レビュー:PHANTOM OF INFERNO らすとあっぷでーと:6月2日
PHANTOM OF INFERNO(ファントム オブ インフェルノ)[Nitroplus](Win&Mac)
ゲーム概要  ソフ倫を通さないで発売された異色のテキストアドベンチャーゲーム。全体にハードボイルドな雰囲気が漂い、銃器等のマニアックな知識が全般に登場する。
 主人公は部屋の一室で目を覚ますが、自分に関する全ての記憶をなくしていた。そこに現れた少女と男。少女は突然主人公を襲う。格闘の末、結局敗れるものの、ナイフを持った少女相手に善戦する主人公。男は主人公に暗殺者としての才能を認め、組織の暗殺者として養成することを伝える。そして少女は「ファントム」の二つ名を持つ組織NO.1の暗殺者だった。
システム  システムにはやや難あり。基本的に重い。テキストアドベンチャーとしては標準的な構成なのだからもう少し快適に動くと良いのだが……メッセージ読み返し機能、スキップ機能、などは合格点。セーブ数が多いのも良い。ただ、たまにセーブデータが消失しているような気がするのだが……他に使いにくい点としては、キーボードで操作できない、音声調節なし、ソフト側でフルスクリーンにできない、など。特に、キーボード操作は一回のプレイが長時間に及ぶ作品だけに付いて欲しかった。
 ゲームデザインとしては選択肢式のマルチエンティング方式。一本道のストーリーでも構わないだけのボリュームを持っているが、状況によりストーリーが大きく変わっていく感覚を味わえるので良し。
グラフィック  クオリティがそれほど低いというわけでは無いが(中堅メーカーとしては妥当だろう)とにかく地味。現在の流行は少女マンガっぽいタッチの絵。このゲームの絵は青年誌風なタッチ。悪くは無いが、地味。ゲーム全体の雰囲気にはマッチしているが、絵の地味さがゲーム自体の地味さに繋がっているとも言える。ただし、これはパッケージの問題ではあるのだが。クオリティが低いのは背景画。まともに描かれている背景でも直線的で無機質。並木道の絵など、かなりの手抜き背景も……車やバイク等が描き込まれているだけにアンバランスさが際立ってしまった。
 一方、銃器類の描き込みには相当気合が入っているようで、いちいち格好良い。銃器単体のCGは3Dで描かれていて迫力がある。それでいて、知識に関してはマニアックに行き過ぎないよう、適当な説明をしている。ただ、リアルな銃器をキャラクターが持っていた時に多少違和感があることも。
シナリオ  このゲームの大きな魅力は世界観である。シナリオ自体はその世界観を崩さぬよう、展開していった印象である。よって、割と先を読みやすいシナリオであった。ただ、展開はいくつも用意されているので、プレイヤーの選んだ選択によってストーリーが変化する……マルチエンティングらしい利点は良く生かされている。この辺の感触は久遠の絆をプレイした時と似ていた。
 精神的な葛藤をメインに、ヒロインとの関わりの中で懸命に生きていこうとする主人公。ここに派手なアクションシーンを盛り込んでいるために冗長な展開になることも無く、ストーリーに引き込まれる。ヒロインたちとの出会いから別れでじっくりと見せてみたり、アクションで盛り上げたりといったバランスが優れている。
 徹底的にシリアスな、ハードボイルドな世界観を崩さぬように書かれているので、シナリオ的な「遊び」の部分は少ない。一方、世界観としての「遊び」はちょこちょこやっていて、ガラス張りの高層ビルを狙撃、などのお約束なシチュエーションを盛り込んでいた。
 惜しむらくは後半の展開。前半にじっくりとシナリオを展開しすぎたせいか、後半のストーリー展開がやや練りこみ不足。展開が早すぎる感があった。  Hシーンに関しては、量的には少ない。ただし、ストーリーへの挿入はなかなか無理なく行われており、好印象。ストーリー上の位置付けもしっかりしている。……アインだけやや唐突なのだが……
キャラクター  メイン・サブ共にかなり練りこまれている。ストーリーに無理なく溶け込んでいる感じで、ゲームの世界観を壊すことも無い。ギャルゲーとすればキャラ萌えしにくい(キャラクターの魅力を前面に出していない)という点が欠点になり得る。ただシリアスな世界観を維持するためには割り切らなければならない部分、とも言える。
 メインヒロインとなるアインなど象徴的。キャラクターの設定上仕方ないのかもしれないが、もう少し各キャラの魅力を描けなかったかな、と思う。例に出した久遠の絆の万葉などはアインと似た感じのキャラクターだったが、キャラクター単体の魅力を描けていたと思う。ここら辺、敢えてオミットしたのなら論じるだけムダなのだけど。
 筆者が個人的に推すのはドライ。アインと対照的に描かれ、精神的な描写もしっかりしていた。行動力のあるキャラで、ともすれば地味な主人公&アインよりも派手に動き回っていた。ストーリー分岐によって境遇が色々変わるのも楽しい(哀しい)。
 一方、やや違和感を感じたのが美緒。後半に出てきて印象が今一つ希薄。しかも登場時とクライマックス時で大分性格変わっていないか、という気がする。唯一萌え系キャラとして気を吐いた(?)だけにもう少し練りこまれていると良かった。
 クラウディアはストーリー的な面白さはあるが、キャラクターがつかみにくい。温和な面、非情な面といった二面性を持ち、しかもそのどちらもクラウディアの本当の性格として描かれる。そして、このつかみにくさが魅力にもなっている。
 主人公はそれなりの個性を持ちながらも感情移入しやすくなっている。記憶喪失という設定を生かした形となっている。記憶喪失という前提があるため、性格も環境によって変わっていく……という流れがスムーズに受け入れられた。
 サブキャラは男が多く、細かには描かれていない。悪役は悪役らしく、適切に描かれているという印象。個人的には志賀がストーリー的な見せ場も多いし、良いキャラになっていたと思う。
 総評として、展開するストーリーに応じてキャラクターの運命も大きく変わってくるのは良かったように思う。
サウンド  音楽はとにかく暗いもの多し。ゲーム全体に漂う重い雰囲気そのまま。曲のクオリティ自体はなかなか高く、ゲームの盛り上がりを高めている。たまにポップな曲があるのだが、どうにも違和感がある。良い悪いではなく、曲の9割以上が音の低い曲だから着いて行きにくいというか。元々、コメディっぽいシーン自体、ゲームの流れの中で異彩を放っている。
総評  世界観や設定がしっかりしており、シナリオの展開も無理が無いため、テキストアドベンチャーとしての核となるべき魅力が充実していた作品。様々な所で難点もあるが、それは細かい不満なので本作の魅力を損なうものではない。銃器や車へのスタッフのこだわりも含めて、クリエイターの本気さが見えた。
 ソフ倫未公認のため、なかなかメジャーになりきれなかった感じはある。そこは本当に残念。まぁ、利点としては実在の固有名詞をガンガン出せたところだろうか……(「ソニーのビデオ買ってよ」とか)

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