レビュー:Kanon らすとあっぷでーと:1月25日
Kanon[NECインターチャネル](DC)
ゲーム概要  パソコンで大ヒットした、今更説明する必要も無いほどの人気アドベンチャー。主人公、相沢祐一は両親の都合により、住み慣れた街を離れて、幼い頃を過ごした雪の街で暮らすことになった。7年ぶりに訪れた街で、祐一はかつて出会った少女たちと再会するが……
システム  基本は選択式のアドベンチャー。選択肢によってルートが決まり各キャラ固定のストーリーに進む。セーブは30個まで可能。自動送りが細かく設定でき、送りスピードを好きなように変えることができる。そのため、完全な手放しプレイが可能。ただ、一発で自動送りのON/OFFができないので不便。更にメッセージスキップはトリガーボタン押しっぱなしのみでしか使えないので、やや疲れる。オートスキップ等の機能が欲しかった。履歴やボイスカットなどお馴染みの機能は一通り揃えているので、大きな不満は無かった。
グラフィック  パソコン版から比べてもほとんど遜色ないグラフィックに仕上がっており、移植度は高レベル。あとは好き好き。瞳がかなり大きく、体も等身低めで全員幼い印象を受ける。
 CGの数は多くも無く少なくも無く。一部の一枚絵CGは手足がかなり雑で、絵としてのクオリティが低い。特にシリアスなシーンで出されるとやや興ざめ。全身が描かれているCGでバランスが怪しいのもアリ。
 背景は手が込んでおり、木々の多い雪の街の雰囲気を良く出せている。
シナリオ  シナリオライターが二人いる関係上、キャラクター毎に物語の路線が多少異なっている。基本的にはヒロインとの一本道ストーリーだが背景に同じ設定を持っている。
 名雪シナリオは比較的オーソドックス。ヒロインとの交流を描いた日常シーンの割合が大きいので、キャラクターが好きになれた人なら楽しめるか。終盤の展開はやや唐突に感じられる。他のシナリオに比べてやや現実的なのとシナリオ上の急展開がそう感じさせるのだろうか。
 あゆシナリオは全体の中でも重要な位置を占めている。あゆとの交流を描きつつ、シナリオ上の謎を少しずつ解いていくタイプ。回想シーンと上手く絡ませてストーリーを進めている。その分展開が良く変わるので、ストーリーの解釈がやや難しいシナリオでもある。
 栞シナリオはある意味ストレートな感動系シナリオと言える。一定の場所でヒロインと出会い続けていくので分かりやすい。ヒロインの悩みを解決することに関しても、ほど良い程度。シリアス、恋愛、コメディがバランスよくまとめられているので単純に楽しむには一番いいシナリオかも。その分、他のシナリオに比べて深みが無い気もする。
 真琴シナリオは時間的にも短くまとめられていて、シナリオに遊びが無い。その分ヒロインとの日常的な交流も短い印象。恋愛シナリオというより一つの物語として完成度が高い。前半は真琴が暴れているばかりなので、好みが分かれてしまいそう。終わり方が気になるが、個人的にはシナリオを考えれば素直な終わり方ではないかと思う。
 舞シナリオは設定もシナリオ展開も異端。ファンタジックなストーリー、ほとんど変わらずに繰り返していく日常。シナリオ解釈が難しく人を選びそうな内容である。シナリオ上の謎がも終盤で一気に展開するため話についていくのがそれなりに大変。日常シーンは冗長と感じるか長く楽しめるかが紙一重。キャラが好きかどうかで評価が変わりそうなシナリオである。
 隠しシナリオ。ある意味、キャラクターの補完的なシナリオ。クリアーすることでキャラの一面を推し量ることができる。個人的には恋愛方面の話がちょっとでもあったりすると良かったのだが。
 全体的に前半コメディ、後半シリアスで展開する。いわゆる感動系として評価されるが、ストレートなメロドラマというより過去の出来事と特殊状況をからめていった複雑な構造でのシナリオと言える。恋愛シナリオというより人間の交流の中で生まれたドラマを描いたファンタジー……といったところだろうか。
キャラクター  キャラクターの魅力を出していく作品でもあり、各キャラの設定はよくできている。全体的にお約束のキャラクター設定を覆すように性格付けしているようだ。
 名雪は一緒に住んでいる従兄妹。というと、毎朝起こしてくれるというのがお決まりだが、逆にずっと寝ているというキャラ。かなりのスローテンポで天然系。でも陸上部の部長だったり。全般を通してよく絡むのだが、スローな喋りがテンポをやや悪くした感あり。ぼんやりしているのが主人公の世話役という役目もあり、新鮮さがある。
 あゆは幼なじみという役どころなのだが、とにかくボケ役として祐一との漫才に終始する。場の盛り上げを担当しているタイプで、常にドタバタしている。口調や行動が突飛なので好みが分かれるタイプか。幼少時代のシーンがあるが、あまりにも子供らしくない喋りにかなりの違和感を感じた。シナリオの展開上シリアスな場面も用意されていて明るい性格とシリアスな展開が上手くマッチできている。シナリオと上手く噛み合っているキャラ。
 栞は病弱な少女という定番ネタを少し変化させて、よく喋る小悪魔っぽい性格にしている。病弱さを感じさせないところがシナリオ上での対比となってキャラを引き立てている。祐一との会話のテンポが良く、飽きさせないのが良い。
 真琴はいわゆる子供。しかも天の邪鬼を発揮させまくるタイプ。どうにも恋愛シナリオに向くキャラクターではないのだが、シナリオの展開には良く合っている。とにかく祐一と絡んでの漫才が中心。
 舞は剣士という学園ものとしてはかなり異質な設定を持ってきている。夜の学校という舞台やシナリオの展開上、神秘的な雰囲気を持っているのだが、シナリオで少しずつ崩していくのが面白い。
 サブキャラは……もう、多いので割愛(^_^;)とりあえず、佐祐理はお嬢様という設定に気さくで冗談もでき、シリアスでも頑張るとキャラクター的なおいしさ満載。
サウンド  音楽はパソコン版で好評だったのだが、DC版でもクオリティを落とさずによく再現できている。冬の街にふさわしい落ち着いたBGMが素晴らしい。反面、ちょっと遊びが無いとも思う。逆にEDはテクノアレンジで違和感。曲自体のクオリティは高いのだが、ここで使わなくてもいいかな、と思わないでもない。
 効果音はあまり使われていない。Win版でもあまり使われていなかったが、DC版でもこの辺はベタ移植。舞編など効果音を入れることで臨場感が増すと思うのだが。DC版のオリジナリティを感じられない。
 声優はWin版プレイ済みのユーザーからすれば一番の注目点。
 名雪役の國府田マリ子。スローテンポなしゃべりがややわざとらしく感じられ、個人的には良いと思えず。後半のシリアスシーンでの演技にはかなり力が入っている。
 あゆ役の堀江由衣。こちらもキャラクターのアクの強さを吸収しきれておらず、やや不自然な印象。さらに、回想シーンと現在の演技分けがあまりできていない。幼い感じの声質は合っている様には思う。
 栞役の小西寛子。メインでは一番の好印象。シリアス、ギャグの演じ分けがしっかりしていた。また、口癖なども場面によって微妙に使い分けており、単調なあゆに比べて好印象。
 真琴役の飯塚雅弓。「飯塚雅弓」にしか聞こえない。とにかく役をやっているという印象が希薄で、文章をただ読んでいるように思える。場面に合わせてセリフの言い方を工夫するなどして欲しかった。
 舞役の田村ゆかり。寡黙な舞のイメージからするとやや声が高い気もするが、演技自体が落ち着いているので大きな違和感は無い。回想シーンでの演じ分けがしっかりしていた。
 サブキャラでは佐祐理役の川上とも子と秋子役の皆口裕子が好印象。川上とも子は全般を通じて演技のレベルが安定しており、嫌味にならず落ち着き過ぎず、佐祐理という役をよく理解できている。その分、独白ナレーションが佐祐理としての声になっておらずかなりの違和感を感じたのは残念だった。皆口裕子も役を良くつかんでおり、特にシリアスシーンでの演技が良かった。
 声優うんぬんより、一番辛いのがWin版のシナリオにただ音声を付けてしまったこと。Win版はあくまで音声無しでのプレイを前提としているので、文章だからこそ許される表現がある。それをそのまま音声付きにするとどうなるか。一番分かりやすいのはあゆの口癖「うぐぅ」。音声として繰り返されるとしつこい。文章ならさらりと流せる部分でも、音声付ではテンポが悪くなる。これではキャラクターの魅力まで崩してしまう。舞編などもそうで、ただでさえ単調な日常の繰り返しを描いているのに、音声が付いたことで完全に中盤でだれる。テンポの悪さは今作の最大の欠点といえる。システムからして単調になりやすいのに、音声はそれに拍車をかけてしまった。
総評  人気ゲームのコンシューマ化ということで注目されたが、ただ音声を付けてシステムを整えただけでは駄目、という典型。今作のような一区切りのシーンが長く、じっくりとストーリーを表現するシナリオの場合、プレイヤーに飽きさせないようにする努力が必要である。そのためにはシナリオの見直しや演出の変更などをするべきだった。プレイしていてシナリオの悪い部分ばかりが目に付いてしまった。ゲームとして、トータルのバランスが悪く、作品として成立しきっていない感がある。パートごとでは素晴らしい魅力のある作品だけに残念。

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