私は命を殺そうとしています」

休憩から戻ってきた午後後輩にそう告げられた

いつもの軽口や冗談を発することができず

黙りこくってしまった

話を聞くと堕胎するらしいのだ、そのための休みが欲しいと告げられた

堕胎

あまり聞きたくない言葉だ、ぼくは違う方向は考えていないのかと

お決まりの台詞のように聞いた

彼氏は?親は?誰もが聞くような言葉を紡いだ

後輩は生みたいが今の状態では産んでも育てていくことはできない

だから・・・最後の言葉尻は濁した

そして、一呼吸おいて

後輩はこう言った


「命を殺して・・・私は幸せになんかなれません」


ぼくは危なくも後輩の頬を叩きそうになった

女性に手を出すのは本懐ではないし、スマートではない

だから堪えて睨みつけながら後輩に言った

「産む産まないは君の勝手、育てることができないと思うのも君の勝手
 判断した結果がそれなら誰も文句は言えないし、彼氏とも相談した結果が
 それならぼくはやめなさいとか言えない。でも幸せになれないとか
 そんな権利がないとか軽軽しく言って何になる?もし殺して幸せになれないというなら
 その殺した命を背負って今よりも2倍幸せになりなさい。今の君は最悪だよ」

後輩は泣いてしまった

話を聞けばぼく以外の人は怒らず話を聞いたそうだ




嗚呼、機械音が無味乾燥のように聞こえて

楽しいはずの場所が

無色透明の世界に変化していく





ぼくは優しい言葉をかけることが出来なかったです







こういうときあなたはどんな言葉をかけますか?









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