スイミング・プール
Swimming Pool
監督・脚本:フランソワ・オゾン 脚本:エマニュエル・ベルンエイム
出演:シャーロット・ランプリング、リュディヴィーヌ・サニエ、チャールズ・ダン、ジャン=マリー・ラムール
2003年フランス+イギリス/102分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/swinmmingpool/ チラシ 1

 イギリスの人気ミステリー作家、サラは、新作の筆が振るわずに行き詰まっていたところ、出版社の社長ジョンから、自分がもっている南仏の別荘に行くよう提案される。別荘に着いたサラは、人気のない静かな土地で自然に囲まれ、心地よい気候に心がほぐされ、執筆活動に入るが、その矢先、ジョンの娘と名乗るジュリーが突然やっていくる。サラは、夜な夜な違う男を連れ込んで騒ぐジュリーに辟易するが、奔放で妖艶な魅力をもったジュリーを見ているうちに、彼女を題材に物語を書くことを思い立つ。
 解放的な南仏の空のもとで繰り広げられるミステリー。終盤に殺人事件が発生するけど、それ自体が謎ではなく、観終わると、この物語そのものが謎だったことに気がつく。で、正直なところ、自分には明確な答えがわかりませんでした。そういう意味で見事に裏をかかれたわけで、謎のまま終わった気になる部分もあり……。だけど、この物語は、どちらかといえば、そうした謎かけは重要でなくて、あくまで2人の女の心情の変化でしょう。最初はジュリーに振り回されていたサラが、次第に彼女を上回っていく(?)ようになって、強気でいたジュリーの脆さも露呈してくる。でも、それらの肝心な部分が謎なのだ。ジュリーという女性そのものが果たして? という感じで。それにしてもリュディヴィーヌは見事である。何が見事かはご覧になってのお楽しみで(笑)。いや、「焼け石に水」でもさらしてたけどさ。さらにシャーロット・ランプリングも「まぼろし」での前科(?)があるとはいえ、今回もまあ大胆な……。あの年で本当に驚きだが、そういうシーンをてらいもなく入れてしまうオゾンってやっぱり……。それを引き受けるランプリングもすごいが。


スウィート ヒアアフター
The Sweet Hereafter
監督・製作・脚本:アトム・エゴヤン
出演:イアン・ホルム、サラ・ポーリー、カーザン・バンクス、トム・マッカムス
1997年カナダ/110分/配給:KUZUIエンタープライズ

 ある田舎町でスクール・バスの転落事故が発生し、多くの親が子供を失う。彼らの代理人として集団訴訟を起こそうと町にやってきた弁護士のスティーブンスは、被害者の家族たちから証言を聞くうちに、この町に隠された一面を次第に感じ取る。そして、事故の数少ない生存者で、今は車椅子で生活を送っている少女ニコールに会い、彼女の証言を得ようとするのだが……。
 97年のカンヌ映画祭グランプリに輝いたアトム・エゴヤンの監督第2作。各家庭を回って証言を得る現在のスティーブンスと事故当時の町の様子などが並行して描かれることで、事件の全容がそれぞれの方面から次第に明らかになっていくさまが、じっくりと描かれています。事故の全容……というよりも、それは単に事故があった、というだけのことで、本当に大切なのは事故そのものではなく、この町の人々の実態。閉ざされた社会の姿が静かに提示されるわけだけど、それがどうということではなくて、それがその町にとっての日々だった。そういうことであり、事故によって変わってしまい、スティーブンスという異物が入り込んでも、やがて異物は取り除かれ、事故は過去のものとなっていく……。歪んでいようがなんであろうが、そうして穏やかな日々を過ごしてきた人々にとって、大切なのはその生活ということだろうか。どのような姿であれ、深い悲しみを抱きながらも昔の穏やかな日々に静かに戻っていく人々の再生とやりきれない何かが不思議に漂う作品でした。雰囲気が良い……と一言で片付けるわけにはいかないんだろうけど、難しくて自分ではまだ上手くこの作品が伝えたいことを言葉にすることができない。


スウィートノベンバー
Sweet November
監督:パット・オコナー 出演:キアヌ・リーブス、シャーリーズ・セロン
2001年アメリカ/120分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.warnerbros.co.jp/sweetnovember/ チラシ 1

 広告業界で有能な人物として有名なネルソン。そんな彼があるとき出会ったサラという女性。彼女に11月の間だけ一緒に暮らしてくれと頼まれる。彼女は月ごとに恋人を変えて生活をしていたのだ。しかし、それには理由があった・・。
 1968年に映画化された同名作品(邦題「今宵かぎりの恋」)のリメイク。仕事ばかりを見ていたネルソンが、それ以外にも大切なものがあるということに目を向けるようになるといったところは、比較的ありがちかもしれないが、それはそれで感動します。はかなげで、それでいてこの世のあらゆるものに喜びを見いだすという女性サラをシャーリーズ・セロンが見事な存在感・演技で表していたのも良いです。ファッションもとてもラフで、まさに“飾らない美しさ”。ただし、人によってはちょっとわざとらしいと取れてしまうかもしれないかなぁ〜・・・とも思いましたが。「輝いている私だけを見ていてほしい」というサラの思いは、単なる綺麗事かもしれいけど、それが彼女の現実の問題から考えると、哀しいことであるなぁ・・・なんて。これ以上言うとネタバレになってしまうので。あとはラストが本当にあれでよかったのか? と、ちょっと悩んでしまうところですが(僕が悩んでどーする)・・・。
 エンヤが歌うテーマソングも温かくてきれいでいいんですよね。この映画はこの主題歌がかなりのウェイトを占めてるんじゃないでしょうか。歌でもってくなんてずるい? かな。でも、それもありか。ほんとに癒されるような、どこまでも温かい歌で、泣けてきますよ。


スーパーサイズ・ミー
Supersize Me
監督・製作:モーガン・スパーロック
出演:モーガン・スパーロック
2004年アメリカ/98分/配給:クロックワークス、ファントム・フィルム
公式サイト http://www.supersizeme.jp/ チラシ 12

 2002年11月、肥満に悩むティーンエイジャーの少女2人が、「肥りすぎたのはマクドナルドの製品を食べ過ぎたせい」とマクドナルドを相手に訴訟を起こしたというニュースを知ったモーガン・スパーロックが、果たして自己管理の甘さが原因なのか、それともファーストフードに原因があるのか? それを証明するために、1日3食をマクドナルドで済ませ、同社の製品以外は一切口にしないという生活を30日間続けることで、自分の体にどのような変化が訪れるのかを、自らが被験者となって実験。さらに様々な人々へのインタビューを交え、アメリカが抱える肥満や食文化の問題へ切り込んでいく。
 2004年のサンダンス映画祭で喝采され、監督賞を受賞した話題のドキュメンタリー。自分自身を被験者にしてしまい、さらに関係各社へのインタビューや、各種資料をもとにファーストフード会社などのあり方に疑問を投げかける、その手法はマイケル・ムーアに通ずるものがあるような気もする(比較して優劣をつけるつもりもありませんが)。こちらも扱っている問題は深刻なれど、監督自身が実験体になってしまい、しかも最終的にはかなりアブナイ状況になりながらも、悲観的になるようなことはあまりなく、基本的にはエンターテインメントとして観られる出来に感心。でも、やっぱりよくよく考えさせられるものはある。アメリカの食文化や人々の健康よりも利潤を追求する企業体質に警笛を鳴らしながらも、観客自身に対してもそうした意識を喚起させることができるわけで、企業側も然りだが、肥満に悩む人自身にも向けた映画でもあるのでしょう。


スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー
Sky Captain and the World of Tomorrow
監督・脚本:ケリー・コンラン
出演:ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビジ、マイケル・ガンボン
2004年アメリカ+イギリス/107分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.skycaptain.jp/ チラシ 1

 1939年、ニューヨークでは高名な科学者が次々と失踪する事件が発生。新聞記者のポリーはその事件を追っていたが、ある日、謎の巨大ロボット軍団が突如として現れ、ニューヨークの街を襲う。その混乱に巻き込まれたポリーだったが、そこに“スカイキャプテン”の異名を取る空軍のエースパイロット、ジョーが駆けつけ、ロボット軍団をその場から撃退する。科学者たちの失踪事件とロボット軍団の襲撃に何か関連があると感じたジョーとポリーは、協力して事件を追っていると、そこにトーテンコフという謎の男の名前が浮かび上がるが……。
 俳優以外のほとんどがCGで描かれるという、日本でいうと『CASSHERN』のような手法で生み出された、レトロフューチャー・アクション・アドベンチャー。本作で初長編監督となるケリー・コンランが、自宅のマックで4年かけて作った6分間のプロモーション映像がプロデューサーの目に留まり、映画化が実現。さらにその映像を気に入ったジュード・ロウがプロデューサーを買って出て、豪華俳優陣の出演が可能になった(ちなみに、ジュード・ロウの妻サディ・フロストもプロデューサーとして名を連ねているが、本作が公開されるころには2人は離婚してしまっている)。個人的にこういう映像は好きだし、かなり滑らかで違和感もなくてよく出来ていると思いました(ただ、ちょっと暗くて見づらい)。反面、ストーリーや脚本はやっぱりヌルい印象は拭えない。そもそも“スカイキャプテン”ってどういう立場の人よ?ってこともよくわからないまま、とりあえずひヒーロー然とやってきて、そんまま話が進んでしまう。設定や展開にリアリティはないのはいいにしても、そのへんのフォローはもうちょっと細かくしてほしかったです。映像は新しくても、描いているものは(いい意味で)古く、かつ内容もやはりあまり目新しいものはない。でも、フクザツさのないキャラクターは理解しやすく、グウィネス・パルトロウなんて、オスカー受賞後、頑張ってもなかなかパッとしていないが、大して力まずに気楽にやった(であろうと思われる)本作のほうが、普通に素のかわいさが出ててよかったわん。あとはもう、出てくるメカの数々が、男の子心をくすぐってきて、そういうのが好きな人には楽しいと思うんですが、どうでしょう。個人的には、レトロでありながらもギミックが満載なメカたちには結構燃えた。上手くすれば、続編もありうるでしょうね。


スクール・オブ・ロック
The School of Rock
監督:リチャード・リンクレイター 脚本:マイク・ホワイト
出演:ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、マイク・ホワイト
2003年アメリカ/110分/配給:UIP
公式サイト http://www.schoolofrock-movie.jp/ チラシ 1

 寝ても覚めてもロック一筋なデューイは、バンドをクビにされた挙句、友人ネッドの家で過ごしているが仕事がないので家賃を払うあてもない。そんな時、代用教師をしているネッド宛てに、名門私立小学校から臨時教員を依頼する電話がかかってくる。電話をとったデューイはネッドに成りすまし、給料目当てで教員として学校に潜り込むが、もちろん教える気などゼロ。しかし、ふとしたことから生徒たちに思わぬ音楽の才能があることを知ったデューイは、彼らにロックを教え、バンドを結成する。
 先生と生徒が音楽を通じて心を通わせていく……といえば、メリル・ストリープの『ミュージック・オブ・ハート』だが、こっちの先生は社会的にも明らかに落ちぶれているインチキ教師。生徒は良家の子女で、ある意味それぞれに今時の子供たち。で、基本的にジャック・ブラックが(恐らくほとんど素のままで)はじけてひた走るコメディなんだけど、彼と子供らの交流は驚くほどの求心力を発揮して、否応なく物語にぐいぐい引き込まれていきます。そんでもって、このインチキ教師の熱意にひっぱられて、いつの間にかラストには大きな感動が……!! いやはや、このパワーには感服&拍手喝采。とにかく笑って笑って、最後に感動という王道を行く、きっと万人に受け入れられるべき映画なんだろうけど、いかんせんジャック・ブラックという一般受けしない主演のため、あまりヒットしないかな……。素晴らしいのに。ただ、例えばあんな目張りをしただけじゃ、防音にはならんだろうから、すぐにバレるだろう……とか、細かいところで突っ込みどころはあるんだけど、そんなことはこの映画では重要じゃない。大切なのはロック馬鹿の情熱とパフォーマンス。そして意外と素直にロックを楽しんでいく子供たちだ。また、全編にちりばめられたロックネタの数々も、これまた好きな人にとってはいちいち笑える。初めて楽器を持たせた生徒たちに教えるのが、ギターは「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(ディープ・パープル)なのはわかるが、キーボードが「タッチ・ミー」(ドアーズ)とか……。とにかくいろいろ。まあ、ロックを知らなくても、ジャック・ブラックのはじけっぷりで十分楽しめるはずです。傑作。


スコア
The Score
監督:フランク・オズ
出演:ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン、マーロン・ブランド、アンジェラ・バゼット
2001年アメリカ/125分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.high-score.jp/ チラシ 12

 金庫破りのプロフェッショナルで、“危険な冒険はしない”ことを信条に盗みを続けていたニックは、そんな生活にもピリオドを打とうと思っていた矢先、長年のパートナーである盗品ブローカーのマックスから、報酬400万ドルという大仕事を持ちかけられる。さらにその仕事をするには、ジャックという男と組まなければならないというのだが……。
 マーロン・ブランド、ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートンという3世代に渡る演技派俳優の共演が売りで、確かにこの3人は豪華で見応えはあるのだけど、残念ながら、それ以外は特に……。まあ、デ・ニーロなだけに渋く決まっていましたが、彼でなかったら、もっとつまらなかったかも。全体を通して、デ・ニーロとノートンの掛け合いが良くて、特に最後の展開にも一応、一工夫ありますが、そのへんは見てのお楽しみということで。マーロン・ブランドはいまいち見せ場はなかったですね。まあ、作品としてはこれといったところもない普通な印象なのですが、正統派なくライム・サスペンスになっているのではないかと。大味で大仰な大作に辟易している方は、たまにはこんな映画もいいかもしれません。


スコルピオンの恋まじない
The Curse of the Jade Scorpion
監督・脚本:ウッディ・アレン
出演:ウッディ・アレン、ヘレン・ハント、シャーリーズ・セロン、ダン・エイクロイド
2001年アメリカ/101分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/scorpion/ チラシ 1

 1940年のニューヨーク。勤続20年の腕利き保険調査員のグリックスは、経営の合理化を進めるためリストラ対策にやってきた女性重役フィッツジェラルドは、顔を合わせれば皮肉を言い合う犬猿の仲。そんな時、同僚の誕生日パーティで2人はインチキ魔術師に、ある単語を聞くと互いに恋に落ちてしまうという催眠術をかけられる。普段の2人の様子と正反対の熱愛ぶりにパーティは多いに盛り上がって終わった…が、その日から、立て続けに謎の宝石盗難事件が発生し、ブリックスも調査に乗り出すのだが…。
 ウッディ・アレンらしい、小粋なラブ・コメディ。ウィットにとんだ台詞の応酬に時々笑わせられ、お洒落な音楽にのりながらテンポよく物語が進むあたりが、なんとも心地よいです。冬の夜に、ちょっと落ち着いた雰囲気で観たい素敵な小粒の映画といった感じ。前作の「おいしい生活」ではあまり気分が乗らなかったんですが、今回はとてもいい気持ちになれました。ウッディ・アレンがわかってきたような気がして、これって自分も少し大人になったのかなぁ…って気持ちです。彼の映画は、“古き良き”といった言葉がよく似合って、“粋”なコメディだと思います。最後には幸せになれるし。それにしても、今回はシャーリーズ・セロンが素晴らしいこと! なのに、出番がめちゃくちゃ少なくってがっかり。でも、その短い時間の中でばっちりときめていたセロンに感服…っていうか、いいね、ああいうの。


スター・ウォーズ
Star Wars
監督・脚本:ジョージ・ルーカス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー
1977年アメリカ/121分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.starwarsjapan.com/

 もはや言わずと知れた、SF冒険活劇の金字塔。帝国軍に捕らわれた反乱軍のリーダー、レイア姫を救うべく、主人公のルーク・スカウウォーカーや宇宙海賊のハン・ソロとチューバッカ、凸凹ロボットコンビC-3POとR2-D2といった魅力的なキャラクタが冒険を繰り広げる。ジェダイの騎士や、フォースといった要素も物語を彩るのに欠かせないでしょう。当時では最高のSFXを駆使して、後のSFXに与えた影響ということを考えても、当然のことながら、この映画の存在は大きいでしょう。特に帝国軍の基地・デススターに攻め込むあたりは、物語も最高潮に盛り上がって、まさにエンターテインメント映画として抜群の出来だと思います。僕もこの作品を小さいころにみて、映画の面白さを知ったようなものでした。
 後にジョージ・ルーカスは、スター・ウォーズの9部作構想を発表し、この作品と後の2作はちょうど中盤の3部作にあたるとした。それによって、1997年、進化したSFXで手直しがなされ、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(Star Wars Episode VI: A New Hope)」となった。が、9部作構想は結局、6作に縮められてしまいました。


スター・ウォーズ 帝国の逆襲
Star Ward: The Empire Strikes Back
監督:アーヴィン・カーシュナー 製作総指揮:ジョージ・ルーカス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー
1980年アメリカ/124分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.starwarsjapan.com/

 今作も97年に「特別編」が公開されている。エピソード5。


スター・ウォーズ ジェダイの復讐
Star Wars: Return of the Jedi
監督:リチャード・マーカンド 製作総指揮・原案・脚本:ジョージ・ルーカス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー
1983年アメリカ/133分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.starwarsjapan.com/

 3部作の完結編。ルークにまつわる秘密がいろいろと明かされたりするのですが、そのあたりはネタバレになってしまうので・・・(といっても有名だけども)。この作品も、97年に特別編として公開されている。エピソード6。
 ちなみに邦題について当初は原題が「Revenge of the Jedi」だったため、そのまま「ジェダイの復讐」となったが、映画公開直前になって「ジェダイは復讐しない」という意見から「Return of the Jedi」に改題。しかし、邦題はすでにポスターなどが作られていて改題に間に合わず、そのまま「ジェダイの復讐」として公開された。そのまま特別編の公開を経て、2005年、エピソード4〜6のDVDボックスが発売されることになったのを機に、以降は「ジェダイの帰還」に直された。


スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
Star Wars: Episode I - The Phantom Menace
監督・製作総指揮・脚本:ジョージ・ルーカス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ジェイク・ロイド、ユアン・マクレガー、リーアム・ニーソン、ナタリー・ポートマン
1999年アメリカ/133分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.starwarsjapan.com/

 旧3部作から16年を経て、ついに公開が始まった新3部作。ストーリー的には前の3部作より30年前から始まる。正真正銘のスター・ウォーズ・サーガの幕開けとなる話。16年の歳月を置いただけあって、視覚効果も発達して、ジョージ・ルーカスのやりたかったことがより鮮明に再現できたのではないかと思う。実際の人間とCGで作られたキャラが当然のように掛け合いをしているところは、驚くべきものがあると思うのですが。内容がずいぶんと子供向けという批判もありますが、主人公が子供なだけに仕方ないのでは? それにスター・ウォーズとは、そういうエンターテインメント映画なんだと思います。C-3POやR2-D2、オビ=ワン、ヨーダといったお馴染みのキャラが若い姿で登場するところは、ファンとってたまらなく嬉しい限り。


スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃
Star Wars: Episode II - Attack of the Clones
監督・製作総指揮・脚本:ジョージ・ルーカス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ヘイデン・クリステンセン、ナタリー・ポートマン、ユアン・マクレガー、クリストファー・リー
2002年アメリカ/142分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/episode2/ チラシ 12

 「エピソード1」から10年後、20歳の青年へと成長したアナキン・スカイウォーカー。ジェダイ・マスターとなったオビ=ワン・ケノービのパダワンとして未だ修行中の身だが、本人はそのことに不満をもっていた。天賦の才があることが誰もが認めていたが、オビ=ワンも、その過信と強情な性格が危ういと感じていた。元ナブー女王で、現在は元老院議員として活動するパドメ・アミダラに10年ぶりに再会したアナキンは、彼女に強い想いを寄せるが、それはジェダイには禁じられた感情であった・・・。
 待ちに待った「エピソード2」は、いよいよアナキンのダーク・サイドの片鱗が見えてきました。同時に、それ以外でも、旧3部作へ繋がるネタがいろいろあって、ファンにはたまらなく嬉しい限り。加えて、アクションシーンもふんだんで、「エピソード1」で消化不良気味だったものが、一気に爆発したという感じです。なにしろヨーダだって(これは必見です)! 加えてジェダイの総出撃シーンやら、いよいよ始まるクローン戦争もあり、バトル・ドロイドVSクローン・トルーパーの全面戦争は、筆舌に尽くし難い迫力。それらのシーンも含め、CGが大活躍で、登場人物で生身の人間のほうが少ないくらいで。画面もどこからどこまでが作り物なのか、もうわかんないくらい。そのへんが食傷気味と思う人もいるでしょうが、僕はOK。なにしろ、これは「スター・ウォーズ」ですから。2時間22分という上映時間は、映画としては長いほうの分類に入るはずですが、それでも全体的に駆け足な印象はうけました。あれもこれもいろいろと詰め込んでいる感じがあるので。それでも、観終わったあとに、「エピソード3」が早く観たいと思わされる点で、この映画は大満足です。あと、個人的に面白かったのはC-3PO×バトル・ドロイドの掛け合わせね。結構笑っちゃった。


スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
Star Wars: Episode III - Revenge of the Sith
監督・製作総指揮・脚本:ジョージ・ルーカス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ヘイデン・クリステンセン、ナタリー・ポートマン、ユアン・マクレガー、イアン・マクダーミド、サミュエル・L・ジャクソン
2005年アメリカ/132分/配給:20世紀フォックス
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/episode3/ チラシ 12

 クローン大戦勃発から3年。分離主義者のグリーバス将軍に拉致された元老院議長パルパティーンを救出したアナキン・スカイウォーカーは、いつまでも自分に対して厳しいジェダイ評議会に反発を覚え、逆に何かと目をかけてくれる元老院議長パルパティーンに傾倒していく。また同じ頃、最愛の妻パドメが子を身篭るが、彼女が出産とともに死に至る予知夢を見たアナキンは、パドメを守るためにより強い力に魅了されていく……。
 ついに…ついに、ついに、ついに完結! 泣いても笑ってもこれが最後の『スター・ウォーズ』。もはやその偉大さは筆舌に尽くしがたく、また、説明する必要もないでしょうが、とにかく感慨深いことこの上ない。「エピソード1」以降の新シリーズは、何かと評判のいまいちな『スター・ウォーズ』ですが、今回は下馬評も非常によろしく、また、実際に観てみると、それも納得の出来栄えだ。結末は既に知られているけれど、そこにいたる過程がどのように描かれているかを細部にわたって書いてしまうと観る楽しみがなくなるので控えますが、僕にとってはやはりアナキンVSオビ=ワンの対決がクライマックスでした。振り返ってみればこの新3部作はオビ=ワンの物語だったのでは!? と思うほど、僕は彼のほうに感情移入しまくり。逆に肝心のアナキンは、どうも結局はワガママで癇癪もちの若造が先走っただけな気も(笑)……。ま、そんな言い方は見も蓋もないかもしれませんが。そんなわけで、ハリウッド嫌いなユアン・マクレガーが、ハリウッドの象徴的な超大作シリーズでこれだけ印象に残る役を演じてくれて、いい仕事をしたと思います。そのほか、細かいところで、なぜC-3POアナキンを覚えていないのか(R2-D2は特別!?)? なぜオビ=ワンはアナキンのライトセイバーを持っていたのか? なぜレイアはオーガナ家の養子になったのか? といったことの謎や過程がきちんと描かれていて、納得納得。そんなわけで、書きたことはたくさんありすぎますが、今回はCGやVFXのみならず、ちゃんとドラマ部分にも感動できますよ。
★★★★★


スターシップ・トゥルーパーズ
Starship Troopers
監督:ポール・バーホーベン 原作:ロバート・A・ハイライン
出演:キャスパー・バン・ディーン、ディナ・メイヤー
1997年アメリカ/128分/配給:ブエナ・ビスタ

 ハイラインの有名すぎる「宇宙の戦士」を映画化。暴力を正当化したとかなんとかで、いろいろ批判も浴びた原作を映画化しただけあって、本編もなかなか過激な描写が多い。まぁこれに啓蒙されるような現代っこはいないだろうし、それをわかった上で作ってるのだろう。 ようするに反戦映画? って感じもしなくはないんですが、単に悪い冗談といったところでしょうか。CGがすごくて、宇宙船とか兇悪宇宙生物はリアル。でも戦闘シーンとかみてて気持ちいいものじゃないなぁ…と正直思いました。


スターリングラード
Enemy at the Gates
監督・製作・脚本:ジャン=ジャック・アノー
出演:ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、エド・ハリス
2000年アメリカ+ドイツ+イギリス+アイルランド/132分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.stalingrad-movie.com/

 第二次世界大戦で最も激しい攻防戦が繰り広げられたという、1942年のスターリングラード。ナチス・ドイツの侵攻に対する、ソビエト軍に、若き一人の狙撃手(スナイパー)がいた。今や伝説的存在となった、実在のスナイパー、ヴァシリ・ザイチェフの物語。
 のっけから始まる凄惨な戦闘シーン。これはかなり良いです。主人公の意思はおかまいなしに、兵士たちは次々と流れるように戦場に送り込まれる。多くの人間が、まるで人間という尊厳もなく次々と死んでいく。累々たる屍の横たわる戦場。ヴァシリは、その死体の中で、青年将校のダニロフと出会う。そして、ドイツ兵を一人、また一人と狙撃するヴァシリ…。
 だいたいこのへんまでの流れはとてもよいのですが、その後がちょっと続かない。妙に尺を長くしてしまったのが良くないのではないかなぁ。なんとなく、間延びしてる感が否めないです。全体としての出来はとても良いのですけどね。役者も、画面も。若きジュード・ロウに対するのがエド・ハリスってのも良いですし。凄惨な戦争映画だと思っていたけど、最後のほうになって、妙に恋愛要素も絡んできて、それが悪いとは言いませんが、ダニロフの言動はちょっと消化不良じゃないですか? 下手に三角関係にはしなかったほうが良いのかもしれなかった。いろんなところで言われてますが、どうにも中途半端さが拭えない作品になってしまってます。上述したように、役者や映像などは非常に良いのに、それをいかしきれてないというか。それがなければ、かなりの秀作にもなりえたであろうに、もったいないです。まぁ、それでも映画としては楽しめるんじゃないでしょうか。戦争モノに興味ある人などは、見ておいても損はないかと。


スタンドアップ
North Country
監督:ニキ・カーロ 脚本:マイケル・サイツマン 原作:クララ・ビンガム、ローラ・リーディー・ガンスラー
撮影:クリス・メンゲス 音楽:グスターボ・サンタオラヤ
出演:シャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、ショーン・ビーン、リチャード・ジェンキンス、ミシェル・モナハン、ウディ・ハレルソン、シシー・スペイセク
2005年アメリカ/124分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://standup-movie.com/

 暴力夫と別れ、2人の子どもを連れて故郷の町に戻ってきたジョージーは、周囲の無理解な冷たい視線にさらされながらも、子どもを育てるために過酷な炭鉱での仕事に就く。しかし、職場のほとんどを占める男たちからの露骨な嫌がらせが日に日に激しくなり……。
 80年代後半に全米で初めてセクハラ集団訴訟を起こし、勝利を得た女性の物語。監督は『クジラの島の少女』が認められたニキ・カーロで、これがハリウッドデビュー作。女性監督だが、だからといってヒステリックに男を糾弾するというわけでもなく、むしろ人間としての当たり前の尊厳や権利といったものを描いた秀作。男と女ではやはり見方は違ってくるだろうが、これをみて怒るような男がいたとしたら、それは単なる被害妄想か自分自身に思い当たる節のある人でしょう(笑)。シャーリーズ・セロンが2度目のオスカーを狙う……という風に見られているけれども(実際にノミネートされた)、彼女はもちろんのこと、脇の役者たちが非常によい。一応、主人公に味方する男性として登場するウディ・ハレルソンやショーン・ビーンが演じる役もまた、一方的に正義をふりかざすわけでもない。己の立場を考えて悩むが、そこがまた人間くささを感じさせる。特にショーン・ビーン演じるカイルが、主人公ジョージーの息子サミーに“大人の男”として語りかける場面は、ありきたりかもしれないがグッとくる。惜しむらくは、非常に真面目な映画なので、盛り上がりに欠けるところと(でも緊張感はあると思うが)、それゆえに興行的に苦戦したことかな……。こういう映画は多くの人に見てほしいと思うのですが。
☆★★★★


スタンド・バイ・ミー
Stand by Me
監督:ロブ・ライナー 脚本:レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エバンス 原作:スティーブン・キング
出演:ウィル・ウィートン、リバー・フェニックス、 コリー・フェルドマン、ジェリー・オコネル、キーファー・サザーランド、ジョン・キューザック
1986年アメリカ/89分/

 オレゴン州のとある田舎町で、森に入ったまま行方不明になった少年の死体を見つけようと、クリス、ゴーディ、テディ、バートの少年4人組は、ちょっとした冒険に出かける。
 言わずと知れた名作中の名作。くだらないことに怒ったり、泣いたり、笑ったり、わめいてみたり…。でも肝心なところで気持ちがはっきりしなかったり。少年時代独特の心の揺れ具合がよく描かれていると思います。どうでもいいことなのに、すぐにムキになったりするわきで、別の少年は現実を見ていたり。常に寄り添う友の存在、人の死ということ……人生で誰もが経験する成長の過程をシンプルに描き、2度と返らないあの頃を思わせるなんともセンチメンタルな気持ちに…。特に懐かしさを誘う静かで美しい森の風景や、音楽がたまらないです。


スチームボーイ
Steamboy
監督・原案・脚本:大友克洋 脚本:村井さだゆき
声の出演:鈴木杏、小西真奈美、中村嘉葎雄、津嘉山正種、児玉清、沢村一樹、斉藤暁、寺島進
2004年日本/126分/配給:東宝
公式サイト http://www.steamboy.net/ チラシ 12

 1866年、イギリス。世界初の万博がロンドンで開かれようとしてる目前、マンチェスターに住む発明少年レイのもとに、研究のためにアメリカへ渡った祖父ロイドから謎の金属ボールが届けられる。すると、祖父と父エディをアメリカに招いたオハラ財団の使者と名乗る男が現れ、金属ボールを渡すように要求する。しかし、ロイドからの手紙には、ボールを財団には渡してはならない……と書かれていた。そのボールは、超高圧力の蒸気を封じ込めた世紀の発明品“スチームボール”だったのだ。財団は、その力を兵器として悪用しようと企んでいたのだが、それを知ったレイは財団の追ってからボールを持って逃れるが……。
 『AKIRA』で日本のアニメーションを世界に知らしめた大友克洋が、同作以来、実に16年ぶりに送り出す長編劇場アニメ第2弾。オムニバスアニメの『MEMORIES』から数えても9年、企画段階を含めると、実に10年の歳月を費やして作られた、まさに全世界待望の超大作なのである。まあ、その長い長い年月に渡る製作の紆余曲折をここで説明しないが、それだけの苦労をしながらも、作り続けて完成したフィルムは、まさに「空想科学冒険活劇」といもいうべき仕上がりで、たくさんの発明品が登場し、それらを駆使しつつ、ときにはそれらに追われながら、少年レイが地を駆け、空を飛ぶ! その見た目に楽しいワクワク感だけでも特筆ものだが、一方で科学のあり方、それに対する人間の心のあり方などを問うというメッセージ性もこめられていて、単純にドタバタ暴れまわるだけのアクションものではない。確かに『AKIRA』のようなとんがった部分はないけれど、子供のために作ったというにはあまりに贅沢な、その作画レベル(歯車やら機械やらのかみ合って火花を散らす一瞬の描写のすさまじいこと!)や、ハリウッド仕込みの重低音の効いたド迫力のサウンドとフルオーケストラの音楽が、スケールのでかい話にさらにスケール感をもたせていて、後半のてんこ盛りアクションの盛り上がりは興奮の連続です。個人的にも思い入れが強い分、言いたいことはいろいろありますが、とにかく、難しい話でもないので、見れば楽しめること間違いなし。『AKIRA』とは違うとはいったけど、随所に大友テイストは溢れていて(特に後半のカタストロフィといったら…)、ファンでも存分に楽しめるはずだし、普段アニメを見ないような人でも(むしろそういう人でこそ)十分に楽しめると思います。百聞は一見にしかず。


スナッチ
Snatch
監督・脚本:ガイ・リッチー
出演:ベニチオ・デル・トロ、デニス・ファリナ、ヴィニー・ジョーンズ、ブラッド・ピット、ジェイソン・ステイサム
2000年アメリカ/102分/配給:ソニー・ピクチャーズ

 イギリスの新鋭監督ガイ・リッチー(ちなみにマドンナの旦那さん)の監督第2作。84カラットのダイヤモンドをめぐって繰り広げられる群像劇。映像と展開がスタイリッシュ。切れの良い編集テクニック。そういうところは、今風のミュージッククリップやコマーシャルフィルムのような印象も受けました。つまり映像センスは抜群。登場人物の絡み合いも上手くて、飽きさせません。ただ、始めっから一気にたくさん人がでてきて、それをテンポよくどんどん紹介していっちゃうので、最初のうちは人物関係の把握がしずらかったです。まぁ、それは観ていくうちにわかるので問題はないですが。ポイントはやっぱ犬。かわいいね。ブラピの訛り英語も面白かった。デル・トロの出番はあれだけ? ちょっとつまんない。


砂と霧の家
House of Sand and Fog
監督・脚本:ヴァディム・パールマン 脚本:ショーン・ローレンス・オットー 撮影:ロジャー・ディーキンス 音楽:ジェームス・ホーナー
出演:ジェニファー・コネリー、ベン・キングズレー、ロン・エルダード、ショーレ・アグダシュルー
2003年アメリカ/126分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.sunatokiri.jp/ チラシ 1

 美しい夕陽を臨む海辺の一軒家に暮らすキャシーは、結婚生活が破綻して夫に去られ、仕事もせずに悲しみに暮れて生活していた。そんなある日、突然役人がやってきて、わずかな税金の滞納を理由に家を差し押さえられ、追い出されてしまう。差し押さえは行政の手違いであったことがすぐに判明するが、家は既に競売にかけられ、イランからの亡命者ベラーニとその家族の手に渡っていた。ベラーニは祖国で高い地位にいたが、政変によってアメリカに亡命し、肉体労働をしながら暮らしていた。かつての誇りを捨てきれないベラーニは、この家を手掛かりに、再出発しようと心に誓っていたが、キャシーもまた、亡き父が遺してくれた家をなんとか取り戻そうとするのだが……。
 第76回アカデミー賞で、主演男優賞、助演女優賞、作曲賞の3部門にノミネートされたドラマ。一軒の家を巡る人々が巻き込まれる悲劇を描く。アカデミー賞にノミネートされただけはあり、確かに役者たちの演技はよい。また、物語もかなり救いのないつらいものだが、個人的にはこういった雰囲気はわりと好き。つまり、重い話を役者の力強い演技でみせる……という、ある意味、正攻法というか。ただ、正直、その結末というか結末に向かう過程で登場人物たちが取る行動には、いつくか納得できない部分があり、単純に悲しむというわけにもいかなかった。しかし、こうしたことが現実にあるのかどうかはわからないが、「移民とアメリカ」という問題に関して、感じる部分のある人にはあるのかもしれない。まあ、繰り返しになるけど役者の演技も良いし、時折、挿入される霧景色なども美しい。ジャニファー・コネリーは相変わらずいいね。さすがにベン・キングスレーに喰われちゃってる感じはあるけど、ちゃんとサービスシーンもあり(笑)。



スパイキッズ
Spykids
監督・製作・脚本:ロバート・ロドリゲス
出演:アントニオ・バンデラス、カーラ・グギノ、アレクサ・ヴェガ、ダリル・バサラ、アラン・カミング
2001年アメリカ/88分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://www.spykids-jp.com/ チラシ 12

 世界でも屈指のスパイだったグレゴリオとイングリッドは、敵同士でありながらも恋に落ち、結婚した。スパイの世界から引退して早9年。二人の子供カルメンとジュニとともに、静かに幸せな家庭を築いていたグレゴリオだが、彼のもとにかつての同僚が突然、行方不明になったという情報が舞い込む。グレゴリオは久々の冒険心に燃える妻と共に諜報活動に乗り出すが、勘の鈍った二人はあえなく敵の手に落ちてしまう。残された二人の子供のもとにも敵の魔の手が迫り、父の仲間から両親が実はスパイだったと聞かされて驚く二人だが、今は襲い掛かる敵から逃れなければならない! 二人は果たして敵の手から両親を救うことができるのか!?
 スパイ映画なだけに(?)、なんだかわけのわからない小道具がいっぱいでてきて面白い。M:I-2のような高性能サングラスだって、水陸両用の自動車だって、ロケット噴射でスーパーマンのように空を飛んでしまうジェットパックだって、腕時計型の通信装置だってなんでもござれだ。一見、普通の家も、いろんなところに隠された装置がいっぱい。もはやこういうのは理屈抜きで楽しいもんです。優秀で勝気な姉カルメンと、ちょっと臆病でトロい弟ジュニの凸凹コンビが、そういうスパイ道具をあれこれと駆使して次々と進んでいくところが面白いです。このカルメンって子のキャラクターが好き。基本的にお気楽ファミリーアクションコメディなわけだから、難しいことも一切なく進んでいくストーリーは肩の力を抜いて見られました。子供も大人も楽しめる。そんな映画だと思います。でも子供向けにしては、ちょっと 毒々しい造形の敵さんもでてきて、そのへんはアメリカ人的な趣味なのかなぁ〜。あと全体的にもうちょっとパワーがあってもいいかなぁ…とも思いました。笑えるし、楽しいのだけど、どっか物足りない気もする。小道具に凝るのはいいとして、人物達のアクションがちょっと物足りないのかなぁ? まぁ、主役が子供二人だからもっと派手なスリルやアクションを求めるのも無理があるかな。続編も既に決定しているので、期待をこめてちょっと甘めにみときましょう。こんな家族だったら、子供時代も楽しいだろうなぁ〜…なんて。次はどんなお話になるのやら。…それにしても、何故、“親指”なんだ!? これは謎だが、そういった無意味さも面白い要素のひとつかな(何が親指かは観てのお楽しみに)。


スパイキッズ2 失われた夢の島
Spykids2: The Island of Lost Dreams
監督・製作・脚本・撮影・編集・音楽・プロダクションデザイナー:ロバート・ロドリゲス
出演:アントニオ・バンデラス、カーラ・グギノ、アレクサ・ヴェガ、ダリル・バサラ、スティーブ・ブシェミ
2002年アメリカ/100分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://www.spykids2.jp/ チラシ 1

 世界の危機を救った功績から、真の“スパイキッズ”として認められたカルメンとジュニ。OSS(戦略事務局)にも正式部門としても発足され、2人は当然そこで日々活躍している。ある日、大統領主催のOSSパーティが催され、その席でOSSの新事務局長が発表されることになっていた。パーティには、なにかとカルメン&ジュニを目の敵にするスパイキッズ、ギグルス兄弟も出席していた。しかも、カルメンとジュニの父、グレゴリオが当然選ばれると思われていた新局長は、なんとギグルズ兄弟の父ダナゴンだった…。
 前作から一年待たずに公開されたシリーズ第2弾。前作は12月公開のお正月映画として大々的に宣伝されてましたが、今回は9月という微妙な時期にわりとひっそりと公開。…ま、ファミリー向けの映画ですから、しょうがないでしょうけど、早く観られるのは嬉しいもんです。前作がノーマークだったけどなかなか面白かったため、今回、知らず知らずのうちに自分の中で期待が高まっており、ふたを開けてみればその大きな期待を裏切らない出来に大満足。自分が、このシリーズをこんなに好きだったなんて、と思わされましたよ。基本的に前作とかわりないのですが、それでいて前作以上にカルメン&ジュニの成長ぶりや活躍をみせようという作りになっているところがなんとも。この映画の面白いところは、“子供心”にあふれているところで、主人公の2人は大人顔負けなのに、基本は子供で、登場する大人たちは、大人のくせに妙にガキっぽいとところがあったり。しかもお馴染みの様々なハイテク・ツールに心躍らされ、テンポよいギャグとストーリー展開に笑いながらも、ハラハラドキドキ。真面目な大人たちが、こういう映画を真剣に作ってるんだなぁ〜…と思うと、本当に嬉しくなってしまいます。今回、ゲストキャラで、あのスティーブ・ブシェミが出演しているんですが、そのキャラの存在感がいまいち希薄だった点は残念なのですが(前回のアラン・カミングもちょっとだけ出ます)。ブシェミがでてるってだけで、通好みでもあるし。さらにさらに、カルメン&ジュニのライバルとして登場するギグルズ兄弟の妹ガーディを演じるのは、あのハーレイ・ジョエル・オスメントの実妹エミリー・オスメント。この子がお兄ちゃんに瓜二つで、ハーレイ君が女装してるとしか思えないです…。とにかく、エンディングクレジットまで、明るく楽しませてくれる最高の出来。噂では「3」の製作が決まってるそうだとか。楽しみ! 前作も今観れば、もっと評価高いだろうなぁ〜…と思ってます。


スパイキッズ3-D:ゲームオーバー
Spykids3-D: Game Over
監督・製作・脚本・撮影・編集・音楽:ロバート・ロドリゲス
出演:ダリル・バサラ、アレクサ・ヴェガ、アントニオ・バンデラス、カーラ・グギノ、サルマ・ハエック、シルベスター・スタローン
2003年アメリカ/84分/配給:アスミック・エース
公サイト http://www.sk3d.jp/ チラシ 1

 2度に渡り世界を危機から救ったカルメン&ジュニのコルテス姉弟。しかし現在、ジュニは秘密諜報員組織OSSに対する不信感から組織を離れて私立探偵業に勤しんでいた。そんなとき、世間ではバーチャル・テレビゲーム「ゲームオーバー」が発売され社会現象に。だが、このゲームは世界制服を企むトイメーカーなる人物が創り出したもので、ゲームをクリアした子供たちは洗脳されてしまう。ゲームの世界に調査へいったカルメンが戻ってこないときいたジュニは、姉の後を追い、「ゲームオーバー」の世界に入っていくが……。
 タイトルが示すとおり、「スパイキッズ」シリーズの完結編で、しかも3D映画。あの左右に赤と青の色がついた眼鏡をかけることで、画面から飛び出してみえるわけですが、これがいまいち。劇場の設備の問題か、はたまた眼鏡が安っぽいからか、眼が疲れる…。しかも、その割りに思っていたほど飛び出して見えないし、飛び出して見えたところであんまり迫力がないのです。しかも、3Dに労力を割かれたのか、肝心のストーリーが…。いや、もともと子供向けで突っ込みどころは沢山ある映画ですが、今回は本当に子供向けになってしまった。大人ではちょっとつらい。肝心のゲームの世界に入っているところが一番楽しめませんでした。そもそもジュニが主役張るのはちょいつらいでしょう。カルメンと2人揃ってこそなのに。さらに、前作までの楽しいスパイ道具の数々がほとんど出てこない。リアルな世界でガキっぽいスパイ道具を駆使して、ハチャメチャに活躍するのが楽しいシリーズだったのですが……。見る前から、「ゲームの世界に入って…」というストーリーと場面写真を見て、イヤな予感はしていたんですが、予感が当たってしまった。また、最後は大団円ということで、これまでのキャラクターが総出演するのですが、ほんとにちょびっとだけ。彼らが登場するところになって、俄然、楽しくなってきたんですけれども。やっぱバンデラスとかがズッコケテくれないと。子供が主役だけれど、脇を固める大人たちがガキっぽいことして笑わせてくれる……これが「スパイキッズ」の楽しいところ。今回は本当に子供だけになってしまったので。アラン・カミングもスティーブ・ブシェミも出るけれど、顔見せ程度。サルマ・ハエックは出番ちゃんとありましたけど。毎度のジョージ・クルーニーと、初登場のイライジャ・ウッドには笑った…。あ、スタローン? 良かったと思いますけど、あんまり印象に残らず。正直、3Dじゃなくて普通にしてほしかった。シリーズ完結編なのに、すごい尻すぼみな印象で残念です。まあ、これで完結したから、ボックスセットのDVD出たら買おう〜。評価は、好きだからおまけです。「1」「2」のほうが、断然面白い。あと、最後の最後、エンドクレジットの終わりに「1」のときのアレクサ・ベガ&ダリル・サバラが出ますが、子供の成長は早いですねぇ〜。


スパイ・ゲーム
Spy Game
監督:トニー・スコット 出演:ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット、キャサリン・マコーマック
2001年アメリカ/127分/配給:東宝東和
公式サイト http://spygame.eigafan.com/ チラシ

 数々の任務をこなしてきたベテランCIA工作員ネイサン・ミュアーの引退が近いある日、中国でCIAのトム・ビショップが逮捕された。彼はミュアーが直接スカウトし、手をかけて育ててきた男で、いわば師弟のような二人だった。しかし、単独行動で逮捕され、処刑されることになったトムを上層部は見捨てようとしていた。トムの処刑まで24時間。ミュアーは、ただ一人、トムを救出しようと作戦を展開する。
 レッドフォード×ブラピという新旧2大スターの共演が売りなだけあって、その点は満足。いやはや、ブラピのかっこよさは当然のことながら、当年とって64歳(!)のレッドフォードもかっちょいい。この話の主役は彼です。しかし、思い描いていたアクション映画とは違い、 タイムリミットに迫られた知的工作が展開する映画で、ただ派手に動き回るだけのアクション映画…というのとはちょっと異なります。つまり、これこそが真の“スパイ”映画。知的な作戦と、駆け引きとで人を欺く。これぞスパイ。ほとんどが回想で語られ、会議室でのシーンが多い映画ですが、展開の切れもよくてだらだらしてません。時間に迫られる感じもなかなか良くでていたと思います。ちょっと難しいかな? と思うところもあって、意外と頭使う映画かもしれません。あとは、出番少ないけど、キャサリン・マコーマックは相変わらず美しいですなぁ……と思ったけど、ちょっと年とったなぁ、とも思った。悲しい。


スパイダーマン
Spider-Man
監督:サム・ライミ 脚本:デビッド・コープ
出演:トビー・マクガイア、ウィレム・デフォー、キルステン・ダンスト、ジェームズ・フランコ
2002年アメリカ/121分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.spider-man.jp/ チラシ 12

 NY郊外で叔父夫婦と暮らす冴えない高校生ピーター・パーカー。幼馴染のメリー・ジェーンに恋しているが、報われない。そんな彼は、ある日、社会科見学で訪れた科学研究所で、遺伝子操作を受けて生み出された蜘蛛に噛まれる。すると、彼の体に特殊な能力が生まれ始めた。人智を超えた強靭な肉体と力、敏捷性、そして…。彼はまさに蜘蛛のごとき能力をもった“スパイダーマン”になったのだった。
 以前から映画化の企画が立ち上がり、ジェームズ・キャメロンやデビッド・フィンチャーも候補にあがっては消えていった夢の企画が、サム・ライミを監督に迎えて遂に実現。誰もが知っているスーパーヒーロが、生誕40周年の年にめでたくスクリーンに降り立ったわけです。
 とにかく巨額の製作費なだけあって、凄い。なにがって、ストーリーもしっかりしてるし、あのVFXの数々を駆使して忠実に再現されたスパイダーマンのアクション! これは本当にすごいですね。かつての「マトリックス」級のものがあります。ですが、これまた「マトリックス」と同じく、予告編でいいところを出し切ってしまったのでは……という感じも受けます。思わず「おぉ!」と感嘆の声を漏らしたあの予告編で観られた、数々のアクロバット・アクションが、もっともっとたくさん見られるのかと思いましたが、かっこいいシーンはやっぱり予告編に使われすぎです…。なので、多少、がっかりはしましたが、それはもともと僕が期待しすぎたってだけでしょう。はっきりいって、これ以上のものを望むなんて贅沢だと思います。それくら出来は良いです。2時間の上映時間は割と長いほうですが、その中でストーリーがとてもしっかりしていて飽きないし、特にスパイダーマンとしての能力に目覚めていく過程は面白いと思いました。スパイダーマンになってからも、勧善懲悪ではない、正義は正義なりの悩みを抱えたりするところも、40年前のコミックとしては、かなりしっかりした作品なんだな、と思いました。もちろん、漫画的な軽い展開も多少あって、つっこめなくはないですが、そこはコミック・ヒーローものだということで、いいと思います。キャストも文句なしにはまっているし、話題の超大作というだけあって十二分の仕上がり。2の製作も既に決定しているそうで、次回はもうちょっと派手に暴れてくれてもいいかな、と思います。
 …にしても、残念なのは、米同時多発テロで消えてしまったワールド・トレード・センターのシーンです。一番最初の予告編ででた、WTCのツインタワーに蜘蛛の巣を張って銀行強盗のヘリを捕らえる…という、あのとてつもないシーン! 本編をみた今、あのシーンがそのまま残っていたら、どこでどう使われただろう…って、つくづく残念に思いますよ。


スパイダーマン2
Spider-Man 2
監督:サム・ライミ 脚本:マイケル・シェイボン、アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー、アルヴィン・サージェント
出演:トビー・マクガイア、キルステン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、アルフレッド・モリーナ
2004年アメリカ/127分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.spider-man.jp/ チラシ 123

 あれから2年。大学生になったピーター・パーカーは、アルバイトでお金を稼ぎながらの学生生活を送っていたが、スパイダーマンとしての活躍も忙しく、授業もアルバイトも遅刻ばかり。今でも恋心を捨てられないメリー・ジェーンは、舞台女優の道を歩み始め、舞台に招待されても、事件が発生して行かれずじまいで、2人の心はすれ違ったまま。さらに、親友のハリーはスパイダーマンが父を殺したと信じて疑わず、彼と親しいピーターとも微妙な関係が続き、人間関係に悩むピーター。しかし、ハリーはピーターの研究課題のため、オズボーン社で働く天才科学者Dr.オクタビウスを紹介してくれたが、彼は実験中の核融合エネルギーが暴走を起こし、作業用の4本の人工アームを装着したまま、凶悪な怪人“ドック・オク”に変身してしまう。
 まさに“全てがパワーアップした”続編。前作では、摩天楼を駆け巡るスパイダーマンのアクションが爽快で、それだけでも十分楽しめた上に、ドラマや役者も良質で、非常に質の高い娯楽作品になっていたわけだけど、今回はあのアクションに見慣れてしまった分だけ、他にも楽しませる要素がきちんとあるのかというのが気になっていたところ。しかししかし、これがまたアクションもよりダイナミックでスピード感が増し、スリリングなシーンもてんこ盛りで、思わず唸る出来栄えなのに加えて、やっぱりドラマもしっかりしてる。あまり多くない登場人物の中で、様々な苦悩や挫折、愛憎のやりとりが濃密に描かれていて目が離せません。演じている役者もやっぱりいい人たちだから、そうした微妙な感情の機微の表現が上手いんだな、これが。思わずグッとくるシーンがひとつやふたつじゃないし、クライマックスにかけては、思わず「ここまでドラマが進展するか」と思う展開が。『3』の製作も決定しているから、まだ引っ張るのかなぁ……と思いきや。そして、その『3』に向けた伏線もバッチリで、ホントにアクションもドラマも全てが前作を超えてるといっても過言じゃない。むしろ、ドラマの部分が深まったからこそ、ここまで面白くなったんだろうと思う。もちろん、本作を存分に楽しむには、前作を観ておくことは必要条件ではありますけど。脚本家の名前が4人も連なっていて、前作で脚本を執筆したデビッド・コープも原案としてクレジットされているから、脚本は相当練りこんだんでしょう。


スパイ・バウンド
Agents Secrets
監督・脚本:フレデリック・シェンデルフェール
出演:ヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ、アンドレ・ディソリエ、シャルル・ベルリング
2004年フランス+イタリア+スペイン/110分/配給:コムストック
公式サイト http://www.spybound.jp/ チラシ 12

 フランスの諜報機関DGSEに所属する諜報員ジョルジュは、モロッコで商船「アニタ・ハンス号」の爆破命令を受ける。船を所有する旧ソ連出身の武器密売商人の商売を阻止するためで、ジョルジュは仲間のリザと夫婦を装い、作戦地に向かう。しかし、作戦が進むさなか、CIAの諜報員と称する男が2人に近づき、作戦中止を申し立てる。計画が外部に漏れていたにも関わらず、作戦は続行されるが……。
 1985年に発生した「虹の戦士号」爆破事件に関わった実在の女スパイの証言を元に作られたスパイ映画。……といっても、純粋な娯楽作というには、かなり真面目に作っていて、単にスリルを求めただけの単純なハリウッド的スパイ・アクション映画とは異なり、むしろ組織とそこで働くスパイという一人の人間の葛藤と苦悩を描いた人間ドラマといってもいいかもしれない。もちろん、プロットとして謎解きがあり、「誰が裏切り者なのか?」「誰が仕組んだことなのか?」といった真実を、我々観客も主人公たちと一緒になって追っていくことになるわけだが、そこばかりに主眼を置いていると、報われないかもしれない。もちろん、ガンガンのアクション映画なんてものを期待していくのも止めたほうがいいかもしれない(派手なカーチェイスや格闘戦もあるんだが)。ただ、常にある種の緊張感が流れていて、それを絶やさない監督の演出と、はっきりと強調された陰影が心理的な切迫感をもたらす撮影はお見事。一見の価値はありかもしれないし、実は一度見ただけでは全て理解できないかもしれない。人物関係や台詞をきちんと把握してないと。ただ、観終わったあとに、ちょーっと後を引くかもしれません。これでいいのか?と。


スパン
Spun
監督:ジョナス・アカーランド
出演:ジェイソン・シュワルツマン、ブリタニー・マーフィ、ミッキー・ローク、ジョン・レグイザモ、ミーナ・スヴァーリ、パトリック・フュジット
2002年アメリカ+スウェーデン/102分/配給:東芝エンタテインメント
公式サイト http://www.spun.jp/ チラシ 1

 アメリカ西海岸。クスリを求めて売人のスパイダーの家を訪れたロスだが、スパイダーは大切なクスリをなくしてしまい、手に入れることができない。そこにいあわせたストリッパーのニッキーは、彼氏で高名な麻薬調合人コックのもとにロスを連れて行く。クスリを得るかわりに、コックの運転手として町を走り回ることになったロスだったが……。
 マドンナやクリスティーナ・アギレラのプロモーションビデオでMTVアワードなどを受賞している、ジョナス・アカーランドの初監督作品。そんなわけで、映像は非常に刺激的でカッコよく、エッジが効いてる。16ミリで撮影したフィルムを35ミリに拡張(?)することで得られている粒子の粗い画面とか、カメラワークや編集も実にPV的で面白い。内容は、本当にどうしようもないクスリ漬けの若者たちが繰り広げるデタラメな3日間のドラマなんだけど、これがどうしてかハチャメチャなのにひどくはない。いや、もう本当にやりすぎというくら麻薬吸いまくりな連中なのにね。なんとなく、その日常の虚しさと幸せ具合が適度に織り交ざっている感じで、でも、基本的には笑いとばせればそれでOKなんじゃないでしょうか(別にコメディというわけではないんだけど、笑いの要素も結構多くあり。刑事がスパイダーの家になだれこむところは可笑しすぎ)。こういう映画を観ると、アメリカって国は本当にどうしようもないのに、途方もない感じがして、アル意味すげーなと思うわけですが。役者では、ミッキー・ロークがひときわいい味を出していたのと、ブリタニー・マーフィのかわいさがバツグン!


SPIRIT
Fearless
監督:ロニー・ユー 脚本:クリスティン・トー、クリス・チョウ
出演:ジェット・リー、中村獅童、スン・リー、原田眞人、ドン・ヨン、コリン・チョウ
2005年香港+アメリカ/103分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.spirit-movie.net/

 武術家の家に生まれ育ったフォ・ユァンジアは、幼い頃こそ体が弱かったが、鍛錬を積み、天津一の武術家になる。しかし、名声が高まるとともに傲慢になり、それが仇となって大切な家族を失っていまう。絶望したフォは天津を去り、素朴な田舎の村で数年間を過ごし、本当の強さとは何かを知る。そして帰郷したフォは、世界中の猛者が集う異種格闘技戦に、中国武術の精神を知らしめるために参戦する。
 実在した伝説の武闘家、霍元甲(フォ・ユァンジア)を描いたアクション・ドラマ。ジェット・リーの最後のマーシャル・アーツ映画になると言われていて、本当かどうかはわからないが、ジェット・リーのアクションは堪能できるので、好きな人は是非。“本当の強さとはなにか?”という普遍的で言ってしまえば、珍しいテーマを描いたものでもないし、ストーリーは思いっきり予想通りなんだけど、そこに描かれる精神は気高く、それを拳に託して体現するジェット・リーのアクションは、なんだか感動的ですらあったりする。
☆☆★★★


スリーピー・ホロウ
Sleepy Hollow
監督:ティム・バートン 出演:ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチ
1999年アメリカ/98分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://japan.sleepyhollowmovie.com/

 アメリカでは有名らしい伝説的な首なし騎士のお話をもとに作られた映画。主人公のキャラクターがなかなか愉快(変に正義感が強かったり、迷信を信じなかったり。でも実際に首なし騎士に遭遇したら腰を抜かして、おびえてしまう)。アカデミー賞で美術賞を獲得してるだけあって、美術設定は秀逸。灰色がかかった画面に、様々な小道具から衣装、舞台設定までが作りこまれており、存分に楽しませてくれます。ホラーといってもグロテスクなものを期待してはいけない。この作品は、その抜きん出た映像美と、それによって作られたゴシック・ホラー的世界観、それにエンターテインメント性にあふれた作風を楽しむ映画だということです。主人公のキャラクターのおかげで、おどろおどろしさも程よく緩和されていて、ホラーといえど見終わった後に、とても充実感の感じられる映画でした(僕にとっては)。それに、個人的にはジョニー・デップとクリスティーナ・リッチという大好きな俳優陣の配役もお気に入り(しかもそれがはまっているし)。文句なしに楽しめる娯楽作品です。