ドア・イン・ザ・フロア
The Door in the Floor
監督・脚本:トッド・ウィリアムズ 原作:ジョン・アービング 撮影:テリー・ステイシー
出演:ジェフ・ブリッジス、キム・ベイシンガー、ジョン・フォスター、エル・ファニング、ミミ・ロジャース
2004年アメリカ/112分/配給:角川ヘラルド・ピクチャーズ
公式サイト http://www.herald.co.jp/official/door/

 成功した作家テッドは、過去の悲しい事故以来、心を閉ざしている妻マリアンとうまくゆかず、夏の間、別居生活を送ることにする。テッドは作家志望の高校生エディを助手として雇うが、エディは悲しげな表情のマリアン一目惚れしてしまう。
 ジョン・アービングが自伝的要素を取り入れて書いた「未亡人の一年」を映画化。映画は原作の前半にあたるらしい。原作の半分だからかもしれないが、どうも消化不良な感じ。結局のところ、それぞれが自分を見つめて、それぞれの先にあるものに向かっていくような捕らえ方もできるわけで、安易な結末というよりも、観ているこちら側に問題を投げかけているような印象。それはそれで悪くないのだが、例えばエディによって癒されたマリアンは、どうしたかったのか不明瞭で、母親としてどうなのよ? と思わなくもないのですが。ジェフ・ブリッジスとキム・ベイシンガーによる熟年の演技はよいですが。娘役のエル・ファニングはさすが声も容姿も演技も、姉のダコタを思わせますが、まだまだこれから!?
☆☆☆★★


トゥームレイダー
Lara Croft: Tomb Raider
監督・脚色:サイモン・ウエスト 出演:アンジェリーナ・ジョリー、イアン・グレン、ダニエル・クレイグ、ジョン・ボイト
2001年アメリカ/101分/配給:東宝東和
公式サイト http://tombraider.eigafan.com/ チラシ 1

 世界中で大ヒットの人気ゲーム「トゥームレイダー」の映画化。アメリカでは女性主人公映画のオープニング記録で歴代1位をたたき出し、大ヒット。それだけに日本でも注目期待の話題作。ただ、ひたすらにアンジェリーナ・ジョリー主演、ということばかりが目立っていたので、だいたい想像してたけど、完全に彼女のワンマン映画。僕は原作のゲームをやったことないのですがゲームの主人公のビジュアルなどは知っているので、最初にアンジェリーナ主演で映画化と聞いたときは、とても合ってるな、と思いました。で、実際に見てみると、確かにアンジェリーナでばっちり決まってる。かっこいい。しかし、この映画はそれだけ・・・。ストーリーやら台詞回しやらも、どうも安っぽさが拭えない。アンジェリーナ以外のキャラが全然活きてない・・・など、ちょっと期待しすぎたかもしれない。予告編はすごくワクワクさせられる出来でしたが、予告編に全てが凝縮されてますって感じで、まことに残念。ただひたすらに、アンジェリーナの美しき肉体(と表情)に見惚れる映画でした。アクションもなかなか。「アンジェリーナ主演のトゥームレイダー」という良い素材ながらも、他の部分をおろそかにしてしまった感じでもったいないです。世界をまたにかけた冒険・・・なんだけど、移動シーンなどもそっけなさすぎて、あまり世界的な広がりを感じない。ただ、アンジェリーナのインド僧姿(?)が一番似合ってた気がするのは僕だけ?(笑) 巨大な仏像が襲ってくるところは思わず笑ってしまった。ちょっとおかしいぞ、あれ。
 2以降も製作決定してるそうなので、頑張ってください。まぁ、くどいようですが、アンジーの肉体美は一見の価値ありかと。厳しいトレーニングなどで肉体改造したそうですから(それに元がいいもんな、彼女は)、彼女の役者根性に対して評価を上げましょうというところ。余談ですが、劇中で親子役を演じるジョン・ボイトとアンジェリーナ・ジョリーは本当に親子。


12モンキーズ
Twelve Monkeys
監督:テリー・ギリアム 出演:ブルース・ウィリス、マデリーン・ストウ、ブラッド・ピッド
1995年アメリカ/130分/

 ブルース・ウィリスが渋くていい。彼が一番渋くみえたのはこの映画ですね、今のところ(ただし付け髭とグラサンは変だったが)。彼はこんな感じがだせるから、好きなんですけどねぇ・・。ブラッド・ピッドのきれた演技も秀逸。全編を通してどこか錆付いたようなさびしい世界観が漂っている。なんとなく淡々としていて、エンディングにはどこか物足りない感じがしなくもない。テンションがあがらない・・・というのだろうか? 世界観はいいんですよ、非常に。そこらへんは、さすがテリー・ギリアム。


東京ゴッドファーザーズ
Tokyo Godfathers
監督・原作・脚本・キャラクターデザイン:今敏 脚本:信本敬子 音楽:鈴木慶一
声の出演:江守徹、梅垣義明、岡本綾
2003年日本/90分/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/tgf/ チラシ 12

 自称・元競輪選手のギン、元ドラッグ・クイーンでオカマのハナ、家出少女の女子高生ミユキのホームレス3人組は、クリスマスの夜にゴミ捨て場で生まれたばかりの赤ちゃんを見つける。警察に届けようというギンの忠告を聞かず、かねてから子供を持つことが夢だったハナは赤子を“清子”と命名。清子の親を探し出そうと躍起になる。ギンとミユキも渋々それに付き合うことになるのだが、これが思わぬ事件に巻き込まれる発端となり……。
 『PERFECT BLUE』『千年女優』の今敏による監督第3作。以前の2作でも書きましたが、この監督はアニメっぽくない題材をアニメで描くのが得意(だと思う)。そして発想にオリジナリティがあって楽しい。今回も、主人公がホームレスというあまりアニメでは(実写のドラマや映画でも?)ありえない設定。でも、描写はリアルで細やかで、街の風景なんかは東京そのもの。彼らもごく普通のホームレス(といっても、ホームレスの方々の実態を知らないのですが)で、これといった取り柄もない人々なのに、ひょんなことから事件に巻き込まれて、その話の運びがスムーズだから、いつの間にかこちらも物語に引き込まれている感じです。リアルとはいっても、やはりそこはアニメで、コミカルな動きや表情はアニメそのものだし、起こる出来事はド派手じゃないけどドラマチック。3人の主人公は個性が際立っていて、それぞれ暗い過去と悩みを背負っており、時折、それをちらつかせつつも、全体としては3人のドタバタ劇に突き抜けた明るさがあって、気持ち良かったです。でも、その時折見せる暗さというのが、実はドキっとさせられるくらい怖い。さらりとあまり突っ込まずに描いているんですが、そこには明らかに現代社会の暗部があって(作者が意図的にそうしたものを入れたのかはわかりませんが)、『PERFECT BLUE』で人間の心の暗部をつきつけた、今監督ならではな描き方だと思いました。ですが、全体は先程も書いたように突き抜けた明るさがあって、そこは前作『千年女優』からも繋がるものがあると感じました。笑って泣けて、観終わればとても幸せな気持ちになれること請け合い。個人的には、やはり今監督の力量は素晴らしいと思います。ストーリーテリングも然り、キャラクターの動きや描き方も好き。最近はアニメが世界から注目を浴びているからと、昔よりは一般的なメディアに露出するようになりましたが、宮崎駿は別として、例えば同じ世界的評価の高い押井守よりも、今敏のほうが、普段アニメを観ない人でも楽しめる作風だと思うんですけどね(特に本作は)。今はまだマニアにしか知れていませんが、今監督はいずれもっと有名になるでしょう。


TOMORROW/明日
Tomorrow
監督・脚本:黒木和雄 脚本:井上正子、竹内銃一郎 原作:井上光晴
出演:桃井かおり、南果歩、仙道敦子、黒田アーサー、佐野史郎、岡野進一郎、長門裕之、原田芳雄、田中邦衛
1988年日本/105分/配給:日本ヘラルド映画

 1945年8月9日、広島に続いて原爆を投下された長崎を舞台に、8月8日、原爆投下までの24時間を何も知らずに生きた人々を描く。結婚式を挙げる一組のカップルや、夫が出生している出産間近の妊婦、赤紙が届いて切り裂かれることになった恋人たち、捕虜の米兵と友情を交わす日本兵……そこには愛があり、新しい生命の誕生があり、戦時下ながらも、ささやかでつつましやかな生活を送る人々がいる。ただそれだけ。……映画はただそれだけで、彼らは「明日があるから」と生きている姿を静かにとらえている。だが、彼らに「明日」はなかった。何もなくなってしまったのだ。一瞬で。それがわかっているだけに、観ているこちらは胸をつまされてしまうのだ。


トゥルー・ロマンス
True Romance
監督:トニー・スコット 脚本:クエンティン・タランティーノ 撮影:ジェフリー・L・キンボール 音楽:ハンス・ジマー
出演:クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット、デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ブラッド・ピット、ゲイリー・オールドマン、ヴァル・キルマー
1993年アメリカ/141分/配給:松竹富士

 青年クラレンスとコールガールのアラバマは出会ってすぐに恋に落ち、結婚するが、クラレンスが手違いでアラバマの元ヒモだった男を殺害、大量の麻薬を持ち去ってしまったことから、2人の逃避行が始まる。
 クエンティン・タランティーノの脚本をトニー・スコット監督で映画化。いい意味でタランティーノとトニー・スコットの“らしさ”が融合したような映画。クラレンスはタランティーノの趣味そのものを体現したキャラクターで、全編にタランティーノの嗜好が見て取れるんだけど、バイオレンスシーンも山場のガンアクションも、スリリングな映像で見せるのはトニー・スコットのなせる業かな。それにしても曲者ばかりを揃えたキャスは面白くて、これもまた、タランティーノとトニー・スコットの味がうまく混ざった結果なのかな。


Dolls(ドールズ)
Dolls
監督・脚本・編集:北野武 音楽:久石譲 衣裳:山本耀司
出演:菅野美穂、西島秀俊、三橋達也、松原智恵子、深田恭子
2002年日本/113分/配給:松竹、オフィス北野
公式サイト http://office-kitano.co.jp/dolls/ チラシ 1

 結婚を約束した恋人・佐和子がいながらも、親の言いなりに従って社長令嬢と結婚することにしてしまった松本。結婚式当日、式場に佐和子の友人が訪れ、佐和子の自殺未遂とそれによる記憶喪失を告げる。松本は式場を抜け出し、病院へ駆けつけるが、そこにいた佐和子はもはや白痴同然となっていた…。呼びかけても応えない佐和子を連れ、罪悪感を抱きながら松本はあてどない放浪を始める。佐和子と自分の身体を、一本の赤い紐で結び付けて。さらに、死期を悟った老境のヤクザと彼をまつ女性、事故で人気の絶頂から転落したアイドルと彼女の追っかけの青年の2つの恋愛物語が絡み、3つの物語はやがて残酷な結末を迎える。北野武が監督10作目にして挑んだラブストーリー。監督自身が昔に見た、互いの身体に紐をつなげて歩く「つながり乞食」をモチーフに、さらに物語は、近松門左衛門の「冥途の飛脚」をモチーフに描く。
 なんといいましょうか、非常にリアリティが感じられない作品でした。現実を飛躍したファンタジーともとれる(といっても心和むようなものではないですよ)作品で、あくまでも幻想的。間違いなく現代なのに、現実ではないような。それはいい意味でも、悪い意味でもとれることなのですが…。ベネチア映画祭で賛否両論となって、監督自身も「生理的に好きか嫌いかに別れるだろう」といっていましたが、僕としては生理的に嫌いというより、世界に入り込めなかった…といったほうが正しいと思います。先述したように、非常にリアリティが欠如していて、人物の心理もある種、極端ともとれるもので。賛否の割れたベネチアで「退屈きわまるオリエンタリズムの象徴」と酷評されたのも、なんとなくわからないでもないところがあります。“幻想”を描きたかったというのであれば、その効果は絶大で、「日本の四季をきちんと撮っておきたかった」という監督の意図通り、筆舌に屈しがたいほどに美しい自然の描写は、それだけで素晴らしいのですけど。台詞もほとんどなく、寡黙な世界の中に何を読み取るか。それは人次第かもしれませんが、僕はちょっと…。3つの物語が揃ったところで、ちょっと面白く感じましたが(面白いっていう言葉はこの映画には適さないかもしれませんが)。山本耀司の衣裳と久石譲の音楽が、これまた綺麗で。自然の描写とあわせれば完璧といっていいほど色鮮やかで儚くて切ないのですが。それだったらスチール写真で見るだけでもすんでしまいますしねぇ…(チラシ、ポスタービジュアルもすごく好き)。その美しさは十二分に評価できるんですが…。難しいです。入り込めない人は、入り込めない世界じゃないかと。


年下のひと
Les Enafants du Siecle
監督:ディアーヌ・キュリス 出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル
1999年フランス/138分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://www.asmik-ace.com/Enfants/

 男装の女流作家ジョルジュ・サンドと詩人アルフレッド・ミュッセの恋の行方を描いたドラマ。ジョルジュ・サンドの名前は知ってるけど、作品は全く読んだことがないので、普通の映画として観てしまったが・・・。なかなか人物の葛藤がよく描けてはいるんだが、くっついたり離れたり、またくっついたり離れたり・・・ちょっと間が長く感じてしまう。ラストはなかなか良いと思いますけどね。本当に激しい愛情って、こんなものなのかなぁ・・・なんて思ったりもして。フランス映画特有の(?)画面の美しさ、役者陣の熱演はとても良いです。ジョルジュが主役というよりも、ジョルジュとミュッセの二人が主役ですね。


突入せよ!「あさま山荘」事件
The Choice of Hercules
監督・脚本:原田眞人 出演:役所広司、宇崎竜童、伊武雅刀、天海祐希
2002年日本/133分/配給:東映
公式サイト http://www.toei.co.jp/asamasansou/

 1972年2月19日、連合赤軍のメンバーが、軽井沢の別荘“あさま山荘”に管理人の妻を人質にして立て篭もった。爆発物処理の技術を学ぶために欧米へ渡り、帰国したばかりの警察庁警備局付監査官、佐々は、長官から直々にこの事件の指揮を命じられるが…。今からちょうど30年前の、国民の誰もが知っているこの一大事件の陣頭指揮をとった佐々淳行氏の自著「連合赤軍『あさま山荘』事件」を完全映画化。
 この映画は史実の忠実な再現をしているため、その歴史的事件の記録映画として観ても面白いし、一方でエンターテインメント映画としても一級品の出来になっていると思います。あさま山荘事件といっても、この映画で描かれるのは、主に警察内部の組織的な抗争。犯人である赤軍のメンバーは姿なき存在で、ほんとに画面にも一瞬しか出てきませんし、台詞もありません(演じてるのは武田真治と鈴木一真)。指揮系統の統一がなされない、面子と意地に凝り固まった警視庁と長野県警のごたごたが、いかにも日本らしいというか。警察や機動隊の組織背景を詳しく知ってるとより面白いかもしれませんが、そうでなくても人間ドラマとしてじゅうぶん楽しめます。警察内部の攻防・・・とはいったものの、シリアスになりすぎず、適度に笑いが含まれてる点が緊張感の緩和になっていいと思いました。結構、笑えるシーンがあるんですよ。そこが想像していたものと違うんですが、逆に良かったです。2時間以上あるのに、ずーっとピリピリしっ放しだったら、疲れてしまったかも。ただ、その適度な緊迫感のなさは、逆にこの映画の弱点でもあるかもしれません。なにしろ、「あさま山荘事件」の映画化ですから、もっと緊迫した空気のものを期待していたところもあるにはあります。ですが、そこはちょっと予想と違っていました(でも全然悪くありません)。そのへんがハリウッドの大作などと違うのかなぁ、と思ったりもしましたけど。緊迫感の緩和はいいのですが、最後の最後の作戦決行時は、もっとピシッと引き締めてくれてもよかったと思いますが、そこらへんはやや雑然としすぎた感はあります(まぁ、それだけ現場は混沌としていたのでしょうが、カメラが寄りすぎてて何がなんだかわかんない部分もあり)。けど、それも全く許容範囲内で問題はないと思います。歴史的一大事件に直面した人々の悲喜をうまいこと織り交ぜて、かつ事件解決への経緯を克明に描き出した点で、この映画はとても良く出来ていると思いました。当時の事件をリアルタイムで体験した世代にはより興味深いのではないかと。少々安っぽさが感じられた音楽はちょっといただけないですが、迫真の映像は○。


ドニー・ダーコ
Donnie Darko
監督・脚本:リチャード・ケリー 製作:ドリュー・バリモア
出演:ジェイク・ギレンホール、ジェナ・マローン、ドリュー・バリモア
2001年アメリカ/113分/配給:アスミック・エース、ポニーキャニオン
公式サイト http://www.donnie.jp/ チラシ 1

 マサチューセッツ州、郊外の町ミドルセックスの高校生ドニー・ダーコは、ある晩、どこからともなく聞こえてくる声に導かれ、家の外へ出ると、そこには不可思議な銀色のウサギが立っていた。彼はドニーに告げる。「世界の終わりまで、あと28日と6時間42分12秒」。次の朝、ドニーはゴルフ場で目が覚める。家に戻ってみると、彼の部屋に飛行機のエンジンが落下していた。もし声に導かれていなければ、今ごろ下敷きになっていたドニー。銀色のウサギが告げた世界の終わりまでの、奇妙な体験が始まる・・・。
 「メメント」「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」とともに2001年サンダンス映画祭で、最も熱狂的に受け入れられたという本作は、新人監督リチャード・ケリーのデビュー作。「メメント」が時間軸を逆行する“リワインド・ムービー”と銘打っていたのに対し、こちらは全ての答えが反転する“リバース・ムービー”。かなり期待をもっていましたが、正直なところ、ちょっと「?」が残った作品です。それはストーリーを完全に理解できなかったんじゃないかという不安(僕の頭がたりない?)と、終りがそれほど衝撃的に訪れなかったこと(これは宣伝文句にやられましたな)。「なるほど」と思うエンディングですけどね、ちょっと衝撃としては弱いような。でもあれはどうなる? と考えると、やはり面白いかも。全体的な雰囲気もすごく好き。もやもやとした謎めいた雰囲気をひたすら漂わせて、「28:6:42:12」を刻々と進むストーリーに目が離せなくなるわけです。全てのシーンにヒントが隠されているという、この映画。一度観終わったら、もう一回見直すと何かがみえているかもしれません。うーん、でも自分にはどのへんがどうである、とまでは言えないです。複雑。BGMになる音楽の歌詞にもヒントが隠されているらしく、アメリカの公式サイト(ここ)では、裏設定やら解説やらを網羅して、かなり熱狂的なマニアを生んでいるらしいです。でも、英語の歌詞なんてわからないから、不利なのかなぁ・・・と思ったり。“銀色のウサギ”のデザインはめちゃ好き。あの不気味さがたまらないです。それからジェナ・マローンはやっぱりかわいい。


トニー滝谷
Tony Takitani
監督・脚本:市川準 原作:村上春樹 音楽:坂本龍一
出演:イッセー尾形、宮沢りえ ナレーション:西島秀俊
2004年日本/75分/配給:東京テアトル
公式サイト http://www.tonytakitani.com/ チラシ 1

 太平洋戦争終結後、滝谷省三郎の息子として生まれたトニー滝谷。母親は生まれて3日後に他界し、孤独な幼少期を過ごしたトニーはやがて大人になりイラストレーターとなった。デザイン会社から独立して働くようになった彼の元に、ある日、新しい編集者の小沼英子がやってくる。彼女との出会いで、トニーの孤独な人生は終わりをつげ、幸せな結婚生活が始まったが……。
 村上春樹の小説「レキシントンの亡霊」に収められている短編「トニー滝谷」を映画化。イッセー尾形が省三郎とトニーを、宮沢りえが英子とその後にやってくるひさこの2役をそれぞれ演じる。横浜市の空き地に建造されたセットの上でそのほとんどが撮影されたという、半ば舞台的な演出だが、背景がつねに大きく抜けて街の風景が広がっている様は、室内であっても妙な空虚感があって、トニーの孤独な人生が浮き立ってみえるようだった。全体的にナレーションが多い上、絵的にも小説を映像化したというか……小説を補完しているような、そんな不思議な印象。極めて小説的な……村上春樹の小説的な世界というべきか。個人的には実はあんまり村上春樹の描く世界に興味はないんだけど、春樹ファンはこの映画を観て、その世界が見事に再現されたと思うのだろうか。きっと小説を読んで映画を観たほうが面白いに違いない。


友へ チング
Chingu
監督・脚本:クァク・キョンテク 出演:ユ・オソン、チャン・ドンゴン、ソ・テファ、チョン・ウンテク、キム・ボギョン
2001年韓国/118分/配給:東宝東和
公式サイト http://www.chingu.jp/ チラシ 1

 韓国で「シュリ」「JSA」の記録を塗り替えて大ヒットしたドラマ。70年代から90年代、激動の時代を生きた4人の男たちの物語。ヤクザの息子で喧嘩は強いが情に厚いジュンスク、葬儀屋の息子で喧嘩っぱやいドンス、優等生のサンテク、お調子者のジュンホ。4人は同じ小学校でいつも一緒だった。中学ではいったんバラバラになったものの、高校で再び4人は再会する。次第に大人へとなりつつあった4人は、お互いに異なる道に歩み始めるのだが…。
 観る前は、あんまりヤクザものはなぁ・・・って思ってるところがありましたが、観終わったら感動してた。70年代から90年代の韓国が、どのような時代だったか自分は不勉強ゆえ、わからないのですが、きっとああやって生きていくしかなかった人たちがたくさんいたんだろう。そんな苦難の中でも、友情だけは忘れずに生きた。社会的に認められている人だろうと、そうでないだろうと、友情とは本人たちの心しだい。タイトルの「チング」というのは「親旧」と書いて“親友”を意味するそうです。そんな親友同士が、異なる道を歩むことで対立しなくてはいけなくなったり・・・。先述したように、この映画に本当に共感することができるのは、同じ時代を同じ場所で生きた人たちではないでしょうか。日本人の・・・しかも若い僕には、その時代背景を身をもって知ることはかないませんが、そうでなくても、単にひとつの映画としてみて感動できました。2時間あるわりに、人物の描写が少ないような気がして、もっと深く人間同士の葛藤をみせてくれてもよかったのになぁ、と思えるほどでした。そうすれば、もっと感情移入もできたろうに(特にドンスのほうが少なかったような。ジュンソクはわかりやすい性格だからいいけど)。4人のうち、2人は裏社会に生き、2人はいわゆる普通の人生を送る。普通、そうした社会的身分(という言葉は適切か?)の異なる者同士に友情が続くのは難しい。けれど、あの時代だったから、それもかなったのかもしれない。それはわからないけど、そうすることができた彼らに、涙する。
 硬質な色彩の画面も郷愁を誘ってとても良いです。それから、気がついてみたらこの映画はR-15でした。そう、ヤクザものなだけあって、刺したりなんだりのシーンがちょっと痛いです。あんまり沢山はでてこないですけど。


ドミノ
Domino
監督:トニー・スコット 脚本:リチャード・ケリー 撮影:ダニエル・ミンデル 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:キーラ・ナイトレイ、ミッキー・ローク、エドガー・ラミレス、ルーシー・リュー、クリストファー・ウォーケン、ミーナ・スヴァーリ、デルロイ・リンドー、ジャクリーン・ビセット
2005年アメリカ/124分/配給:UIP
公式サイト http://www.domino-movie.jp/

 50年代から60年代に活躍した名優ローレンス・ハーベイを父に持つドミノ・ハーヴェイは、その美貌から母と同じくモデルとしての活躍が期待されたが、学校や社会の規範になじめない彼女は自らを鍛え上げ、バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)になる。
 実在の人物ドミノ・ハーヴェイを描いたアクションドラマ。キーラ・ナイトレイのクールな美貌が冴えていたのは良かった(彼女のこれまでのベストな気がした)が、トニー・スコットの凝りすぎ編集は相変わらず。まあ、個人的には好きなんだけど、うるさすぎると言われても仕方ないような……。ミッキー・ロークやクリストファー・ウォーケンといったオジサマたちもいい味を出していたが、キーラの相手役となるエドガー・ラミレスは同性から見てもカッコよかった。話は事実を元にしながらも、映画的な脚色は加えられているようで、謎解きと最後にド派手なドンパチも用意されているので、娯楽としても問題なし。激しく生き抜いた彼女が行き着いた先も、ちょっとしんみりだしね。安易なハッピーエンドにも悲劇にもなっていないのが、人生というもの。
☆☆★★★


トラフィック
Traffic
監督:スティーブン・ソダーバーグ 脚本:スティーブン・ギャガン
出演:マイケル・ダグラス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ドン・チードル、ベニチオ・デル・トロ、ルイス・ガスマン、デニス・クエイド、エリカ・クリステンセン
2000年アメリカ/147分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.trafficmovie.net/

 アメリカとメキシコを結ぶ巨大な麻薬コネクション“トラフィック”を巡る複雑な人間模様を描き出す社会派サスペンス。メキシコのティファナ、アメリカのサンディエゴとオハイオと3ヶ所で繰り広げられるドラマが互いに作用していき、絡みあっていく様は見事だし、決して派手すぎずに抑えられた演出はドラマに品格を与えているが、娯楽性はあまりないので、話にのめり込めないと2時間半を過ごすにはちょっとつらいかも。多少長く感じた気もしますが、全体の統一感は優れもの。アカデミー賞で監督賞、脚色賞、助演男優賞(ベニチオ・デル・トロ)、編集賞を受賞。作品賞にもノミネートされた。


トランスポーター
Le Transporteur
監督:ルイ・レテリエ、コーリー・ユン 製作・脚本:リュック・ベッソン
出演:ジェイソン・ステイサム、スー・チー、フランソワ・ベルレワン、マット・シュルツ
2003年アメリカ+フランス/93分/配給:アスミック・エース
公式サイト http://www.transporter.jp/ チラシ 1

 南仏にくらすフランクは、“契約厳守”、“名前は聞かない”、“依頼品は開けない”の3つのルールを厳守するプロの運び屋。どんな物でも確実に目的地まで運ぶのが彼の仕事だった。しかし、ある時、頼まれた依頼品が気がかりになったフランクは、ついに自らルールを破って中身を見てしまうが、そこに入っていたのは、手足を縛られた女性だった・・・・・・。
 「製作・脚本リュック・ベッソン」というだけで、最近は「ああ、またか」と思ってしまうのが悲しい今日この頃ですが、これもまた、そんな一品。ジェイソン・ステイサムに主役を張らせたのは正解だと思うんですが、ストーリー展開が結局いつものパターンです。悪者はほーーんとに何も考えてないただの悪者で、あとはそれをばったばったとなぎ倒していくだけ(油まみれのヌルヌルアクションはちょっと笑いました)。冒頭10分くらいはいきなり凄いカーチェイスがあるし、フランス人って本当に車好きなのね・・・っていうか、「TAXi」のプジョーがBMWになっただけ? そしてヒーロー、ヒロインが東西の掛け合わせなのは「WASABI」「キス・オブ・ザ・ドラゴン」と同じ。フランスが舞台なので、どっちかといえば「KOD」に近いかも。まあ、深く考えずにそれなりのアクションが楽しめるっていう意味では悪くない、っていうか、ジェイソン・ステイサムはカッコイイのだが・・・・・・。それにしてもベッソン、早く自分の監督作を頼むよ。そろそろあんたを信じられなくなってしまいそうで怖いよ。


ドリアン ドリアン
Durian Durian
監督・原案・脚本:フルーツ・チャン 出演:チン・ハイルー、マク・ワイファン
2000年香港/117分/配給:大映
公式サイト http://www.daiei.tokuma.com/DURIAN/ チラシ 123

 中国東北部・牡丹江から香港へ出稼ぎに来た少女イエン。一日に何人もの男と寝て荒稼ぎをする毎日だが、やがて就労ビザの期限がきれて、故郷へ帰ることに。故郷の人々は、大金を稼いで帰ったイエンを成功者としてうらやむが、イエンは複雑な心境で…。
 前半の香港パートと、後半の牡丹江パートが対照的で面白いです。香港という雑多でエネルギッシュな街そのものを表すように、元気に働きまくるイエンと、故郷に戻ってからの人生に対する迷い、戸惑いを感じるイエン。香港では娼婦として働いているわけですが、この映画には厭らしさとかはありません。香港での活動的なイエンは観ていて気持ちがいいくらい。それは、あっという間にすぎる香港の生活から故郷に戻ってしんみりと過去を振り返る上で、とても効果的だと思いました。バイタリティのあるイエンだけど、彼女は彼女なりに精一杯の生き方を模索してるんだな…ってのが伝わってきます。
 2時間がちょっと長く感じて、途中眠くなったりしましたが、香港や牡丹江の街の情景は印象的だし、なによりイエンを演じるチン・ハイルーも新人ながらすごい存在感があっていいです。イエンが香港で出会う少女(この映画のもう一人の主人公?)ファンを演じるマク・ワイファンも、10歳にしてお見事。上質な作品だと思いますよ。


ドリーマーズ
The Dreamers
監督:ベルナルド・ベルトルッチ 原作・脚本:ギルバート・アデア
出演:マイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル
2003年イギリス+フランス+イタリア/117分/配給:日本ヘラルド映画
公式サイト http://www.herald.co.jp/official/dreamers/ チラシ 1

 1968年、5月革命が起こらんとしているパリ。アメリカ人留学生のマシューは、シネマテークで出会った双子の姉イザベルと弟テオと意気投合し、両親がバカンスで不在の姉弟の家に招かれる。そして揺れ動く社会を尻目に、3人は映画や政治の論議とゲームに明け暮れる。
 巨匠ベルナルド・ベルトルッチが激動の時代のパリを、自身がもっとも影響を受けたヌーベル・ヴァーグや、ハリウッド黄金期の名作にオマージュを捧げながら描く。30年〜60年代のゴダールやトリュフォー、チャップリンなどその手の映画がいろいろ出てくるので、そこらへんは相当通でないとわからんっていうか、自分も名前はさすがに知っているけど、観たことのない映画がたくさん出てくる。しかも、ベルトルッチ自体をほとんど語るほど観てないので、ちょっとそうでなければ、この映画は簡単に語れない。当時の政治的な事情にも詳しくないからわかんないんだけど、全体的に乾いた感じが出ていながらも官能的な匂いが漂ってくるのは、この監督ならではか。BGMにはジミ・ヘン、ジャニス・ジョプリン、ドアーズ、ボブ・ディランなどなど魅力的な音楽がいっぱい。そのへんはとてもよくわかった。あとは主演の3人のうち、マイケル・ピットは既に売れ始めているけど主役は今回が初だし、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレルはよく見つけてきたと思う。ほとんど初出演にも関わらず、かなり存在感や演技力もあり、魅惑的な雰囲気もぷんぷん。でも、その一方でどこか頼りなさげな危うい雰囲気も持ち合わせていて、大人っぽいわりには意外と狭い世界しか知らずに、反体制に傾倒し、はかない脆さも持ち合わせているという劇中の人物たちにぴったり。そしてなにより女優好きとしては、エヴァ・グリーンはチェックせざるを得ないでしょう!


トリコロール/青の愛
Trois Couleurs: Bleu
監督・製作・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・レジャン、フローレンス・ペルネル、シャルロット・ヴェリ
1993年フランス+ポーランド+スイス/99分/配給:KUZUI

 フランス国旗の三色に象徴される「自由・平等・博愛」をテーマに構想された3部作の1作目。青=自由を意味する。音楽家の夫と5歳の娘を交通事故で失ったジュリーは、家も全て処分し、過去から逃れて生きようとする。しかし、夫の仕事仲間で密かにジュリーに想いを寄せるオリビエや、夫の子を身篭っていた愛人と出会い……。
 晩年のキェシロフスキが遺した3部作の1つだけど、とりあえずやっぱりその画面の美しさに惚れ惚れ。ところどころにさりげなく(しつこくならないくらいに)青を基調としたものを挿入して、その中で繰り広げられる静かな物語……その主人公を演じるジュリエット・ビノシュも適度に神経質そうで弱々しそうで気が強そうな、そんな微妙な精神状態をよく表していると思いますし。まぁ、3部作全てにいえることですが、まずは美しい画面と女優に魅入るだけでも、正しい見方じゃないかなと。


トリコロール/白の愛
Trois Couleurs: Blanc
監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ 脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
出演:ズビグニエフ・ザマホフスキー、ジュリー・デルピー、ヤヌシュ・ガヨス
1994年フランス+ポーランド/92分/配給:KUZUI

 フランス国旗の三色に象徴される「自由・平等・博愛」をテーマに構想された3部作の2作目。白=平等を意味する。性的不能を理由に、妻に別れられたカロルは、なんとか故郷ポーランドへ帰り着き、そこで事業を起こして一財産を築く。しかし、彼の心はまだ別れた妻のところにあった。
 この3部作はそれぞれにヒロインがフィーチャーされてるんで、今回はジュリー・デルピーが主人公なのかと思ったら、彼女の夫のほうが実質的には主人公だったのね……。そういうわけで、ジュリー・デルピーの出番はちょっと少なめなんですが、その美しさには目を見張ります。もっと出番が多ければ……と思いますが、それはさておき、夫は妻を愛し、妻のために尽くすけれど、最終的には図らずも妻が痛い目を見ることになりつつも、2人のあいだに交わされる愛情がはかなげで美しいですね。微妙な不条理さがこめられつつも、美しい愛の物語に昇華されているところはさすが。


トリコロール/赤の愛
Trois Couleurs: Rouge
監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ 脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
出演:イレーヌ・ジャコブ、ジャン=ルイ・トランティニャン、フレデリック・フェデール、ジャン=ピエール・ロリ
1994年フランス+ポーランド+スイス/96分/配給:KUZUI

 フランス国旗の三色に象徴される「自由・平等・博愛」をテーマに構想された3部作の3作目にして最終章。また、キェシロフスキの遺作でもある。赤=博愛を意味する。女子大生バランティーヌは、一匹の犬を通して引退した判事の老人と知り合う。しかし、彼は隣家の電話を盗聴しながら日々を暮らしており、バランティーヌはそんな彼を非難するが……。
 個人的には3部作の中で一番好き。ミステリー的要素もほんのちょこっとだけどあるような気がして、それなりに娯楽性もあるんじゃないかと。しかし、それ以上に、やはり全編にちりばめられた赤色のリフレイン、さりげないところで前2作とつながる要素など、緻密に築き上げられた世界に感嘆。また、イレーヌ・ジャコブの無条件で人を包み込む温かい眼差しや無垢な美しさ、それに溶かされていく元判事の心など、ほんのりと胸にくるものもあり。バランティーヌと元判事の物語と並行して描かれる若い男女の物語とも、最後で運命が交錯し、さらに驚くべき大きな運命と偶然の一致も描かれていて、静かながらも大きな3部作のフィナーレにふさわしいラストが…。あまりラストに触れるのもなんですが、それらを抜きにして語るにはちょっと難しいです。


トリコロールに燃えて
Head in the Clouds
監督・脚本:ジョン・ダイガン
出演:シャーリーズ・セロン、ペネロペ・クルス、スチュアート・タウンゼント、トーマス・クレッチマン
2004年アメリカ+イギリス+スペイン+カナダ/121分/配給:ギャガ・ヒューマックス
公式サイト http://www.gaga.ne.jp/tricolore/ チラシ 1

 1933年、イギリスの貧しい学生ガイは、美貌で名高い上流階級の娘ギルダと一夜を共にする。しかし、奔放なギルダはガイの求愛を受けず、旅立ってしまう。3年後、パリから届いたギルダの手紙に導かれ、2人は再会を果たす。写真家として活躍していたギルダの助手として共に働き始めたガイは、ギルダの友人で、戦火を逃れてスペインからやってきたミアとともに、3人で生活を始める。しかし、世間には戦争の暗い影が忍び寄っていた……。
 13キロの増量と特殊メイクで顔を崩した『モンスター』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したシャーリーズ・セロンの、受賞後初主演作となる大河ロマン。本作ではすっかりもとの体型に戻り、その美貌を如何なく発揮。個人的には最初に出てきた学生時代が一番かわいいと思ったが、その後も30〜40年代の様々なファッションに身を包んで登場し、画面に華をそえる。やっぱり『モンスター』であれだけ美貌を崩した反動かな、これは……と思わずにはいられない。ストーリーも美しくも儚いラブストーリーであり、戦争に運命を翻弄される主人公たちを描く大河ドラマでもある。悪い話でも悪い映画でもないんだけど、やっぱりそこそこといった印象で、正直あんまり響かないなぁ……。配役はすごくいいし、セットなんかもわりと大掛かりな感じで見応えもなるんだが。2時間がやや長く感じるのは、なんでだろう。まあ、女優の美しさを堪能できればそれでよいかもね。


トレーニング デイ
Training Day
監督:アントワン・フークア 出演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク
2001年アメリカ/122分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.warnerbros.co.jp/trainingday/ チラシ 1

 正義感に燃える新人警官ジェイクは、麻薬取締局に配属された初日、伝説的なカリスマ刑事アロンゾと組んで、指導を受けることになった。この1日で認められるかどうかがかかっていると張り切るジェイクだが、しかし、アロンゾは犯罪を摘発するためには 自ら進んで法を犯すジェイクの憧れとは程遠い男であった。「かよわい羊を獰猛な狼から守りたければ、自らも狼になれ」と忠告するアロンゾだが……。
 「アメリカって怖え〜…」というのが第一印象。というのは、半分冗談にしても、なんだか人間社会の汚い部分をまざまざと見せ付けられるので、そういうのが苦手だとダメかも。ちょっと疲れる。あのデンゼルが強烈な悪役を……ということで話題にもなった作品で、確かにアロンゾは悪役だけど、本当は彼自身がというより、彼がああならなくてはならなかった社会そのものの悪を描きたかったのだと思います。アロンゾは人間社会の裏の部分を投影した人物なんだと思うと、それはとても悲しいことだが、一方でジェイクのような人間がいることも嘘ではないのだと。そこにリアリティの欠如を見出すかどうかはその人次第でしょうが、少なくとも僕は、ジェイクはあれで良かったんじゃないかと思います。それで作品に厚みがでるか否かは別として(確かにラストのほうはちょっと薄いんですけどね…)。作品としてはよくできていると思いますが、個人的に合わないため、評価はぼちぼち……。デンゼルは確かに熱演してると思いますが。


トロイ
Troy
監督・製作:ウォルフガング・ペーターゼン 脚本:デビット・ベニオフ
出演:ブラッド・ピット、エリック・バナ、オーランド・ブルーム、ブライアン・コックス、ショーン・ビーン、ダイアン・クルーガー、ピーター・オトゥール
2004年アメリカ/163分/配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://www.troy.jp/ チラシ 12

 古代ギリシャ。貿易により栄える城塞都市トロイは、その豊富な国力を狙う各国の侵略を受けながらも、強固な守りによってことごとく打ち破ってきた不敗の都市で、ギリシャの国王アガメムノンは、絶大な力をもって各国を支配下に置いていたが、トロイは未だ屈せずにいた。そして今、アガメムノンの弟で、スパルタの王メネラウスとトロイの王子ヘクトルによって両国に和平が成立し、その宴が開かれていたが、その最中、ヘクトルの弟パリスとメネラウスの若き妻で絶世の美女ヘレンが情熱的な恋に落ち、パリスはヘレンをトロイに連れ帰ってしまう。妻を奪われたことに激怒したメネラウスはトロイに復讐を誓い、強欲な王アガメムノンは、これを口実にトロイを支配下に置くため、5万人の大軍をトロイに差し向ける。そしてその中には、史上最強と謳われる戦士アキレスの姿もあった……。
 ホメロスの叙事詩「イリアス」を映画化したスペクタクル巨編。04年サマーシーズンの口火を切る大作で、ブラピ久々の主演作であったり、豪華スターの共演であったり、大規模な戦闘シーンが展開されたりと、いろいろ話題ですが、それに見合うだけの見応えはあり。「イリアス」の映画化といっても、原作が神々の物語であるのに対して(といっても未読なんですけどね)、映画は完全に人間たちの物語になっており、それぞれに特徴を捉えた人物像が戦争の悲劇を際立たせていて、3000年前の物語とはいっても、テーマとしては普遍的なものに思われました。名誉のため、愛のため、欲望のため……敵・味方を問わずに、錯綜する戦う理由が描かれており、単純な勧善懲悪にもなっていません。そもそもアキレス自身が傲慢なところがあって、ヒーローというわけではない。だから、かえって誰に感情移入していいのかわかりずらい節があって(まあ、その点ではヘクトルが一番イイやつで感情移入しやすいが)、感動するものとは違うかもしれない(パリスのへたれぶりも下手するとかなりのヒンシュクものだ)。そう考えると、先ほども書いたように、戦争の悲劇を描いている作品として見るのが一番わかりやすいと思いました。誰も彼もが大切な人をなくしていく。誰もそれによって栄光を手にすることもない。もちろんエンターテインメントとして十分楽しめるけど、そのへんのさじ加減が結構いい感じだったんじゃないかなと。いかにもハリウッド的なものとは一線を画しているような気はしました。豪華なキャスティングもなかなかピッタリとはまっていたと思いますし。……それにしても、原作読んでないからわからないんですが、パリスが弓の名手なのは原作通り? これを言っちゃいけないが、「レゴラス!」と思った人は相当数に上るはず……。また、今やコンピュータウィルスとして有名な「トロイの木馬」のシーンも割りとあっさり。まあ、原作だと、この戦いは10年近く続いているものだから、そのへんの脚色はとても上手くできていたと思います。原作通りに続編を作るとしたら、次はショーン・ビーン主演の「オデュッセイア」になるはずだが、まあ、それはないでしょう。でもショーン・ビーンのオデュッセウスはいい役だったなぁ。ピーター・オトゥールもさすがの存在感があったし、ダイアン・クルーガーの美しさは文句なし!