レビュー:果てしなく青い、この空の下で…。 らすとあっぷでーと:1月9日
果てしなく青い、この空の下で…。[TOPCAT](Win)
ゲーム概要  一つの物語をヒロイン毎に違う視点から見せるスタイルを取った、ノベルタイプのアドベンチャー。とある地方の過疎の村。主人公が通う安雲学園に通う生徒は主人公を含めても6人。しかも主人公以外は全員が女生徒。来年入園する予定の子供たちは何故か皆引っ越していった。来年、安雲学園は閉鎖になる予定だという。学園が閉鎖された後は駅ができ、村は発展するというが……
システム  基本は選択式のアドベンチャー。文章を縦書き、横書きで選択できたり、セーブ・ロードが使いやすいが目立ちすぎず配置されているなど、見た目にこだわっていて雰囲気を壊していないのが良い。だが、メッセージスキップがあまり速くない上、「次の選択肢まで飛ぶ」機能は便利なものの、未読文章まで飛ばすことがあり性能が悪い。また、メッセージ履歴機能が無いのも辛い。セーブ数は30×3(しおりの数が3つ)と十分。キャラによって文章の色が違うのは意外と良かった。そのほか、キーボード操作や自動送りなど、おなじみの機能はきちんと装備している。
 物語が四季で区切られており、直前にプレイした季節によって次の季節の展開が決定する形。序盤から中盤までの行動によって後半の展開は決まる。痕〜きずあと〜のように、一つの物語が選択されたヒロインによって展開が変わる。
グラフィック  派手さの無い、漫画っぽい絵。シナリオの雰囲気の暗さからすれば、むしろアニメ調の絵より合っているかもしれない。絵の構図などは悪くない。ただ、絵のクオリティにバラつきが感じられる。同じキャラでも場面によってかなりの違いがあったり。さらに、一枚絵の背景はかなり悪い。水に浸かっているシーン、水が固まっているのかと思ったほど。通常シーンの背景などは良いのだが……。立ちキャラはそれなりに豊富。一枚絵も数は多い。盛り上がる場面での一枚絵のクオリティは高かったので、何とか雰囲気は壊さなかったものの、もう少し頑張って欲しいところ。
 個人的には、主人公の顔の適当さがかなり嫌だったりする……こんなパッとしない顔のやつがモテるとゆーのも(笑)
シナリオ  シナリオが売りだけあり、オカルト、田舎風景、ダーク系エロ、伝奇などがうまくミックスされて、独自の世界観を作り出している。
 ベースとしては日本伝奇。過疎の村に来た悪徳業者と迫害される村人たち、という現実的なストーリーを見せつつ、村に伝わる不思議な出来事を追っている。
 大きな流れは決まっているが、各ヒロインの専用ルートにより微妙に展開が変わる。そして、各ルートによって物語の中の謎が少しずつ分かっていく。一つの大きな物語をすべてクリアして時点で完成させる、という手法はそれなりにしっかりとした世界観を持たないと完成しない。実際には、大きな破綻も無くゲーム内の世界を確立しており、レベルは高い。ただ、各ルートの謎が微妙に矛盾したり、オールクリアしても謎が解決しない部分もあったりする。全ての謎が明らかにならないと気持ち悪い、という人にはマイナスか。個人的には大体の概要が分かったので特に問題は無かったりするが。
 各キャラのシナリオによって面白さが違うのが良い。例えば、雨音シナリオの場合、一度主人公と雨音との関係を成立させた上で、様々な苦しさを体験させる。その上で共に生きていこうとする主人公と雨音という展開が盛り上がる。文乃の場合、序盤のそっけない態度がシナリオの中で徐々に明らかにされ、主人公との関係の中で人間らしい生き方ができるようになってくる。その中でキャラ的な魅力も出せているので、文乃に対する愛着も湧く。
 そして、盛り上がった上でバッドエンドに行くのも意味があってよい。ただの攻略失敗に終わらせず、育んできたヒロインとの関係が崩れ去ってしまう絶望感が各シナリオで描かれている。きちんとハッピーも用意されているので、再攻略へのモチベーションも沸く。
 特筆すべきなのが、専用ルートに入った後、ルートから外れたキャラがことごとくロクな目に合わないこと。最近流行りの過去モノ(ヒロインの過去に何かトラウマがあって主人公がそれを解決する)の場合、一人のヒロインを助けたときに他のヒロインがどうなったのか、描かれることが少ない。しかし、本作では専用ルートに入った以外のキャラクターは救われない結末を迎えることになる。しばしば、ルートのヒロインを探している時に、かなり酷い状態である別ヒロインに出会い、そして見捨てなければならないという展開がある。救えるキャラが一人だけであることをきちんとシビアに描いている。いい所だけを見せるシナリオとは一線を画している。
 Hシーンはダーク系としてまとめているだけあってかなり濃い目。オカルトにエロを絡めていて、シナリオ的な不自然さも無い。その分、この手のシナリオにしてはヒロインがかなり酷い目に合っていますが。この辺は好き好き?ただ、シナリオの中で不自然に存在するHシーンというのは無いような。唐突に感じるHシーンもあるが、環境が結構切羽詰っていたりするので、不自然さは無かった。
 なお、おまけシナリオの遊びっぷりはなかなか良い。本編ではギャグらしいギャグが少なかっただけに、ギャップがすごい。これだけモテる主人公ならありえる話かも、という微妙な設定が良い。キャラを崩し過ぎない程度に遊んでいるので、違和感は無かった。
キャラクター  全体的に地味目。最近流行の突飛なキャラクター設定とは対照的に、オーソドックスな設定になっている。ただし、シナリオ内でキャラクターをしっかり描けているのでそれぞれに魅力はある。
 メインヒロインっぽい雨音は、ぼんやりだけど薄幸で、あまりメインにはいなさそうなタイプ。見た目はヒロインらしい。
 悠夏は典型的な、気さくな幼馴染タイプ。シナリオによって性格が良く変わる(というより、元々そういうタイプなのでしょう)うるさい、世話焼き、嫉妬する、ということで、いかにも人気が出なさそう。
 藍はうるさいお子様タイプで、やっぱり人気は出なさそう(^^ゞ猫好き、両親との不仲などがシナリオできちんと生かされており、単なる性格付けに終わっていないところは良い。
 明日菜は弱気な文学少女で、シナリオ内でキャラ的な魅力を出せていないこともあって、かなり地味。実はかなり健気だったりするが、最後の方で一気に語るだけなのでちょっと勿体無い。
 文乃は影のあるヒロインで、設定的には5人の中で一番変わっている。序盤そっけなく、後半性格が変わるという、ここ最近人気のあるキャラ。それだけでなく、ゲーム内の謎部分を引き受けていてシナリオ的にもおいしい。
 脇役もある意味典型的。悪役である堂島などのキャラも地方の悪代官みたいな雰囲気。まぁ、個人的には学園と生徒を守るために体を張る英理子先生が、かなり悪い状況になっても自棄にならず好感の持てるキャラに仕上がっていたと思う。
 いまいちなのは主人公。行動力はそこそこあるのだが、優柔不断な上に目立つような活躍がほとんど無い。どちらかというと、物語にきっかけを与える役に過ぎないような印象。全ヒロインにやたらと好かれる役の割にはパッとしない。
サウンド  音楽はクオリティが高く、曲数もある。演出で音の鳴らない部分も多いのだがなんだか勿体無いような気もしてしまう。田舎を舞台にしているため、リラックスできるやさしい音楽が特に良い。また、オカルトな場面では不気味さを効果音と共に引き出しており、ゲームの雰囲気をかなり盛り上げている。EDテーマはCD-DA収録にしており、こだわりを感じる。歌もゲームと共に落ち着いた印象で、歌唱力が高いのも良い。これで、サウンドモードが無いんだから……。サントラが売れる理由もわかる。
総評  ラジオ化されたのをきっかけにプレイしてみたが、さすが各サイトで評価が高いだけあり、だれることなく最後まで楽しめた。単純なアドベンチャーにしていないし、雰囲気作りもできている。ただ、絵のクオリティがやや低かったり全体的にかなり地味だったりと、問題もアリ。次回作以降に期待したい。
 ところで、ドラマCDになったあとコンシューマに移植されたり……はしないだろうなぁ、さすがに。Hシーンのカットが苦しすぎます。

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