小さな赤いビー玉
Un Sac de Billes
監督・脚本:ジャック・ドワイヨン
出演:リシャール・コンスタンティーニ、ポール=エリック・シュルマン
1975年フランス/100分/

 41年のパリ。ドイツ軍に占領され、ユダヤ人が摘発されていくなか、床屋の息子モーリスとジョゼフは非占領地の南仏へ逃れる。先に逃れていた二人の兄のもとへ辿り着き、後から両親もやってきて一家が無事に揃うのが、やがてそこにもドイツ軍の手がのび、二人はドイツ軍に捕らえられた。しかしなんとかそこからは逃れたものの、父はドイツ軍に連れて行かれたという。家に戻ることができない二人は、さらに安全な地を求めて移動する。辿り着いた村で、兄弟はそれぞれに仕事をみつけ、本屋に住み込むことになった弟ジョゼフは、本屋の娘フランソワーズに恋をするが…。
 フランス映画独特の…というか、ドワイヨン監督独特の実に静かに淡々と流れる物語。しかし、そこにはドイツ軍によるユダヤ人差別の過酷な戦争の痛ましさが描かれています。単なる子供映画じゃないですね、これは。この2人の兄弟が時には喧嘩しながらも、2人で生きていくところがよいですね。とても子供らしさをだしてるんですが、そのへんもごく自然に描かれているので、リアルだと思います。演出がかなりあっさりしてるぶん、退屈に感じるかもしれませんが、そこから雰囲気を感じ取ることができるのが、この映画の特徴ではないかと。ひたすらに戦争の悲しさが漂ってきます。こんな子供達ですらも…と思わざるをえない。やっぱり戦争は愚かです。


チーム★アメリカ/ワールドポリス
Team America: World Police
監督・製作・脚本:トレイ・パーカー、マット・ストーン 撮影:ビル・ポープ 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
声の出演:トレイ・パーカー、マット・ストーン、クリステン・ミラー
2004年アメリカ/98分/配給:UIP
公式サイト http://www.teamamerica.jp/ チラシ 12

 世界の平和を守るアメリカの国際警備組織“チーム・アメリカ”の元に、ある独裁者がテロリストに大量の武器を売りさばこうとしてるとの情報が入る。チーム・アメリカは、ブロードウェイで活躍する俳優ゲイリーを引き抜き、彼の演技力でテロ組織に潜入捜査をさせようと計画する。
 超過激アニメ『サウスパーク』のトレイ・パーカー&マット・ストーンが、「サンダーバード」ばりのパペットアニメで描く、センセーショナル(?)な超問題作。『サウスパーク』がどういう作品であるかをご存知であれば、おおかた予想は着くと思いますが、とにかくスゴイ……凄すぎ。その内容は筆舌に尽くしがたく、とにかく見てほしんだけど、おいそれとオススメするわけにもいかないのが、問題作の問題作たる所以。しかし、まあ、笑らった笑った。笑いすぎて疲れましたが(ちなみに一番笑ったのはゲロとマット・デイモン)、これを笑い飛ばしてしまってよいのかという、道徳心との葛藤もあったりします(笑)。あと、パペットアニメですが、ばりばり「18禁」なので、決してお子様には見せないように(笑)。それにしても、こんな映画をこんな迫力で作ってしまうハリウッドの技術には改めて感服し、同時にいくらそんなことができるからといって、本当に作ってしまう映画人たちにも感服。やっぱアメリカってスゴイよ(いいとこ悪いとこ含めて)。日本じゃ絶対にこんなの出てこないもの。
★★★★★


チェブラーシカ
Chebypawka
監督:ロマン・カチャーノフ
1974年ロシア(旧ソ連)/64分/配給:クロックワークス
公式サイト http://www.cheb.tv/ チラシ 1

 ロシアでは国民的人気キャラクターであるらしい、エドワード・ウスペンスキー原作「チェブラーシカ」を映画化したパペットアニメ。架空の動物チェブラーシカの日常をほのぼのと描く。20分の短編3本立て。
 20年以上前のものだというのに、その完成度の高さに驚きます。たかが人形アニメと思うなかれ。表情や仕草、こまかい動作まできちんと動いているんです。猿なのか小熊なのか、微妙なデザインのチェブラーシカもかわいいし、もちろん、他の登場キャラもかわいい。しかもこれ、単にかわいいだけじゃなく、かなりのメッセージ性がこめられています。ちょっとあからさますぎるけど、それはお子様向け 教育番組と思えば、仕方ないでしょうか。かわいい作品ではあるのですが、テーマ曲のアコーディオンの曲や、友達がいないために友達を作ろうとがんばるチェブや、ワニのゲーナの姿には、非常に哀愁を感じずにはいられません。


チキン・リトル
Chicken Little
監督:マーク・ディンダル 脚本:スティーブ・ベンチック、ジョン・デブニー
声の出演:ザック・ブラフ、ジョーン・キューザック、ケイティ・フィネラン、ドン・ノッツ、ゲイリー・マーシャル
2005年アメリカ/77分/配給:ブエナビスタ
公式サイト http://www.disney.co.jp/movies/chicken/

 何をしても失敗ばかりのチキン・リトルは、ある日、街にやってきたエイリアンの宇宙船に潜り込み、迷子になった赤ちゃんエイリアンのカービーと知り合う。しかし、子供を誘拐されたと勘違いした宇宙船団が襲来して街はパニックに陥ってしまう。
 ピクサー作品でないディズニー・アニメとしては初のフルCGとなる作品。基本的に自分はあまりディズニー・アニメに興味ないし、特に本作は予告編を見る限り非常に子ども向けっぽい感じだったので、どうなんだろうと思っていましたが、案外大人でも楽しめる出来。というのも、『インディー・ジョーンズ』やら『宇宙戦争』やらのパロディが満載で、かつ使われている音楽が60〜70年代のソウルミュージックだったりで、個人的にツボだったから。また、ギャグは満載なわりに思ったほどお涙ちょうだいというか、感動的なシーンが少なかったのも良かったか。ストーリーとその結果はどうせわかりきっているのだから、それに加えて押し付けがましい感動をあまりやられても辟易するだけだから、このくらいのノリのほうが楽しめてOKです。気になるCGの出来は、意図的にそうしているのか、ピクサーのそれよりも、登場キャラがみんなぬいぐるみみたいな質感なんですよねー。ふかふかしてる感じで、これはこれで独自な路線ってことでいいんじゃないでしょうか。
☆☆☆★★


父と暮らせば
The Face of Jizo
監督・脚本:黒木和雄 脚本:池田眞也 原作:井上ひさし
出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信
2004年日本/99分/配給:パル企画
公式サイト http://www.pal-ep.com/father/ チラシ 1

 1948年、広島。あの日から3年が過ぎた夏のある日、美津江は、ふとしたことで知り合った青年・木下と惹かれ合うが、自分ひとりが生き残ったことに負い目を感じて生きてきた彼女は「自分は幸せになってはいけない」と木下から身を引こうとする。しかし、そんな美津江の前に死んだ父が現れ、彼女を励ます。
 『TOMORROW/明日』『美しい夏キリシマ』に続く黒木和雄監督の“戦争レクイエム”3部作の完結編。これまでの2作が戦時下の市井の人々を描いてきた群像劇で、かつ戦争そのものよりも戦時下の人々の暮らしを通して、当時の悲しみを伝えてきたことに対して、本作は設定が終戦後であり、登場人物もほぼ美津江(宮沢りえ)と父(原田芳雄)の2人のみ。ほとんどの場面が2人の家で、彼らの会話で展開される様子は、まるでほとんど舞台のようだ……と思ったら、原作は井上ひさしの舞台だそうな。そちらがどのようなものかわからないが、おそらくほぼ忠実に再現したのだろう。だからか、前2作と並べて3部作としても、ちょっと異色だ(例によって同じ音楽が使われているが)。黒木監督の作品というより、井上ひさしのそれと言ったほうがいいのかもしれず、前2作よりも直接的に訴えかけてくるものがあったと思う。主演2人の魂のこもった演技も圧倒され、ある意味で最も分かりやすいかたちで原爆の悲劇を伝えることができる作品だろう。


チャーリーズ・エンジェル
Charlie's Angels
監督:マックG 製作:ドリュー・バリモア
出演:キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、ビル・マーレイ、サム・ロックウェル、ルーク・ウィルソン
2000年アメリカ/98分/配給:ソニー・ピクチャーズ

 70年代後半にテレビシリーズで放映され、人気を博したドラマのリメイク作品。最高に楽しいです。観ていて愉快になる映画って、いいですね。難しいことは抜きにして、とことん楽しめるエンターテイメント作品。ジャンルとしてはアクションコメディだと思うのだけど、これが下手にシリアスに取り組もうとしたら駄目だったと思う。お気楽に、エンジェルたちのかわいさと活躍を楽しめるように出来てるから。それに、主人公が女の子たちだからか、なんとなく雰囲気がソフトなんですよね。楽しいアクション、って感じかなぁ。そんなわけで、とっても楽しく観られましたね。これが男の主役ものだったら、つまんないかもしれない。彼女たちの明るさとかわいさと色気とがあって成り立つ作品ですから。娯楽に徹して、楽しみたい、って人はどうぞ。これはシリーズ化するのかなぁ? 不可能ではないから是非やってほしいな。


チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
Charlie's Angels: Full Throttle
監督:マックG 製作:ドリュー・バリモア
出演:キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、バーニー・マック、デミ・ムーア、ルーク・ウィルソン
2003年アメリカ/106分/配給:ソニー・ピクチャーズ
公式サイト http://www.charliesangels.jp/ チラシ 12

 ナタリー、ディラン、アレックスの3人のエンジェルに新たなる指令が下る。それは、拉致された米警察機構の要人カーターを救出すること。モンゴルの山奥にあるテロリストのアジトに潜入した3人は、見事にカーターを救出するが、しかし、敵の本当の狙いは、“連邦証人保護プログラム”で匿われている対組織犯罪の最重要証人リストで、そのプログラムにアクセスするキーになっている指輪しているカーターを拉致したのだった。指輪は既に敵の手に渡ってしまったと知った3人は……。
 と、一応、ストーリーもあるんですが、プロデューサーでもあるドリュー自身が「ストーリーは本当のところ、どうでもいい」と豪語するように、前作同様(それ以上に)、過激なコスプレとアクションの連続で息つく暇もないといった感じのドタバタアクション。難しいことは抜きにしてもただアクションを見ているだけで満腹になれますが、意外とこの“証人保護プログラム”って、説明しないとわかりにくいものじゃありません? たぶん、ちゃんと理解できない人も出てきそう。でも、まぁ、「ストーリーはどうでもいい」わけですから、いいですか。個人的には前作がとても好きで、今回も前作と同じようなものを期待していたので、いい意味でその期待は裏切られませんでした。つまり可愛い女の子(といっても意外と年いってるのよね)たちの破天荒な活躍が拝めるという意味で。それ以上でもそれ以下でもないものを期待していたので、その点ではバッチリ。ただ、あまりにアクションに力を入れすぎで、ストーリーのテンポを殺しているような印象も若干ありますし、久々に銀幕復帰で話題のデミ・ムーアも出番がいまいち……だったかなぁ。新登場のボスレー(弟)のアホっぷりもいまいち目立たないし。やっぱり随所にアクションを盛り込みすぎているので、そういうところが埋もれてしまっているのかなぁ。最後でドカッと盛り上がらない感じもあるし。……あ、つまりそれって、しょっぱなからずっと“フルスロットル”だからかぁ。なるほど。あと、個人的には、前作で死んだと思っていた変態野郎が出てきたのは楽しかったです。
 さてさて、ひとまず「2」は「1」をパワーアップさせて成功したといってもいいと思うんですが、「3」があるとすれば、何かもう一工夫しないと、そろそろ飽きられてしまうかも。どーなる?


チャーリーとチョコレート工場
Charlie and the Chocolate Factory
監督:ティム・バートン 脚本:ジョン・オーガスト 原作:ロアルド・ダール
撮影:フィリップ・ルースロ 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、デビッド・ケリー、ヘレナ・ボナム=カーター、ノア・テイラー、クリストファー・リー
2005年アメリカ+イギリス/115分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.charlie-chocolate.jp/

 15年間、誰も出入りししたことがない謎のチョコレート工場の経営者ウィリー・ウォンカは、全世界で5枚だけの“ゴールデンチケット”を引き当てた5人の子どもを工場に案内すると発表する。工場のある街で、貧しいながらも家族と温かな生活を送っていたチャーリー少年は、運良く最後の1枚を当て、チョコレート工場へ足を踏み入れるが……。
 ロアルド・ダールの世界的ベストセラーの児童小説「夢のチョコレート工場」を、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演のおなじみのコンビで映画化。前作『ビッグ・フィッシュ』がかなり“大人な”感動作だったティム・バートンだが、今回はまた“永遠の少年”に戻ったようで、バートンらしさが炸裂した極彩色のファンタジーワールドが展開。特に今回はウンパ・ルンパのミュージカルは最高で、楽しくてたまらんですよ。でも、ウォンカと彼の父親のエピソードは、ちょっと『ビッグ・フィッシュ』を経ただけのことはあるなと思わせるものがあり、「どうせ僕は理解されなんだ」っていうひねた変人ぶりと、でも本当は愛されたいという2つの思いが共存し、いい意味で新旧の(?)バートンらしさが結実したような、まさに彼の代表作になること間違いなしの傑作。あー、ウンパ・ルンパが頭から離れない(笑)。
☆★★★★


超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
Super Dimension Fortress Macross: Do You Remember Love?
監督:石井昇、河森正治 音楽:羽田健太郎
声の出演:飯島真里、長谷有洋、土井美加、羽佐間道夫、小原乃梨子、神谷明、速水奨
1984年日本/115分/配給:東宝 公式サイト http://www.macross.co.jp/

 82年にTV放映し、人気を博したアニメのストーリーを再構築して劇場映画化。ストーリーや人物関係に微妙にテレビ版と異なる点が多々あるのが特徴で、また、当時のアニメーション技術にして今見ても色あせない最高位の映像を生んでいる。さらに、特筆すべきは、“美少女とロボット”というオタク的要素を見事にミックスし、以降のアニメの“ヒット要素”を奇しくも生み出したという、ある意味でターニングポイント的作品。しかし、前述したように、作画のレベルは極めて高く、作画という観点でもそれ以降の陰影を濃くつけるアニメ的塗りの走りにもなった(最近はさっぱりしてるけど)。いろんな意味で、アニメ史上に名を残す作品。
 で、そんな作品だけど、個人的にどうかというと実は結構好き。確かにマニア向けの内容で、華麗なメカアクションとメロドラマばりの恋愛ドラマが売りなんだけど、やっぱりレベルが高くて今見ても色あせてないっていう点はすごいと思います。「歌」が世界を救う鍵になるわけで、その肝心の歌を歌うのは、いかにもというアイドル。今、これを正気でやられたらちょっと見る気はしないけれど、もはや古典となりつつある現代においてなら、逆にOKって感じです。20年前の作品としてみることで懐かしさや感慨深さを感じ、ややくさい恋愛劇やばりばりのアイドルソングも感動的に心に響くのです(でも、主題歌「愛・おぼえていますか」は名曲です!)。また、実際、最終決戦のシーンでの盛り上がりは大きくて、そういう演出もうまいと思いますし。純粋にロボットアニメが好きだ、っていう人は見て損はないものだと思います。


蝶の舌
La Lenhua de Las Mariposas
監督・製作総指揮:ホセ・ルイス・クエルダ 音楽:アレハンドロ・アメナバール
出演:マヌエル・ロサノ、フェルナンド・フェルナン・ゴメス
1999年スペイン/95分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://www.asmik-ace.com/Butterfly/ チラシ 1

 1936年、スペインのガルシア地方の小さな村。8歳の少年モンチョは、病弱で学校に行くのが一年遅れていた。兄から学校では先生に叩かれるということを聞いていたモンチョは、学校を恐れる。しかし、そんな彼をグレゴリオ先生は優しく温かく迎える。そして、先生は、 単なる勉強だけでなく、自然とふれあい、自然の美しさを教えていく。
 グレゴリオ先生とモンチョ少年の関係は、実に羨ましい理想的な関係だと思う。それは一重に、グレゴリオ先生のすばらしさによるのですが。あんな先生がいてくれたら、と誰しもが思うであろう人だと思います。そして、負けじとモンチョ少年のほうも、賢く優しい子。そんな2人だから、友情にも似た信頼関係が生まれたんだと思います。けれど、戦争という狂気は、そんな穏かな人間関係にすらもわけ隔ててしまう。モンチョ少年役のマヌエル・ロサノのすばらしい演技と先生役のフェルナンド・フェルナン・ゴメスの存在感のどちらもが、このドラマには欠かせないし、また、美しい自然の描写と人間の愚かさも心に残る作品でした。あまりにも優しく包み込む先生の愛情と友情。あまりにも繊細で、急激な現実の変化にどうすることもできずに、“あの言葉”を叫ぶしかなかったモンチョ少年。…そう思うと悲しいものです。でも、残念なのは、ちょっと個々のエピソードが散漫な印象を受けたことかな。先生と少年の交流をもっと徹底して描いて欲しかったと思うのですが。そうすればさらにラストでの悲しみがダイレクトに伝わってくるんじゃないかと思うんですけど。いい映画なのは間違いないですが、そこがとっても惜しいと思ってしまいました。