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五十嵐夕紀

「6年たったら」  松任谷由実/筒美京平/萩田光雄
C/W 「丘の上の十番地」 松任谷由実/筒美京平/筒美京平
  東芝  TP−10202

「私が選んだあなたです」 橋本淳/筒美京平/萩田光雄
C/W 「今日も私は泣き笑い」 橋本淳/筒美京平/船山基紀
  東芝 TP−10277

「第一印象」 松本隆/川口真/川口真
C/W 「面影ありがとう」 松本隆/川口真/馬飼野康二
  東芝 TP−10375

「えとらんぜ」 松本隆/吉田拓郎/瀬尾一三
C/W 「ほ・ほ・え・み」 松本隆/吉田拓郎/瀬尾一三
  東芝  TP−10446

「ワル!(泣くのはおよし)」 松本隆/都倉俊一/都倉俊一
C/W 「メイク・アップ」 松本隆/都倉俊一/田辺信一
  東芝  TP−10502

「恋人たちの季節」 三浦徳子/都倉俊一/萩田光雄
C/W 「めぐる季節に」 竜真知子/都倉俊一/田辺信一
  東芝  TP−10573

「バイ・バイ・ボーイ」 山川啓介/Speranza-Reale-Costello/馬飼野康二
C/W 「ゲッタウェイ」 康珍化/DougFrank-DougJames-CissyHouston/馬飼野康二
  東芝 TP−10618

「ホット リップス」 来生えつこ/亀井登志夫/神谷重徳
C/W 「熱くホライゾン」 来生えつこ/岡本一生/神谷重徳
  東芝  TP−17179

「浮気ならいいわ」 なかにし礼/森田公一/竜崎孝路
C/W 「何もなかったように」 亜蘭知子/織田哲郎/難波弘之
  ビクター SV−7463

いかにもナベプロでございます、と云わんばかりのクドい笑顔。それでも当初はリリーズと
太田裕美の間の層を狙ってたのではないでしょうか。最初は一応アイドルらしかったです
が、サンデーズだった頃から他のアイドルの人とは明らかに違う臭みを漂わせており、
最後はやっぱり行き着いていらっしゃいました。そんな彼女が私は大好きです。
歌以外では86年ににっかつロマンポルノに初主演、行き着いた後でしたのでまぁいいで
しょう。その後引退し、ブティックを経営してるところまでは知ってたのですが、最近
神田夕紀として司会業をしているらしいとの情報を入手しました。やはりあのしたり顔は
ご健在なんでしょうか…。是非拝見させて頂きたいものです。

アンタ、6年たった時の自分の姿を想像してこの曲リリースしたの?
と問い質したくなるようなタイトル、これは印象深い。ユーミンの
作詞についてはナベプロ→松本隆繋がりでしょうか、前年の三木
聖子の影も感じますが詩はデビュー曲らしくもう少し幼げなものに。
この起用が功を奏してか、結局チャートインしなかった彼女の曲の
中では唯一認知度のある(といっても多少ですが)シングルに。
彼女も舌ったらずの鼻声を可愛く造って歌っており、正統派アイドル
になるつもりだったのかもしれません。B面は恐らく発注通りの
ユーミン調。さすが筒美京平先生、職人技ですね。

初期ではこれが一番好きですね。筒美さんは彼女の歌の根底に
流れる毒々しい部分を察知していたのか、アイドルポップスで
ありながら演歌調のコブシを回せる歌に仕上げております。
橋本さんの歌詞も素敵、「私が選んだ」って、既に女王様気取り
じゃないの(笑)。B面の「喧嘩のあとでくちづけされて」という
のもいしだあゆみチックでいいなぁ。アレンジも70年代ディスコ
サウンドを微妙にちりばめており、さすが一流作家の作品は
ひと味もふた味も違う、って事ですね。彼女も歌い方のクセが
段々出始めて、この泥臭さがたまらなく好きです。

松本隆氏については深く研究されてる方が多数いらっしゃると
思いますのでここでのツッコミは控えておきますが、第一から
四まで、更に「現在印象」でトドメを刺すクドさはやり過ぎ、というか
実験台。果たして彼女はTVで第二印象を歌えたのか?ナベプロ
のブッキングの手腕が問われる処ですネ。男にとって都合よく
描かれた男性像はわざとかもしれませんが、彼女が歌う事により
オンナがヒモを囲うまでの実況見聞みたいな雰囲気も。まぁ普通に
聴けば爽やか系の佳曲です。B面もさすがの歌詞ですが、川口真
さんの苦労の跡が窺えます。

彼女の歌で「6年たったら」以外で多少知られていると言えば
この曲なんでしょう。カラオケにも入ってしまって逆にビックリしました。
やはりナベプロ絡みか吉田拓郎を起用、東京と札幌にいる二人の
男を愛して悩む歌、というかどちらかというと手玉に取って内心高笑い
という方が彼女にはあってるような気もします。それを危惧してか、
彼女の歌い方も普段の歌い方より抑え気味でそれなりの哀愁を
感じさせてくれております。B面は完全に拓郎節、いいのか悪いのか
私には分かりません。正直云うとこのシングルはイマイチ、ファンの
方ごめんなさい。

やって来ました、これこそ彼女の歌手としての最高峰でしょう。猛女
コーナーで既に紹介した通りの異常歌謡ですが、松本隆としては
当時の中原理恵路線をもう少し下世話に表現したかったのでしょうか。
「えとらんぜ」の三角関係といい(一応)アイドルには似つかわしく
ないテーマを与える辺り、彼女の本質を分かってらっしゃるようです。
五十嵐さんも期待に応えて全開の歌唱を披露。ウ音の発音が素敵!
何かに取り憑かれたかのような濁りきった唸り上げ方も極致に達してます。
B面はより中原さんに近いですが、彼女のメイク姿を想像するとちょっと
コワいものが(笑)、ルージュ塗って口パフパフなんて見ものでしょうねぇ。
曲ラストが「レディーX」になっちゃうのは云うまでも無く都倉さんのお家芸。

「ワル!」の後を受けての新曲、さぞやハッタリかましまくりの異常歌謡
かと思いきや、逆に反動が来たかのような淡々としたナンバー。この
年の都倉さんはこの路線がお気に入りだったようで、倉田まり子「グラ
ジュエイション」、天馬ルミ子「アデュー」など当時の持ち駒には同じ
様なメロの曲を提供してます。倉田さんも相当歌い上げてましたが、
五十嵐さんの方はやはりこれみよがしというか自分の歌声にアクメの
頂点を見つけたような陶酔ぶりが年季の長さを感じさせてくれます
(サンデーズ後輩なんかにゃ負けてらんないワ、という感じ?)曲ラスト
のロングトーンなんかこちらも聴いてて昇天してしまいそう!B面は
百恵が狙い?沈んだメロをネチネチと歌う彼女の抑えた渦巻き加減
は流石です。

グツグツ煮立つ感情を隅々まで塗りこめたような奇妙な明るさの
ジャケ写はアイドルとしての最後の勝負か?このジャケ写から軽薄
ポップスを連想しましたが、中身は両面ともそこいらのガキには
歌えない洋楽(オリジナル不明)カヴァー、原作者もよもやこんな
粘着質の異常歌謡に変身させられるとは思いもよらなかったでしょう。
A面は夢を失くした男を棄てて出て行く女、B面はやさぐれ男と共に
家出する女、と新しい旅立ちがテーマの歌詞ですが、やけにエネル
ギッシュな歌い方。というか聴いてる方が追い詰められてる錯覚に。
個人的にはB面のほうが好きなんだけど原曲はヒットしてたのでしょう
か?洋楽は超ニガテなもので…ご存知の方、ご教示下さいませ。

このジャケ写だけみてもお分かりでしょう、この道では完全に
ヴェテラン(お局)の域に達していた彼女がとうとう本領全開発揮。
成金オヤジをパトロンにもつ安ホステスの放蕩ヴァカンスの一部
始終を疼いて疼いてどうしようもないような喘ぎ声でのたうち歌って
下さってます。わざと色っぽく歌ってるのではなく、きっと身体の
芯の奥底がメルティングポイントに達してるハズですネこりゃ(笑)
一度芸能人水泳大会競技中の丸い輪の中で歌ってるのを見ました
が、このジャケ写と同じ衣裳(水着?)で悶絶されておりました。
この服で騎馬戦とかやったのかしら?B面はボサノヴァですが、
こちらもアクメ状態。♪ほぅ×ぁいずぅん、の×部分はまともに聴いて
も人間生活に支障をきたさない発音なのか?とても不安です。

名取忠彦とグリーングラス、松本真季らとの競作。曲自体は
スタンダードになってますが、誰のがどのようにヒットしたのかは
ナゾ。五十嵐さんのではない事は確かです。でもフェロモンだけ
はブッチ断トツのハズ。五十嵐さんに歌われると、この歌詞の男
は完全に女郎蜘蛛の網の中に囚われてるのがアリアリと思い
浮かびますネ。そうそれはまるで『ハエ男の恐怖』のラストシーン
のようなおぞましさ…。B面のほうが多少ポップス寄りですが、
断固A面支持です。このまま続けてれば往年の奥村チヨを越える
完熟果実歌謡(毒入り)を歌えたのでは…と思うと非常に惜しい
逸材。懐かしモノでもいいから是非復帰して歌ってほしいですね。