北原佐和子

オスカープロモーションが81年に送り出した奇っ怪なグループ、パンジー。真鍋ちえみ・三井比佐子とともにリーダー格として出てきた
のが北原佐和子。私がメディアで最初に見たのが丘みつ子主演のドラマ『女かじき特急便』の1コーナーで、ドラマ内容と関係ない
雑談みたいな事をしてました。ブッキングも奇妙ですが丘みつ子主演も今となってはかなり不気味(ま、日テレだしね)。その後、グループ
の先陣を切って82年にソロデビュー。デビュー曲は割と有名ですが、何と言ってもあの歌唱力ですから結果は見えていたでしょう。逆に
これだけのレコードリリースを残せたのは時代のおかげでしょうか。テイチクさん、ありがとう。
女優専業になってかなり経ってからのインタビューで「歌では明菜やキョンキョンに負けたのが悔しくて、女優として絶対勝ち残りたい」と
いう内容のコメントをされていました。デビューからメラメラと燃え続ける絶えない野望が窺えてますますファンになりましたね。結婚・離婚
も経験し、事務所もサンミュージックに移籍して今も活躍中の彼女、女優としての大成と、歌手としての再復帰を今も祈っております。

「マイ・ボーイフレンド」   堀川マリ/梅垣達志/梅垣達志
  C/W  「恋の交差点」   堀川マリ/梅垣達志/梅垣達志
  テイチクコンチネンタル  CE−503  82/3/19

デビュー当時は確かに明菜やキョンキョンにも引けを取らない人気があったような気がします。
オリコンでも20位くらいまではいった記憶が。但し個人的には大嫌いだったんですよね〜、
デビュー以前にタレント活動をしていた事もあるんでしょうが「私、人気アイドルなのよ」と言わん
ばかりの得意気さが鼻についてました。それは同志であるちえみとチャコにも向けられてて、
真鍋ちえみが好きだった私にはムカつく人でもありました。んで曲を聴くとあの歌唱力ですから
…。同期に川田あつ子とチャコがいなければ屈指の歌唱力としてクローズアップされたかもしれ
ませんが中途半端でした。内容はいかにもデビュー曲というもの。ローティーンが歌うべき内容
だと思うのですが既に18歳の彼女には痛いはず。そこをポイントにして聴くとステキです。
最近カラオケに入ってるのでナンやカンや言いつつフリ付きで歌ってしまう私です(恥)。

「スウィート・チェリーパイ」   岡田冨美子/タケカワユキヒデ/後藤次利
  C/W  「ステキ・大好き」   岡田冨美子/タケカワユキヒデ/大村雅朗
  テイチクコンチネンタル  CE−504  82/6/25

この曲が命運を分けたのでしょう。振り付けも今となってはカワイかったのですが、ゴリ押しで
入った賞レースで当然のような笑顔で歌う彼女は嫌悪感を更に倍増させてくれました。歌い易く
(あれでも)作られていたデビュー曲と違い、曲冒頭から迷走する音程は聴いてるこちらも音程を
見失ってしまうほど。曲自体は好きですがキャッチーな部分が足りないのは当時の位置を考え
ると惜しいかも。B面の「ステキ・大好き」は音程が更にスゴいんですがこっちのほうが歌唱力
勝負のアイドルとして目立ったかも?曲もサワヤカ系で夏向きでしょう。そもそもチェリーパイって
春じゃないの?リリース後にあの問題映画『夏の秘密』が公開、松尾嘉代様の究極の演技が
堪能できます。パンジー三人で歌った「ナイトトレイン・美少女」、サントラでもいいからリリース
して欲しかった。

「土曜日のシンデレラ」   有川正沙子/川口真/萩田光雄
  C/W  「お・し・え・て」   有川正沙子/川口真/萩田光雄
  テイチクコンチネンタル  CE−505  82/9/10

「スウィート〜」の評判がイマイチ、人気も下降線なのが分かり始めて、2ヶ月半という早さで
リリースされたサードシングル。曲は好きでしたね、何と言っても♪ダメダメェ〜の年齢詐称具合
が聴き所ですが、前サビの音程も鋭い。こういう速いテンポの曲の方が彼女の歌唱力を強調
できてよいと思います。B面の「お・し・え・て」はお気に入りの曲の一つ。肩の力が抜けた様な
まとまり方で(元々力の入れ処が違うんですが)、萩田光雄氏のアレンジも可愛いです。この面
のレーベルに使われてる写真は当時のアルバム『KISS』の歌詞カードにも使われてるんですが
綺麗に撮れてて好きなカット。写真集も可愛かったなぁ。その写真集後半のインタビューでは
デビュー当時の高飛車な部分はなく(もしくはカットされ)黄昏ていく様が感じ取れました。


「モナリザに誘惑」   売野雅勇/芹澤廣明/萩田光雄
   C/W  「せつなくて、淋しくて」  売野雅勇/芹澤廣明/萩田光雄
  テイチクコンチネンタル  CE−506  83/1/21

それまで大嫌いだったサワコの完全な虜になった記念すべき曲。初めて見たのは『パリン子
学園No.1』のゲストの時で、声の調子が悪かったのか歌い始めで慣れてないのか、とても
この世のものとは思えない凄絶な歌唱(♪み゛〜ぅうっごぉっきひぃ〜、てフレーズで爆発!)
を披露されてるのを目撃した私は5tくらいちびってしまった程。あれは忘れられません。誰か
ヴィデオお持ちの方がいたら是非是非!ダビングさせて欲しいくらいです。レコードのほうは
とりあえず巧くまとめてますが、それでもこれが限度というのも…。曲は作家陣を見ての通りの
「少女A」二番煎じ。同期の人気アイドルの後追いをさせられる地獄具合もスパイス効いてます。
アレンジが少し甘いのが残念ですが、よく考えたらハードなアレンジであの歌唱だとコミックソング
だしね(笑)。このジャケ写最高!帯に書かれた“初めは
ゾクッ。二度目でヒヤリ。三度目からは
切なく
ニヤリ。”というコピー、アタリ過ぎ。私、ニヤニヤしっぱなしです。

「さむい夏」   岩里祐穂/岩里未央/大谷和夫
  C/W 「『愛』してDANCE」   微美杏里/萩田光雄/萩田光雄
  テイチクコンチネンタル  CE−507  84/4/

名作だった「モナリザに誘惑」が結局チャートインせず、今度は堀ちえみ路線?岩里姉妹、もとい
いわさきゆうこ・三浦一年コンビを起用してへんちょこりんな哀愁路線へ。まずこのジャケ写が奇妙
で、これも写真集からのカットなんだけどこの髪の乱れ具合は何なんでしょうか?ジャケ裏の写真
の方がこの曲に合ってる哀愁具合だと思うのですがやはり狙いがあったのかなぁ…。曲は男の子
から見た別れの光景で本人も抑え気味に歌ってますが、リフ前のフレーズではお得意の音程無視
攻撃が堪能できます。この曲当時のカラオケにはあったんだけど、実は歌うの難しかったのよ。B面
は同じレーベルの先輩・藤真利子の作詞。本人の歌ではとても考えられない歪んだアイドル臭が
魅力です。萩田光雄氏の曲はやはりいいですねえ。あ、この曲のリリース時に髪を切ってしまった
サワコ。顔のデカさが強調されてました。


「ガラスの世代」   岩里祐穂/岩里未央/大谷和夫
   C/W 「秋の恋人たち」   堀川マリ/山川恵津子/大谷和夫
   テイチクコンチネンタル  CE−508  84/10/21

前作と同じ作家陣なんだけどこちらはタイトル通り切羽詰った感じが出てて(本人もハタチを
目前にして焦ってたのか?)好きですね。何といってもこの曲はフリツケの凄さでしょう。マイク
を意味も無く右手から左手に持ち替えて、まるで朝風まり並みのマジックでもやってのけたか
のようなしてやったり顔をするサワコ。往年の高飛車ぶりが思い起こされる様でステキでした。
ほかにも♪わたしもハタチだし〜での恍惚のフリもよかった。更にフリツケが増える事でおうたの
方が疎かになり、いつものサワコ節が盛りだくさんでした。それでも全篇得意気な笑顔を絶やさ
ない彼女はさすが。B面は秋っぽいスローな曲ですが、力むところが少ない為か本来の魅力
が生かされてないような気がします(←それじゃ屈折したファン丸出しね)。


「夢で逢えたら」   大瀧詠一/大瀧詠一/萩田光雄
   C/W 「恋灯(ムーンライト)」   堀川マリ/山川恵津子/大谷和夫
   テイチクコンチネンタル  CE−510  84/1/21

そうです。大瀧さんのあの名曲をリメイクしたのでした。吉田美奈子のオリジナル盤から、
沢山の歌手に歌い継がれているこの「夢で逢えたら」ですが、シングルリリースした人たちの
中では(アルバムでリメイクしている多岐川裕美・桜田淳子・小柳ルミ子盤etcは未聴)彼女
のバージョンが一番だと思っております。それは吉田美奈子が曲内容にそぐわないルックス
であったという持論によるものなので、マイナリティーである事は承知の上の事。だけどさぁ、
こんなにドリーミィな歌なんだもの、サワコのようなゆらぎ音程(何度もリフする♪逢えたら〜
のフレーズが全部違う音程なのも凄い)が一番可愛く聴こえるんじゃなくて?それは「夢で
いいから」を歌ういしだあゆみ様と同じ見地に立ったものだと思うのですが…。そういえばこの
曲、リリースの一年後にアイドル役でゲスト出演した『スケバン刑事』で歌っておりました。
しかも衣裳はリリース時の衣裳のままでした。彼女のこの曲への意気込みが感じられました。

「砂に消えた涙」   A.TESTA・漣健児/P.SOFFICI/萩田光雄
  C/W 「レモンのキッス」   D.MANNING・みナみカズみ/D.MANNING/川村栄二
  テイチクコンチネンタル  CE−512  84/

ジャケ写のサワコ、顔ゆがんでます(笑)。歌手としてはモチロン第一線を敗退、話題性を
求めた前作も結局チャートインせず、連番だったレコード番号も村越裕子と共用になりすっかり
黄昏れた頃。リリース前にハタチを迎え、記念にリリースした『TWENTY』というアルバムで
カヴァー曲をやってたのですが、この曲をシングルとして出すんだったら他の曲の方が良かった
のではないでしょうか?せめてB面の「レモンのキッス」のほうが…。彼女も独特の歌唱をこの
歳まで続けるのには抵抗があったのか、ノドで軽く歌いエコーをギンギンにかけるという裏技で
音程を保っております。きっと彼女には、まだまだ歌手としての野望が消えていなかったので
しょう、練習した成果は認めます。見開き裏の写真は可愛いんだけどねぇ。


「悲しきカレッジ・ボーイ」   山川啓介/岸正之/萩田光雄
  C/W 「幻想曲(ファンタジー)ノススメ」   小倉恵/岸正之/萩田光雄
  テイチクコンチネンタル  CE−514  84/10/21

この頃になるとオリコンの新譜速報で初めて彼女の新曲を知るほど歌手としての露出が
減ってました。この曲も彼女がテレビで歌うのは結局見れず。どういう需要を見込んでたので
しょうか?曲は岸正之氏を起用してキリッとしたポップスになってると思うのですがターゲットが
見えないのでちょっとピンボケな気も。突然大人を意識した歌詞も違和感を覚えます。B面の
タイトルは当時彼女がレギュラー出演していたドラマ『ビートたけしの学問ノススメ』を充分に
意識したものだと思うのですが、そんなに言うほど彼女の印象はなかったような気も。この
ドラマには水谷圭チャンも出てたんですよねぇ。水谷さんはイメージ通りの役でしたが、サワコ
は優等生役でした。というより高校生役。アンタねぇ…。


「予感」   遠藤幸三/Pierluigi Giombini・Paul Mazzolini/岡田徹
  C/W 「P.M.8:00」   堀江淳/堀江淳/飛澤宏元
  テイチクコンチネンタル  CE−515  85/3/21

ラストシングル。いや、現時点での最新シングルだと思ってます。いまいち盛り下がってた
彼女の曲ですが、俄然これは名曲。私はこの曲こそ80年代のベストシングルだと勝手に
思っております。大場久美子によって位置づけられた「ヘタウマ」というジャンル、これを意識
の次元まで持ち上げたといっても過言ではない。進むほどに霧の中に迷い込むような感情
を呟くようなフラフラ音程で独白的に吐露し、そのままメディテーションの世界へ。エコー処理
しない彼女の自問のような問いかけは胸に激しく突き刺さり、衝動的に手を伸ばすけれど
どこにいるかも不鮮明な彼女の声…。ガゼボの原曲タイトル「Lunatic」にも劣らない彼女の
狂気の寸前での予感を感じさせます。まぁ世俗的に云えば「雨音はショパンの調べ」のヒット
に気を良くした二番煎じではあるのですが、そんなものは完全にふっとんでしまってます。
モチロン社長夫人・小林麻美なんて敵ではありません。サワコはこの曲で、アイドルとしての
役目を完全に果たし終えたといってもいいでしょう。この曲を最後に歌手廃業してしまったの
はファンとしてはやりきれませんが、本人にとってはいいケジメだったかも。B面は、この曲の
リリース前に出たアルバム『WITH YOU』からのカット。堀江淳の歌詞は或る意味勉強
させられます。ジャケ写も凄いですね〜、サワコがこんな顔で見つめてくれるんなら
人生狂ってもいいや(爆)。


アルバムについては別項で紹介予定です。しばらくお待ちくださいませ。






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