レビュー:誰彼 たそがれ らすとあっぷでーと:2月11日
誰彼 たそがれ[リーフ](Win)
ゲーム概要  戦時中の日本軍部に端を発した争いを描いた、ノベルタイプのアドベンチャーゲーム。坂神蝉丸はある日、目覚めると地下室で石造りの棺に閉じこめられていた。偶然地下室に迷い込んだ女の子達から驚くべき事実を知らされる。現在は蝉丸が生きていた昭和19年から50年以上の歳月が流れた、平成1X年であるという。時間を超えてしまった謎を解くべく、蝉丸は調査を開始する。だが彼に襲いかかる、かつての僚友たち。その目的とはなにか。
システム  基本システムはマルチエンティングのノベル式アドベンチャー。これに簡易アニメーション(チップアニメ)による演出があり、アクションシーンを強化している。
 操作系は優秀。ノベルアドベンチャーに欲しい要素は一通り備えている。珍しいのがホイールボタンによるメッセージ履歴操作。マウスのみで操作できるので便利。セーブは数もそれほど多くなく、セーブ時間が記録されるくらいなのでもう少し親切だと良いが。それでもシステム関係は軽めでエフェクトの軽減もできる。ストレスはなかった。
 当たり前のはずなのだが、このメーカーにしては大きなバグが無かったのは良かった。
グラフィック  CGはWHITE ALBUMでお馴染みのカワタヒサシ(河田優から改名)。下線をしっかり残したイラストっぽいタッチと淡い塗りが爽やかで好感。CGの枚数自体もそこそこあり、クオリティは高い。背景画もまずまず。
 チップアニメはわざわざ入れるほど質が高いとも思わない。確かに文章だけの作品よりも変化があるが、アクションの演出強化以上の効果を感じない。ただ歩いているだけのアニメなど変化に乏しく面白くも無い。キャラの大きさの比率が小さく、迫力不足。更に声もない。アイデアとしては悪くないが、どうせ入れるならもう少し効果的に、かつクオリティの高いものが欲しい。
シナリオ  まず、シナリオのボリュームが少なすぎ。マルチエンド式ではあるが途中まではほとんど共通なので実質的な量はかなり少ない。これで価格は他のゲームと変わらないのだからコストパフォーマンスは悪い。もちろん、長ければ良いというものではない。しかし、この作品の場合全体的に描写が少なく掘り下げ不足である。
 シナリオでメインと言えそうなのは2本。それ以外はどちらかというと補完的なシナリオになっている。全体的にシリアスな感じが強く、遊びが少ない。そのせいで各キャラへの愛着が湧かずシナリオの展開にも納得がいかなかった。また、選択肢の重要性が希薄で、何故このシナリオに進むのか、納得がいかない部分がある。
 扱っているテーマはここ最近のストーリー重視のPCゲームでは多いネタである。題材としては深みがあり難しい。それなのに設定が甘く、都合の良いものも見られた。結果、ストーリーに重みが無く、話に説得力がなくなってしまった。
 メインその1。終わり方がハッピーっぽいもの。この作品のテーマを一番上手く消化している。キャラクターの悲哀を上手く描けていて、テーマの主張が伝わって来る。ただ、ストーリーの核がこのシナリオのヒロインで無いのは問題。そして、ヒロインの方は恋愛話が弱く、ラストへの繋がりもすっきりしない。主人公のヒロインへの想いが伝わってこないのも原因の一端。
 メインその2。エンティングが特殊なヤツ。こちらがトゥルーという感じのシナリオなのであるが、とにかくシーンごとの展開の根拠が薄い。特に終盤の決闘シーンは、女性キャラではないが「何でこうなるのか分からない」。なぜ、決闘をしなければならないのか。宿命だから、だけではあまりにも唐突である。そして、その後の展開もエンティングとしては意外性があるのだが、どうしてそういう結果になったのか、根拠が薄い。終わり方に納得いかないのではなく、どうしてそう終わるのかがよく分からない。ここら辺をきちんと描写すれば納得いくだろうになぜそうしないのか?演出的な流れを考えたばかりにストーリーの深みを軽視したような気がする。
 補完シナリオは謎を解明する、エッチシーンを見る以外の存在価値が希薄。ストーリーとしてはあまり楽しめなかった。
 余談。まじアンに続き、エッチシーンが今ひとつ変な方向性に行く。蝉丸の言動が……
キャラクター  キャラクターは男性も多くエロゲとしては珍しい。ただ、どうにもキャラクターの描写が少なくて愛着が湧かない。特に、攻略対象となる女性キャラとあまり絡まないうちに固定シナリオに入ってしまう。主人公に想いを寄せるキャラクターの心情に納得しきれない。キャラ云々よりもう少しきっちり描写しなければならなかった。
 月代は最初から蝉丸に好感を持つのだが、その理由が固定シナリオ後半にならないと分からないので違和感が付いて回った。その根拠もやや弱い。キャラとしては明るく元気以上のキャラ。素直な性格で、各シナリオでの憩いの場のようなポジションだった。
 夕霧はとにかく魅力を感じさせるようなシーンが少なすぎた。変な生物が好きという特徴もイベントのきっかけ(カエルの餌を探すなど)以上には作用しない。存在感の希薄なキャラ。
 高子は上品な物腰のお嬢様タイプ。物静かな系統だが天然ボケでも変な趣味も無く、品のいい感じでまとめられているのが逆に珍しく感じられた。シナリオ内できちんと喋れるのでストーリーに絡めていた。ただ、高子自身の心情描写はほとんど無かったように思う。
 麗子は、序盤からミステリアスな雰囲気を醸し出していた割に固定シナリオではあっさりとしていて拍子抜け。今ひとつ、どういう意図で配置されたキャラなのか不明。常に裏がありそうに見せてそのまま終わってしまった。ただし、チップアニメでは頑張っていたかも。
 広告の少女は出てきたシーンが少なく、ラストへの根拠が弱かった。深窓のお嬢様としては典型的。むしろ、「もう一人」の方がよく出た。性格が場面により変化する様が面白い。心情がストーリーでよく現れていた貴重な人物。
 主人公の蝉丸はとにかく堅物なので、シナリオ全体に遊びが無くなった。その分、シリアスに徹することになったのだが、そのおかげでキャラ的な遊びがほとんど無かった。キャラの絡みが薄くなったのはこういう無愛想なキャラを主人公に置いたせいかも。
 サブキャラではいろいろ出たのだがどうにも影の薄いキャラが多かった。その中で終始アクションで活躍し同じ姿勢を貫いた岩切は魅力があったかと。
サウンド  音楽はお馴染みのリーフサウンドチーム。それほど特筆するほどの曲も無いが、雰囲気は壊していない。OP、EDソングはPCでは珍しい男性ボーカル。このゲームの雰囲気を考えればむしろ自然で良い。個人的にはおまけソングが相変わらず遊んでいるので好き。
 せっかくアニメによる演出をしているのに声が無いのはどうだろう。口パクはしっかりしているのに文字表示だけでは意味が無いと思うが。
総評  リーフの再起を賭けた作品だったはずだが、今ひとつ魅力を感じることなく終わってしまった。ノベルタイプのゲームであるからシナリオへの比重が大きかった。しかし、同じようなテーマを扱っているPCゲームは多く、そして良い作品も多く生まれている。それらに対抗するには質・量共に不足していた。がちがちにシリアスなシナリオで勝負するならもう少し練って欲しかった。目玉のはずのチップアニメもそれほど大きな効果を上げたとも思えない。全体的に中途半端な感じは否めなかった。

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