CLANNADネタバレ感想コーナー
らすとあっぷでーと:6月6日
 やっと出たKeyの新作『CLANNAD』の感想を俺なりに僕なりにつらつらと適当に書こうかと思います。長い長い感想書きの道のりを歩きます。豆パンっ!

古河渚シナリオ

 何らかの目的のあるヒロインの活動を主人公が手伝い、その過程の中で恋愛話を進め、また主人公自身も人間的な成長を見せ、最終的にヒロインが目的を達成するというKeyっぽい王道的なシナリオ。テーマである家族の繋がりもしっかり描いておりバランスのいい話だなと感じました。渚も真面目で一生懸命で人当たりも丁寧。電波にならない程度には特殊な性癖を持ち、結構抜けていて笑いも誘える、万人から嫌われにくそうなのでメインヒロインとしても適していると思いますね。メインヒロインはユーザーの全てにあんまり嫌われないようにしないといけないかなと思いますので。特に渚はゲーム全体における中心的なキャラクターなので、好みが別れるようだと作品に対する評価・モチベーションに影響します。
 さて、このシナリオでは(というかゲーム冒頭では)渚がダブって新学期を迎える所から始まります。下の学年に組み込まれるということは新しい社会への参加であり、待ち受けているだろう困難を考えると足を踏み出すのに勇気が要ります。大げさかもしれませんが、新しい世界に飛び込んでいかなければならなかったわけです。逡巡していた渚に偶然出会った朋也が彼女の背中を押してやった事で、新しい生活をスタートする事ができたというわけです。話のきっかけとしては無理が無いし、成長物語・恋愛物語の双方のきっかけとしてふさわしいかと思います。
 その後の展開も、普通の学校生活を送ること、目標としていた演劇部設立、創立祭への参加という形で次々と活動のフィールドを広げていく渚、それを導く朋也。それぞれの活動時にぶつかる難関を二人で(春原もいますが)乗り越えていくというお話はスムーズで一歩一歩進んでいく成長物語らしく好感が持てました。この時の二人の交流を通じて恋愛関係が育まれるのも無理が無いです。
 同時に、朋也自身が抱えていた家族に対するコンプレックスを、渚の家族という智也からすれば想像外の関係を体験させて朋也自身の問題解決の糸口にしている所なんかもよく構成されていて物語に深みがある感じがしました。渚・早苗・秋生のトリオは全てが遊びというかおままごとのように見えますが、それぞれの関係は気さくで暖かくある意味での家族の理想形として位置付けられるかもしれません。あまりにも騒がし過ぎるとは思いますがー。というより、繰り返しギャグの日常ですね。早苗は何故にアイデアパンを作り続けるのかは永遠の謎なんでしょうか。秋子さん謎ジャムみたいなもんですか?
 とはいえ、朋也は渚を、渚は朋也を助けるという相互関係になっていて、二人が共に幸せな生活を送れるようになっていくのが見ていて気分のよいものでした。プレイしていて心暖かい気分に浸れるのが渚シナリオ最大の長所かと思います。
 創立祭前日にショックな出来事があり、本番で上手くいかないのでは?というアクシデントを盛り込むのはオーソドックス。で、いざ本番の時に関係者みんなで叫んじゃうのは、ひっじょーに青春ドラマくさく個人的にはスマートさに欠けるなぁと思いました。
 シナリオ全体の中盤くらいで恋人関係になるので、恋人としての渚との話が描けているので楽しめました。主軸が恋愛だけではないストーリーだと、話のクライマックスに告白を持っていきたがるので、恋人同士になった気さくな関係の日常描写がほとんど無くて寂しいです(杏シナリオはそんな感じ)。渚の恋人関係時の反応を見ますと、大胆な行動をしてみたり恥ずかしい台詞を言ってみたりテレまくってみたりと、友達の時とは違うやり取りが見られて新鮮です。ギャルゲーである以上、ヒロインの可愛さをしっかり表現しなければいけないと思います。ヒロインの成長物語だけではなく、恋愛模様をしっかりフォローしているのが“バランスがいい”としている所以だったり。
 このシナリオは創立祭の成功がシナリオの終結点ですので、その後の闘病生活はかなりあっさりというか、プレイヤーからすると急展開に感じられました。ま、AFTER STORYできちんと補完されるわけですし、どう見ても続きがありそうだなと分かりますので良いのですが。

藤林杏シナリオ

 ふっつーに恋愛系シナリオを展開しているので実にKeyらしくないシナリオでした。しかも、弱気な女の子の告白の手伝いをしている強気の女の子が横恋慕して……というギャルゲーの修羅場ネタとしては王道の展開です。古い所だと下級生(エルフ)の飯島美雪−南里愛辺りですかね。もっと古いのもありそうですけど忘れました。最近だと君が望む永遠(アージュ)の水月−遙でしょう。
 ちなみに個人的には決して悪いわけではないです。この手のシナリオでは、なんといっても強気な女の子が相手を裏切れなくて悩んだり、或いは完全に友情関係が壊れたりする流れが楽しいです。プレイしている側としては、自分のせいで他人の人生に大きく影響を与えているなぁと感じられてどきどきです。相手の人生に踏み込んでいかないと恋愛話としては深みに欠ける気がしませんか?
 僕個人の志向はさておき(ぉ 杏シナリオでは杏が悩んでいるシーンと椋が必死に朋也を引きとめようとするシーンを重点的に描いています。椋がいじらしく朋也に接しているのは背徳感を煽るものとしてよく出来ていました。逆に杏が悩んでいるのはオーソドックスで刺激に欠けたかなと思います。雨の中で立ち尽くす……というのはあまりにもありがちかな、と。
 それから、終結が比較的あっさりしてしまったのが残念です。椋があまりにもスパっと身を引き過ぎではないでしょうか?杏をぶん殴るくらいはして欲しいものです。それは良い子ちゃんキャラを並べるKeyらしくない……と言えばそうですが、元々Keyらしくないシナリオなわけだしもっと冒険しようよーと思います。一番期待したいのは椋が肉体関係で朋也に迫り続ける、ていうのですけどね!それだと天使のいない12月(リーフ)になる?確かに。

一ノ瀬ことみシナリオ

 登場シーンでほとんど会話が通じない上、本を切り取るヘンな趣味がある……Keyの悪いキャラ作りの見本だよと思って後回しにしたほど、シナリオの入り口は最悪。それだけに、シナリオが進むにつれ話に入り込まされ最終的には一番面白かったと思ってしまい、制作者の目論見にまんまと嵌ってしまったなぁ……とちと悔しい気分のするシナリオでした(笑)
 ことみシナリオはKey得意の目的のあるヒロインの活動を主人公が手伝う、というパターンと少し違い、ちと問題のあるヒロインの性格を主人公が少しずつ矯正してやる展開をかなりの時間を割いて描いています。この展開は既存作品でもやってはいましたし渚シナリオなどでも同様の展開はありましたが、ことみシナリオではことみの性格矯正の模様を楽しむのがメインであるかのようでした。朋也は電波キャラとしか思えなかったことみを、自分流ではありますが少しずつ社交性を持てるように様々なキャラと絡ませたり環境を与えたりします。この「社交性を持たせる」という展開上、多数のキャラが絡んでくるテンポとノリの良いシーンが多かったです。渚、杏、涼を加えた5人でのどたばたコメディーは最後まで飽きさせませんでした。
 これだけギャグで攻めると恋愛色が薄くなりそうなんですが、友達と別れて二人きりになったシーンをしっかり入れていて、友達といる時の顔と恋人同士(ではなかったけど)の顔を差別化していました。ことみというキャラの変化と共に、朋也だけに見せる表情を描き出しているので恋愛色の強いシーンがそれほど多くなくても満足感がありました。ベタベタしている時間を長々と入れなくても、いかに効果的にプレイヤーに恋愛話ということを感じさせる事が出来るかが大切かと思います。
 いくつか伏線らしきものはあったものの、話は急展開してことみは引きこもり状態に。そして実は子供時代伏線だの電波行動の理由の判明。そしてことみを立ち直らせるために朋也が昔の環境を復元して……とする終盤の展開もことみシナリオにおける朋也の立ち回りを一貫していました。シナリオ全てがことみを救うために努力し、そして恋人関係に持っていくという主人公努力型の話としてまとまっていましたね。そして、ラストでことみの両親の心情を描いて家族というテーマを描いていて締める、と最初から最後まできっちりとまとめていた印象です。日常描写を描きつつヒロインのトラウマに迫り最後に解決させる、ある意味オーソドックスなスタイルだったかと思いますが、丁寧にまとめてくれているので引っかかりがなく楽しめたのでした。
 途中のエピソードでことみの気に入っていたバイオリンが事故で轢かれて壊れてしまうのですが、この展開は少々唐突感があるかと思いました。ことみの友人3人が努力していることをシナリオ上でアピールしたかったんだろうとは思いますが、ちとスムーズさに欠けたかと。気になったのはここくらいだったかなぁ。

 子供時代に恋愛関係のベースを置く手法はKeyではお馴染みなのですが、そういうバックボーンが無くとも十分成立すると思われたことみシナリオで効果的に使われたのも“やられた感”があった理由だったり(笑)子供時代から仲が良かった関係って安心感があるのでギャルゲでは良く使われますよね。妹とか幼馴染とか。ことみシナリオでは「あ、そうだったの」という程度の付加要素に留めていたかと思いました。ことみも言っていたのですが、朋也は過去のことみを忘れていたけど現在のことみだけを見て改めて関係を築いているわけで、そこが清々しくてよい気持ちになれたのでした。

伊吹風子シナリオ

 Keyらしいシナリオ。特異な趣味のぶっ飛びキャラクター+記憶無くし+奇跡。風子の木製ヒトデ渡しに主人公が延々と付き合い続ける話……なのでとても色気が無かった(笑)
 メインとなる所は公子と風子の関係。姉妹なのであんまり家族っぽくは無いのですが(まぁ、家族なんですが。やはり親が絡んでこないと家族っぽくなく見えるのは固定観念だろうか)姉妹二人とも相手のために自分を犠牲にするのも厭わないという、純粋な想いをひたすら描き続けていたので感動的な部分もあったけど他のことしてもいいんじゃないかなぁ……とも思ったり。真面目に考えすぎだなこの人たちとも。
 ずっと風子が頑張ってきた行動が無駄に終わってしまうのかと思いきや、最終的には結婚式は大勢に祝福されるという成功を収める、という場面は展開としては普通ですが、大勢の人間が関わって最終的に成功するというのは感動ありますね。
 もはや業界定番となった記憶なくなっちゃうネタですが、感動系とか泣きゲーと呼ばれる作品に重宝されるのは良く分かります。手軽にプレイヤーを泣かすテクとしてはキャラクターの生死を扱うといいのですが、ギャルゲーでその手を使うのはかなりよろしくありません。好きになったヒロインが死んじゃったらプレイヤー、怒りますので。その点、記憶無くしはキャラクターが死ぬのと同じような効果が望める上に、主人公orヒロインのどちらかは記憶が残るので、状況の悲惨さはより高くなるかと思います。
 個人的にキャラとしてはかなりイマイチでした。だってただのお子様だしさァ……。RPGチックな風子おちょくりネタはそれなりには楽しめました。

坂上智代シナリオ

 キャラ的には七瀬+舞という武闘派ヒロイン(笑)にも関わらず、話の主軸は朋也と智代の恋愛話だったので意外でしたが、慣れてくると智代の反応が可愛いので楽しくなってくるという、癖のある女の子を可愛く見せたシナリオでした。
 最初は朋也(というより春原)を警戒していた智代が段々と朋也に対して打ち解けていき、恋人同士となると結構朋也に依存してくる辺りがプレイヤー的にグッドではないかと。「別れるとか、冗談でも言うな」という台詞を可愛い行動に見せつつ、終盤の伏線にしているのもいい感じでした。
 渚・ともみ・風子などのメインキャラは“ヒロインの行動を朋也が助ける”という展開でヒロインとの交流を描いていましたが智代に関してはやや薄めだったかもしれません。まぁ、困難の多い上記3人に比べ、智代は最初から生徒会長の当選が有力視されていたので智也が手伝う必然性がなかったわけで。逆に朋也が段々と智代の行動の足枷になっていく、という違いをしっかり出していたのかな。
 智代を生徒会長として存続させるために、朋也と智代は別れることになりますがこの過程の描き方がなかなか好きです。朋也と智代の行動は、プレイヤー側からすれば咎められるようなことじゃなく見せておいて、周りには問題行動としてマークされる。
 プレイヤーからすれば、学校・生徒・生徒会といった組織の方が間違っている!と思わせるように仕組まれています。しかし、周りの環境の反応は客観的に見れば当然なのです。地位ある人間は他の模範とされ、付き合っている人間も厳しく見られる。それが社会というものの厳しさではないかと思います。
 その厳しさに対して朋也は智代を守るために身を引き、智代も無念がりつつも最終的に朋也の気持ちに同意するという展開は、社会の厳しさから逃げない二人の強さを表していたと思いました。そして、二人は離れ離れになるものの、最後には智代が朋也の元に帰ってくるというハッピーエンドですっきりまとめていたので気持ちよかったです。
 ちなみに智代シナリオのギャグはなかなか面白く、春原の蹴飛ばしコンボが延々と続いたり、着ぐるみ智代の行動が笑えたりと飽きさせない流れでした。

宮沢有紀寧シナリオ

 キャラは受ける路線。見た目はお嬢様、中身も気さくなお嬢様という佐祐理系キャラクター(○○系とか言うな!と言われそうだが、実際そうなんだから仕方なかろう)なので大人しくキャラで攻めればいいものを何故ネタに走るのか。可愛い彼女は不良な兄ちゃん達の親玉でしたー、というのもちょっと前の漫画で出てきそうなネタですね。クラナド・家族ネタとしては兄との関係になるわけですが、うーん家族ネタとして見るには少し弱いような。両親といさかいがあった、という程度ですし。
 印象に残るのは不良の兄ちゃんばかりで、肝心の有紀寧との恋愛絡みのネタが薄く感じられてしまいとても残念でした。後はおまじないですが、呪文が笑える程度のものだろうか?或いは杏や智代との閉じ込められネタの発生源くらいにしか。

藤林椋シナリオ

 ほっとんど記憶が無いんですが……(ぉ ま、椋というキャラはあくまで杏シナリオにおける引き立て役ですから、専用シナリオは一応用意しているという程度なのかなと思います。椋は杏シナリオでの単純な一途な可愛さや柊ちゃんシナリオでの大胆さを楽しむ方が吉でしょうし。
 控えめで面白みも無いけれど、朋也が好きで真っ直ぐに尽くしてくれる、可愛い女の子。これといって非の打ち所も無い。だからこそ、振りがいがあるってものです。好きじゃないことを証明するための証拠探しをしている時点でダメっつーことですね。悪いことしていないのに報われない、ああ恋愛の理不尽さよ。振られる事が存在価値のキャラは不幸だねぇと同情しつつ、そういうキャラはお話を成立させるために必要なのですよ。由綺は浮気されるから、遙は轢かれるから価値があるのです。……って刺されそうだな、オイ。

春原兄妹シナリオ

 ダメな兄貴としっかり者の妹がいて、兄を更正させるために兄の親友と付き合っているように見せたんだけど、兄は自分の親友なら……と任せてしまう。うーん、なんか一昔前のネタっぽいっすね。青い感じが。兄−妹の関係はやはり家族っぽく見えないですね。色々なゲームのやり過ぎだろうか(笑)
 んで、このシナリオでは芽衣がサッカー部の連中にいいようにからかわれるシーンがあります。このシーンではサッカー部や顧問をこれでもかー!と非常に心根の悪い一団として描いています。Keyの作品ではしばしばこういう描写を見かけるのですが毎回げんなりするのです。主人公・ヒロイン達といったキャラクターの人間的優しさを際立たせるためのテクニックかとは思いますが、まるで朋也・芽衣が現実とかけ離れたような心のきれいな人間に見えます。しかし、サッカー部の行動はニュートラルな視点で見ますとそれほどおかしくはありません。部に迷惑をかけた春原を毛嫌いするのは当然だし、その妹が突然押しかけてきても冷たくあしらうかと思います。まぁ、ボールぶつけていたぶるのはやり過ぎですが。
 社会における組織の厳しさは当たり前であるはずです。それをことさら悪に描いて、主人公達を善として描くのもいかがなものか。なんというか、こういう部分が妙な信奉者を生む原因なんじゃなかろうかと思ってしまうのですよ。世の中を冷めた視点で眺めて、ゲームのヒロイン達の生きている世界に逃避したって仕方ないと思うのですが。狭いコミュニティに逃げるのではなく、広い世界に向かっていくべし。渚のように、ね。

 もしかして、これは逆に“Keyの作っているゲームはあくまで虚構なんだよ”ということを強調するためにこのようなシーンを毎回構成しているのだろうか……?と妙な推測もしてみたり。

相楽美佐枝シナリオ

 Keyでは珍しい完全に年上で非学生の攻略対象キャラクター、大人として自立しているようで過去の傷を隠しきれていないというある意味オーソドックスな設定かと思いました。
 中心は美佐枝の過去、少年との交流がメインで展開されていて、少年のストレートな想いを同じ場所(校門前)で描き続けるのが繰り返し日常描写としてよく成立していたかと思います。毎回同じようなもんだと感じる少年−美佐枝のやり取りの雰囲気に慣れていった所で、美佐枝の失恋、少年との別れと続いていく流れが上手く哀愁を漂わせていてシナリオに入り込んでいけました。
 大人版美佐枝のキャラが破天荒なギャグを展開しつつも、大人としての見識かつ渋々ながら世話好きという面も合わせていて良いキャラに仕上がっていたと思います。他のシナリオでの活躍を見るに、もう少し美佐枝−朋也の絡みが見てみたかったですね。せめて男子寮から外に出て欲しかった(笑)

柊勝平シナリオ

 何でまた男キャラのシナリオをこんなにしっかりと……。勝平と奇妙な交流を続ける朋也、いつしか涼と勝平は恋人同士になるも勝平の病気が発覚。自分のアイデンティティーである足を失う手術に踏み切れない勝平に対して、一人の人間としての勝平の価値を説く朋也と涼……と話としてはそこそこまとまっていましたけど。うーん、メインシナリオがぱっとしない涼の救済シナリオなのでしょうか。妊娠しましたとすぐバレる嘘をつく涼が面白かったり健気だったりするのが一番面白かった部分でした。いじょ。

幸村俊夫シナリオ

 なるほどねぇ、そうなんだー……で終わってしまった話。生徒想いの良い先生がいたんですかそーですか。あまりにも良くある話というか定番過ぎました。ふーん、と流してしまいがち。せっかくエンディングがあるならもう少し朋也・春原とのエピソードを増やしてみたら良かったのでは……と思いました。

AFTER STORYシナリオ

 終盤があっさりと終わってしまった渚シナリオの続き……というか、クラナドはあくまでも渚が本流で他は全部サイドストーリーとも言えますが。

 学園編は各キャラクターとの恋愛模様(では無いのも居ますが)を描いていますが、AFTER STORYシナリオはこれに対して、朋也の生活そのもの人生そのものを描いた人間ドラマになっています。
 渚と過ごした一ヶ月ほどの楽しい学生生活も終わり、卒業して社会人となった朋也。彼は時間の流れによって本人が望まずとも自動的に大人にならざるを得なくなります。渚が再び学校に通うようになった中、朋也は自身の状況を振り返り自分の生きる道を見つける必要を感じ、渚と共に暮らし始めます。ここからの展開は、朋也が仕事に就いて苦労し渚を心の支えとして懸命に努力する様が詳細に描かれます。ただ楽しく思うままに過ごせる事の出来た学生と、辛い事からも簡単に逃げられない社会人との違いを訴えたかったのではないかと思いました。家族に助けられたり支えあったりしていた子供から、家族を守らなければならない立場への変化により、朋也自身が成長していく様を感じられました。
 この同棲編で特に気に入った所は、朋也が独立を決意してから仕事に慣れるまでの流れです。自力で生きていこうとした最初の意気込み、実際に仕事に就いた初日に苦労を体で感じ、翌朝に逃げ出したいと思った気持ちを渚の姿を見て、気持ちを入れ替えた所。若者らしい向上心、実際に厳しい環境に身を置いた時に崩れかける気持ち、そして家族を守らなければならない責任感。この場面が朋也が子供から大人に変わっていく分かりやすいシーンだなと思います。
 この後の展開も誰にでもあり得るような、人が生きていればぶつかりそうな壁に当たり、そして朋也が乗り越えていく場面が描かれます。渚の卒業式、会社での昇進と父親の逮捕、そして渚の妊娠。ショッキングなイベントは盛り込まれますが、全体的に見ればごく地味で駆け落ちしたカップルの生き様を描いたオーソドックスなストーリーに見えます。朋也と渚が大して遊びにも行かず贅沢もせず、たまに買い物に行くくらいという地味さ加減です。思うに、生活というのは地味なものです。地味な生活を地道に続ける二人こそが家族なのかとも思えました。
 なお、地味ではあったのですが話が間延びしている印象は無く、飽きる事は無かったです。場面として入れる必要があるものの、プレイしていてつまらないのは辛いです。ドラマらしいイベントを入れつつも、後で印象に残ったのは朋也と渚がなんでもなく夕飯を食べている場面や一緒に寝ている場面です。学園編で感じられる、毎日がお祭り騒ぎのような楽しさは無いのですが、取り立てて何も無い日々こそが幸せな生活というものではないでしょうか。
 幸せな生活が続いていたのもここまで。朋也の子供を妊娠した渚ですが、出産直前になって持ち前の体調悪化。渚は過去に街(?)の力によって命を存えたようですが、街の力の弱体化により体調が悪化するらしい。そのようなファンタジーはさておき、堕胎を勧める周囲に対し渚は断固として出産を固持。結果、渚は子供を産むものの力尽きて死亡します。
 ……めちゃめちゃヒューマンドラマの王道だなと思いました。ここまでもドラマとしてはオーソドックスだなぁ(ギャルゲーとしては珍しいですが無い事も無いですね)とは思いましたが、まさかここまで分かりやすい展開とは。丁寧に描写してはいましたが、あまりにも読み易い話なのでさらりと進めてしまいました。もう一捻り位は欲しかったかなと思います。渚の両親が大反対するとか。
 で、渚を失った朋也は、娘の汐から目を逸らし自分の生活に閉じこもります。再び家族から逃げた朋也でしたが、早苗の機転により汐と旅をすることに。旅の中で朋也は汐を自分の家族と認識し、自分の父親の決意を知り、改めて自分の家族を取り戻します。
 失いかけた家族を、旅というイベントをきっかけに再び自分の家族を作り直すという展開はクラナドのテーマに沿っていると感じられ、気持ちよくプレイできました。ホームドラマじみた話ではあるんですが、恋愛を描いて終わりかせいぜいエピローグで結婚or幸せな家族の風景くらいまでしか描けないというギャルゲーの中においては真面目に人間の生活を描いていたと感じられました。恋愛の一歩先を描き出しているAFTER STORYシナリオの中でも特に感心した部分です。
 それだけに、結末が運命から逃れられず汐を失って絶望するのみというのが残念でした。結局奇跡によって渚が救われなければ正しいストーリーにはならないのだろうか、と思いました。

 ここからはゲームらしく、様々な可能性のある朋也のルートそれぞれから「家族の幸せ要素」とでも言うべき展開を達成してやる事で、光の玉(街の力の欠片なのか、それとも人の力なのか)を集める事ができます。そして全ての光の玉を集めてもう一度渚との人生(渚ルート)をやり直すことで奇跡発生、渚は無事に生き返って汐と3人で幸せな人生を送るのでした。……個人的には綺麗にまとまり過ぎと思います。もちろんこの展開は間違いではないのですが、渚が死亡して汐と朋也が二人で生きていくシナリオの方が話の重みがあるしクラナドのテーマをよく体現していたかなと思いました。渚が生き返った後はあっさりと終わってしまったのも残念でした。もう少し汐との絡みくらい入れてくれても良かったのではないかと思いますね。ここまで、プレイヤーに対するサービスが厚かったのだし最後もたっぷりと終わらせて欲しかった。ストーリー上の盛り上がりという点で生き返った所をクライマックスにした方がいいとは思うのですが、同棲編は地味な所を丁寧に描写して話を膨らませていたので、出来れば最後もその姿勢で締めて欲しかったかなと。

 光の玉を集める手法に関してですが、各エピソードの結果得られるものなので、クラナドは朋也を中心とした並列世界シナリオなんですかね。光の玉も宝玉@YU-NOっぽいですからね。……違う?それでは、クラナドの全てはPCのプログラムで、視点はゲームプレイヤーです、というのは?それはループ(リング、らせんと続いたシリーズ第3作)ですか臭作(エルフの大ヒットエロゲ)ですか。

古河ベイカーズシナリオ

 シナリオライターの趣味に走ったなぁ……と思いつつも、野球好きからすれば熱い&爆笑の番外編でした。Key作品ってこういうおまけ的な話が少なかったのでその意味でも貴重かと。代打・福王なんてネタは巨人が好きでしかも少し前の世代じゃないと厳しいでしょうに。ビートたけしがスローボールで打ち取っていたなんてネタもスポーツ天国辺りのバラエティー見ていた人じゃないと分からないじゃん!と突っ込みつつ笑いました。“ポップコーン正一正二がよく打つんだよね!”と続けたら神でしたけどっ!……Keyのファン層って絶対平均年齢低めだと思うけどなー……。
 で、シナリオ評価としては、男らしいヒロインの多いクラナドの魅力を生かしていました。智代が女の子らしさを妙に意識するのはONEの七瀬っぽくて楽しいし、美佐枝さんはぶつくさ言いながらも相変わらずカッコいいです。そして芳野祐介の、本編でも少し見せていた、外しているキザな素振りを強調しまくっているのも笑える、と。
 でも欲を言うならことみや有紀寧も入れてオールスターでやって欲しかった……というのは贅沢すぎるでしょうか?

CG

 一枚絵CG・立ち絵・背景・その他画面効果にいたるまで、この規模の作品としては非常に物足りないと感じました。ノベルタイプのアドベンチャーゲームにおける最近の流行である「見せる演出」という面が一時代前のレベルに留まっています。
 個別に挙げていくと、一枚絵は単純に足りない。立ち絵に関しては、キャラが多いとはいえあまりにもパターンが少ないです。服装を何パターンも用意しろとは言いませんが、せめて特殊な状況を表す立ち絵くらいはシナリオとリンクして用意して欲しかったです。例えば、春原がブリーフを頭から被っているシーンはそれっぽいCGを用意して欲しいです。
 背景も同様。例を挙げるとしたら商店街。デートシーンなどで何度も出てくるにも関わらず商店街入り口の広場の背景1枚を使い回しです。店を回っている時の背景くらいは用意して欲しいですね。
 画面効果はKeyとしては頑張っているのかもしれませんが、もっと立ち絵をダイナミックに動かすとかワンポイントのCGを使うなどしてシーンにおける“動き”を表現して欲しかったです。

主題歌・BGM・SE

 主題歌に関しては本作をイメージするものとしては少しズレがあるなと思いました。クラナドは既存のKey作品に比べると現実感のある(あくまで比べると、ですが(笑)ストーリーに見えるので幻想的な曲と歌詞よりももう少し世俗に塗れても良かったんじゃないかとか思いました。曲自体は割と好きというか、アニメ・ゲームファンに好まれるメロディアスなタイプで悪くないです。でも歌い手は今までに比べると少し落ちるかな……という気がしましたが。
 BGMはさすがKeyだなというクオリティ。特に綺麗な旋律の曲は相変わらずしっとりと聴かせてくれるなと思います。音の重ね方が面白いし、音色が綺麗だし。ピアノの音がしっかり鍵盤を叩いているように感じられました、「渚」の音の左右の流れ方なんかが良かったですね。「汐」のシンプルながらも印象に残るメロディもお気に入り。……まぁ、僕がピアノの曲が好きだっつーのもあるんですけど。
 あと、分かりやすい打ち込み系の曲にちと浮いている感があったりなかったりするのも相変わらずかも(笑)
 SEはうーん、すごく良かったとは思いませんがギャグ系の効果音はまずまず入れていたように思いました。智代が春原を蹴る音とか風子マスターになった時の音とか(笑)

総評

 中盤まではアクションかコメディーで観客を楽しませて、終盤はほろりと泣かせる展開で締める。万人受けを狙うなら一つの形でしょう。クラナドはKeyの「クセ」のある部分を極力マイルドに仕上げて、多くの人が楽しめる娯楽作品になっていたと感じました。実際、企画・シナリオの麻枝准氏は雑誌インタビューで『エンターテイメント性を重視した』と発言していました。まるで文学作品かと勘違いするような複雑かつ難解、読解力も要求されるシナリオはさすがに現状にマッチしないんだろうと思います。比較的拒否反応の出にくい恋愛メインのハートフルストーリーという体裁を取りつつ、Keyらしさも失わず、長編作品を描ききったという点はさすが長い時間を待たせただけある作品だなと感じました。細かい点を挙げますと、各個別シナリオによっては、本編である渚絡みのストーリーとの関連性が薄めなため、オムニバスストーリーっぽいなと思う事もありましたが、クオリティの低いものが少なかったのでクラナドという世界内の話ということで納得は出来ました。
 とはいえ、画面効果や背景、立ちCG一枚絵CGという部分では、シナリオが長いという部分を差し引いても演出の寂しさが感じられました。もちろん、今までのKey作品に比べれば抜群に増えましたが、昨今の大作と言われるものと比べると量も質も平均より落ちるかな、という所。シナリオが長いだけに飽きさせない工夫が必要かと思いますので、次回作以降の改善点でしょうか。
 そして結論は「とても楽しめるいい作品だった」です。

 ついでにこのクラナドレビューに対する自分感想。長かった……途中で挫けそうになったけど頑張ったよ。渚みたいに頑張ったですよ。でも全体的に少々長過ぎるしキャラによって文章の長さがかなり違うしあらすじが入り過ぎだしと思います。あと不思議なのは自分の好みのど真ん中ではないクラナドに対して歴代最長のレビューを書いてしまったことですが。それは多分勢いで始めちゃって途中で終わるのもなんだし……という意地ですかね(笑) というわけで、長い坂道も登った事だし、豆パン買ってこようっと。

ほ〜む