レビュー:家族計画 らすとあっぷでーと:11月19日
家族計画[D.O](Win)
ゲーム概要 孤独に生きることを信条としていた主人公、司はバイト先の近くの路地裏で中国人の少女、春花が倒れているのを見つけ、成り行きから助けてしまう。その後、謎の男、寛、流浪の少女末莉、自殺未遂の女性、真純などを加え、彼らは暖かそうな古い一軒屋に住み着く。一軒屋の所有権を主張する青葉、司の同級生の準を交え、寛の提案する「家族計画」が始まる。
システム  基本システムはオーソドックスな選択肢式アドベンチャースタイル。既読文章飛ばしやメッセージ履歴などもきちんと備えており、バグもこれといって無いようで、極めて安定している。強制スキップやキーボード操作もあり。セーブ数は30個。また、セーブファイル毎に自動的に場面説明のタイトルが付記される。自分でタイトルをつけるシステムよりも面倒が無いと感じた。CG、シーン回想、音楽鑑賞などもあり、これといって目立った特長は無いが、極めて安定したシステムと言える。敢えて難点を挙げるなら、既読スキップが選択肢毎に解除されること。選択肢が多く、シナリオも長いのでいちいち既読スキップ機能をオンにしなければならないのは煩わしかった。すみません!プロパティでスキップ継続できるようです。
グラフィック  原画に福永ユミ氏を起用。あっさりとした絵で、派手さは無いがクセも無いので、絵による拒絶感は少ないか。立ち絵が豊富。特にギャグ系の絵に味があり、キャラクターを崩さずに汗や頬などのアクセントをつけることで、コミカルなシナリオ展開を盛り上げていたかと思う。
 一枚絵CGはそこそこの数。5人というキャラ数を考えると多少少ないかもしれないが。ちょっと絵によってばらつきが感じられるかも。エピローグ付近のCGの方がキャラクターの表情が生きている感じがする。Hシーンの体のラインに多少違和感を覚えた。
キャラクター  キャラクターの魅力が作品の下地となっていると言える。それ位、各キャラが魅力的に動き回る。キャラクターの過去に物語の核心をもってくる"過去モノ"の一面もあるが、本来のキャラクターだけでも十分生きていると言えそうだ。
 主人公の司。お人好しというのはありがちな設定と言えそうだが、その反面、人を遠ざけようとする所もあり、単にハートフルなストーリーになるのを抑えている。説教グセとリーダーシップ、周りを気遣う所も強くあり、話の中心として申し分ない。たまに鬱状態になったりするあたりもむしろ人間らしい所がある。バランスの取れたキャラクターと言えそうだ。ただ、心理描写での妙なギャグが多い。寛に似ている?
 長女の青葉。毒舌、しかも過激な言動で圧倒するタイプ。周りを徹底的に寄せつけないため、司ともあまり絡まない。他のキャラとの衝突する面が強すぎるので、キャラクターへの好感が抱きにくいか。シナリオ展開で彼女の行動の理由が分かってきてからの勝負。ギャグパートではツッコミ役としてイイ味。
 次女の準。ダークな設定を持ち、人を寄せつけないと言われながら、司とは常にいい感じだし、他の家族とも距離は置いても突っぱねはしないので青葉ほどの人当たりの悪さは無い。司の同級生で元恋人(もどき)だが、準の方から別れている。照れ隠しで人を遠ざけている面があるので、シナリオが進むとそのギャップが良く思えるか。金に執着する所は強調されていて、準の真意を計りにくくするように働いている。
 三女の春花。序盤の展開が凄いけれど、基本的には天真爛漫なキャラクター。中国から密入国してきたという設定だが、あまり過度な外国人っぽさも無く、作品の雰囲気に馴染んでいる。設定の重さもあまり感じさせない。最初から最後までイメージがあまり変わらないのもこの作品では珍しいか。常に笑っていて真意を見せない。でも、プレイヤー視点だと分かりやすい気もする。
 四女の末莉。共通シナリオ全般で出番が多く、春花よりメインヒロインっぽいか?性格は『フルーツバスケット』の透です、と言ったら手を抜き過ぎでしょうか?(笑)元ホームレス。周りに過度に気を遣い、相手の懐にと飛び込んで行くような分かりやすい好意の見せ方。喜怒哀楽が分かりやすく(あんまり怒らないけど)シナリオの中でも良く動く。ギャグシーンでのボケ役。基本的に"良い子"でプレイヤー受けするようなキャラクターではあるが、何故末莉が今のような性格であるのか、その点がシナリオ内でしっかり描かれている。
 母親役の真純。結婚詐欺に遭い、自殺未遂な所を助けられる。一人では生きられない、徹底的に人に依存するタイプ。反面、人がいればその場に合わせた動きができる。高屋敷家では年齢的に上なので母親役となったが、相手や環境によって多少性格が変わるようだ。脳天気でのんびりしており、家事が得意。人に流されやすく、自分にも流されやすく、その場の勢いでふらふらと行動してしまう。精神年齢が若いのか、司に甘えてくる事多し。
 父親役の寛。事業に失敗して借金から逃げている、元企業戦士。強引な性格、抜群の行動力、常にふざけており実態がつかめない。各種の戦闘技能や特殊能力があったりして謎が多い。この作品のギャグパートのほとんどを担っている。出所不明なパロディギャグの大元。実は後半になるとシリアスな場面でも活躍の場があり、父親役らしい責任感を見せる。
 その他。司のアルバイト先である中華料理屋の店長代理、劉家輝。飄々として実態がつかめないのは寛と同様。ギャグパートを担っている点も寛と同様。司がお気に入りでやたらと仲間に引き込もうとする。歌舞伎町ではそれなりの地位があったりするようだが、司との会話パートではほとんど見せない。司に惚れていて、影ながら助けてくれる楓。思い込みだけで突っ走れる。立ち絵が無いのは残念過ぎ。常にハイテンションで自分のペースで司を巻き込んでいく景。そのほかサブキャラ多数。それぞれがしっかりとした個性を持っている。それと、名前は無いものの悪役らしいねちっこさを見せつけるキャラの皆様は、言葉は普通ながらいやらしい思想を混ぜていて悪意をかき立ててくれる。
シナリオ  シナリオライターは山田一氏。加奈〜いもうと〜星空ぷらねっと(星空ぷらねっとはレビュー済み)で評価の高いライターである。今作は系統的に星ぷらの後継と言えそうだ。
 テンポの良いギャグと「家族とは何か?」というテーマを描いたシリアスな展開が持ち味。前半はホームコメディ、後半はホームドラマという趣。難しい言葉で語らず、分かりやすい表現と展開。設定は特殊だが、シナリオ展開はホームドラマ的な王道と言える。テーマも現代的。
 序盤から徹底的にギャグで攻める。ドタバタも上手いが、パロディネタも笑える。ギャルゲーやエロゲー的なパロディから年齢層を考えると古めなネタまで幅広い。シリアスなシーンでも強引なまでにギャグを入れてくる手法も遊びが感じられて良いと感じた。シナリオ重視の作品ではしばしばテーマを語るためにプレイヤーを楽しませようという意思、言い換えれば文学性を志向してエンターテイメント性を殺している作品も多い。その点、今作は序盤でプレイヤーをギャグで引き込み、徐々に家族というテーマを感じさせるようにしている。
 基本的なシナリオの流れは、序盤は共通イベント中心にして、中盤から専用イベントを入れつつ、後半は専用ルートになる、という形をとっている。"家族の絆"をテーマに持ってきているため、家族計画の参加キャラクター全員をシナリオに絡ませている。そのために、全体的にシナリオが長くスキップを使っても時間がかかる。しかし、共通イベントを抜かしてしまうとシナリオへの集中力・感情移入度が薄れてしまうという弊害を持つ。この作品の面白さの肝は家族の描写であり、ギャグもシリアスも共通イベントを基本として成り立っている面がある。かといって、専用イベントを増やすとシナリオのテンポを崩してしまう可能性もあり、シナリオとしては諦めざるを得ない点かもしれない。一日の終わりにルートのヒロインと主人公の一対一の場面を持ってくるなどの工夫はあるのだが。
 Hシーンを序盤の方から持ってきているのはエロ要素の薄いシナリオをカバーするための手か。序盤・中盤・終盤とHシーンを持って来てエロゲーとしての体裁を守ろうとしている節もあり。また、Hシーンにもシナリオ内での意味を持たせており努力が伺える。シナリオ重視のエロゲーとしては健闘している方か。ただ、オーソドックスなHシーンが少ないような感じもあるので、できれば全員に典型的なHシーンの展開があっても良いような気はした。
 各キャラシナリオ評。パッケージからするとメインは春花の気もするが、それ以降の順番が付けにくいので、順番は個人的評価が高い順である。
 末莉シナリオ。共通イベントでの末莉の出番が多く、終盤の専用シナリオも長い、力の入ったシナリオと言えそう。末莉というキャラをしっかりと掘り下げたシナリオで、親切な良い子を越えて度が過ぎた献身と自虐ぶりを見せたりと、良い面だけを見せるようなシナリオの書き方をしていない。末莉や主人公の純粋さと周りの環境の汚さの対比を見せる、オーソドックスな展開も随所にある。ただ、主人公と末莉の対応は内に篭る展開ではなく、堂々と生きようという前向きな姿勢なので、あまり暗い雰囲気にはなっていない。末莉の、主人公のキャラクターを楽しめるのが最大の魅力かもしれない。えっちシーンの遊び方にも好感を持った。それ故に、最後の最後での展開は蛇足に思えるのだが……。二人は最後のイベントがなくても十分な絆があったように思えるので。
 春花シナリオ。テーマの主眼が家族計画からやや離れているシナリオ。出会いから家族計画内までの、司と春花の交流を下地に、春花と春花の母親との関係描写が中心となっている。設定が厳しく、シナリオもその重さに立ち向かう春花の強さが際立っていた。絶対的な問題解決とはならなくとも、一つの光明が見える優しさを感じられた。ラストはこの作品では異色の、恋愛シナリオらしい終わり方。その分、家族を描いた他シナリオのエンドよりドラマティックな展開で締められている。
 準シナリオ。唯一、主人公と過去から繋がりを持ったキャラクターで、昔からの関係から現在への展開を描く。設定が社会問題系のシナリオで、準の性格の元ともなっている。末莉同様、シナリオで準というキャラクターを掘り下げていく。準の他人に近づいていけない性向を主人公が解きほぐしていき、ラストで話を落とす、というのはシナリオ全般を通しての盛り上げ方としては全シナリオで一番かもしれない。共通シナリオ扱いのイベントが多く、専用シナリオがやや薄め。準絡みのサブキャラが出てくる場面も多いので準と主人公の関係描写が薄く感じられた。
 青葉シナリオ。青葉は家族計画内においても他人を徹底的に拒絶しているので、シナリオが動いてくるのは専用ルートに入ってから。ただ、何故主人公が青葉と共に居るのか、その根拠が薄いように感じた。同情的な要素ぐらいしか感じられず。青葉の過去と現実の生き方を問う展開。「あなたが生きるから私も生きる」というような強烈な展開といい、家族としての繋がり以上に人間同士の繋がりというシナリオか。
 真純シナリオ。結婚詐欺時代の過去と主人公との現在、この葛藤を描いているのが最初のメインシナリオ。ここでは真純というより主人公の家族に対する逡巡がメインと言えるかもしれない。他人と常に距離を置いて来た主人公が、真純を受けいれられるかどうかを問うている。第二のメインは真純の依存度の強さが、他人への献身としての強さに変わる展開。多少自己犠牲的で、個人的にはネタとしてあまり好みでないせいもあり、素直に楽しめなかった部分。少女っぽい真純と困惑している主人公の会話は専用ルートでも大いにあるので、ここら辺が楽しめれば。
 共通シナリオ、各専用ルートでのサブエピソードとして、寛が自分の過去に対する態度や劉家輝と主人公の関係などで、人と人との繋がりを描いており、こちらもメインの話と違う形で楽しむ事ができた。
サウンド  音楽はCD-DA。OP・ED・BGMと全てI've Soundが担当している。落ち着いたBGMは全編においてクオリティを維持。Keyの折戸氏の曲を思い浮かべてもらえばいいだろうか?OP・EDも共にハイクオリティ。詞も家族との別れ・再会を連想させるもので(実際は失恋の気もするが)ゲーム本編にマッチした内容。特にEDはメッセージと被るいい演出で曲が始まり、ラストの盛り上がりに貢献していた。
 最近のゲームにしては珍しいボイス無しの作品。しかし、会話の軽妙なテンポを崩すぐらいならボイス無しで構わないと感じた。
総評  トータルレベルの高い作品。システムに大きな不満は無く、CGは派手さは無いが手堅くまとまっている。シナリオは現代的なテーマ性とギャグを含めたテンポの良い展開で、プレイヤーに中だるみをさせない。キャラクターはしっかりとした差別化とそれぞれを魅力的に描いている。サブキャラもサブであるのが勿体無いくらい個性豊か。音楽はPC系で人気のI'veがBGMまで担当。販売時期は敢えて隙間と言える11月に発売してライバルはいない。メーカーとしても相当の自信作なのだろう。個人的には是非ともたくさん売れてほしい!(笑)<いや、結構売れているらしいぞ……。
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