能性を秘めたエンターテインメント。


ロスト・イン・トランスレーション
Lost in Translation
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンスン、ジョバンニ・リビジ、アンナ・ファリス
2003年アメリカ/102分/配給:東北新社
公式サイト http://www.lit-movie.com/ チラシ 123

 妻と子供の誕生日から逃れ、200万ドルのギャラがもらえるウィスキーのCMに出演するため東京にやってきたアメリカ人の中年俳優ボブ。しかし、時差ボケや言語の違いで妙な孤独感にさいなまれるばかり。同じ頃、カメラマンの夫が仕事で来日するために付き添ってやってきた若妻シャーロットも、仕事に忙しい夫を毎朝見送り、ホテルの部屋にひとり残って異国の地での空虚感に塞ぎこんでいた。そんな2人は、ホテルのバーでなにげなく言葉を交わしたことから、互いに同じ悩みを抱えた者同士の不思議な連帯感を育んでいく。
 アカデミー賞4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。その他の賞レースでも大いに絶賛されたソフィア・コッポラの監督第2作。まあ、これでもかというくらい話題になっていますから、詳細は省くとして、個人的にはビル・マーレイがすごくいい。なんとも言い難いんだけど、とにかく微妙なニュアンスを絶妙に伝えてる。アンニュイな雰囲気や孤独感、虚しさ、寂しさ……。それなのにどこか滑稽で可笑しい。そして、シャーロットと出会い、彼女と時を過ごしていると孤独感も和らいでいく。その過程の繊細なニュアンスも、ソフィア・コッポラならではなだけど、それを見事に表現したのは、やはり役者の力なくしてありえないだろう。もちろん、スカーレット・ヨハンスンだって素晴らしい。今までも演技は上手かったけど、ますます磨きがかかった感じで、完全に彼女はもうひとりの女優として確立されてる。上手なティーン俳優とか、そういうレベルは通り越して。もともと僕は彼女のファンで、それで注目していた作品でもあるんだけど、いやはや役柄のせいもあるかもしれないけど、スカーレットはキレイになった。それが見られただけでも嬉しい。序盤(ビル・マーレイが物語を引っ張っていってる当たりね)は、ボブと日本人との“ロスト・イン・トランスレーション”な部分が単純に面白くて、声を出して笑えるんだけど、最後のほうになると、ボブとシャーロットの心の交流に引き込まれていて、ラストシーンでは感動せずにはいられなかった。プラトニックでリリカルで、決して刹那的でない、旅先での男女の恋とも友情ともとれる不思議な交流。異国の地で、周りは知らないモノに囲まれ、自分がわからなくなったとき、唯一無二の友を得た2人が、それぞれに自分を見出していく。詳しく書くことはできないけれど、あのラストシーンに、僕は最高のラブストーリーを見た気がした。もちろん、この映画を恋愛モノと割り切ることはできないのは事実だけれども、わかりやすい言い方にするとそう言うべきかと僕は思った。ビル・マーレイはオスカー獲っても全くおかしくないと思ったけど、競った相手がショーン・ペンだったから、まあ、しょうがないのかもしれないけど。


ロスト・ソウルズ
Lost Souls
監督:ヤヌス・カミンスキー 製作:メグ・ライアン
出演:ウィノナ・ライダー、ベン・チャップリン、ジョン・ハート
2000年アメリカ/98分/配給:ギャガ・ヒューマックス

 アカデミー賞で受賞やノミネートをうけてきた撮影監督ヤヌス・カミンスキーが、初監督をつとめたサスペンス。今まで封印されてきた悪魔が、2000年を超えて蘇ろうとしていた。主人公マヤは、小説家のピーターが悪魔に憑り付かれることを発見する。それをなんとか防ごうとするのだが、彼はまったくの無神論者であり、取り合おうとはしない・・・。
 世紀末の世の中で、悪魔が人間の魂を乗っ取って世界を破滅の道へと導こうとする、という題目があって、それに伴って、キリスト教徒による悪魔払いなどが描かれるわけですが、いかんせん、その題材が活かしきれていないような気がしました。呪術的な描写も、もう少し詳しくやってくれても良かったのではないかなと。やりすぎるとオカルト映画になってしまいますが、この映画はそういったものを目指してないんでしょうか。全体的に半端な印象がぬぐえない感じです。登場人物たちの人物像をもう少し掘り下げてくれれば、ドラマ的にもよくなるんじゃないかと思うのですが、それもなってなくて、どっちつかず。なんだか表層的に流れて終わった感じを受けました。


ロスト・チルドレン
La Cite des Enfants Perdus
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、マルク・キャロ
出演:ロン・パールマン、ジュディット・ヴィッテ、ドミニク・ピノン、ダニエル・エミルフォルク
1995年フランス/113分/

 「デリカテッセン」のジュネ監督によるSFファンタジーとも呼ぶべき作品。名もない港町で、大道芸をして暮らす怪力男ワンは、弟が一つ目族と呼ばれる集団にさらわれてしまう。なんとか弟を救い出そうとするワンは、孤児で盗みを働きながら暮らしていたミエットという少女と出会う。二人は協力しながらワンの弟を救出すべく奔走する。ワンの怪力を悪用しようとたくらむ者たちからも逃れながら。
 まず世界観の創造性に驚く。作りこまれたセットやCGの表現は、近未来の荒廃した港町の風景を描きだし、それでいてどこかノスタルジックさやメルヘンチックな雰囲気まで微妙に醸し出していて見事としかいいようがない。そして、怪力で知恵足らずだけど心優しい大男と、大人びた魅力を帯びた9歳の少女の交流が、その荒廃した世界の中であるからこそ、より純粋さ、清純さのようなものを引き出していると思う。大人の男と少女の恋愛。普通に考えたら、あまり許されるものではないかもしれないけど、この映画において、それが最も重要で、輝いてみえる。ある意味で、いろんな狂人たちが跋扈するこの作品の中では、その輝いている本物の美しさがより引き立つというか。そして、ワンよりも精神的には大人な少女ミエットを演じるジュディット・ヴィッテの魅力も素晴らしく、この作品を語る上では絶対にはずせない要素ですね。
 この圧倒的な世界観を築き上げる映像世界は「未来世紀ブラジル」を思い起こさせるけど、ストーリーやキャラクターの面で僕はこちらのほうが好きですね(「ブラジル」も良いけど)。これは正真正銘の傑作と呼べる代物。画面の色使いとか、構成とか、ジュネ監督のこだわりが大発揮されてるって感じです。


ロゼッタ
Rosetta
監督:リュック・ダルデンヌ、ジャン・ピエール・ダルデンヌ 出演:エミリエ・デュケンヌ
1999年ベルギー+フランス/93分/配給:ビターズ・エンド

 99年のカンヌ国際映画祭パルムドール(最優秀賞)&主演女優賞を獲得したダルデンヌ兄弟監督作品。主人公ロゼッタは、アルコール中毒で仕事もできない母と二人で、キャンプ場のトレーラーで貧しい生活を送っている。働いていた工場をわけもなく解雇されてしまい、ますます困窮する彼女は次の仕事を探すのだが・・。
 生きること。当たり前に仕事をして普通に生活を送ることがいかに難しいことなのか。たまたまそういう境遇に生まれてしまった彼女が、決してあきらめずに強く、まともな生活をすることに向けて動く姿を描く。ドキュメンタリータッチで描かれており、とにかく余計なものはほとんど排除されてます。台詞の少なさも驚きだし、BGMも一切ない。ここまで音が少ない映画も珍しい。不満としては、93分の映画なのに、間が長くてちょっと飽きるときがあること。母親を捨てられない優しさ、逆境の中でもくじけない強さをもったロゼッタの生き方は、観ている方がもっと力を抜いてほしいと思うくらいで、そう思わせるだけの力がこの映画にあるというのは確かですが。ラストあたりは正直つらいものがある。しかし、登場人物の一人、リケというの青年の優しさが救い。
 個人的には、こういうエンターテインメント性を排し、ひたすら人で人を語ろうという感じの映画の心意気は好きなので理解できるつもりですが、さすがにこの映画は、最後30分あたりはよいのですが、そこにたどり着くまでだるく感じましたところが多々ありました・・・。


ロッタちゃんと赤いじてんしゃ
Lotta Pa Brankmakargatan
監督・脚本:ヨハンナ・ハルド 原作:アストリッド・リンドグレーン 出演:グレタ・ハヴネショルド
1992年スウェーデン/76分/配給:エデン、ミラクルヴォイス

 「長靴下のピッピ」で知られる童話作家アストリッド・リンドグレーンの「ロッタちゃん」シリーズを映画化したもの。「赤いじてんしゃ」と「はじめてのおつかい」の二本で、制作されたのはこちらが先だが、公開されたのは「はじめての〜」が先なので、この「赤いじてんしゃ」はシリーズ第二弾ということになっている。ビデオで既に2本ともでているので、観るならこちらから先に観ると良いでしょう。
 特に大きなドラマがあるわけでもないんだけど、ちょっと(かなり?)意地っ張りなロッタちゃんと周りの大人たちの騒動(?)を描く。もう、これは幼子好き(変な意味じゃないよ・・・)にはたまらん映画ですね。ロッタちゃん、かわいい! わがままでガンコなところもあるけど、 だってまだ5歳だもん。ちょっとくらいしょうがないよね。と微笑ましくなってしまうことうけあい。こんなにホノボノして、和やかな映画みたことない。


ロッタちゃん はじめてのおつかい
Lotta Flyttar Hemfran
監督・脚本:ヨハンナ・ハルド 原作:アストリッド・リンドグレーン 出演:グレタ・ハヴネショルド
1993年スウェーデン/86分/配給:エデン、ミラクルヴォイス

 もう、とにかくかわいくってしょうがない!! ロッタちゃんの魅力全開。微笑ましいことこの上ない。チクチクするセーターに腹を立てて家出しちゃったり、「なんでもできるんだから」といって、ホントになんでもやっちゃうロッタちゃんが愛らしく、それを見守る家族や隣人、町の人々の心優しさが、なんとも幸せな気持ちにさせてくれます。僕も小さいとき、チクチクするセーターが嫌いだったので(今もだけど)、とっても共感しちゃうものがありました。
 ところで、お兄ちゃんの声が途中で声変わりしてるような気がしたんですけど、どうでしょう? まぁ、大したことではないですが。映画史上最高に「かわいい」映画とは、おそらくこのロッタちゃんシリーズだろう…と言い切りたくなってしまう作品です。


ロボッツ
Robots
監督:クリス・ウェッジ 脚本:ローウェル・ガンツ、フババルー・マンデル、デヴィッド・リンゼイ=アベアー 音楽:ジョン・パウエル
声の出演:ユアン・マクレガー、ハル・ベリー、ロビン・ウィリアムズ、メル・ブルックス、アマンダ・バインズ、グレッグ・キニア、ジム・ブロードベント
2005年アメリカ/90分/配給:20世紀フォックス映画
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/robots/ チラシ 12

 中古品でできた発明好きのロボット、ロドニーは、発明家になるという夢をかなえ、両親を楽させようと、大都会ロボット・シティへ旅立つ。しかし、ロボット・シティでは、大企業の経営者ラチェットが、利益のために中古ロボットを排除しようと画策していた。
 『アイス・エイジ』がアカデミー賞にノミネートされたクリス・ウェッジ監督とブルースカイ・スタジオが送るCGアニメ。昨今の例に漏れず、声優陣が豪華だけれど、今回はロビン・ウィリアムズのマシンガントークが凄かったですね……他の声優陣が霞んでしまうというか、コメディアンの本領発揮といったところ。CGはもはや申し分のないレベルだけど、なぜか出てくるロボットやメカに惹かれないのはなんでだろう。個性的ではあるけれど、そのメカであるが故の個性と言ったらいいのか、そういうものがあんまり感じられず、ストーリーも至極オーソドックスなので、笑えるところは笑えるが、90分で何か物足りずに終わってしまって、やっぱり子ども向けなのかな……と思って劇場を後にしました。大人でも楽しめるけど。
☆☆☆★★


ロミオ&ジュリエット
William Shakespeare's Romeo + Juliet
監督・製作・脚本:バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ、クレア・デーンズ、ジョン・レグイザモ
1996年アメリカ/120分/配給:20世紀フォックス映画

 恋愛劇の古典中の古典であるシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を、現代に置き換えて映画化。といっても、舞台を現代にしただけで台詞もほぼそのまま。ゆえに、舞台は現代だがやっていることは古典であり、しかも現代社会では起こりえないことも起こる。でも、だからといってそれがダメというわけじゃないし、むしろそんなことはどうだってよいのである(といったら過言かもしれないが、基本的にはそうだと思う)。この映画のスゴイところは、誰もが侵しえない領域(シェイクスピアの古典的名作)を恐れ多くも大胆にアレンジしたことであり、しかも、それが徹底してるから面白い。どこかぶっ飛んだ感じはこの監督のお家芸だけど、それを真面目にやっているところが見応えあるところなのでもある。


ロミオ・マスト・ダイ
Romeo Must Die
監督:アンジェイ・バートコウィアク 製作:ジョエル・シルバー 出演:ジェット・リー、アリーヤ
2000年アメリカ/115分/配給:ワーナーブラザース映画

 音楽にヒップホップを使ってるわりに、非常にノリが悪い。のっけからどうも引き込まれるものがないと思ったら、それが2時間続きました。まったくもって脚本の緩いこと…。なんの感慨もわかない脇役キャラたちのぬるいやりとりをオープニングからだらだらと見せられたと思ったら、それがそのまま・・・。やっと主役が登場と思っても、昂揚感もわかなかったです。ジェット・リーとアリーヤという魅力ある主演キャストにも関わらず、その2人の魅力すらも殺されてしまっていてかわいそう。ジェット・リーのアクションが唯一の救いかと思いきや、そのシーンも全然物足りないです。どーでもいい、いかにも頭の弱い雑魚キャラを、手早くばったばったとぶっ倒してくれれば多少は気分もすっきりするのに、それも少ないんで、悶々として時間はすぎていきました。結局、うっとおしい雑魚キャラは最後のほうまでうだうだと画面に登場し、それをなぎ倒すジェット・リーのアクションも少ないです。だいたいキャラクターの過去なども思わせぶりな設定がありながらも、その説明がなくて意味がないと思います。ジェット・リーのワイヤーアクションを見せたいだけなら、もっとシンプルに作ればいいのに、余計なものが多すぎました。3つ巴の組織の抗争はよかったかもしれません。でも、それも見せ方次第で、この映画では単に尺を長くしてしまっただけです。上手く活かせれば楽しくなったかもしれないのに。“X-REY バイオレンス”っていうのも売りだったみたいですが、一体どんなもの? と思いきや、ホントにそのまま“X-REY”なんですね…。あれって必要なんですか? 逆に笑っちゃいましたよ、あれ。ないほうがいいでしょ。いろいろ不満はありますが、とにもかくにも、これは脚本が酷すぎ。全てがかみ合ってない。どうせ何も残らない内容なら、もっとちゃっちゃとテンポ良く見せてください。こっちだってリンチェイ以外に何も期待してませんから。


ロリータ
Lolita
監督:エイドリアン・ライン 原作:ウラジミール・ナボコフ 音楽:エンリオ・モリコーネ
出演:ジャレミー・アイアンズ、ドミニク・スウェイン、メラニー・グリフィス
1997年アメリカ/138分/配給:東宝東和

 “ロリータコンプッレックス”・・・・通称“ロリコン”の語源となった、ウラジミール・ナボコフの原作を再映画化(61年にキューブリックが監督して映画化している)。初恋の人を失ったことから、40歳でも独身でいた大学教授ハンバード。彼はアメリカに渡り、ある未亡人の家に下宿することになるが、その家の12歳の娘ロリータを一目みたいとき、その美しさに見とれる。小悪魔的な魅力をもったロリータは、やがてハンバードとの距離を縮めていくが・・・。
 ロリコンって、ここからきてるのかぁ・・と感心してしまうが(してどーする?)、確かにロリータ演じるドミニク・スウェインは絶妙なキャスティング。彼女によって、この映画は助けられていると思う。ストーリー自体は、やや冗長気味かもしれない。ロリータという少女が、何故あのような人格なのか、何を思って行動していたのかが、ちょっと明確ではないのだが、それはわざとぼかしていたのだろう(あるいは、やはりああいう家庭環境のせいかしら?)。それを理解できるかできないかは、観る人それぞれか。冗長気味とはいえ、ロリータの魅力や、映画全体漂う雰囲気が、妙に印象深い作品ではありました。あんな少女がいたら、確かにおかしくなってしまうのもわかるわ〜、男として(笑)。


ロング・エンゲージメント
Un Long Dimanche de Fiancailles
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ 脚本:ギョーム・ローラン 原作:セバスチャン・スプリゾ
撮影:ブリュノ・デルボネル 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、ジョディ・フォスター、ティッキー・オルガド、アンドレ・デュソリエ、ドミニク・ピノン
2004年フランス/134分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.long-eng.jp/ チラシ 12

 第1次大戦下のフランス。幼い頃の病気が原因で脚が不自由なマチルドのもとに、出征した婚約者マネクが戦死したとの知らせが届く。彼は5人の兵士とともに死罪を言い渡され、自軍とドイツ軍が陣取る中間地帯に武器ももたずに置き去りにされたというのだ。しかし、彼の最期を見届けた者はいない。「彼に何かあれば私には必ずわかるはず」と、己の愛と直感を信じて、マチルドはマネクを探し出そうとする。
 『アメリ』の監督・主演コンビが再びタッグを組み、戦時下のフランスを舞台に生死不明の恋人を追い求める女性の姿を描いた超大作。原作はフランスでベストセラーとなった「長い日曜日」で、監督自身が13年来映像化を希望した念願の企画だとか。未読なので原作がどのようになっているのかわからないが、基本はミステリー。いくつかの証言を得ることで、次第に見えてこなかった側面が見え、真相が明らかになっていく。その過程は面白いのだけれども、不覚にも前半で気を抜いていたせいか、頭の中で整理するのにやや苦労を強いられた。オープニングでマネクほか5人の死刑囚の説明があるのだが、これをただの前置きだと思って聞き流していると、後々面倒なことになるので、のっけからきちんと聞いていることをオススメします(笑)。木製の義手や懐中時計型オルゴールといった小道具や、こだわりまくっている映像美、さりげなくグロい描写など、ジュネらしい要素はあるんだけど、話がこんがらがり気味でいまいち感情移入できませんでした。こういうお話なら、もっと感情に訴えかける演出がいいと思うんですが、そうしなかったのはジュネの作家性の成せるわざなのかもしれないが。