EMCONについて
近代戦において、最も一般的な索敵の手段の一つにレーダーがある。戦闘機や戦車、建築物等の人工物はよくレーダー波を反射するため、レーダー波を照射し、強い反射反応のある所を重点的に索敵するのである。また、自らレーダー波等の電磁波を出すものはより強く探知される。
敵のレーダー波を出来るだけ反射しないような構造にすれば、敵のレーダー索敵から逃れやすい。或いは敵により近くまで、レーダー探知されずに接近することが出来る。これを「レーダー探索に対するステルス性」と言う。F-22 はこのステルス性を考慮しつつ、「戦闘機」としての空戦性能を追求した戦闘機である。
F-22 ではレーダー探索に対するステルス性を確保するため、F-15 Eagle、F-16 Falcon、F-18 Hornet 等に搭載されている「レーダー探索システム」「防御システム」を統合、更に進化させた「EMCON」と呼ばれるシステムを採用している。
F-22 は元々レーダーに探知されにくい機体構造になっているが、敵探索の為にレーダー波を出したり、敵ミサイルシステムからのロックオンを解く為にチャフ・フレアを放出したり、ECMと呼ばれるレーダー波攪乱システムを使用したり、通信で電波を使ったりすることで、敵から位置を探知されやすくなってしまう。しかしこれらの手段を用いねば、レーダー追尾式ミサイルによる敵機攻撃も出来ないし、既に自機を発見している敵からの攻撃を防ぐことが出来ない。
EMCONシステムでは、自機から放出される電磁波等のレベルを5段階に分け、低いレベルにしているほど自機からの電磁波放出レベルを抑えるよう、それぞれのレベルで使用できる機器を限定している。TAW における F-22 のEMCONシステムでは、段階に応じて以下の機器が使用できるようになっている。
EMCON LEBEL | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
レーダーによる敵味方ID識別/捕捉/追跡(航空機) | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
レーダーによる敵味方ID識別/捕捉/追跡(大型車両・船舶) | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
レーダー捕捉型空対空ミサイル(AMRAAM)発射 | × (※1) |
× (※1) |
○ | ○ | ○ |
レーダー捕捉型空対地ミサイル (ex.AGM84A ハープーン※2)発射 |
× | × | ○ | ○ | ○ |
IRST(※3)(有効レンジ50miles) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
RHAW(※4)有効レンジ(miles) | 50 | 100 | 150 | 200 | 250 |
MAW (※5) | on | on | on | on | on |
チャフ(※6) | ○ (手動) |
○ (手動) |
○ (手動) |
○ (手動) |
○ (自動) |
ECM(※7) | ? | ? | ? | ? | ? |
フレア(※8) | ○ (手動) |
○ (手動) |
○ (手動) |
○ (手動) |
○ (自動) |
無線通信(※9) | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
IFDL(※10)−送信 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
IFDL(※10)−受信 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
- ※1
- 敵機がIRST(※2)の探知領域に引っかかりさえしていれば、目標を攻撃目標リストに追加(目標を囲む点線の▽マークが実線になること)し、ロックオンすること(実線の▽マークが○で囲まれること)が出来る。(ただし発射は不可)
- ※2
- ここで挙げているのは、発射時に自機から放射するレーダーによるロックオンを必要とする空対地ミサイルである。勘違いしがちだが、AGM88 HARM ミサイルは自らレーダー波を出す物体に向かって飛んでいくミサイルであり、自機からのレーダー誘導は必要ない。そのため、敵がレーダー波を出しさえすれば EMCON1 の状態でも発射出来る。
- ※3
- IRST=赤外線探知追尾装置。熱源を探知・分析する装置であるため、自機からレーダー波を放射せずに使用できる。よってこの機器が正常に作動していれば、EMCON1 の状態でも自機から50milesまでの近距離内に居るターゲットをロックオン出来る。ターゲットが自機前方の十分近いところ居れば、"z" キーによってパッドロック選択した任意の物体の映像をMFD上段中央の小型ディスプレイ(テンキーの "5" で拡大表示)に表示することが出来る。
- ※4
- RHAW=レーダー誘導・警報装置。敵から自機へのレーダー照射を警戒・逆探知追跡し、レーダー発信源の種類を分類する。Falcon 4.0 で言うところの脅威警告システム(Threat Warning System)に相当する。
- ※5
- MAW=ミサイル接近警報−敵ミサイルの発射を音と警報ランプで警告する。画面(すなわちHMD−Head Mounted Display−)下側中央に、文字で MISSILE(R)(自機に向かってレーダー追尾式ミサイルを撃たれた場合)・MISSILE(IR)(赤外線追尾式ミサイルを撃たれた場合)とも、表示される。
- ※6
- チャフ=レーダーを良く反射する大量のアルミニウム片を機体から放出することで、レーダー追尾式ミサイル・敵戦闘機に搭載されているレーダー・地上の地対空ミサイル(SAM)をコントロールするレーダー施設等から、正確な自機の位置が分からないようにさせてしまうもの。
正確な位置は分からなく出来るが、アルミ片自体が派手にレーダー波を反射するため、「チャフを撒かねばならないようなことをしている機体が居る」ということを多くの敵に知られてしまう恐れがある。
日本語106/109キーボードでは ";" キーにより手動放出が可能。EMCON5 であれば、レーダー追尾式ミサイルが接近すると自動的に散布される。
また、EMCON レベルに関わらず "INS" または "DEL" キーを押すことにより、「自機を狙うミサイルの種類からチャフorフレアのどちらを放出すべきか自動認識して手動放出する」ことが出来る。(勿論、いずれのミサイルからも狙われていないときに押しても、何も放出しない。)- ※7
- ECM=強力な電磁波を放出して敵レーダーを妨害し、自機の映像を鮮明に見られないようにするもの。これまた「だいたいこの辺に自機が居る」という情報を敵に与えてしまうことになるので、TAWではパイロットが意図的にon/offするようにはなっておらず、EMCON レベルが高い時、敵からロックオンされると自動的に働くようになっていると思われる。
- ※8
- フレア=高温の熱源が熱追尾ミサイルの目標となり、IRST(※2)センサをブラインドしてしまうことを利用して、赤外線ミサイルの攻撃から自機をくらませてしまおうとするもの。
自機の身代わりとして高温の熱源を撒くため、それ自体が敵の IRST に探知され、「フレアを撒かねばならないようなことをしている機体が居る」ということを多くの敵に知られてしまう恐れがある。
日本語106/109キーボードでは ":" キーにより手動放出が可能。EMCON5 であれば、赤外線追尾式ミサイルが接近すると自動的に散布される。
また、EMCON レベルに関わらず "INS" または "DEL" キーを押すことにより、「自機を狙うミサイルの種類からチャフorフレアのどちらを放出すべきか自動認識して手動放出する」ことが出来る。(勿論、いずれのミサイルからも狙われていないときに押しても、何も放出しない。)- ※9
- EMCON1 時は空港管制塔やAWACS、給油機、僚機との無線通信は出来ない。ただし、TAW対戦においてのテンキーでない方の "5" キー(対戦中全機に対する chat)と、テンキーでない方の "6" キー(自分と同じチームの全機に対する chat)は EMCON1 でも使用出来る。
- ※10
- IFDL=編隊内データリンク−僚機と情報交換し、目標に関する情報を得たり、自分が発見した新目標の情報を僚機に送信したりする設備。
デフォルトの状態では、EMCON レベルは「自動」になっている。この状態では、EMCON レベルは状況に応じて以下のように自動的に変化する。
しかし、状況や任務の目的によっては、自動に頼らずに手動で EMCON レベルを変化させた方が効果的な場合も多い。
手動でEMCONレベルを変化させるためには、まず "e" キーを押し、画面左上に EMCON レベルメニューを出す。更にテンキーでない方の "1"〜"5" を押せば、押した数字と同じレベルの EMCON レベルが設定される。同メニューから "6" を選ぶと、再び EMCON レベル自動選択に戻る。一度手動選択した EMCON レベルは、再度意図的に変えるまで変化しない。
現在の EMCON レベルの設定値は、 画面中央左上寄りに表示される。「EMCON Mx」と表示されていれば、現在の EMCON レベルは手動設定でレベル x になっていることを表す。「EMCON Ax」と表示されていれば、自動設定でレベル x になっていることを表す。
EMCON レベルの設定はMFDの周囲を囲むボタンをマウスでクリックすることによっても出来るが、それはMFDの説明を参照してほしい。