レビュー:Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜 らすとあっぷでーと:4月4日
Crescendo〜永遠だと思っていたあの頃〜[D.O](Win)
ゲーム概要 主人公の佐々木涼は卒業を5日後に控え、 不足した出席日数を埋めるために補講へ出席していた。3年間を共に過ごした人々。文芸部の仲間、クラスメイト、養護教諭、義理の姉。卒業を目前に、それぞれの想いは募ってゆく……。
動作環境 OS:Win98/Me/2000 要DirectX
CPU:MMX-Pentium(R)166MHz以上(Pentium(R)U233MHz以上推奨)
HDD:標準180MB 最大525MB
システム  基本システムはビジュアルノベル(サウンドノベル)形式の選択肢式アドベンチャー。既読文章飛ばしやメッセージ履歴などは備えている。動作も重いとは感じなかった。バグもこれといって無いようだ。強制スキップやキーボード操作もあり。セーブ数は30個。セーブファイル毎にルートとセーブ画面が表示されるので便利。CG、シーン回想、音楽鑑賞などもあり、これといって目立った特長は無いが、安定したシステムと言える。逆に言うと多少古い感じもした。
グラフィック  原画に紫川弓夜氏を起用。女性のH漫画家。重厚感のある絵柄、しっかりとした描き込み。洋服のデザインや小物のデザインなどが秀逸。少女漫画っぽいとも言える。エロゲの原画としては多少癖はあるので好み次第。個人的には下着の描き込みが凄く綺麗だったので気に入った。難点は男性キャラか。特に主人公が顔出しアリなだけに、整い過ぎている容姿が気になったり。もう少しあっさり目でも良いか。
 一枚絵CGはそれほど数は無い。シナリオ的に短いのでこんなものかもしれないが。体のバランスが多少変な気がする時も。立ち絵CGはそれなりに豊富。キスシーンのCGがそれぞれのキャラクター毎に工夫されていて好印象。
キャラクター  キャラクターに関しては丁寧に描かれている。各人、派手さは無いし、目新しさも無いが、嫌味も無いし、シンプルに魅力を伝えている。
 主人公の佐々木涼。基本的には無愛想なクール系。暴力的なことも辞さない強気なイメージの一方で、少年らしい繊細さも持ち合わせている。シナリオによって多少イメージが変わる。文芸部所属というのも意外だが、実は文学・映画にはそれなりに精通していて台詞を引用したりもする。佐々木家には養子として家族になった。
 柳楽歌穂。文芸部の部長で、涼を文芸部に勧誘した。涼とは3年の付き合い。人当たりの良い性格と長年の付き合いだからか、涼との会話が最もスムーズなキャラクターに見える。その明るさに反して臆病な一面もあり、ある意味涼と似ていると言えるかもしれない。心理的な裏表があり、高校生の少女らしいと言えるか。ちなみに杏子は中学の後輩。
 芦原杏子。文学部に所属、涼や歌穂から見て二つ下の後輩。よく寝ている。ぼんやりしていて、感情があまり表に出るタイプではないようだが、涼と二人だけだと緊張して表情がくるくる変わる。涼とあまり変わらないくらい、身長が高く、それがコンプレックス。それでも文学に関する知識はそれなりに持っている。
 音羽優佳。オープンな性格だが、クラスメイトには距離を置かれている。涼だけは自分を人間として扱ってくれると感じ、興味を持っている。年齢相応に傷つきやすいはずだが、それを当然として受け止めようとしている。自分が汚れていると感じ、対照的な「天使」という存在に憧れる。
 佐々木あやめ。涼の義理の姉。両親が自己で他界した後、一人で涼を育ててきた。事故当時、通っていた大学を辞めて仕事に就くなど、涼のために自身を犠牲にしてきた節がある。涼に対しては口うるさくしているが、涼を想うがゆえの裏返し。むしろ過保護。
 紫藤香織。涼たちの学校の保険医。涼が保健室でよく寝ている事から親しくなった。あやめとは大学時代の先輩・後輩の間柄。ぶっきらぼうな言葉で喋り、態度もそっけないため、他人からは冷たい印象を持たれている。実は映画好きな所などで涼とは話が合う。煙草とコーヒーがトレードマーク。保健室に酒が置いてあったりと割と不良な面も。
 主人公の親友である杉村友則。バスケ部キャプテンで成績優秀、それでもってかなり人間が出来ている。ポジション的には憎まれ役になる可能性もあるのに、スマートな行動で淀みの無い展開を実現している。ただせっかくのいいキャラなのに、主人公との関係がほとんど描かれない点は不満。何故杉村と主人公は親友なのか、その辺の描写が欲しかった。
シナリオ  シナリオライターは水無神知宏氏。1シナリオは3時間程度。既読スキップを使うと更に早く、1時間半程度で終わる事も。なにしろ設定が高校卒業5日前なのでゲーム内の期間もその程度。これだけ短い期間が設定されていると、エピソードの掘り下げが甘くなる時もあるが、この作品では卒業前というシチュエーションを生かして過去のエピソードを随時盛り込んでいる。最も、もう少し書き込んでも良いような気もする。その辺はテンポの良さとの一長一短か。
 全シナリオ通してのイメージは、とにかく一つ一つのシーンが綺麗だってこと。特にエンティング。歌穂、杏子、優佳バッド、香織バッド、おまけ。この辺のエンドはどれも印象に残った。単純なハッピー(バッド)エンドではなく、哀愁漂うような、やや格好つけすぎなような。何事も無く、シナリオの余韻を壊さないようにシンプルにまとめるエンドもまた良いとは思う。しかし最後、やって良かった、と思わせてくれるようなエンドはより嬉しいもの。
 主人公が文芸部所属ということで、文学や映画のネタが結構ある。こういうネタは下手するとライターの知識のひけらかしに思えるのだが、この作品の場合は世界観とマッチしているからか、割とスムーズに受け取れた。
 柳楽歌穂シナリオ。いわゆる多重関係のシナリオ。劇的な場面はそれほど多くないが、しっかりとキャラクターの内面を描いた。同じく多重関係を描いた君が望む永遠と比べて良く言えば品が良く、悪く言えば綺麗にまとめ過ぎ。しかし、一つ一つのシーンが綺麗。特にエンティング。困難を乗り越えてきた二人が最後に文芸部らしくセンスのあるシチュエーションを持ってきた。主人公との絡みが一番スムーズなキャラクターなので会話シーンが楽しかった感じ。
 芦原杏子シナリオ。シナリオ的には柳楽シナリオとよく似ている。恋愛絡みのシナリオ。歌穂と比べると過去のエピソードが少なめな分、ちょっとインパクトに欠けるかもしれない。ちなみにこのシナリオも一つ一つのシーンは非常に綺麗。やはりオススメはエンティングか?杏子の身の上に関するエピソードもあったのだが、書き込みが足りないのかパンチ不足。
 音羽優佳シナリオ。設定が重い。激重。不幸度レベルは「末莉+準+真純@家族計画」くらい(笑)綺麗なイメージのする世界観と合わない気がしたのだが、淡々としたシナリオにむしろリアル感もある。個人的には、好きではあるけど、きつ過ぎて多少気分悪くなるくらい。このシナリオやるんなら精神系陵辱ものに耐えられる程度の耐久力は用意しておく事。学校独特の集団意識のいやらしさ、人間の精神の保ち方など秀逸な描写が目を引く。
 あと、バッドエンドのエピローグも大変良い。バッドエンドというよりもう一つのエンドかもしれない。高校時代、微妙にすれ違ってしまった二人がもう一度出会えるような。主人公が良い。優佳は救われたんではないか。
 佐々木あやめクリアー。義理の姉ということで、禁忌っぽい雰囲気を前面に出したラブ全開のシナリオ。えっちシーンが最高。主人公とあやめの関係の微妙さが独特の緊張感を持たせている。あやめの独白シーンが過激かつ魅力的。優佳シナリオとは異なり、重めの展開は薬味みたいなもので、後の展開を盛り上げるために作用している、と感じた。このシナリオでは主人公が少年らしい繊細さ、というか子供っぽさがあるので、同級生とのシナリオのような格好いい主人公ではない。そこは好みの差が出るかも。
 紫藤香織シナリオ。系統としては痛い系。でも、どちらかというと一部展開のはちゃめちゃさとか、大人の付き合いらしい優雅なシチュエーションを楽しむ方が良いような。面白いシナリオというより格好いいシナリオ。あやめと同じく主人公の行動が多少子供っぽい。それなりに教養のある主人公にしては少々違和感もあったが、この辺りは少年らしい微妙な心理を描きたかったのだろう。
 このシナリオもバッドエンドが良い。ラストの一枚絵が全てを語る。救いのあるバッドエンドというより格好いいバッドエンド。
 隠しシナリオ。ある意味おまけらしいというか。ありがちなネタ。そして、このライターが山田一氏を支持してD.Oに入ったのでは無いか、という事が伺えたシナリオ。某シナリオで>加奈〜いもうと〜
サウンド  音楽はPCM。OPは主題歌あり。音楽に関しては世界観との相性が良く、ゲームの世界に浸るにはぴったり。基本的にピアノ曲で、既存の名曲を使っている。クラシックだけで無く、ジャズ系統もあり。とにかく上品。シナリオの耽美的な雰囲気を更に盛り上げてくれる。歌はまずまず良く、卒業の物悲しいイメージを表しているスローバラード。だが、ムービーのみで本編で使われることが無く残念。ボーカルの声は幼い感じで悪くなかった。
 ノベルゲームということでボイスは無し。
総評  独特の雰囲気を持った作品。決して万人受けではないだろうが、美しいシーンの数々は他の名作にも引けを取らない。BGMのピアノ曲から受ける優雅な印象、綺麗な文章とは異なり、精神的な痛さを伴う厳しいストーリー。世界観にハマれれば評価は高いはず。逆に言えば、絵や雰囲気が好みで無いなら手を出さない方が吉。雰囲気的にはシリアス系H漫画か青年誌の恋愛漫画というところ。微妙な心理描写を楽しめる人にお勧めします。

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