あきいずみ

本名・秋吉まこと、1954年3月15日大牟田市生まれ。殆ど説明無用のあきいずみ様です。
逆にこれだけの大物を今まで登場させなかったのは、あきいずみとしてのデビュー前のシングルを入手していなかったから。
この度やっと見つける事ができましたので(ジャケ状態は悪いのですが…)満を持してご登場頂きました。
やはりNAV時代の2曲は孤高のロック歌謡です。アルバム出ていないのが悔やまれますね。
後期の活動とかを見ると何かしらやらかしててもよさそうな処なんですが。
歌手の後作詩家になられたとの事ですが、誰なんでしょうか、ご存知の方がいらしたらご教示くださいませ。

そりゃないわ  亜樹まこと
   みなみらんぼう/みなみらんぼう/有明春樹
C/W 扉をたたいて
   山口あかり/井上かつお/青木望
     MCAビクター E-1017 1970.

「REMEMBER」誌で紹介されるまで、全くその存在を知らなかった彼女の歌手デビューシングル。どんな経緯で歌手としてのデビューを果たしたかは不明ですが、時代らしくいしだあゆみやら由紀さおりやら小川知子やらが巧みに練り込まれた純粋歌謡曲です。曲調としては同年リリースの「手紙」あたりをモチーフにしているんでしょうが、流暢に昇天する由紀様とは一線を画するベチャベチャの泥歌謡なのが素敵。♪ぅんそりゃなぃわぁ〜、の「ぅん」の発音はデビュー曲ながら自己主張を忘れない彼女の意気込みの顕れだと確信できます。歌唱が妙に幼げなのも絶対狙いでしょ(後期はその技を駆使してるし)。B面は渚ゆう子あたりかな?ハープまで鳴り出す始末ですが、ネットリ感はさすがに本家に負けるものの充分ドリーミィな歌謡曲と相成っております。両面ともあきいずみ時代を求める人には喰い足りないかもしれませんが、楽曲としては素晴らしい出来ですね。
ヒッチハイク  あきいずみ
   阿久悠/井上忠夫/井上忠夫
C/W 魔法使いの娘
   阿久悠/井上忠夫/水谷公生
     NAV NA-3 1974.04.10.


彼女の存在を決定づけ、後世に残させる結果となった記念すべき改名再デビューシングル。NAV創設期のリリース(NAVとしての第一号作品「恋のイブニングタイム」(進藤典子)が同年2月25日リリース)ですから相当気合が入っていたのでしょう、翌月デビューの木之内みどりの乙女路線にも全く引けを取らない過剰挑発型アッパーロック歌謡を奔放に歌ってらっしゃいます。冒頭の♪乗せてってよ、からいきなり濡れちゃってるもんね。その後は唸り・溜め・喘ぎ・キメ・そしてブレイク昇天とあらゆる技法を使って貴方をアクメに達してくれる事間違いなし!慢性多淫症になる危険を孕んだ要注意楽曲です。衣裳は銀のジャンプスーツで間奏ではカンフーアクション?までやってくれるというサービスぶり。さすがプロ、徹底されてますね。お手本は勿論山本リンダですがキワモノというより真性という感じ(同義語ともいう)。B面は一転して軽快ロックンロール、アレンジを多少変えれば普通のアイドル向けでもよさそうな作品なんだけど、やっぱりサビで昇天するいずみ様はほかのションベン臭い歌手とは明らかにステージが違います。あっけなくFOするエンディングもグーよ。
バカンス
   阿久悠/井上忠夫/井上尭之
C/W 危機一髪
   阿久悠/井上忠夫/井上尭之
     NAV NA-8 1974.07.25.


デビュー曲では技法重視というかテクニシャン的な部分を前面に出しておりましたが、セカンドシングルは一転してひたすらアジテーションしまくっております。しょっぱなの♪ギンギンギンギぃ〜ん、からすでにフルスロットル、サビはもう嘶き狂うような剥き出しの欲情歌謡を見せ付け、最後に♪ハァッ!で〆るという、テクニシャンでありながら数をもこなすプロ中のプロといえるプレイには惚れ惚れする程。阿久悠・井上忠夫両氏ともお亡くなりになられましたが、これこそ追悼盤に必ず入れて欲しい一曲です。B面となった「危機一髪」は、インパクトこそA面に及ばないものの逆に完成度ではこちらが勝っているのではないかという渾身の作品。迷走するメロディライン、人間の根幹を露わにした歌詩、焦燥感を煽るアレンジ、そしてテクニック満載の歌唱…すべてが出来上がってます。サビの雄叫び畳み掛け(しかも語尾まで仕掛けあり)なんて堪らずあっけなくイッてしまいます。しかしこの曲での阿久悠さんの詩は素晴らしい。語彙の凄さもさることながら、「危機一髪」といいつつ全然懲りてないいずみ様の綽々ぶりが見事に表現されてます。いや傑作。
私生活
   千家和也/浜圭介/馬飼野康二
C/W 夢なら覚めないで
   千家和也/浜圭介/馬飼野康二
     テイチクユニオン US-832 


あれだけの高作品をリリースしながらNAVでは上記2曲のみで終わり、テイチクユニオンに移って今度は亜樹まこと時代を引き継ぐような歌謡曲路線の楽曲をリリース、作家陣を見てもわかる奥村チヨ路線です。まぁNAV時代のアレでは売れないでしょうが(山本リンダだって'74年は人気が落ち着いちゃったし)、後世に語り継ぐ為にももう少しアジテーション歌謡のリリースを続けて欲しかったというのが本音です。で、気を取り直してこの「私生活」ですが、これはこれでまたネトネトグチュグチュとのたうつ歌謡曲ですな。さすがに歌唱は以前のアジテーティブな部分が残ってしまってて濡れ方が違うというか、まぁちょっとズレちゃってるんですがそれはそれで気持ち悪くて素敵です。きっと浜圭介さんも千家和也さんもこうゆう歌い方を希望していなかっただろうな、的な。ところがB面では以前の歌唱が勝ってしまって、アレンジもソチラ寄りになってしまってます。メロはやはりチヨ様の名曲「嘘でもいいから」の亜流、馬飼野さんが頑張ってるので全く別の路線に感じられますね。A面で義理果たしたからB面はスキにやっていいでしょみたいな薄笑みが想定できる隠れた佳曲です。
さすらいびと
   小木鳴彦/津島利章/津島利章
C/W 悲しみよ空を飛べ
   阿部基治/津島利章/津島利章
     テイチクユニオン US-844 


1975年2月〜放映のMBS系テレビドラマ『放浪家族』主題歌。ジャケ見たら解るでしょう、香山美子と平幹二朗が放浪するんですから(ってドラマ内容は知らないけど)それ相応の穏やかな歌謡曲になっており…あら、なってないぢゃないの。いや確かに歌詩もメロディラインも確かに緩やかな歌謡曲なんだけど、いずみ様のズブズブな歌唱が泥を塗るかのように放浪感を見事に表現されてらっしゃいます。こりゃ“さすらい”とか“旅に出たい”とか“風と遊んで”とかじゃない、ただ々々転落の人生を吐露されてるだけよ!よくこんな楽曲を主題歌にしたなというところですがそういうドラマだったのかね、と思って調べたらキャストには乙羽信子、久我美子、宮園純子、加茂さくら…あ〜ぁ、なるほど。前作と同じくB面ではやりたい事をやってるかと思いましたがさすがにそうはいかず、寸止めがテーマのようなマイナー歌謡曲。あきいずみ歌唱である必要はともかくB面の方がいい曲ではないでしょうか。
ムーンライトツイスト  MAKOTO
   木之元順一/松尾清憲/岡田徹
C/W Good-byeフェアウェル
   MAKOTO/岡田徹/岡田徹
     キティ 7DS0001 1982.03. 


さすがに食傷気味の作品が2曲続くとご本人もフラストレーションが溜まったのか、あきいずみとしては4曲のリリースで終了。その後バンド活動をやってたという情報がありますが、1982年に奇跡の再々デビューを果たします。別に全然いいんだけど、当時28歳という事ですよね…恐れ入ります。MAKOTOと改名してのデビュー曲は私の好きな岡田徹氏アレンジの軽快なポップス。既にここにはあきいずみ時代のガンギマリ唱法はありませんが、この辺が好きな人にはナカナカのポップチューンではないでしょうか?メジャーではブレイクできなかった松尾清憲を起用しているのがキモでしょう。黒沢ひろみとか結構いい作品作る人でスキなんですが、それより私が好きなのが岡田さんが作曲も手掛けたB面。1分51秒というタイムも鋭いし、かなり私好みの曲です。彼女のアイドル気取りな歌唱もピッタリ!フィーバー「心がわりのバタフライ」、ベリーズ「恋のゴールはドコにある?」と共に、アカルイサヨナラ系B級アイドルB面名作として個人的に君臨している作品です。
1000カラット、ムーンナイト
   バディ・堀井/MAKOTO&岡田徹/WINKS
C/W SOダーリン
   森田由美/松尾清憲/岡田徹
     キティ 7DS0014 1982.


彼女の歌手活動としては最後のシングルとなってしまったこの「1000カラット、ムーンナイト」。いずみ様の写真もなにげに凄いというか、完全にアイドル気取りです。ミニですよミニ!!改名してるから82年デビュー組の一員のお積もり?曲の方はネオ60sポップスとかいう感じで、ギタープレイにいずみ様の息絶え絶えの媚び歌唱が絡むというラストに相応しい作品ですね。エンディングのサックスもいい味出してます。B面は松尾清憲作品、こちらもいい出来。ラストの笑い声はいずみ様だからこそ出来るコケティッシュぶりですね。結局MAKOTOとしてもシングル2枚でフェイドアウト、ここらでアルバムリリースがあっても良かったんですが…ライヴとかやってたんだろうなぁ。なお「1000カラット〜」はムーンライダース関係のオムニバスで復刻されてますね。是非次は「Goo-byeフェアウェル」を復刻してほしいところです。んで、それを機会にMAKOTOでもいいから復活してほしいなぁと切に願う次第です。




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