レビュー:月姫 らすとあっぷでーと:5月22日
月姫[TYPE-MOON](Win)
ゲーム概要 オリジナル題材の同人ソフトだが、商業作品以上の規模の作品。西洋伝奇サスペンスアドベンチャーゲーム。
 主人公の遠野志貴は幼い頃の事故の後、モノの壊れやすい『線』が見えてしまう。このために、実家から勘当同然に親戚筋へ預けられるが、父親の死と共に実家へ呼び戻される。それと同時に志貴の周囲では奇妙な事件が起こり始める……。
システム  基本システムはサウンドノベルタイプのオーソドックスなシステム。既読文章の読み返し機能がなかったのが不満(後のバージョンアップで改善)。文章速度のスピードを選んだりと簡単なカスタマイズは可能。選択肢までのスキップはあまり速いとは言えないし、既読スキップは無し。ただし、既読文章であれば次の選択肢まで一気に飛べるのは便利。長編だけにプレイ時間の短縮は助かる。そこそこフラグ立ては厳しいのだが、エンド後にヒントコーナー『教えて!知絵留先生』があるのでそれほど攻略は難しくないだろう。本編のバッドエンド後なのに馬鹿っぽいノリの掛け合いが楽しめる。
グラフィック  わざわざパッケージに謳っているだけあり、イベントCG、立ちCG共に豊富。キャラクターの表情の変化は楽しい。
 それでも、漫画っぽい原画と数年前のレベルの塗りは明らかにマイナス。好みの問題もあろうが、主線が太過ぎではないだろうか……。ただし、ホントに表情は豊かなので飽きることは無かった。シナリオ重視のゲームにありがちな、慣れれば問題は無い……というお決まりの台詞でしょうか。
シナリオ  マルチヒロイン、マルチシナリオ形式ではあるが、クリアーできる順番がある程度決まっている。基本的には一つの世界を描いた一本道ストーリーと言えるのかも。各キャラのマルチエンドに関しては、救いのある無しというだけでなく、方向性の違うハッピーエンド二つというのもあったりして面白い。
 全シナリオにおいて、主人公の志貴が徐々に変わっていってしまうかのようなサイコサスペンス、吸血鬼モノとしてのホラーといった要素が含まれる。キャラクターたちが緊張感の無い連中なのでシリアス一辺倒にはなっていないが、ストーリー自体はどれもなかなか深刻である。
 アルクェイドシナリオは本編メインシナリオらしいが、テーマとしては『アルクェイドを幸せにしてやりたい』というシンプルなテーマであるかと思う。アクションシーンも多く、派手目の印象だがむしろ恋愛シナリオ的な側面をしっかりと持っていた。
 シエルシナリオはシエルと志貴が上手く噛み合わないものの、最終的にお互いを理解していくという仕立て。また、シエルシナリオにおけるアルクェイドの役回りというのも面白い。
 秋葉シナリオは結構ハード。特にノーマルエンドはギャルゲーの終わり方じゃないですね。ある意味、ノーマル、トゥルーどちらに転んでも自己犠牲的シナリオ。ラブストーリーというより兄弟愛を描いたシナリオと言えるかも。
 翡翠シナリオに関してはストーリー上のギミックが巧みで良い。推理小説ばりの設定。とにかく屋敷内中心のシナリオで動きが少ないのは残念。翡翠と過ごす時間が多いシナリオではあるので、キャラクターを気に入ってしまえば楽しいはず。
 琥珀は翡翠シナリオとリンクしているので、ギミックとしての驚きは無い。その分、琥珀のご主人様(?)秋葉が大活躍ですね。自分のシナリオで出し切れなかったハートの熱さを披露。おいしい所は秋葉に持っていかれている……かも。精神的なバランスの危うさが上手く描かれている。
 その他の良い点としてHシーンが割と濃いこと。文章量的にも多く、ねちっこいラブシーンが展開されて見応えあり。
キャラクター  キャラクターの数自体はそう多くないのだが、それぞれがしっかりと練りこまれている印象。メインのキャラ達は表と裏の顔というように、シナリオによって違った側面を見せてくれる。単純にキャラクターを理解できないので、シンプルに楽しめないとも言える。二面性を面白いと取れるかどうか。
 主人公の志貴は巻き込まれ型の適当に優しいある意味オーソドックスに良質な主人公。ボケツッコミ両方で絡めるのでギャグ方面では優秀かな。シナリオによってはかなり鬱状態もあるので、辛気臭いキャラに思えるときも。
 アルクェイドはメインヒロイン格の割にあっさりとした性格と、バックに持っている力の大きさがアンバランス。その危うさが魅力。緊張感の無い素直さが志貴との掛け合いで生きている。ダークな側面もむしろ素直さから来ていると解釈すれば、なかなか好感の持てるキャラクターと言えるかも。出番は少ないが(笑)やっぱりメインかな?
 シエルは作品全体の進行役とも言える。アルクェイドと違い、素直じゃない所が魅力になるのだろうか。知的な印象ととほけたそぶり。ただ、裏でなに考えているのかなぁ、という印象があるので人気は出ないのか。シナリオ上犠牲になっているキャラかと。
 遠野秋葉はお嬢サマを妹にしてみました、て感じのキャラ。この手のお嬢様だと段々と角が取れていくというのが一つのパターンであるが、秋葉はほとんど自分を崩さない。全キャラの中で思い込みが一番キツイ辺りはしっかりブラコンなのだけど。『お兄ちゃん(はぁと)』の展開は期待しないように。
 翡翠はメイドらしいメイド。感情の無いタイプに見えて少しずつ心の内を見せてくれるところが魅力。とにかく献身的なキャラクター。クールさと可愛らしさのバランスが良い。
 琥珀は最初の印象がとにかく怒らないキャラクターという感じで、むしろ印象が薄い。その分、翡翠&琥珀シナリオからは二面性を十分に発揮してくれる。キャラクターの微妙な心理状態が楽しめます。
 乾有彦は数少ない大筋のストーリーに関係ないキャラ。いい加減っぽいのに、言葉の言い回しが妙に凝っていたりといまいちつかみ所の無いキャラ。弓塚はキャラ立てとしては新鮮味は無いが、シナリオ上の役として良く出来ている。こちらも表と裏の違いと共通点が魅力。
 敵キャラは割といっちゃっている奴が多いですが、最終的にはやられキャラ的かも。
サウンド  音楽はCD-DA。数は10曲程度とあまり多くない。落ち着いた音楽で本編の雰囲気にはマッチしていると思う。ただ、サウンドモードは無い。それから音楽の鳴らない場面が多過ぎるように思う。効果音はなかなか上手く使われており、心音などが不気味な場面で生かされている。
総評  同人ソフトとかいう枠組みで評価する作品ではないですね。吸血鬼やサイコサスペンス、伝奇、ラブコメなど受ける要素を上手く取り入れていると言える。ある意味、ごった煮的だし、いいトコ取りの作品。それでも文章レベルや演出が概ね高いので飽きることは無かった。シナリオ的には閑話的なエピソードが少ないのが課題か。アルクの映画ネタみたいなショートエピソードを各キャラで入れて欲しいところ。つーか、翡翠とデートさせろ(死)

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