Aさんがアイロンのかけ面をピタピタ素手で叩いていた。
ビックリして「ヤケドしますよ」といったら、
Aさんは「あったまっていないみたいです」といった。
前日まで普通に使っていたアイロンが突然通電しなくなった。
少し前までほかにもアイロンは3台あったのだが、
どれもいい状態のものではなかったので年末に捨てた。
いい状態ではないといっても通電していたわけで、
今になって思えば、捨てなきゃよかった。
「アイロンのかわりになるものって、なにかな」。
私がつぶやくと、Bさんが「やかんとか」といった。
なるほどと思い、水を入れたやかんを火にかける。
Bさんは大阪の出身だ。
東京にやってきてまだ1年だという。
はじめて教室にやってきたとき、関西のアクセントで話すので
「関西の出身ですか?」とたずねたら
「えっ、わかりますか?」とBさんはいった。
「これでも標準語っぽく話しているつもりなんですけど」。
大阪の教室に参加している人たちは、Bさん程度の関西弁を話す。
ように私には聞こえる。てことは、もしかして、
彼女たちも「標準語っぽく」話しているつもりなんだろうか。
てことは、もしかして、本物の関西弁というのは、
もっとぜんぜん聞き取れないものなんだろうか。
以前、大阪の教室に参加した人で、私が話しかけると黙る人がいた。
大阪のスタッフが話しかけると答える。
なにか気にさわることをしたんだろうか、
と昼食のときにスタッフに話したら、山陰地方出身のスタッフが
「私にも黙っているから、
たぶん、標準語っぽい人と話すのが苦手な人なんですよ」という。
そういえば、彼女はあんまり関西弁ぽくない。
「こっちにはそういう人ってわりといるんですよ」と教えてくれた。
東京の教室では、何度か「センセーは関西出身ですか?」
と聞かれたことがある。
私の「家庭科」のアクセントが関西っぽいんだそうだ。
そう聞いてきた人たちはどの人もまるで標準語だったが
「関西出身なんで、すぐにわかりました」というのだ。
まあ、そもそも標準語ってやつがどんななんだ。
沸騰したお湯の入ったやかんで、
接着芯をはろうとしてみたが、ダメだった。
