レビュー:白詰草話 -Episode of the Clovers- らすとあっぷでーと:7月15日
白詰草話 -Episode of the Clovers-[リトルウィッチ](Win)
ゲーム概要 近未来の東京。主人公の津名川宗慈は謎の研究組織『古痕』に属する研究員。古痕の研究所では『エクストラ』と呼ばれる地上最強の生命体の研究が行われていた。最強の力を持ちながら外見は人間の少女のような3人のエクストラ。津名川は彼女たちと人間らしい交流を持つが、次第にエクストラを巡る争いに巻き込まれていく。
 初回特典にはゲームのサウンドトラックが付く。
動作環境 OS:Win95/98/Me/2000/XP 要DirectX6.1以上
CPU:Pentium(R)166MHz以上(Celeron400MHz以上推奨)
HDD:1GB以上の空き容量
システム  基本はマルチエンドのアドベンチャー。しかし、後述するFFDというシステムにより見た目はデジタル・コミックのよう。技術と作業量が要求されるシステムだけによく挑戦したと評価したい。セリフは漫画風の吹き出し式。
 テキストアドベンチャーではないのだが、スキップは装備。性能が非常に高く、全シナリオを30分で見ることができるくらい速い。スキップの速度をいじることで等速にしてオートモードにする事もできるし、255倍まで上げて既読のシーンを飛ばす事もできる。セーブ数は60個。セーブ位置を自由に変更できるのでなかなか便利。クイックセーブもある。ゲームの長さからすれば十分。オートセーブ機能もあるので便利。CG閲覧、音楽鑑賞といった基本的なおまけモードあり。シーン回想モードもあり。その他、音量の調整やアニメのフレームレートなども設定できる。ただ、たくさんありすぎるので大抵はデフォルトで構わないのだが。低スペックマシンでのプレイには有効かも。
 インストールしてしまえばCDが必要無いのはお手軽で嬉しい。
 特筆すべきはシステムのデザインの良さ。ボタンを押した時の効果音やアイコンの表示、配置も無駄が無い。使いやすくてカッコイイデザインに仕上げていると感じた。
グラフィック  原画は大槍蘆人氏。コンシューマの北へ。White IlluminationでメジャーデビューしたNOCCHI氏と同一人物。水彩画風の柔らかいタッチの絵柄、大きめに描かれた男性キャラと小さめに描かれた女性キャラ(大人の女性でも体が大きくない)が特徴だろうか。全体的にレベルは高く、描き込みも丁寧。かなりの数のある原画を全て一人で描いたのでは、と思わせる。実際はそうでもないらしいのだが、気付かないくらい。
 フローティング・フレーム・ディレクター(FFD)と呼んでいるシステムを採用。通常のアドベンチャーとは一線を画す。画面に複数のカットイラストを表示して話を進めていく。一枚絵CGより並のレベルで描かれたカットを豪華に使い続けていくのは圧巻。効果音との相乗効果もあり、テンポの良いストーリー展開が楽しめる。
 OPムービーは各話毎に挿入される。ジャギーが目立つのが難だが、音楽とのリンクはまずまずで悪く無い。さすがに水彩画風の原画とアニメの絵柄が違うのは仕方ないか。
キャラクター  メインで描かれていくのは主人公とエクストラの3人。4人の生活を中心にシナリオが進んでいく。
 主人公の津名川宗慈。科学者ということで理知的、かつ物腰が穏やかで大人の男性という印象。エクストラ達を娘として育てていて、共に暮らすことに安らぎを感じている。多少、悩みを抱えているが他人には見せないように努力している。趣味も上品であまり隙を感じさせない。
 エクストラの一人、沙友。喋り方がたどたどしく、知能レベルから言っても一番子供っぽい。素直で邪気がなく、楽しい時は楽しく、悲しい時は悲しくしている。エクストラとしての能力はまずまず。津名川のことは「せんせい」と呼ぶ。
 エクストラの一人、透花。思慮深く、理性的。津名川の事を気遣って行動する。3人の中でのまとめ役で、エクストラとしての能力も高い。津名川の事が好きなのだが、遠慮がちで気持ちを表に出せない。津名川のことは「ご主人様」と呼ぶ。
 エクストラの一人、エマ。直情的で思った事はしっかりと口に出す。戦闘の時は攻撃的であるが、能力的にはバランスが悪い。わがままを言ったり見た目に気をつかったり悩んだりと、3人の中である意味もっとも人間的。津名川のことは「宗慈さん」と呼ぶ。
 津名川のライバル研究者、高宮エレン。津名川に猛烈な対抗意識を燃やしており、最強のエクストラを完成させる事に力を注いでいる。エクストラを人間的に扱っている津名川とは対照的にエクストラを兵器として認識している。強引かつ高飛車。自分の力を認めさせるためなら手段を選ばない口。
 「古痕」の情報部に所属する品藤聡美。理知的かつしたたかさを備えた才媛。少々きつい物言いをすることもあるが、好きな相手には柔らかい物腰。津名川とは過去に関係があったらしい。
 その他にもサブキャラが十数人。古痕の創始者で謎めいた雰囲気と常人を超越した能力を持つグラハム。シナリオのボリュームの割に出しすぎてしまった印象もあり。名前は出てきているのに説明しきれていないキャラが何人かいた。
 余談だが、津名川・品藤の他、サブキャラもメガネをかけているキャラが多い。特に男性陣はメガネ使用率が半数以上のような。……趣味?
シナリオ  シナリオライターは原画と同じく大槍蘆人氏。選択肢によってイベントやエンティングに違いはあるが、基本的にほぼ一本道のシナリオ。構成としてはアニメ風に話数で区切られていて、各話毎にOP・EDムービーが流れる。
 秘密組織「古痕」で研究されている生体兵器「エクストラ」。その研究でのリーダーとしてエクストラ達を生み出した津名川。遺伝子改良とナノテクノロジーによって作り出されたエクストラは素手でロボット兵器を圧倒する能力を持ちながら、人間のような容姿、そして心を持っている。津名川は兵器と人間との狭間に悩みながら、エクストラ達を娘のように扱い、彼女達とともに生活する。
 シナリオは津名川とエクストラ達との交流を通じて描かれる人間らしい生活、古痕・軍・公安といった様々な団体の権力争い、という二つの軸で展開されている。前者のエクストラ達との生活を描くストーリーでは何気ない穏やかな日常生活が描かれる。人間の少女と何ら変わらないエクストラ達が津名川と楽しく戯れている姿は微笑ましい。エクストラ達は最初から津名川に好意を抱いているので 最初からべたべたの蜜月シーンが楽しめる。それでいて過剰にべたべたせず、スマートなシーンに仕上げているのが好印象。津名川が大人なキャラだけに、父親と娘がじゃれているような嫌味の無い話になったと言えるのではないだろうか。不満としては、エクストラ達がある程度成長している段階から話が始まるので、なぜエクストラ達が津名川に好意を抱いているかの理由が薄いこと。ここをどこかで描いてくれればキャラに対する思い入れも増したのではないだろうかと思う。
 もう一つのメインであるエクストラ開発に端を発した古痕・軍・公安の争い。人間らしいエクストラを前半部で見ているだけに、エクストラを兵器としてしか見ていない高宮や、エクストラを兵器として利用しようとする軍を対照的に描いている。終盤は単なる兵器開発を超えた争いに発展するのだが、この辺から風呂敷を広げ過ぎてしまってまとめが苦しくなってしまった。エクストラを中心にしたはずの話が段々逸れていってしまった感じがあり、焦点がぼやけてしまったのでは無いだろうか。軍との争いの中ではエクストラの戦闘シーンがあり、グラフィック・効果音・シナリオの相乗効果で迫力あるシーンに仕上がっている。
 えっちシーン。見た目のスマートさとは裏腹にえっちシーンは豊富に用意されていて、1キャラにつき複数回のえっちシーンあり。特にエクストラ3人とのえっちシーンは3人が幼い容姿ということもあり、背徳感溢れる濃い展開。ロリキャラ好きなら満足度は高いのではないかと思う。普段と打って変わって津名川がかなり積極的なのはご愛嬌か。ただ、えっちシーン単体としての完成度は高いのだが、日常シーンの健全な父・娘の関係からするとえっちシーンには違和感を覚える。キャラ個別のシーンが少ないのもあるだろうが。なにより、子供のようなエクストラ達とえっちしてしまうのに多少抵抗あり。ロリ属性持ちなら関係ないのだろうか?
サウンド  音楽はPCM。デジタルサウンドらしい音の作り方だが、全体的には柔らかめの音楽という印象。曲数自体は40曲近くとかなり多い。バリエーションが多くて飽きないし、雑音にならない。ゲームのイメージとよく合っている。ボーカル曲がOP・ED共にあり、テクノ系の曲でアクション系のアニメで使われそうなイメージ。
 効果音の使い方は非常に上手い。カットを表示させる時に適切な効果音をつけているので臨場感が高まる。戦闘シーンでの効果音が印象に残るが、コーヒーカップが鳴らした音など、細かな所でのセンスが光る。
 ボイスはなし。作品がアニメ風なだけにボイスがあってもそれはそれで良かったと思ったが。
ネタバレ
(軽め)
 このゲームのメインはなんといってもエクストラたちとのベタベタな日常シーン。買い物に行ったり遊びに行ったりといった何気ないシーンが楽しい。エクストラVSエクストラの戦闘シーンもなかなか迫力あり。それだけに、えっちシーンは違和感があった。普段の付き合い方に比べてベッドの上でのえっち度が高過ぎるのかも。えっち度を高くするのは悪く無いのだが、繋ぎを上手くしないと少々強引か。
 それから最初のエンティングがエンド固定というのは少々疑問。全体の話を知った上で最初からプレイして欲しい、という意図なのだろうか?
総評  コンシューマから18禁へシフトした原画家ということで注目されたが、初参入ということを感じさせない高いレベルの作品だった。システムはオリジナリティのある作り、絵は質もさることながら量で良く頑張っている。シナリオはアクションありほのぼのありで楽しいし、センス良くまとめられていて野暮ったさが無い。惜しむらくはさすがに最後まで息が続かなかった事か。もう2−3話増えていればシナリオもじっくり書けただろうに。

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