清水香織

東大生の選ぶアイドルコンテストがデビューのきっかけ、て事は武田久美子姐御の後輩。
先輩と違い上のオツムが良かったのが売りになってましたが、狡猾な芸能活動→有名人の
奥様と巧みな人生設計を実現されるあたり伝統というか血は脈々と、いや静脈血のように
ドロドロと受け継がれているかと。突き放す、というより他人事のようなノンビブラート歌唱が
持ち味、但しそれでも何故かじゅんじゅんした情念を感じさせる歌が似合う処はやはり内側から
湧き出るモノなんでしょう。旦那の人気も落ち着いちゃったしそろそろはなまる辺りで復帰して、
歌手としてまたおぞましい愛憎の世界を表現してほしい一人です。

禁じられたヒロイン
   阿久悠/鈴木キサブロー/若草恵
C/W 八月の恋人九月の悪魔
   阿久悠/鈴木キサブロー/若草恵
     テイチクユニオン UE-587 86.06.21.

今考えてもなぜこの人でこの曲で尼さんルックなのか解んないんですけど(笑)デビューまでの経緯も知らないんでどこかに緻密なプロジェクトが働いてたのかもしれませんがそれにしてもなんで尼僧なのよ?デビュー前からこのいでたちで歌番組に顔見せしてましたがデビューして暫く経ってからはさすがにかぶりものはやめてましたね。曲は背徳の人生を懺悔しながらそれでも愛欲の蠢くままにじゅくじゅくに湿るだらしない女という設定で第三者的な彼女の醒めた歌唱が旨く巧を奏してるんですがアレンジがねぇ…まんま火サスやないの。同じサスペンス系アレンジでもB面ぐらいのフッかけは欲しいわね。そのB面は繰り返しだけど小川未知の1stB面の焼き直し。78年当時は半年続いた夏の恋も、86年では一ヶ月よ。てゆか1回戦でチェンジ入らないだけいいわよね。
26時のシンデレラ −CINDERLLA AT 26−
   誘里亜/川上了/川上了
C/W オ・モ・チャ・箱
   誘里亜/川上了/川上了
     テイチクユニオン UE-589 86.10.05.


何とこの曲オリコンのベスト50に入ってるんだよねぇ〜、そんな特別なプロモーションしてたワケでもなく、デビュー曲時点の評価なら企画歌手で埋もれてたはずなのに賞レースまで出るって事は…もしかして(もうこれ以上は書かないわ)そんなグレイな背景を抜きにすると和製ユーロビート決定版でしょう。同時期でダンシングヒーローやらヴィーナスですからかなりかと。しかも本当の凄さは彼女のダンスステップ!これには完全にハマっちゃいましたね。どこかが微妙に、でも絶対に狂ってるステップを軽やかに踏みながら悪魔のような含み笑いを浮かべつつ無表情な丑三つ時の恋愛ゲームを嘲り歌う清水さん、ステキ!B面は「あの頃にもう一度」ではないのね、悪い曲ではありませんが哀しいだけの女はちょっとシンクロしてないかも。あとこれは両面共なんだけど歌詞のメロディへの乗せ方が強引というかわざと変に嵌め込んでるとしか思えないんだけどどういう了見?もしかして特定の同志に向けた暗号?
誘惑DOLL (FIRE&RAIN)
   真名杏樹/LITTAU,WERDIN,BERK,APPLEGATE/川上了
C/W 蒼いプリズム
   真名杏樹/もとじまかずや/川上了
     テイチクユニオン UE-593 87.01.21.


前曲のヒットでとりあえずの注目を受け、満を持しての3rd。どう攻めてくるかと思ってたので(どこで拾ってきたモンだかワカンないけど)カヴァーと知ってガッカリ。…て感想は一瞬だけ。何なのよこの底無し沼のような澱みは!こんなのユーロビートぢゃないわよ悪魔の儀式よ宗教音楽よ!荘厳な、そして圧力的なアレンジと燻るように盛り上がる曲調、きっと原曲はフツーなんでしょうけど彼女の歌唱によってすべてが負のイメージに引きずり込まれているよう。衣装も群青色のベロア地ロングコートに墨色のロングプリーツスカートという新種の喪服みたいなもので、狂気の無表情で愛を嗤うように歌う彼女はとても正気の沙汰とは思えない美しさを放ってました。もちろん熱く無機質なステップも冴えまくり!B面はすがすがしさすら感じさせる曲でちょっと似合ってない気がしますが、フツーに歌えば希望あふれるをこんなに歪曲して歌える彼女の負の表現力には脱帽。
サイコ・ソルジャー
   エス・エヌ・ケイ/エス・エヌ・ケイ/エス・エヌ・ケイ
C/W 傷だらけのBLUE MOON
   エス・エヌ・ケイ/エス・エヌ・ケイ/エス・エヌ・ケイ
     SNK 001-PS 87.06.21.


私も最近まで知らなかった、ファミコンゲーム「アテナ」のテーマ。ゲームのおまけでついているようでレコードでの発売はなし、その後オムニバスでCD化はされてます(別バージョンらしいですが)。これについてはまぁアニメ主題歌らしい出来上がりで普通の作品、悪い曲ではないです。サビで昇りつめないで不安感を残しながら終わってしまうのは彼女ならではの寸止めの美学なのか、それとも単に彼女の音域の問題か、どちらにしても何かしらの魂胆はありそうです。サビで♪FIRE!FIRE!という歌詩があるのは前曲を意識してのものか。B面はオリジナル唯一のアップテンポのメジャー調。彼女に求める曲ではありませんがこの際ですから許します。ちなみにこのゲームで主人公・アテナの声を担当していたらしく、このカセットにもゲーム紹介のセリフ入り。この棒読みを聞くと、本編ではどんな声優ぶりを発揮していたのか見てみたいようなやめておきたいような。
Blue Letter
   三浦徳子/井上ヨシマサ/井上ヨシマサ
C/W Boy.天使が通りすぎる
   三浦徳子/川上了/川上了
     テイチクユニオン UE-595 87.10.21.


正式リリースとしては9ヶ月ぶりのシングル、テーマは今までのユーロビートモノとは趣向を変えてネオエスニック。とはいっても中近東でもインドでもチャイナでもコリアでもなく、言わばネパールとかスリランカとかあーいう辺り。うまく言えないけど手が何本もありそうな感じでしょうか。そんな偽エスニックを纏いながらいつもの如く清水さんは呪いをかけるように淡々と歌っております。まぁ前の2曲と比べると詰めの甘さは否めませんがそれでも充分不穏な感じは味わえます、ってゆーかここまでイメージ統一できるなんてある意味凄いかも。なにげに90年代にはいっての中山美穂「Rosa」はこの曲の焼き直しのような気がするのですがどうよ?B面は1stと2ndの中間てところ、作家陣からするとこれがA面候補だったのかも。次曲B面と曲構成がほぼ同じに聴こえるのは私だけでしょうか。
不思議なピーチパイ
   安井かずみ/加藤和彦/京田誠一
C/W タイム・リミット
   三浦徳子/川上了/川上了
     テイチクユニオン CARC-16(CD) 89.08.01.
     (画像はプロモート用アナログ・品番T9-8-1)


「Blue Letter」のプロモートが終わった後おそらくタレント・レポーター業を主体にしてたようですが(旦那と知り合ったのもこの頃か)2年ぶりに新曲リリース。てゆかさ、何でまた夏真っ盛りの8月に向かおうという時にこの春爛漫の選曲なのさ?リリースのタイミング逃しちゃったの?いんやこれも清水さんの言葉巧みな罠のはずよ。そうと解っていながらずるずるとゴム手袋の拳のように呑み込まれていくアタシ…濡。曲はご存知の通り、まぁ普通に爽やかなアレンジですがピーチというよりプラムとかネクタリンとかの感じの初夏加減もどうかと思います。勿論森高の「17歳」より先のリリースなのね。B面はいつもの清水節炸裂で、チープな深夜ドラマの如き退屈凌ぎの為だけの挑発ナイトフィッシングを、嘲笑を秘めた無表情歌唱で存分に表現されてます。多用されるサンプリングも安物感全開で素敵過ぎ。




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