レビュー:うたわれるもの らすとあっぷでーと:5月22日
うたわれるもの[リーフ](Win)
ゲーム概要 耳と尻尾のある亜人間達の住む不思議な世界。主人公のハクオロは、大怪我をして倒れていた所をエルルゥに助けられ、一命を取り留める。しかし、一切の記憶を失っていた。命を救ってくれたお礼として、ハクオロは村の発展に力を貸す事にする。
動作環境 OS:Win98/Me/2000/XP 要DirectX
CPU:Pentium(R)U300MHz以上
HDD:1GB以上の空き容量
システム  基本システムは戦略型シミュレーション+アドベンチャー。ストーリーはあくまで読んでいくタイプの作品、戦闘パートをクリアしていきながらストーリーを進めていく。既読文章飛ばしやメッセージ履歴その他の基本システムはほぼ装備。要求するマシンスペックは高いものの、動作はそれほど重くはなかった。セーブ数は100個ちかく。ゲームの長さを差し引いても十分。レベルやセーブ時のミニ画面なども表示されるので分かりやすい。CG、シーン回想、音楽鑑賞などの他に、戦闘訓練や用語辞典などのメニューがあり、親切。しかし、このヘルプに気付きにくいのが難点。  メインの戦闘シミュレーションについて。クォータービューのマス目を移動して敵を攻撃する、サクラ大戦に似たシステムを採用。遠距離、近距離ユニットがあったり必殺技があったり。通常のキャラレベルの他に、敵を倒したりステージクリアする度にポイントが加わり、能力値の補正をすることもできる。また、この作品のオリジナルな所は連撃システム。攻撃を選択してチップキャラが攻撃した瞬間にマウスをクリックする事で連続攻撃をする事ができる。戦闘パートの難易度が低めのため、作業的になりがちだが、連撃をすることで緊張感を維持しながらプレイする事ができた。各キャラ毎に連撃をするタイミングが違う(クリックするタイミングが違う)ため、いい加減にやっていては連続攻撃できない。この辺りの工夫に好感を持った。
 この作品は携帯ゲーム機"PIECE"に対応している。ミニゲームを通じて能力値アップのポイントを本編に反映させる事ができる。著者は未プレイ。
グラフィック  原画に甘露樹氏を起用。さすがに人気作家だけあり、立ち絵、一枚絵共に文句なし。背景画もしっかりしていて隙が無い。ゲームボリュームからすればもう少し一枚絵が多くてもいいような気もするが、この作品の本質はむしろ戦闘パートであり、無理をする必要がなかったか。
 一枚絵より頑張っていたのが戦闘パートのチップアニメキャラクター。18禁作品のシミュレーションのレベルとしては最高峰。2Dとしてならばコンシューマでならそこそこのレベルになるのではないだろうか。敵を攻撃した時の細かな動き、必殺技時のダイナミックさなど、長いプレイ時間の中でも飽きさせる事がなかった。このチップアニメが凡庸なら長い戦闘パートもつまらないものとなっていただろう。18禁作品ではとかく一枚絵CGのレベル及び量にばかり目が向けられがちな所、むしろ何度も見るグラフィックを丁寧に仕上げてきたのがむしろ嬉しい。
 欠点としては背景に被って敵と味方がよく分からなくなったり、敵がやられる際に倒したのだか倒していないのかはっきりしない所とか。致命的ではないが、そう難しくない所のはずなので直して欲しかった。
 OPムービーは高いレベルなのだが、作品内のグラフィックと比べると少し原画が落ちるか。音楽と相まって雰囲気はとても良かった。
キャラクター  キャラクターは敵味方合わせて数十人が登場と、さすがは戦略シミュレーションだけあり18禁作品としてはかなり多い部類に入る。全体的な印象としては、オーソドックスにキャラを配置している感じで、それほど目新しさは無かった。ただし、まずまず丁寧に描いてはいるので安心して見られるとも言えそう。
 主人公のハクオロ。記憶喪失という設定は別に珍しくも無いが、本作の世界に対する異質な存在(例えば獣耳や尻尾がない)として主人公を配置している意図は伺えた。物語の核となるキャラであると同時に、様々なキャラと絡みながらも嫌味にならずスムーズに展開していた。戦闘時は勇敢かつ知性的で頼りがいがある一方、日常生活時では気の抜けた穏やかな青年として描かれている。格好良さと親近感を兼ね備えた、比較的ストレスのたまらない主人公に思えた。もっとも、もう少し積極性があったりすればいいのにとか、押しが弱すぎるんじゃないかと思う面も見受けられるが、その辺は好みか。
 メインヒロインのエルルゥ。傷ついたハクオロを助け、見守り続けてくれる心優しい少女。戦いに赴くハクオロを心配するばかりでなく、積極的に助けていこうという姿勢が印象的。日常生活時では、周りの世話を焼くお姉さんキャラ。やんちゃというか子供っぽい他キャラをいさめる母親的な面を持ちつつも、恋愛面ではハクオロと女性キャラが親密にしている場面を見るにつけ、すぐに機嫌が悪くなるというやきもち焼きぶりを発揮。アルルゥを追い掛け回したり、ハクオロに対して拗ねて見せたりと、分かりやすい展開が繰り返される。個人的にはさすがに食傷気味だったかも。
 エルルゥの妹のアルルゥ。まだ幼いためか人見知りが激しく、他人になかなか懐かない。が、一度信用すると側から離れようとしない。ストレートに表現してくる親愛表現がチャームポイントだろうか。食いしん坊という設定のため、食べ物ネタは多い。これも繰り返し出てくるので最後には飽きてきた。メインストーリーではハクオロに絶対についていくという意思の強さがエルルゥ同様よく表れていて、ハクオロとの信頼の深さを伺わせてくれた。
 さすがにキャラが多すぎるので(笑)お気に入りのキャラからカルラ。エルルゥがお姉さんキャラクターだとしたら、こちらは姐さん肌のキャラクター。ひょうひょうとしていて真意を悟らせない。しかし、自分の意志を貫いていく姿勢は誰よりも強く、必要とあらば強引さも見せる。表面上の性格に反して実はしっかりした考えを持ち、大事がよく見えている。また愛情表現がストレートで隙を見せたり躊躇する事が無い。その真っ直ぐさが爽快に思えた。
 その他女性キャラも、特異な感じはなくギャルゲー、エロゲーでの人気あるキャラをきっちり描いてきた。トウカなどは喋り方と性格の差異がコミカルで楽しかった。
 男性キャラでは、血気盛んなオボロ、知性的な騎士ベナウィ、豪快なクロウなど戦記物らしいキャラクターをオーソドックスに配置。決して目新しくはないが分かりやすく安心して楽しめた。
 あえて苦言を呈するならユズハ。このキャラクターはメインストーリーにもほとんど絡まないし、キャラとして浮いてしまった印象。キャラ設定がきっちりあるだけにもう少し作品に対しての存在感が欲しかった。
シナリオ  シナリオライターは菅宗光氏。こみっくパーティーでは牧村南シナリオなどを担当。エルルゥのキャラクター描写などに共通するものがあったように感じた。基本的に一本道のシナリオで、特に選択で迷うということも無い。感覚としてはシミュレーションRPGのシナリオである。世界観が壮大でボリュームも十分。シリアスさとコミカルさの合わさった感じはコンシューマーのRPGを思い出させた。
 世界観は日本の戦国時代くらいをベースに、様々な国の文化を混ぜ合わせている感じ。エルルゥなどはアイヌの雰囲気があるが、ベナウィやウルトリィなどを見ると完全に西洋スタイル。またそれらの文化をきちんと描写している所も興味深い。宗教色、民族色が出ているのである。戦闘民族がいたり迫害されている民族がいたり、また信じている宗教が少しずつ違っていたり。この辺りは異世界を描きながら、実在の世界を彷彿させるものだった。テキスト面では決して難しく語らないが、人間同士の争いを描こうという意図は見えた。
 メインストーリーではハクオロを中心に数奇な運命を辿る一行を描いている。静かな農村に住んでいた人々が、ハクオロがしたことによって少しずつ変化が生じ、次第に戦いに巻き込まれていく。自分たちの生活を守るために戦いを続けるハクオロたち、そしてこの戦いの裏に潜むものが次第に見えていく……という流れ。この辺りの流れは正にコンシューマーでよく見られる展開と言える。戦いを続ける中での非情な展開、大局を見た決断など、壮大なストーリーに発展していく引っ張り方が効果的だった。特に序盤でのストーリーの煽り方は上手く、困難に立ち向かっていくハクオロたちの先を早く見たいと思わせた。
 一方、物語の収束のさせ方は独特。中盤からストーリーの一連の流れの裏に何かがあると匂わせた上で、最後は急展開でやや衝撃的な展開で締めくくる。ここの展開はやや急すぎて説明不足。終盤近くまでは戦記物として普通に楽しんでいたのだから、展開の転換はスムーズにやって欲しかった所。中盤から伏線は張っていたのに、あまり効果的ではなく、プレイヤーは物語の核心に辿りつけるよう努力する必要があるとも言える。あまりにもシナリオと世界観を膨らませすぎてライターが書ききれなかった印象。これならば戦記物として無難にまとめてしまった方が良かったのかもしれない。ただ、それではコンシューマーのRPGと差がないとも言えるが……。
 日常生活の描写、サイドストーリーでは基本的にコミカルな路線。ハクオロと各キャラの辛み、或いは各キャラクター同士の絡みがショートイベントとして展開する。繋ぎがスムーズでなく、話が飛んでしまったり、説明パートが一つ抜けたのではないかと思われる部分があったりと完成度としてはやや低いか。キャラ同士の分かりやすい(或いはありがちな)ネタも、それなりに丁寧に書いてはいるのだが。
 また、キャラ毎にメインストーリーとは剥離したロングのイベントも用意されている。こちらはキャラの抱えた悩みや問題などを描写するもので、戦闘とはまた違う雰囲気が味わえるので良かった。もう少しこういうイベントの比重を高くしても良かったかと思う。
 Hシーン描写について。一つのシナリオで多数のキャラを見せようとしているので多少展開が強引なのは止むを得まい。むしろ、ハクオロの立場を明確化してHシーンをまとめてしまうという手もあったように思う。それよりも問題なのはHシーン後のフォローがほとんど皆無という点。一線を超えたのだから、多少は関係の変化があってもいいとは思うのだが、ただHシーンがありました、で終わってしまっているように感じた。ストーリーと絡めていく事も無理ではないので、もう少し工夫して欲しかった。Hシーン自体もあっさり目で少々残念。個人的には、多少強引でもHシーンに持っていってしまう事自体は、ハクオロの立場を考えるとむしろ正しく思えたので好感を持ったのだが。
サウンド  音楽はCD-DA。OPムービーに主題歌は無いが、劇中にボーカル曲がある。和風な音楽がベースなのだが、ゲームの雰囲気が無国籍っぽいこともあり音楽も多様。特にオススメは戦闘時の音楽。劇中で聴いている時間が最も多いけれど、飽きさせずかつ戦闘を盛り上げていっていってくれたと感じた。アレンジ等含めて曲の完成度が高く、さすがは音楽に定評のあるメーカーだけある。個人的には、リーフの昔からの音楽マンがあまり参加していなくて寂しかったりもしたけれど……。
 ボイス付きでも良さそうだが、ボイスは無し。ボイス無しでも1GBの容量だし、これ以上のボリュームアップは厳しかったのかもしれない。
総評  欠点は多くあれど、作品の持つ本質的な面白さとパワーで押し切った印象。ノベルアドベンチャーから脱却してよりゲームらしい試みが数多く見られた。ゲームとしての歯応えよりも、グラフィカルな方向性で楽しく操作するゲームを作って来た所に好感を覚えた。ストーリーも、穴はあるものの終盤近くまでは純粋な戦記物として、戦いの辛さも描いた王道エンターテイメントとして良くできていたと思う。DC版こみパ、ABYSS BOATなど、ここ最近のリーフ作品には一貫してゲーム性を高めようというコンセプトが感じられる。今まではゲーム的な部分の作りが甘く、むしろストーリーの邪魔になるとも思われたが、本作で一定度の成功を収めたのではないかと思う。今後の作品に期待したい所。また、本作のコンシューマ化(多分するだろう)ではより完成度を高めて欲しいとも思っている。

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