レビュー:吸血殲鬼ヴェドゴニア らすとあっぷでーと:1月30日
吸血殲鬼ヴェドゴニア[ニトロプラス](Win)
ゲーム概要  吸血鬼との戦いを描いたアクションアドベンチャー。ごく普通の学生だった伊藤惣太はある朝ふと鏡で自分の顔を見ると首筋に二つの傷痕があるのを見つけた。まるで映画で見た吸血鬼の噛み痕のように。幼なじみの香織と共に登校しているうち、体の不調に気づく。その惣太を陰から観察する少女と男。そして、惣太を狙って探し回る組織。何かが始まっていた。
システム  各キャラにセリフのウィンドゥが出る以外はいたって普通のノベルアドベンチャー。選択肢でストーリーの変わるマルチエンティングタイプ。この他に、吸血鬼との戦闘時はコマンド選択式の戦闘パートがある。
 システムにはキーボード操作、スキップ、読み返しなど基本的な機能は備わっている。セーブデータは30個。少なくは無い。自由にコメントの書ける仕様なのでセーブデータの状況説明などに便利。機能的な問題は無いのだが、全体的にシステムが重いのが気になる。フルインストールしている割に動作が遅い。スキップはエフェクトを省略しても早いとは言えないし、一つ一つの動作もやや重い。かなり良いのがバックグラウンドスキップ実行。スキップが遅くても最小化したまま放っておけば選択肢まで進むので、暇つぶしにネット散策でもしていれば良い。他のメーカーでもつけて欲しい。
 コマンド選択式の戦闘パートは武器のグラフィック等出来はまずまずだが、パターンが分かると力押しできるので、繰り返すと飽きる。クリア後はスキップできると良かったかもしれない。(追加:修正ファイルを入れるとクリア後にスキップできます)
グラフィック  CGの数自体は多め。ただし、不気味な怪物と無骨な武器・兵器のグラフィックも多いのだけど。女性キャラクターのCGはほどほど。
 CGはまずは原画の好みか。流行のアニメっぽい原画ではない。どちらかというと漫画チック。悪くは無いが地味。香織、弥沙子辺りはあまりにも落ち着きすぎではないか。世界観には合っていると言えなくも無いが、もう少し華やかさがあるといいかもしれない。クオリティ自体はまずまず。特に動きのあるCGは良い。モーラの戦闘シーンのCGとかはいい出来だと思う。
 ストーリーがハードなので仕方ないけど、構図は戦闘シーンや緊迫した場面が多く、気楽な場面でのCGはちと少ない。ストーリーのハードさを絵で緩和できれば良いかな、と思わないでもない。
 打って変わって、3DCGも含めた武器・や兵器は非常に良い。重量感のあるデザイン、世界観に合った禍々しさ。戦闘シーンではアニメーションも絡めた動きが大変良い。もう少しスムーズに動くと尚良いのだが……
 OP&EDはテレビアニメ仕立てのアニメーション。音楽に乗せた演出が良い。特にEDはいかにも仮面ライダーっぽくハードボイルドさが滲み出ている。もちろん意識しているんでしょう。
 敵その他の吸血鬼デザイン。恐ろしく不気味です。気持ち悪いっす。ストーリーだけでも殺伐としているのに敵で更に盛り上げなくても。ただし、これは好き好きか。気色悪い怪物を主人公でぶっ潰すのが良いという方には良いんでしょう。
シナリオ  基本的には、キャラ固定のシナリオに入ったらそのままエンティングまで一本道。ストーリーは吸血鬼との戦いを軸に描かれた人間ドラマが中心。ヒロインごとに終盤のストーリーが変わる。恋愛シナリオはメインというわけではなく、物語の一要素になっている。
 中心となって来るのは主人公の惣太が吸血鬼との戦いの中で成長し苦難を乗り越えていく物語。怪物と化した吸血鬼たちとの死闘を描いた殺伐としたストーリーが展開する。自分自身が吸血鬼ということもあり、残虐シーンも非常に多い。ダークヒーローものなので、個人の好みにより好き嫌いがはっきりしそう。ほのぼのとした、落ち着けるシーンは少ない。苦しく厳しい戦いばかりが主人公を襲う、重いストーリーである。
 ニトロプラスの第一作PHANTOM OF INFERNOで選択肢が多いという反省をいかしたのか、今回は選択肢がかなり少ない。一回のシナリオで4つ程度である。しかも前半で決まってしまう。そのおかげで後半はただ進んでいるという感覚が強い。選択肢自体も部活に行くか帰るか、などの何気ない選択であり、シナリオ分岐の必然性を感じない。そのため、後半になぜこのキャラのシナリオに入ったのか、釈然としない部分があった。
 香織シナリオは今ひとつヒロインの香織が活躍しきれていない。幼なじみキャラなので過去から現在にいたる関係からシナリオを展開させたいところなのだが、なにしろメインの吸血鬼のストーリーの方がよっぽど重いので魅力を出せていない。むしろ弥沙子の方がシナリオ内で重要な役割を果たしてしまっている。弥沙子としては、キャラの抱いていた悩み・葛藤などが吸血鬼との戦いを通して描けているので、良い出来となっている。
 弥沙子シナリオはリァノーンシナリオと終盤まで被っていて今ひとつ魅力がない。弥沙子の自己犠牲的な面を出そうとしているのは分かるが。むしろ、香織シナリオでの弥沙子の方がテーマを描き出せている。ラストの演出は上手い。音楽とのリンクが秀逸。
 モーラは世界観とキャラクターが合っているのでメインの吸血鬼との戦いや主人公の葛藤などと上手く絡ませることが出来ている。モーラ自身の過去や現在の葛藤に香織を加えたりフリッツが絡んだりすることで物語に厚みがあった。ラストの悲壮感の出ている終わり方も良い。
 リァノーンシナリオはキャラクターと世界観が合っているという面ではシナリオに無理がない。ただ、前半はほとんど囚われの身のまま話が進むので、リァノーンの固定シナリオに進んでも今ひとつ必然性が感じられなかった。一方、終盤はギーラッハを絡めてのストーリーが展開していき、この中でリァノーンの過去から現在の想いへと繋がっていく。ただ、主人公の最後の決意の裏づけがしっかりしていないように感じられ、説明不足の感もあった。ラストシーンの見せ方は良い。
 小ネタだが、弥沙子のパソコンのOSがクラビスだったりして、さすがは仲良しブランド同志だな、と。クラビスはピュアメールの中で出てくる架空のOS。オーバーフローはEDロールにも出てくるくらいです。
キャラクター  キャラクターは地味。特に女性キャラクターに派手さが無い。攻略可能キャラが少ないのだから、もう少し面白みのあるキャラクターに仕上げて欲しかった所。
 香織は世話焼き系のオーソドックスなキャラクター。主人公との過去の関連で盛り上げるのかと思ったのだが、恋愛面の薄い本作では上手く生かせなかったように思う。メインヒロインかと思うのだがシナリオの大筋にも絡めずらく、やや活躍しきれなかった感あり。
 弥沙子も引っ込み思案として、基本的にはオーソドックスなキャラクター。軽音部のネタが振れたりと、香織よりは主人公と絡めたか。ただ、キャラクターの地味さは香織以上なのでかなり目立たない。ただ、香織シナリオではちと違った展開を見せているので、ここでは魅力を発揮できた。心に秘めた思いというのを上手く生かせていたので、自分のシナリオでも出せれば良かったのだが。
 モーラはパッケージにもなっているのでこっちがメインかも。吸血鬼ハンターの小さな女の子がハンマーを振り回すという設定だけでも意外性十分。大人びた物腰と時折見せる気遣いが魅力。後半で主人公と出会う中で葛藤していく様も上手く描けている。シナリオのハードな展開にも問題なくキャラがついていけているので、無理が無い。
 リァノーンは前半での出番が少ないのが残念。シナリオ上仕方ないのだが、主人公とリァノーンの関係の中でシナリオを進めたかったところ。一途な愛情を貫こうとする悲しきキャラクターとしてはきちんと成立している。無邪気な性格は多少予想できたので意外性はなかった。
 その他男性キャラクターはどうにも濃い野郎どもが多く、女性キャラより作りこまれている印象。
 主人公の伊藤惣太は暗い世界観の中で割と明るく振るまっているので、全体を中和できている。信念を貫いていけるタイプで、厳しいストーリー展開の中ではこういう主人公でないと話が成り立たないだろう。ただ、普通の学生の割に精神力強すぎだなぁ、と思うが。
 それ以外ではモーラの相棒フリッツ、ヴァンパイアのギーラッハとウピエル辺りが良く出来たキャラ。フリッツは斜に構えた嫌われ役として優秀。彼の抱えたトラウマも、キャラクターとして厚みがある。ギーラッハは敵役の中でも信念の中で生きる堂々とした騎士。戦わなければならない理由がしっかりとあって、シナリオでも重みがある。ウピエルは基本的には軽い性格の敵キャラなのだが、とあるシナリオでは悩みを抱える一面を見せる。これがもう少ししっかり描けていたならばより良いキャラになれたような気がするが。
 結論からすると、野郎が目立ちすぎて女性キャラがいまいち活躍しきれていないような(笑)
サウンド  音楽は抑え目だが変わらずの高クオリティ。暗い世界観に合っている。戦闘シーンではきちんと重厚なノリで仕上げているし良く出来ているかと。
 今回はOP&EDに気合が入っていて、ボーカルはプロシンガーの小野正利を起用。ハードロックというのは結構珍しいかも。OPはメタル、EDはバラード。個人的にはどちらもクオリティは高いし、世界観にもよく合っているし、シナリオとも多少リンクしていたりと主題歌としては申し分なし。OPはシナリオのハードさを、EDは悲壮感を表しているようで、ゲームを盛り上げていた。シーンによってはBGMとしても流れたりと 使い方も良かった。
総評  第一作の評価が高く、期待された中で発売された本作。全体的にアクが強く、一般受けを狙っている作品ではない辺り、スタッフのこだわりが見える。システムなどが改善されている点は良かったのだが、シナリオ面ではボリュームの少なさ、一本道に感じる展開、人間のヒロインは今ひとつメインのシナリオに絡めないなど気になる点があった。もちろんトータルで見ると十分良作ではあるのだが、飛び抜けた魅力があったか、と聞かれるとファントムよりは弱かったように思う。それでもクオリティは高かったので、次回作以降に又期待したいと思う。

まほさろゲームレビュー
電脳めにゅ〜
ほ〜む