心に残った一句/一文

ここでは、は。が読んだ小説や詩、もしくは歌詞などから印象深かった言葉、感銘を受けた一節などを
備忘録がわりに記して行こうと思います。



「地の星」 流転の海 第二部/宮本 輝 新潮社 

「何がどうなろうと、たいしたことはありゃあせん」

「海嘯」 /中島みゆき 幻冬舎 

穏やかに 海はそこにある

硝子の向こうに たぶん 海はある

どんな海が 確かにそこにあるのかは

誰も知らない

波もなく 風もなく 光もなく 重さもなく

穏やかに

穏やかに 海はそこにある

誰も知らない

悲しみも 痛みも 憎しみも 孤独も 決別も 行方も

知らされない限り 人は知らない


「さくらのはなびら」 /まど・みちお 童話屋 「ポケット詩集」 

えだを はなれて
ひとひら

さくらの はなびらが
じめんに たどりついた

いま おわったのだ
そして はじまったのだ

ひとつの ことが
さくらに とって

いや ちきゅうに とって
うちゅうに とって

あたりまえすぎる
ひとつの ことが

かけがえのない
ひとつの ことが

「あいたくて」より /工藤直子 童話屋 「ポケット詩集U」 


だれかに あいたくて
なにかに あいたくて
生まれてきた
そんな気がするのだけれど

それが だれなのか なになのか
あえるのは いつなのか

おつかいの とちゅうで
迷ってしまった子供みたい
とほうに くれている

それでも 手のなかに
みえないことづけを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから

あいたくて

「群青」より /谷村新司

空を染めて行く この雪が静かに
海に積もりて 波を凍らせる

空を染めて行く この雪が静かに
海を眠らせ あなたを眠らせる

手折れば散る薄紫の
野辺に咲きたる一輪の
花に似てはかなきは人の命か

せめて海に散れ 思いが届かば
せめて海に咲け 心の冬薔薇

「生命(いのち)は」より /吉野 弘 童話屋 「ポケット詩集U」 

生命は自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

(中略)

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

「自分の感受性くらい」  /茨木 のり子 童話屋 「ポケット詩集」 

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志(こころざし)にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

「サンタのおばさん」 より /東野圭吾 文藝春秋社 

男と女って
そんなに遠くて
違う生き物なのかな



「出会い」 より /チョッキーヌ 光文社 

出会いは
ある日突然に
でもそれは
ずっと前から
用意されていたのかも


「面目ないが」 より /寒川猫持 新潮文庫

ぶきっちょな
俺にも明日があってよい
夕日に向かいアクセルを踏む

「森のなかの海」 より /宮本 輝 光文社

「すべてを包み込んで動じず・・・・・・」
その言葉は、室谷典弥が訪れた夜にも、このターハイの木肌に触れながら口にしたのだが、
夏の始まりかと思うほどの陽光のなかでは、自分自身への励ましの言葉のように感じられてきた。
 私の人生の本番はまだ始まっていない・・・・・・・。


「森は木を拒まない。海は川を拒まない」
希美子は何かの本で知った言葉を自分に言い聞かせた。

「ターン」 より /北村 薫 新潮文庫 

わたしは、いった。霧雨のように、そっと。
「・・・・・・ただいま」

「ばななキッチン」 より /吉本ばなな 幻冬社 

「自分が自分でしかないという
すばらしさと悲しさ」(腰巻)
所詮、自分は自分でしかない。
諦めるというのではなく、それを認めることも大切なのかも。

吉本ばなな自選選集1 Occult 「アムリタ」より /吉本ばなな 新潮社 

「ああ、そうだ。いつか、私も竜一郎もこの地上からいなくなる。
骨になって、土になって、空気に溶ける。」

吉本ばなな自選選集2 Love 「ハネムーン」より /吉本ばなな 新潮社 

「取り返しのつかないことなどないと、人はよく自分の弱い心をなぐさめたいのかなぜか言うけれど、
取り返しのつかないことはたくさんある。
ほんの少しの手違いで、うっかりしただけで、取り返せないことがたくさんある。
  (中略)
取り返しがつかないことがいくらあっても、
生きていくしかないということだけを、人は言うことができる。」

吉本ばなな自選選集3 Death 「キッチン」より /吉本ばなな 新潮社 

「風で、雲の波がものすごい勢いで押し流されてゆくのが見えた。
この世には−−−きっと、悲しいことなんか、なんにもありはしない。
なにひとつないに違いない。」
     

吉本ばなな自選選集4 Life 「ひな菊の人生」より /吉本ばなな 新潮社 

いつも、そういうことは永遠に続くと、私にとっての焼そばの味のようにあきあきするまでなくならないと思っていた。
「永遠」なんてものは、この世には存在しない。
全てのものはいずれ変わっていってしまうもの。
まわりの環境も。人の心も。そして何より私自身も。
私という箱には、私が想像できる全部のものごとがつまっている。
誰に見せることもなく、誰にも話さなくても、私が死んでも、その箱があったことだけは残るだろう。
宇宙の中にぽっかりと、その箱は浮かんでいて、ふたには「ひな菊の人生」と書いてあるだろう。

「天の刻」より /小池真理子 文芸春秋社 

いつ死んでもいい 若くもない。といっても老いてもいない。
過去を懐かしみもしないし、明日に期待もしない。 」
(腰巻)
「・・・・いずれにしても、悪くない人生だった、と蕗子は思う。
もう欲しいものは何もないし、失うものは何もない。
家の中はいつもきれいに片づいているし、いつ死んでも心残りはない。 そう思って、蕗子はうっとりとする。」
思わずこの腰巻を見て購入を決めてしまった本。
明日に期待をしない、、というのは投げやりな気もするけれど、
今の生活にとりあえず満足で「いつ死んでもいい」と思えることは
ある意味素晴らしいことなのではないかな、、と。

「血脈」より /佐藤愛子 文芸春秋社 

「久ちゃん、人生はね、自分との戦いだよ。
敵は外にいるんじゃない。自分の中にいるんだよ。」
誰でもない自分自身との戦い。
それはわかってはいるんだけど、、なかなかその自分に勝てないんだなあ

「夢街道」より /さだまさし FreeFlight 

「海に届かぬ河などないさ」
夜明けの来ない夜はない。
いつか。。夢はかなうのだろうか
2001年4月長崎港帆船祭りAlbumへ

「サウダージ」より /ポルノグラフティ 

私は
私と
はぐれるわけにはいかないから
とてつもなく「自分」が嫌になることがあるけれど
それもまた「私」
とりあえず「私」自身を見失わないようにしよう

「センセイの鞄」 より /川上 弘美 平凡社

しかしどうにも居心地が悪かった。
ポップコーンのにおいのする休日の映画も、夏の夕方のあかるくよどんだデパートの空気も、
大型書店のレジのあたりのひんやりとしたざわめきも、

わたしには重たすぎた。
呼吸が、うまくできないような感じだった。



そんな夜には、センセイの鞄を開けて、中を覗いてみる。
鞄の中には、からっぽの、何もない空間が、広がっている。
ただ儚々とした空間ばかりが、広がっているのである。

「桜散る」より /さだまさし「Glass Age」 

桜散る 桜散る 想い出を埋め尽くして
桜散る 桜散る もう君が見えないほど

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