レビュー:AIR らすとあっぷでーと:9月12日
AIR[Key](Win)
ゲーム概要  夏。海に近い小さな田舎町。主人公、国崎往人はこの町に降り立った。彼は旅の途中だった。路銀を稼いだらこんな小さな町はすぐに出るつもりだった。彼にはふしぎな力がある。手を触れずとも人形を動かす事ができる。「法術」と呼ばれる力。彼はそれを見世物として路銀を稼ぎ旅を続けてきた。彼は町で子供を相手に人形芸を披露する。しかし、さっぱり受けない。路銀を稼ぐ事もできない。そんな時、彼は一人の少女に出会う。
システム  テキストを読ませるタイプのAVGとしてはいたって標準。文章を読み進めて、選択肢を選ぶことでエンディングが分岐する。キーボード操作等もそれなりに対応。セーブ数もそれなりにあり、選択肢、シナリオ数の少ない今作なら十分の数。最近はゲームパッドに対応するゲームも多いので標準で対応してくれれば尚良かった。メッセージ飛ばしもそれなりに高速。既読、未読どちらでも選択して飛ばせるのも良い。メッセージ履歴も付いているが最低限のレベル。1センテンスごとにしか戻せないので不便。なにより画面内の履歴ボタンが小さすぎて使いにくい。下手をすると気が付かない。と思ったらキーボード操作にメッセージ履歴が付いていた。でも紙マニュアルに掲載されていないからな……気が付きにくい。
グラフィック  Keyチームと言えば、お馴染みの樋上いたる氏。しばしば「クセが強い」と表現される氏の絵だが、今回はいくらかシャープにした印象。顔グラフィックは以前より落ち着いたかも。前作Kanonでは顔をアップにした立ちグラフィック。今作ではオーソドックスな上半身を描く方式に変更。利点としては絵に動きが出て変化を持たせた点。欠点としては描きなれていないのか、バランスの悪い立ちグラフィックが出た点。簡単に言うと、顔の大きさの割に体が小さい、或いはその逆など。個人的にはキャラに動きのあったことがギャグパートで生きたように思うので欠点には目をつぶりたい。
 一枚絵のクオリティはまずまず高い。立ち絵と同じくアップのCGは良いが、引いて全身を描いたCGはイマイチ……という特徴がある。感動的な場面でバランスの悪いCGを見せられるとやや興ざめなので何とかして欲しい。枚数は多いとは思わなかった。Hシーンに関してはシナリオのせいもあるが少な目。そちらに期待して買う人は少ないとは思うが(^^ゞ
 OPムービーなど絵を切り替える場面での演出はなかなか上手かった。止め絵から素早くカットしたり、と良い出来。音楽にシンクロさせてあるのも良い。
 個人的な趣味かもしれないが、主人公の立ちグラフィックをいれたのは面白かったと思う。同じセリフでも立ちグラフィックを表示してセリフに合わせた変化を持たせた。これだけで随分シナリオの面白さが変わってくる。もちろん立ちグラフィックを表示した方が断然面白かった。
シナリオ  シナリオ全体としてはやや単調。クリックして読み進めていくばかり、というスタイルはさすがに疲れる。
 また、エロゲーではあるが、内容は文学的志向が強く、ラブストーリーとしての側面もやや薄い。エンターテイメントとしてはエンディングなども含めて少し難解かもしれない。すっきりと終わる事は無く、何か含ませている。Key作品に共通のテーマは今回も健在で、過酷な現実との戦いや他者との繋がりを描き出している。
 世界観は現代でありながらとことんファンタジック。幻想的世界観は抽象的、観念的である。その分読み手にある程度の理解力を求める。
 スタイルとしては大きなメインストーリーにサブストーリーを絡めているタイプ。下地に共通の設定を持たせつつ、全体としてはオムニバスに近い、という今までの構成とはやや異なる。その分、サブシナリオの存在感がやや薄い。そのサブシナリオエンディングにフラグを立てたせいでメインへの足枷になっているような印象を受けた。できればメインシナリオをじっくりとプレイできる構成にして欲しかった。
 美凪シナリオはKanonの某シナリオと被る。そちらより美凪シナリオの方が分かりやすいが……全体的に長い。中盤ややだれるような気がする。後半の美凪、みちるの会話部分での演出が巧み。
 佳乃シナリオはどちらかというとキャラクター主導タイプのシナリオ。ストーリーの中の謎もあるが、そちらの解明よりもキャラの魅力がメインになっている印象。
 観鈴シナリオではストーリーメイン。観鈴や晴子のキャラクター性もストーリー上の一要素となっているようだ。観鈴の生き様が往人の登場によって変化していく、それをきっかけとして観鈴が幸せな日常を目指していく。何処までも麻枝シナリオらしいストーリー。
 MOON.ONE〜輝く季節へ〜Kanonといった一連のKeyスタッフ作品をプレイしてきた身としてはシナリオで伝えたい事が見えるのでそれほど新鮮味は無い。しかし、今作では一つのメインストーリーをじっくり描けるスタイルであったために、伝えたいテーマがより鮮明になった、という印象を受けた。
キャラクター  キャラクター数はかなり抑え目。サブキャラもあまり出てこないので1キャラクター辺りの描写の量が多い。
 このゲームのメインヒロインと言える神尾観鈴。「がお……」というあまりに不自然な口癖と取って付けたようなヘンな性格、おかしな嗜好。あまり評判が良くない。これらはキャラクター受けという感じではなく、むしろ突飛さを必要以上に強調させたように思われる。ストーリーが進んでいけばこれらの性格も納得がいくのだが、やはりキャラ志向という点ではイマイチ。先にストーリーありき、というタイプのキャラ。人気は出なさそうだが(^^ゞシナリオの中での存在としてはこれで良いのかもしれない。
 霧島佳乃はKeyキャラとしてはお馴染みの、ヘンで子供っぽく人懐っこく……って観鈴とすごく近い。観鈴との違いは強引さがあるか無いか。佳乃と言えば犬(?)のポテトだが、「ぴこ」という怪しげな泣き声とおかしな行動。漫画っぽい、といえば納得もいくが、観鈴と違い突飛さの説明になっていないのは残念。方向的には受け狙い。悪いとは言わないが。
 遠野美凪は大人しいが行動はヘン、というキャラ(ヘンなやつばっかしだな、このゲーム……)キャラクターとしての面白さは一番発揮していたかもしれない。みちる、往人との掛け合いも多い。「お米券」をことあるたびにくれるなど、美凪に限った事ではないが、突飛な行動させれば良いというものでもないと思うが。
 国崎往人はクール気味ではあるがボケる、というKey作品の子供っぽさを残す主人公とはやや毛色が違う。個性的で難はあるがストーリーテラーとしては悪く無い。最もストーリーテラーの面が強くなり過ぎて、主人公としての印象がやや薄かったりするのだが……
 サブキャラでは晴子。ギャグ方面がメインと思わせておいて、人間的成長をシナリオ内で見せる。弱い自分から強くなろうとする。キャラとしての魅力を残しながら変わっていけた。母親キャラとしては奔放に見えるが、それがストーリー上でマッチする。「却下」というセリフはKanonの秋子と対応させているのだろうか?  メイン以外にも評価したいキャラもいるのだが、キャラ評自体が多少ネタバレになってしまうので簡単且つ隠して。「御手玉」(仮名)は子供っぽさを残しつつキャラ的な可愛さを残せた、麻枝キャラとしては珍しい存在。今作最もストーリー性とキャラクター性がマッチしたのでは?「リバースリーフ」(仮名)は強く賢く、それでいて面白さを兼ね備えたタイプ。「御手玉」との掛け合いも面白い。「ドラゴンや!」(仮名)は子供っぽいようで信念を守っているしっかりしたタイプ。こちらも「御手玉」との掛け合いが魅力。
 ……スンマセン、ベタな仮名で(^_^;)
サウンド  音楽に関してはほぼ文句無し。定評のある折戸伸治氏である。柔らかな音源と爽やかなメロディー。夏を舞台にした本作に完璧にマッチしている。今回の音楽は久石譲の音楽とかなり似ているように感じる部分もあり。「夏影」など北野武監督作品菊次郎の夏の音楽とよく似ている。同じ夏、旅、母親といったテーマを扱っているし……影響を受けたか?だからどうだ、という事は無く、どちらも良い音楽である。
 今回、新人で戸越まごめ氏が入っているらしい。各曲ごとのクレジットが分からないので正確ではないかもしれないが、みちるや美凪のテーマを担当していたのではないだろうか。ややテクノ調の雰囲気が強すぎてゲーム内の雰囲気と調和仕切れていない印象があった。最も曲としてのクオリティは高いので、組んだ相手が折戸氏というのが悪いかもしれない。今後に期待。
 ボーカル曲はかなり出来が良いのだが、特にOPの「鳥の詩」とイメージソング「青空」を推したい。これだけゲームの雰囲気とマッチした歌も早々無いだろう、というほどの出来。前作Kanonよりもボーカルの入ることを意識した印象があり、ヤマの部分をしっかりと盛り上げられていた。歌詞もクリア後により雰囲気を感じられる。
 初回版のアレンジCDは相変わらずいじくっているな、という印象の方が強い。テクノを強調した「てんとう虫」を最初に持ってきたのが印象的。感想はやはり本編の曲の方が良いな、と思う。ボーカル曲のフルコーラス版が付いているのは○。
総評  サウンドやグラフィックも良いが、このメーカーならまずシナリオだろう。麻枝氏らしい他者との繋がりを描き出しつつ、世界観は完全なるファンタジー。人と人との繋がりの美しさを描く。その分、難解でもある。Kanonほどの人気は出ないだろう、と思う。ただし熱心なファンは今作にこそ麻枝氏の描き出す世界観をより鮮明に見ることができるかもしれない。

まほさろゲームレビュー
電脳めにゅ〜
ほ〜む