惑星ソラリス
Solaris
監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー
出演:ナターリヤ・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス、ユーリ・ヤルヴェット
1972年ロシア(旧ソ連)/165分/


 未知の惑星、ソラリスの軌道上に浮かぶ宇宙ステーションで異常事態が発生、心理学者のクリスはその調査に赴く。到着したテーション内は荒涼とし、そこにいた3人の科学者たちも発狂寸前だった。さらに、クリスまでもが、そこで信じられないものを見る。10年前に死んだはずの妻ハリーが、突然、目の前に現れたのだ……。
 ポーランドの作家スタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」を映画化した傑作SF映画。個人的には「2001年宇宙の旅」と双璧をなす傑作だと思っています。その哲学性。人間の意識を問う静けさ。時折、挿入される、美しくも不可思議に揺らめくソラリスの海。そしてラストの衝撃。上映時間が長く、BGMもほとんど無いといってよく、緩急も少ないために、下手すると眠くなってしまうのですが、そこは我慢してみましょう。……といっても、自分も眠くなってしまったのですが。体調が万全ならなぁ…と思わずにはいられません。


WASABI
Wasabi
監督:ジェラール・クラヴジック 製作・脚本:リュック・ベッソン
出演:ジャン・レノ、広末涼子、ミシェル・ミューラー
2001年フランス/95分/配給:K2、日本ビクター
公式サイト http://www.wasabimovie.com/ チラシ 12


 強引で乱暴な捜査が問題の刑事ユベールは、ついに謹慎処分に。そんな時、かつて彼の愛した日本人女性ミコが急死したと連絡が入る。19年前、忽然と姿を消したミコが…。ミコは、遺産相続人が成人するまでの後見人にユベールを指名していた。その遺産相続人は、あと2日で二十歳を迎えるミコの一人娘ユミ。そしてなんと彼女の父親はユベールだという。その状況に、父親だと名乗りでることができぬままユベールはユミと行動を開始するが、なんとミコが残した遺産総額は2億ドル。巨額な遺産と、ミコの突然の死をいぶかるユベールは、ユミをつけまわす怪しい男達の存在に気付き……。
 リュック・ベッソンが製作・脚本を担当し、ヒロインに広末涼子を大抜擢。ジャン・レノとの 共演や、フランス語の台詞、初の本格的東京ロケなどで色々話題となった本作。ですが、やはり内容は薄い…。出てくる日本人がやたらとフランス語が堪能なのも(特にヤクザのボスがなぜそんなにフランス語、話せる必要があるんだ?)どうかなぁ…とは思いつつ、また、日本人として失笑するようなシーンも随所にありますが、そんなもんか、と思ってあまりつっこまないことにしました。あまりにも簡単すぎる内容には、映画的な重みはゼロ。この映画は下手に突っ込んだりするのではなく、画面から見えるありのままを楽しめればそれで良い と思います。ジャン・レノと広末涼子というスターの共演が楽しければそれで良し(それ以外にない?)。個人的にジャン・レノの立ち振る舞いは観ていて楽しかったですよ。とにかく頭を空っぽにして、ポジティブな気持ちをもてば、楽しい作品だと思います。難しいものを求めない人には楽しめる……はずですが、自信をもってお奨めはできません。広末涼子は、表情つくりが多少鼻につく感がありますが、やはりその堪能なフランス語やその他の演技においても、かなり好演してると思います。このBという評価も、あくまで(「ジャンヌ・ダルク」より後の)“ベッソン・プロデュース”作品において、と思ってください。


私の頭の中の消しゴム
A Moment of Remember
監督・脚本:イ・ジェハン
出演:チョン・ウソン、ソン・イェジン、ペク・チョンハク
2004年韓国/117分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公式サイト http://www.keshigomu.jp/


 ふとしたきっかけで出会ったスジンとチョルスは恋に落ち、結婚する。幸せな生活を送っていた2人だが、スジンの物忘れがひどいことに不安を覚えて病院で検査を受けると、彼女は若年性アルツハイマー病に侵されていた。家族も、友人も、愛している人さえも……スジンは記憶に留めておくことができなくなってしまう……。
 全てが美しい王道純愛映画。ただ、ここでいう美しいというのは、計算しつくされた意図がみえみえなものなので、諸手をあげて賞賛してしまっていいのかは悩みどころ。確かに泣けるかもしれないけれども、シナリオも絵作りも全てがそのために集約されてしまっているようで、逆に純粋に没頭はできなかった。一応、自分がこれだけの数の映画を見てきているから、そういう見方になってしまうんだろうが、そうではない人ならそれなりに楽しめるかもしれない。特筆すべきはやはり主演2人の美しさで、個人的にソン・イェジンは好きなので、ここまでキレイに撮られればもう文句はいえないが……。演技も相変わらず泣きが上手くて、それにつられて泣かされちゃうわけですが。女性だったら逆にチョン・ウソンのワイルドな魅力にやられてしまうんだろうなと。それにしょうがないのかもしれないが、いったん別れてから再会するまで、男にもうひと試練あってほしいもの。あの間が短くて……。繰り返しだけど王道の純愛(って何?)を楽しみたければどうぞ。近いところで難病ものの韓国映画といえば『マラソン』があったけど、あっちのほうがリアリティあります。こっちはある種のファンタジーだな。
☆☆☆★★