柴やんと金ちゃんと私の三人は、仙台から新幹線で水沢江刺を目指す。水沢江刺では水沢市に住む幸さんに車で迎えに来てもらった。 そこから1時間ほどかけ中沼登山口に着いた。途中林道を走っているときはサスペンションのへたったセダンに大の大人4人が乗車していたため、四六時中石で車の腹をする音が続いていた。 9時10分出発。30分ほどで中沼を経過し10時7分に上沼に着く。 中沼からは湿地帯を歩くため長く木道が続く。たまたま木道の修理工事中だったため、10mおきぐらいに木道に使う枕木が山積みされており、障害物競走のようになってしまった。 紅葉だけを楽しむのであれば、上沼まででも十分だ。 しばらくするとつぶ沼コースと合流し更に登って10時50分に銀名水小屋に着く。銀名水は名水として名高い。登山道脇にある水場からは冷水がこんこんと湧き出ており、しばし喉を潤して休憩する。 銀名水避難小屋は建て替えたばかりだ。小さいながらも白木で作られた小屋の中は登山靴のまま入るには躊躇するほど美しい。その時も地元の山岳会の人が小屋のメンテナンスに泊まり込んでいた。いまだに今まで見た山小屋の中で一番綺麗な小屋だ。タバコが切れていたらしく少し分けるとすごく喜んでくれた。 ゆっくりと一時間ほど休憩し再び姥石平を目指す。岩のごつごつした沢状の道を登り12時45分に姥石平に着く。 生憎ガスで視界は利かない。 姥石平に荷物をデポし山頂を往復する。一瞬霧の合間から紅葉に輝く姥石平を見ることが出来たので満足することとしよう。 幸さんは翌日用事があり日帰りのためココで別れた。 残る三人は今日の宿である金明水小屋を目指し再び歩き始めた。残念ながら相変わらず視界は利かない。晴れていればさぞ爽快な縦走コースであろうと想像する。 東焼石岳、六沢山を経て15時過ぎに金明水小屋に到着する。金明水小屋は古い小屋ではあるが掃除、整理整頓が行き届いており居心地は最高だ。鍋包丁類も豊富に取り揃えられていていも煮会に不自由はない。 しかし今日のメニューはすき焼きなのでした。 小屋の直ぐ近くにある金明水の水場は、銀名水に比べれば野趣溢れ豪快だ。よくどちらかの水の方がまろやかで旨いなどとのうんちくを耳にするが、生憎こちらはそれほど繊細な舌は持ち合わせていない。つまりどちらの水も大変旨いのだ。 日が沈むと直ぐに冷え込んできた。小屋には薪も用意されており、暖をとるため少し使わせてもらう。幸せなひとときを過ごす。しかし世の常幸福は長くは続かなかった。 外の風は急に強くなり、暖をとるためのストーブの煙突は、外気の取り入れ口となって逆流し小屋の中は薫製状態となってしまった。あわてて火を消して窓を開け換気するも時既に遅し。寝袋にはその後1年ほど金明水特製薫製のにおいがこびりついてしまった。 結局宿泊者は自分たちだけであった。 すき焼きを肴に、ビール、ワイン、ウィスキー、日本酒を楽しみ、夜が更けるとともに各人眠りについていった。