レビュー:ロケットの夏 らすとあっぷでーと:10月22日
ロケットの夏[Terralunar](Win)
ゲーム概要 ロケットが盛んに打ち上げられた時代があったが、いつしか宇宙への門が閉ざされてしまった地球。かつてのロケット港が残る街で暮らす主人公は、かつて自作ロケットの天才少年と呼ばれていたが、現在では惰性のような毎日を送っていた。しかし、主人公の学校に転向してきたロケット好きの少女、千星と出会ったことをきっかけにで彼の生活は変わり始める。
動作環境 OS:Win/98/Me/(著者のプレイ環境では2000でも問題無しでした)
CPU:MMX Pentium(R)133MHz以上(Pentium(R)166MHz以上推奨)
HDD:350MB以上の空き容量(650MB以上推奨)
システム
4点
 オーソドックスな選択式のノベルタイプのアドベンチャー。一部にルート制限があるのだが、分かりにくいのでクリア順によってはプレイが進まなくなるのが難。メッセージスキップは早めで有難いが、キーボード操作が出来ないのはかなりのマイナス点。今時のノベルアドベンチャーでキーボードでのメッセージ送りが出来ないのは珍しい。セーブ数は14個。少ないのに2画面に分かれてしまうのが面倒に思えた。また、フルインストールしてしまえばCD無しでプレイできるので便利。
グラフィック
6点
 キャラ原案はりつべ氏、原画はキミヲ氏。CG枚数は100枚弱。よく言えば落ち着いた、悪く言えば地味なキャラクターデザイン。髪型や服装などもシンプルにまとめていてあまり主張していない感がある。全体的に丸い感じのするデザインで暖かみはあるが、シャープさに欠けていて綺麗という印象は受けなかった。立ち絵の枚数はそれなりにあり、表情もそこそこ豊かで悪く無い。背景関係はまずまずで、特にロケット関係には力が入っていたように感じた。
キャラクター
6点
 原画同様、キャラクターもシンプル。特徴的な行動や性癖もあるが、最近のゲームの中ではおとなしめな方だろう。
 主人公の真幌高志。ロケットへの想いを燻らせながら日々を過ごしていたが、千星との出会いをきっかけに再びロケット製作に情熱を注ぐ事になる。破天荒なヒロインたちとのやり取りの中ではツッコミ系のキャラ。ほどほどに調子に乗ったり、時には熱くなったりする。プレイヤーからすれば好感を持ちやすいタイプか。ロケット製作に賭ける意気込みが熱い。
   主人公の幼馴染で妹のような存在の香奈城歩。気が優しく、基本的にぼんやりしている。引込み思案で主人公への依存度が高い。異星人とのハーフであり、その事にコンプレックスを持っている。基本的に押しの弱いキャラだが、主人公との事に関しては主張は強い。やきもち焼きな様子も見せるので可愛いかも。
 主人公の学校に転向してきたロケット好きの少女、夏海千星。常に前向きで底抜けに明るく、ロケットへの想いは人一倍。ロケットのためなら無茶でも平気でやってのける。青春ストーリーの引っ張り役である意味話の中心的存在。基本的に元気一杯だが、複雑な事情も抱えており一線を超えてこない感もあり。
 ロケット部の部室に居候することになった異星の姫、セレン。身分の高さ故に高慢かつわがままだが、上に立つ者としての資質も持ち合わせる。ただし、思考はまだまだ子供なので食べ物に釣られたり、構ってもらえないと機嫌が悪かったりもする。本来は世間知らずで純真な女の子。
 セレンの従者、ベルチア。一流の剣士でセレンを守る事に命を賭けている。堅物だが一方で男性に免疫が無いという、ある意味典型的なキャラ。動揺すると剣を振り回して暴走したりもする。お約束通り、態度が変わり始めてからヒロインっぽくなる。
 アンドロイドで主人公の担任教師、はるひ。外見は人間そっくりだが、常に冷静沈着で機械的な冷たさを感じさせる。淡々とした様子は終始変わらないが、人間を理解しようとする姿勢、アイデンティティを持った行動は生きている存在である事を感じさせる。確信犯っぽく意地悪い行動をする辺りが楽しい。
 サブキャラでは千星の転校前のクラスメート舞原、ロケット部品のジャンクヤードの店主チャックがいる。キャラ的にはメインキャラより個性的で濃い。どちかというとギャグ担当であり、所々笑わせてくれる。
シナリオ
8点
 シナリオライターはfoca氏。本作の監督でもある。全体の雰囲気は部活に熱中する爽やか青春ストーリーといった感じ。特に共通シナリオでは恋愛ネタよりもドタバタしながら毎日を過ごしていくような普段の生活を描いたネタが多くなっている。1シナリオは短く、ショートストーリーと言っても差し支えない。共通シナリオを除くと1キャラ辺り1時間程度。すっきりとまとめられていると思える所もあるが、シナリオによっては描写が甘く、ボリューム不足を感じさせる。一つ一つのエピソードは良いのだが、話を膨らませるような展開が少なく、話に唐突感が残ったのは残念。
 歩シナリオ。他のシナリオとは一線を画し、異星人とのハーフである歩の辛い現実を描いている。キャラクターの優しいイメージに反して重い展開が続く。純粋な心を持つキャラクターが理不尽に迫害を受ける、という話は個人的に好みではないので好感は持てなかった。壮大な展開の割に話の進行が早く、主人公の置かれている状況の変化に付いていけない感があった。
 千星シナリオ。ロケット製作に関わる話が中心で、今作の中心的存在とも言えるシナリオ。ロケットに賭けるそれぞれの想いが絡み合い、衝突したりしながらも目標に向かって努力していく。好きな事に打ち込むという情熱が感じられるプレイしていて懐かしさと爽快感を得る事が出来た。一方で、話の展開の忙しさを最も感じたシナリオでもある。特にラスト付近が急ぎ過ぎで、クライマックスに至る描写が薄過ぎた。ロケット部全員を絡めた話に出来たら尚面白かったと思うのだが。ピンチを乗り越えていく展開はなかなか熱く、エピソード自体は良質。
 セレンシナリオ。素直じゃなくて我が侭で、でもある程度の仲になると純粋な面も見せてくれるという、お嬢様系ロリキャラのシナリオ。まだまだ残る子供っぽさと、現実をきちんと見据えている王族としての立場、二つの面に迷いを見せる。主人公と無邪気に遊んでいる姿が平和で楽しい。終盤の壮大過ぎる展開に置いてきぼり感は残った。
 ベルチアシナリオ。無骨な女の子は一歩たがを外すと女の子らしい一面を見せる、というベタベタな展開。地味なキャラ&雰囲気なので不自然さはそれほど感じずにプレイできる。ベタな設定だけに恋愛シナリオっぽさは全シナリオの中でも一番強い。アクションありのキャラクターの割にバトルシーンがそれほど盛り上がらなかったのは少し不満。
 はるひシナリオ。アンドロイドのキャラクターという事で、人間とのギャップやアイデンティティー絡みの話。非生物らしい起伏の無さを見せつつ、自分自身の行動に悩んでいるというのはある意味王道的である。過剰にアンドロイドという事を強調せず、また奇怪なほどに人間っぽくもなく、バランスは取れているように感じた。終盤の主人公がややあっさりしているとは思った。
サウンド
9点
 音楽はロックンバナナが担当。作品同様、派手さは無いが落ち着いていて綺麗なBGMを揃えている。聴きやすく、田舎の哀愁を漂わせるような優しいメロディで終始好感を持った。イメージは映画『菊次郎の夏』の久石譲だろうか。トヨタカローラのCMでも使われている曲。
 ボイスは無し。地味なゲームなのでせめて音声くらいは付けてもよかったように思えたが……。ノベルゲームというのにこだわったのだろうか。
採点 客観的採点 33点(4・6・6・8・9)
主観的採点 40点
総合 73点
ネタバレ
(軽め)
 千星シナリオはかなり良い出来になると思いましたが、ロケット製作の描写が削られすぎて盛り上がりに欠けたのは事実。50マイルズオーバーでもロケット打ち上げが困難になる下りが唐突過ぎました。ジャンクヤードでアルバトロス級ロケット製作を思いつくシーン、ロケットの操縦のシーンなど心に響くシーンは色々とあったのですが。ロケッティアに対する周りの尊敬の念にもロマンが感じられて良かったです。とにかく惜しいなぁ、と思いました。他のシナリオですが、雰囲気はいいけどロケット製作が途中から消えてしまうので話に継続感が無いなぁ、と思いました。1シーンだけ取れば良くても全体を通して見ると統一したテーマが感じられない、という不満は大いにありました。
総評  軽く読める爽やかなショートストーリー集といった印象。ロケットに直接関わる話が意外と少なかったようにも感じられたが、読んでいて気分の良い話が多かった。ただ、ボリューム不足、詰めの甘さは不満点として残った。題材はいいし、一つ一つのシーンも悪く無いのだが、シナリオ構成は今一つ。雰囲気の良さは特筆できるし、プレイしていて気持ちの良い感覚は数あるゲームの中でも貴重なものであると思う。不満を潰してゆけば良作と太鼓判を押せるだけに少し惜しい。欠点が多いので点数自体は低めだが期待させる部分はあった。次回作ではトータルの完成度を高めて欲しいもの。

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