デアデビル
Daredevil
監督:マーク・スティーブン・ジョンソン
出演:ベン・アフレック、ジェニファー・ガーナー、コリン・ファレル、マイケル・クラーク・ダンカン
2003年アメリカ/103分/配給:20世紀フォックス映画
公式サイト http://www.foxjapan.com/movies/daredevil/ チラシ 12

 12歳の少年マット・マードックは、事故で放射性廃棄物を浴びたことで視力を失ってしまう。しかし、その代わりに残りの四感が超人的に発達し、あらゆるものを音で感知する超感覚<レーダー・センス>を手に入れる。成長したマットは、昼は弱者を助ける弁護士として働き、夜は法で裁けない悪人に正義の鉄槌を下す盲目のヒーロー“デアデビル”として活躍する。
 「スパイダーマン」「X-メン」のマーヴェル・コミック作品でスタン・リー原作のアメコミの映画化。日本での知名度はいまいちですが、アメリカでは大ヒット。音で物を感知するレーダー・センスの働きが視覚的に巧く表現されていて、原作を知らなくても、そういう特徴的なところがわかりやすかったです。そんなわけでビジュアルは結構良かったと思います。が、どうしても昨年の「スパイダーマン」と比べてしまうと、自分の中では「スパイダーマン」のほうが面白いかなぁ・・・と。こちらは“痛い”描写が多いので。あんまりお子様向けじゃないなぁ・・・と思いました。ダークな面を強調しているんでしょうけれども。それにしてもブルズアイはバカっぽくて笑えた。おいおい、忍者ですか。それに、デアデビルを含め、エレクトラもブルズアイも、みんな普通の人間の設定のはずが、既に超人的な跳躍力やらなにやら。このへんがちょっと納得できない感じもしました。スパイダーマンのように、そういう能力を手に入れたということをはっきりさせていればいいんですけど、デアデビルはあくまでレーダー・センスを身に付けただけで、あとは身体を鍛えてああなったそうですが、そりゃちょっと無茶じゃないですか? まあ、そんなのは細かい突っ込みであって、映画を楽しむには不要ですが。そんなわけで、よく出来てはいますが、これといって響くものもないかなぁ・・・っていう印象で、ちょっと残念。なんていうか、ワクワク感を満たしてくれるものがありませんでした。そりゃ、個人的な好みの問題でもあるでしょうけど。「スパイダーマン」のほうがキャストの好感度もあったしね。


THX-1138
THX-1138
監督・脚本:ジョージ・ルーカス 製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
出演:ロバート・デュヴァル、ドナルド・プレザンス
1971年アメリカ/86分/

 ジョージ・ルーカスが学生時代に作った作品「電子的迷宮/THX-1138:4EB」が認められ、フランシス・F・コッポラのプロデュースのもと、リメイクされたのがこの作品。ジョージ・ルーカスといってもスターウォーズとは全然違う。コンピュータに管理された社会で、一人の男が反旗を翻して脱走する、というお話。非常に淡々と話が進み、救いがあるのかないのかわからないような作品なのだが、その世界観というか、管理された無機質的な社会の描写が好きだったりします。それだからこそ、ドラマも淡々としているところが、画面とマッチしていて良いと思いました。今のルーカスは、またこんなの作る気ないんだろうか。


ディープ・ブルー
Deep Blue
監督:アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット 音楽:ジョージ・フェントン 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ナレーション:マイケル・ガンボン
2003年イギリス+ドイツ/91分/配給:東北新社
公式サイト http://www.deep-blue.jp/ チラシ 1

 自然・動物ドキュメンタリーの製作で定評のあるイギリスBBC放送が、4年半の歳月をかけて撮った海洋ドキュメンタリー。5000mの深海に生きる生物から、おなじみの生き物の知られざる生態まで、驚きの映像をベルリン・フィル演奏の音楽に載せて送る。
 よくNHKなんかでやってるドキュメンタリーのように見受けられるが(実際、NHKでも一部の映像は使われたそうだが)、劇場用にしただけあって、とにかくダイナミックな映像の連続で驚く。さらにベルリン・フィルが奏でるエモーショナルな音楽が素晴らしい。近年はCGによって作り出された“驚きの映像”が売りの映画がたくさんあるが、はっきりいってそんなもんよりこっちのほうがよっぽど驚きだ。なにしろ、これは全て作り物ではない“本物”なのだ。ここには海の生物たちが繰り広げる、華麗でアクロバティックなアクションも、弱肉強食の戦いもある。これが百凡のアクション映画のどこに劣るだろうか? もちろん、答えは否である。しかも、5000mの深海にたどりついたカメラの前には、観たこともない生物が踊りだし、まさにこれは「未知との遭遇」であり、SF映画的な要素まであるのだ。個人的に海に潜る趣味を持っているということもあるから、余計に面白く感じられただろうが、そうでなくても一度はこの生命の神秘と力強さをご覧いただきたい。


ティコ・ムーン
Tykho Moon
監督:エンキ・ビラル
出演:ジュリー・デルピー、ミシェル・ピコリ、リシャール・ボーランジェ、ヨハン・レイゼン、マリー・ラフォレ、ジャン=ルイ・トランティニアン
1997年フランス+ドイツ+イタリア/107分/配給:パルコ+ザナドゥー
公式サイト http://www.parco-city.co.jp/moon/

 植民地である月を支配するマクビー一族だが、彼らには遺伝子上の欠陥があり、細胞が蝕まれる奇病に冒されていたが、“ティコ・ムーン”と呼ばれる男の臓器を移植すれば、彼らは命を永らえれることができる。しかし、ティコ・ムーンは20年前に行方不明になったきりだった。今まさに病が進行しているマクビーは、ティコ・ムーンを捜索を命じるが……。
 フランスのコミック界、バンド・テシネを代表するエンキ・ビラルの監督第2作。実に不思議な感じで、そもそもマクビーが病に冒されていることや、何故ティコ・ムーンだけが彼らの病気を助けることができるのか? といった説明はなし。植民地である月の状況も特に触れられていないし(フランスの植民地?)。そんな中で、物語自体もとても淡々と進むので、場合によっては眠くなってしまうかも……。でも、やっぱりさすがに美術関係は独特で、凱旋門やエッフェル塔といったフランスを代表するオブジェが、何の気なしに背景になっている摩訶不思議な月の風景はレトロ感たっぷりなSF。


ディナーラッシュ
Dinner Rush
監督:ボブ・ジラルディ
出演:ダニー・アイエロ、エドアルド・バレリーニ、カーク・アセヴィド、サマー・フェニックス
2000年アメリカ/99分/配給:シネマパリジャン
公式サイト http://www.cinemaparisien.com/dinner_rush/ チラシ 12

 ニューヨークのトライベッカ。賭けの胴元でもあるルイは長年、街の食堂として人々に愛されてきたイタリアレストラン「ジジーノ」のオーナー。ルイの息子でシェフ長でもあるウードは、ルイの意に反して、店を流行のトレンドなレストランへと大変革させてしまった。そのことで親子の意見が対立するある日、ルイのビジネスパートナーが殺害される事件が起きる。一帯で幅を利かせる2人組のギャング“ブラック&ブルー”の仕業だ。彼らは、ジジーノの副シェフ、ダンカンが賭けで借金を負っていることを脅しの種に、ジジーノを乗っ取ろうと計画していたのだが…。
 ニューヨークに実在するレストラン(監督自身が経営してる)を舞台に、一夜の出来事をちょっとコミカルに、それでいて人間ドラマも絡めながら描く群集劇。舞台となるのは、ほぼレストランの中だけ。店内は大繁盛で、いろんなお客さんがいて、厨房で働くシェフたちや店内のウェイターなど、人がたくさんでとてもにぎわっているけれど、登場人物も限られてはいる。その限られた舞台と人物を実に絶妙に料理してみせてくれるのがこの映画。親子のドラマもあり、男女のドラマもあり、そしてちょっとしたサスペンスもあり。厨房の中で、料理を作るシーンも見逃せないです。なかなか珍しいですからね、こういうのは。お洒落で小粋。小さいのにボリュームがあって、最高に美味しい料理をいただいた気分です。上手い。お洒落だけど、気張っていなくて、すっきりとまとまった大人の映画って感じですね。


ティム・バートンのコープス ブライド
Tim Burton's Corpse Bride
監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
脚本:パメラ・ペトラー、キャロライン・トンプソン、ジョン・オーガスト 音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:ジョニー・デップ、ジョニー・デップ、エミリー・ワトソン、アルバート・フィニー、クリストファー・リー
2005年イギリス/77分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.corpse-bride.jp/

 19世紀のヨーロッパ。気弱な青年ビクターは、ビクトリアとの結婚を明日に控え、リハーサルのため森の中で誓いの言葉を練習し、枯れ枝に結婚指輪をはめる。すると地中から突如、死体の花嫁(コープス・ブライド)が蘇る。ビクターが指輪をはめたのは、結婚を夢見ながらも不慮の死を遂げ、枯れ果てた彼女の指だったのだ!
 『ナイトメアー・ビフォア・クリアスマス』『ジャイアント・ピーチ』に続くティム・バートンのストップ・モーション・アニメ最新作だが、技術の進化で人形はかなり滑らか。知らない人がみたら、あえてそのように作ったCGアニメだと思うんじゃないかと。逆にいえば、それゆえにCGっぽさが感じられてしまって、あまり人形が動いているという感じがなかったような気も。話は予想できる範囲内で収まりますが、それでも下手な恋愛映画を観るよりも美しいラブストーリーに思わず涙(笑)。
☆☆★★★


デスペラード
Desperado
監督・脚本・製作・編集:ロバート・ロドリゲス
出演:アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、スティーブ・ブシェミ、ヨアキム・デ・アルメイダ
1995年アメリカ/109分/

 恋人を殺され、自らも手のひらを撃たれてギターを弾けなくなったギター弾きマリアッチは、ギターのかわりに銃を手にして、仇の男、ブッチョを捜す。
 ロバート・ロドリゲスが自主制作で撮った「エル・マリアッチ」を、メジャースタジオ・コロンビアピクチャーズ製作によりリメイクしたパワーアップバージョン。かっこいいけど、どこか笑える。でも本人たちはいたって真面目。これぞ、ロドリゲス節。気のきいた音楽とテンポで魅せられます。ほんと、この人のソウゾウ(想像/創造)力って好きです。銃撃戦の派手さも見物。特に最後の銃撃戦で出てくるマリアッチの2人の仲間。…いや、これがたまらん。笑える。笑えるけど、いいんです、それで。それがいいんですよね。ただ、ラストに明かされる秘密にはちょっと疑問。ヒロインのサルマ・ハエックの魅力は完璧。タランティーノも友情出演してます。


天空の城ラピュタ
Laputa: Castle in the Sky
監督・原作・脚本:宮崎駿 音楽:久石譲 プロデューサー:高畑勲
声の出演:田中真弓、横沢啓子、初井言榮、寺田農
1986年日本/124分/配給:東映

 見習い機械工として暮らす孤児の少年パズー。ある日、彼は働いている炭鉱で空から舞い降りてきた少女シータを助ける。彼女のもつ“飛行石”は不思議な力をもっており、空に浮かぶ伝説の城「ラピュタ」への道標となるものらしい。それをもつゆえに、シータはその身を追われ、パズーもその陰謀に巻き込まれていく。
  もはや作品説明は不要であろうが、一応これが「スタジオジブリ」として製作された劇場アニメの第一弾(ナウシカの製作は、トップクラフトというスタジオ。ナウシカが成功したので、専門のスタジオであるジブリが設立されたわけです)。
 なによりもあの“空に浮かぶ城”の風景描写が大好きです。木々が生い茂り、苔にむした天上都市。かつての文明が、いまや静かに時を刻むだけの自然の一部になりはてているという風景が、なぜかとても好きなのですね。この映画は、公開当時に見に行ったのですが(当時7歳)、そのときは、あのロボットが妙に怖く感じたりして印象に残ってましたね。今でも、あのロボット好きです。特にラピュタについたとき、迎えにきてくれるやつがね。今になってみてみると、パズーとシータが結構子供だったんだな、という印象がある。しかし、シータとパズーも物語が進んでくると、作画的にも顔つきが少し大人っぽくなるんだ。冒頭のころよりも。それはもちろん、人間として成長してるし、ドラマがシリアスになっていくからでしょうね。それにしても、空から美少女が降ってくる、ってもので、この作品以上のものはないですよね。今見ても感動の一作です。


天空の草原のナンサ
The Cave of Yellow Dog
監督・脚本:ビャンバスレン・ダバー
出演:ナンサル・バットチュルーン、ウルジンドルジ・バットチュルーン、バヤンドラム・ダラムダッディ・バットチュルーン、ツェレンプンツァグ・イシ、ナンサルマー・バットチュルーン、バトバヤー・バットチュルーン
2005年ドイツ/93分/配給:東芝エンタテインメント
公式サイト http://www.tenku-nansaa.com/

 モンゴルの草原の洞窟で1匹の犬を拾い、ツォーホルと名づけた遊牧民の少女ナンサ。反対する父親に隠れてツォーホルを飼い始めたナンサだが、ある日、放牧にでかけた帰りに迷子になってしまい、偶然出会った遊牧民の老婆に世話になる。そして彼女から、古くから伝わる「黄色い犬の伝説」を聞かされるが……。
 アカデミー賞にノミネートされた『らくだの涙』で注目されたモンゴルの女流監督ビャンバスレン・ダバーの劇映画。フィクションだが登場する遊牧民一家は役者ではない、本物の遊牧民の家族で、ストーリーとともに彼らの生活ぶりをつぶさに映し出す様はドキュメンタリー的でもある。ともかくナンサをはじめとした登場する子どもたちと犬(ツォーホル)のかわいらしさと愛らしさが全てで、ストーリーは正直二の次でもいいような。子どもたちと犬を眺めているだけでOKと言えてしまう映画です(いい意味で)。また、どのシーンをとっても画になるモンゴルの風景やカメラの構図も素晴らしかった。ちょっと眠いのは確かですけどね。ちなみに本作は、言語も舞台も人物も全てモンゴルですが、資本がドイツなので、分類上ではドイツ映画になります。
☆☆★★★


天国の口、終りの楽園。
Y Tu Mama Tambien
監督・脚本:アルフォンソ・キュアロン
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、マリベル・ベルドゥー
2001年メキシコ/106分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/tengoku/ チラシ 12

 学校を卒業した17歳のフリオとテノッチは、好き放題に遊んでいたが、それもすぐに退屈になってしまう。そんな時、2人は、テノッチの親戚の結婚式で、テノッチの従兄弟の妻であるルイサに出会う。彼女を誘い出そうと、実在しないといわれる伝説の海岸“天国の口”までドライブにいこうと提案する。あることに思い悩んでいたルイサは思い立ち、2人の誘いに応じる。こうしてフリオとテノッチは、年上の女性と3人で、“天国の口”を目指すことになったが・・・。
 2001年、メキシコでNo.1の大ヒットとなった話題作。思春期の少年たちと年上の美しい女性のひと夏を描いた、青春のロードムービー。同じような映画はありそうなものですが、でも、なんだか御機嫌で、それでいて青春の痛みがあって、また美しいメキシコの風景があって、なにか心にふれるものがあります。こういう破天荒な青春時代って、あってもよかったかなぁ・・・なんて思ってしまうあたり、自分はもうそこを通り過ぎてしまったと実感してるのかもしれません。異様にハイテンションな部分が所々にあるんで、気になる人は気になるかもしれませんが、僕は好きです、この映画。主人公3人をどこか冷静に見つめるナレーションが冒頭から入ってるのですが、これがあるために、終わりもなんとなく想像できるものでしたが、逆にそれが落ち着いていて良かったかな、と。メキシコの風景は印象的です。それから、R-15指定なんですけどね、ボカシがでかすぎー。なんかやっぱり自然じゃなくて嫌ですな、あれは。監督は、フランク・ザッパの音楽にインスパイアされて、この作品を描いたというけど、音楽もよかったです(ブライアン・イーノがかかるあたり)。本作の脚本は弟のカルロス・キュアロンと共同執筆。監督のアルフォンソ・キュアロンは、この後、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」を監督。


点子ちゃんとアントン
Punktchen und Anton
監督・脚本:カロリーヌ・リンク 原作:エーリッヒ・ケストナー
出演:エレア・ガイスラー、マックス・フェルダー
1999年ドイツ/108分/配給:メディア・スーツ
公式サイト http://www.tenko-anton.com/ チラシ 1

 世界的児童文学作家エーリヒ・ケストナーの同名原作を映画化。点子ちゃんとアントンは大の仲良し。アントンはお父さんがいない母子家庭。貧しい上にお母さんが病気で、今はアントンが内緒でバイトしている。一方、点子ちゃんの家はとてもお金持ち。大きな家で家政婦や家庭教師も一緒に暮らしているが、仕事が忙しい父や、ボランティアでしょっちゅう出張しちゃう母にかまってもらえず、貧しくてもいつも仲良しなアントン母子がうらやましい・・・。なんとかお母さんに一緒にいてほしい点子ちゃんだけど・・・。
 貧富の差などにとらわれずに仲良しな点子ちゃんとアントンの友情を軸に、親子の絆や愛情を絡めたドラマ。ほのぼの系の作品かな、と思いきや、確かに全体的にはほのぼのなんだけど、結構重たく考えさせられるような処もあって、全く侮れない。親が子にどう接するべきか、子供は親をどう見ているかなど、結構見えて来るんじゃないでしょうか。そういう意味では社会派な映画かもしれない。と、言っても、絶対に難しい映画だとかいうことはなく、子供も大人も楽しんで観てほしい作品です。点子ちゃんとアントンの二人の子役も、非常に良い。芝居臭さもない自然体で、魅力ある二人の子供を見事に演じていて、点子ちゃんなんて、絶対的に美形なわけじゃないけど、生き生きしていて、この上なく愛らしい。これこそが子供のあるべき姿・・・と感じさせてくれます。
 僕自身はこの映画にとても共感できますが、そうでない人もいるんでしょうか。そんなことを思うと悲しくもなりますが。この評価は、もうおわかりかと思うけど、僕にとってこの手の映画は無条件でこうなります。でも、本当にいい映画なんですって。是非、御一見を。 こういう映画を皆が好きといってくれるようなら、幼児虐待や少年犯罪や凶悪犯罪なんて起きない社会になるだろうに。皆もっと心を優しくもとうよ。子供には愛情を注いであげてよ。


天使の牙 B.T.A.
The Battling Angel
監督:西村了 原作:大沢在昌
出演:大沢たかお、佐田真由美、萩原健一、黒谷友香、佐野史郎、西村雅彦
2003年日本/119分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.tenshinokiba.jp/ チラシ 12

 巨大麻薬組織クラインのボス君国の愛人である神崎はつみが、警察に保護を求めてくる。警視庁のクライン対策チームは、極秘裏に彼女の警護に動きだし、チームに所属する女性刑事・河野明日香は、はつみ警護の任を受ける。しかし、彼らの動きはクラインに知られており、襲撃を受けたはつみと明日香は激しい銃撃戦に巻き込まれる。そして、はつみは頭部に弾丸を受け、明日香は逆に全身に無数の傷を受けて意識不明の重体に陥る。脳死したはつみと、体がボロボロの明日香。それをしった明日香の上司、芦田は、明日香の脳をはつみの体に移植することを決意するが……。
 「新宿鮫」シリーズで知られる直木賞作家・大沢在昌の小説「天使の牙」を映画化。監督は本作が劇場映画デビューになるCM畑出身の西村了。主題歌はお騒がせユニットのt.A.T.u、キャストもそこそこ豪華な面々。……なのだが、仕上がりはとにかく酷い。こんなに酷い映画も久々。まず、原作を読んでいた者としては、原作との相違にがっかり。もちろん小説の映像化作品で原作を読んでいた場合、映画のほうが良かったというのは、なかなかないかもしれませんが、それにしてもお粗末になったものです。後半にいけばいくほど、ちゃちなSFっぽい設定が出てきて「なんだこりゃ」な、展開。そして、何よりも許せないのはショーケン。あんなダメダメ演技は久しぶりに見ました。なんで今更この人をキャスティングしたのか理解に苦しむところです。大沢たかおも、佐野史郎も、西村雅彦も、救いになっているとは言えない。多少、脚本がダメでも、役者でカバーというのはあるけど、さすがにそれも無理。とにかく突っ込みどころが満載で、いちいち論じるのもバカらしい。原作の魅力は、“別の人間の体になってしまった明日香が、恋人である古芳に正体を明かせないままに2人で進んでいく”ってところであり、そこらへんの葛藤が一番の面白いのに、映画ではそれが感じられず。仕事で観たからいいようなものの、金出して観る価値なし。


天使のくれた時間
The Family Man
監督:ブレット・ラトナー 出演:ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、ドン・チードル
2000年アメリカ/125分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.angel-time.ne.jp/

 もしあの時、もうひとつの選択をしていたら・・・。13年前、仕事のために恋人のケイトと別れたジャックは、今や一大企業のトップ。独身ではあるが富も名誉ももっていて、自分にないものはないと思っている。しかし、13年前、もしケイトと一緒になっていたら・・・。クリスマスの朝、目がさめると隣にはケイトが。場所は郊外の小さな一戸建て。しかも幼い子供が二人。
 仕事で成功を収めた男が、家族愛の幸せに目覚めるというもので、これだけ聞くと単純だが、ようは見せ方。突然、違う世界(?)の自分になってしまうという非現実的な設定だが、物語としては、何故そうなったかは大して重要ではないだろう。それよりもジャックのケイトや子供たち、隣人たちとの心の交流が重要なハートウォーミング・ドラマだ。ちょっとした優しい感動を味わいたいという人には最適。ニコラス・ケイジは、最近アクションやサスペンスが多いようだが、この映画のような役が本当は一番なんじゃないでしょうか。とっても良かったです。共演のティア・レオーニも、かわいいし、ニコラスに引けを取らぬ演技で盛り立てます。


天使の肌
Peau D'ange
監督・脚本:ヴァンサン・ペレーズ 脚本:カリーヌ・シラ
出演:モルガーヌ・モレ、ギョーム・ドパルデュー
2002年フランス/85分/配給:アスミックエース チラシ 1


 田舎育ちの純真な少女アンジェルは、家が貧しいため、都会に出てブルジョワ家庭の家政婦として働くことになる。ある日、アンジェルは帰郷していた青年グレゴワールに偶然出会い、一夜を共にする。翌朝、2人は別れ、グレゴワールは元の場所へ帰っていった。やがて2人は、思いがけない運命の交差を見せるが……。
 フランスの名優ヴァンサン・ペレーズの初監督作品。純真な心をもった、その名のとおり天使のような少女アンジェルと、人を信じられなくなっていた青年の恋……なんですが、お話がどうもどこかで観たことがあるような既視感がところどころ。ビジュアル的な部分ではなくて、お話全体に。ネガティブな言葉でいえば、ありがち。全体的に綺麗なんですが、どうも新鮮味にいまいちかける感じが…。オープニングでアンジェルが鳥を背中に担いでこちらをみたとき、まさしく天使のように空に映えるシーンは、とても印象的だったのですが……。それから、テンポがやたらと速く(というか編集がすぱすぱと)、85分と短いんですが、これはやはり、これ以上話を膨らませることが出来なかったから? 2人が愛を交わすときの台詞も、なんかどこかにありそうな雰囲気。それに、グレゴワールが惚れる女性の理由がわからん。あれじゃあ、失礼ですが、どう考えてもアンジェルのほうが魅力的じゃあ……。まぁ、いじわるを言うような作品ではないと思うので、これはこれでいいですけど、ちょっと惜しい気はしました。これはオリジナル作品のようですが、今度はしっかりとした原作物でも撮ってみてはどうでしょう? でも、この作品も、小粒で静かで主人公の純真さに心洗われる、癒される……そんな気がしました。少女の無垢な心に、ふっと力が抜けて、気を静められる。そんな気持ちいい映画でした。


デンジャラス・ビューティー
Miss Congeniality
監督:ドナルド・ペトリ 製作:サンドラ・ブロック
出演:サンドラ・ブロック、マイケル・ケイン、ベンジャミン・ブラッド
2000年アメリカ/110分/配給:ワーナー・ブラザース映画

 グレイシー・ハートは男勝りの腕前をもつFBIの女性捜査官。色気もしゃれっ気もゼロの彼女だが、ある時、連続爆弾テロがミス・アメリカ・コンテストを標的にしているという情報がFBIに舞い込み、潜入調査としてグレイシーがミスコンに出場することに……。
 徹底的に自分らしく生きる男勝りの女性が美しく変貌するけれど、中身はもとの彼女なので、次々と難題が待ち受ける、というコメディ。思っていたよりも笑える部分が多かったので、それなりに楽しめました。それに、お約束の人間ドラマのような部分もあり、出演者たちもなかなか好演していると思います。安心してみられるものだと思いますけど、まぁ、ビデオ鑑賞でじゅうぶんかなって感じもありますけど。観れば観ただけ、それなりに楽しめるでしょう。


10ミニッツ・オールダー/イデアの森
Ten Minutes Older: The Cello
監督:ベルナルド・ベルトルッチ、マイク・フィギス、イジー・メンツェル、イシュトヴァン・サボー、クレール・ドニ、フォルカー・シュレンドルフ、マイケル・ラドフォード、ジャン=リュック・ゴダール
2002年イギリス+ドイツ/106分/配給:日活
公式サイト http://www.10minutesolder.com/ チラシ 1

 いずれも巨匠と呼ばれるにふさわしい15人の監督が、「時間」をテーマにそれぞれ10分間の短編を競作。「イデアの森」と「人生のメビウス」の2本に分けて公開されたうちの1本。ご覧いただけばわかるように、本当に錚々たる顔ぶれでものすごいんですが、やはり誰も彼も個性的でアーティスティックな人たちばかりな上、テーマが「時間」というやや漠然としたものだからか、結構小難しい作品が多い気がしました。そんな中でも、わかりやすくてストーリーもあって、しかもちゃんとSFしてるラドフォードの作品が、ある意味、一番意外でかつ面白かった。……でも、こういう感想を抱いている時点で、自分もまだまだなのかなぁ…と。まぁ、これだけの面子が揃っているというだけで凄いし、それだけでも、映画好きなら観てみてもいいんじゃないでしょうか。


10ミニッツ・オールダー/人生のメビウス
Ten Minutes Older: The Trumpet
監督:アキ・カウリスマキ、ヴィクトル・エリセ、 ヴェルナー・ヘルツォーク、ジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、スパイク・リー、チェン・カイコー
2002年イギリス+ドイツ/92分/配給:日活
公式サイト http://www.10minutesolder.com/ チラシ 1

 いずれも巨匠と呼ばれるにふさわしい15人の監督が、「時間」をテーマにそれぞれ10分間の短編を競作。「イデアの森」と「人生のメビウス」の2本に分けて公開されたうちの1本。こちらは7本の短編ですが、何より出だしのカウリスマキがいい。『過去のない男』が好きな人には、思わずニヤリとする一編。エリセの静謐な雰囲気もよかったけど、ヘルツォークと2本続けてだと、ここの20分がちょっと眠い…。ジャームッシュ、ヴェンダースの2編はわりとわかりやすいショートストーリーもので、ちょっと異色のリー、最後にひとりだけ東洋の代表カイコーの笑いを誘う軽い一編で終わる。全体的に「イデアの森」よりはわかりやすい印象は受けましたが、質でいえば「イデア〜」のほうが高いかもしれない。