荒木由美子

素材、センス、楽曲、歌唱、ともに申し分なし。只々時代が味方しなかっただけ…とは云いませんが(笑)70年代屈指のB級といえる存在。
尤もタレントとしてはある程度の位置をキープし続けており(グラビア、主演ドラマ、あと花王やUCCのCMとか)全体的にはA´くらい
なのかもしれません。逆にあれだけ媒体露出があってもレコード売上がオリコン100位にもランクインするかしないかなんて結果なのは
どういうことなのよ?ホリプロとキャニオンの罪はそれぞれ大きいわね。
現役当時から胡散臭い仲だった湯原昌幸氏と結婚、その後はライオンのCMで顔繋ぎしてましたが最近復帰されています。旦那の推定年収
に見合わない美しさの持続力は流石ホンモノのハンプティダンプテ…いえ、美人顔ですわね。今は旦那とセット売りで通販番組やら
旅行番組やらですが、是非歌手としても復帰して、円熟した歌唱をお聴かせ願いたいものです。


渚でクロス
   阿木耀子/宇崎竜童/馬飼野康二
C/W 季節風
   阿木耀子/宇崎竜童/馬飼野康二
     キャニオン C-53 77.06.10.


HSCの特別賞ってトコロで既に郁恵との扱いの差は覚悟できますが、それにしては
力入った曲でない?まぁ第1回でもあるので最初は甘い事考えてたのかもね。庶民派
(アタシって大人)まるだしの郁恵に対してこちらは明らかに百恵路線、というか百恵を
もう少し下世話にした、というか百恵がビッグになった為に出来なくなったゲスな部分を
歌っているといった感じかな。A面でのドライ加減(3番での男女の対比は秀逸)やら
B面のしょっぱな♪香りの強い花は嫌いと〜、での自己否定なんて完全に狙い通りってか
だから売れないんじゃないかという気もするんだけどね(苦笑)。ご本人も笑顔はあどけな
かったですがキメ顔はすれっからし一匹狼って感じで群れない故の美しさを感じさせました。
   
ヴァージン・ロード
   阿木耀子/宇崎竜童/矢野立美
C/W つむじ旋風
   阿木耀子/宇崎竜童/矢野立美
     キャニオン C-70 77.09.25.


本家の郁恵がパッとしないからか、セカンドで地味なブルース歌謡を歌わされる辺り
オトナの力を感じます。ホントならB面の路線でデビュー年は押し切るはずなんだけどね。
それでも荒木さんの魅力はいかんなく発揮されており、♪ごきげんよう、とか
♪よろしくね、とかのおフテ全開のウナリ、つーかスゴみはホンモノでしょう。んで
“ヴァージンロード”ってアンタ…(笑)明らかに彼女の歌の中での非処女性を逆手に
取った作戦なんでしょう、きっと彼女のヴァージンロードには真っ赤な絨毯(縁には金の
総刺繍)が引かれているハズよ。衣裳はウェディング風白のロングドレス、キワモノとしても
やり過ぎです(笑)。チュチュハッハッというコーラスの不気味さは次曲に向けての
前奏曲ともいえるのかも。B面は完全に前曲の流れを継ぐものですがフツーかな。
フラストレーション
   岡田冨美子/平尾昌晃/若草恵
C/W UNHAPPY END
   岡田冨美子/平尾昌晃/萩田光雄
     キャニオン C-82 78.01.25.


まずこの下品極まりない♪フラストレェ〜ショォ〜ンのコーラスに唖然、これは平尾昌晃さん
のセンスから来るものなんでしょうが大正解。コーラスの皆さんの欲求不満の演出は
さすがプロですねぇ。それに続く荒木さんも負けず劣らずの溜まりっぷり、♪ぁあぁ〜んっ、
って喘ぎなんてまるで見せ付けてるかのよう。岡田冨美子さんの歌詞も強烈で、♪無理矢理
抱かれる夢を見たの〜、ってこれぢゃただの淫乱オンナじゃないのさ(笑)。でも荒木さんは
さすが堂々とまるでそれが自慢でもあるかのように歌い演じておられます。♪ちょっと
恥ずかしかったけど、と続けるのは恥ずかしい事がスパイスになってさらに燃え上がる
という犯され志願的な部分を露わにしていて流石の歌詞展開ですね。岡田さんはその後
「ピンクタイフーン」でも♪やりたくなったらやっちゃいな、という歌詞を書いており、実は
性に対してオープンな部分を出したいのかも。B面もいいんですが、A面のトバシっぷりに
比べると大人し過ぎるかな。
うつら・うつら
   笠間ジュン/佐々木勉/若草恵
C/W 夏はすぐそこ
   笠間ジュン/佐々木勉/若草恵
     キャニオン C-94 78.05.10.


ジャケ写がまず良いね、チャームポイント(でしょ絶対)のアゴを前面にフューチャーした
ポーズに撮影者の意図と作戦を感じます。夏に向けて爽やかさすら誤って感じさせる
このジャケ写とは裏腹に、曲はタイトル通りのもやもや感が炸裂しており、前半のドス効き
低音の囁きと後半の微妙な幼な声の対比も効果的。“くちづけしてるのを見ちゃった”て
のもどうもアヤシイ。きっと官能の光景を見たのね、羊を数えながらぐじゅ濡れな
独り遊びの夜…って感じを絶妙の歌唱力で表現されています。なにげにこの曲の
コンセプトって後の「ミステリアスチャイルド」の裏返しだと思うんですが、意図したもの
なんでしょうか?まぁとてもマトモな恋愛は歌いそうにないですが。B面は彼女の持ち歌の
中でも極めて少ないアイドルらしい曲。作家陣を変える中でとりあえず歌わせてみたって
感じなんでしょうが、彼女が歌う事により最後の♪ちょっとウットリ、てのも何を想像して
の事か勘繰ってしまう程の作品です。
横須賀レイニー・ブルー
   竜真知子/佐瀬寿一/萩田光雄
C/W 裏切りの季節
   うさみかつみ/萩田光雄/萩田光雄
     キャニオン C-109 78.08.10.


歌手としてはヒットしていませんが恐らく第2回の優勝者・西村まゆ子が伸び悩む中で
ホリプロ側も芽を育てようとしたのかこの曲での媒体露出は多かったと記憶しています。
タレントとしては多少知名度はあったしね。まずタイトルに“横須賀”と入れる位ですから
百恵の後継者にでもしたかったのでしょう、気持は分かりますが逆にありきたりな百恵
路線を踏襲し過ぎている気もします。曲も良いし(♪Ah、のド低音は彼女の魅力を熟知
しているかのようです)アレンジも大好きな萩田光雄さんなんですが、イマイチ斬新さに
欠けるのは百恵を意識し過ぎたからなのかしら。B面はサンバリズムに乗ってアレンジも
流石なのですが彼女が歌いこなせてないかも。あとどちらも歌詞がもう一つ彼女の本質を
理解していないような気がするのですがファンの方どんなもんでしょ?
魔術師の小夜曲
   椿健太郎/佐瀬寿一/船山基紀
C/W 忘れない
   竜真知子/佐瀬寿一/萩田光雄
     キャニオン C-125 78.12.21.


彼女には百恵のアルバム曲「いま目覚めた子供のように」という曲のリメイクの話があった
そうで(佐瀬寿一氏のサイトで書かれてました)実際はレコーディングもせずおじゃんに
なったそうですが、その代わりとでもいいたげな類似ソング。でもそんな事は全く関係なく
大好き!な曲です。ただ歌がうまいだけでは出せない抜群の乾き具合・濡れ具合の
表現力はさすが。♪さまよい続けた〜、のゆらぎも♪きぃ〜っとぉ、の媚びも本家には
とても出せない(出さない)エグ味を出してます。ドライな人生の中で見つけた愛蜜の潤い、
それがほんのひとときの虚構と解っていて愉しみながら溺れていく…こういう設定って
彼女だからこそ表現し得るパターンではないでしょうか。要は酸いも甘いも噛み分けた
上での幸せの表現力といったトコロね。B面は前作のメンツで少しハードなナンバー。
この曲はいいねぇ。歌詞はやっぱりイマイチなんだけど(てゆか個人的に竜真知子さんの
歌詞が私に合わないだけかも)それを上回る曲・アレンジの素晴らしさ、彼女もノリノリで
歌っててイイ感じです。
ミステリアス チャイルド
   阿木耀子/宇崎竜童/萩田光雄
C/W 春の妖精
   阿木耀子/宇崎竜童/萩田光雄
     キャニオン C-131 79.03.21.


「魔術師〜」のあとにこれってのも凄いんですがそれだけ切羽詰まっていたのかも。何しろ
百恵は引退表明、西村まゆ子は引退、期待の新人能瀬慶子の結果が出てしまって、
彼女には百恵の引退前に後継者としての実績をどうしても作りたかったのかもしれませんが
完全にそれを超えてしまった傑作。まず本家には歌えないでしょうこんなお下品な歌(笑)。
一度語っておりますので重複してしまいますが友達のオトコを自ら寝取り、その痴態を
見ず知らずの子供に見せ付けるという倒錯した露出フェチのような世界観は彼女にとっても
冒険だったとは思いますが、超常的な表現力で歌いこなしております。それはただ単に
異常行為だけではなくその裏に見え隠れする感情の移り揺らぎを繊細に、そして大胆に
表現出来てるって事ですね。キメの♪アタシが奪うのを〜、なんて貞操やら人同士の
モラルとかの次元ではなく最早息の根止めて剥製にして家に飾っておくんじゃないかって
位のイキオイを感じます。いやぁ〜ホント後世に残る名曲。B面は主演ドラマ『燃えろ
アタック』の挿入歌ですがこんなの挿入して良かったのかしら?と思えるくらいこちらも
渇き切ってるステキな作品。
グッド・バイ・ジゴロ
   阿木耀子/宇崎竜童/萩田光雄
C/W 人魚の赤いくつ
   阿木耀子/宇崎竜童/萩田光雄
     キャニオン C-141 79.06.21.


前作が微妙にヒットしてそのイキオイで第二弾登場。遊び人のオトコをナイフを研ぎ澄まして
待ち構える狂気のオンナという設定、ジャケ写からもヤッちまう直前の誘い顔ちゅーか
美人局の仕事用オトシ顔と言わんばかりのなまめき具合でたまんねっス。実際はかなり
ベタなオチで力が抜けてしまうんですがそれすらゲス味を残すための作戦?と思わせる
構成となっており唸るばかり。さすがノリにのってる頃の阿木×宇崎コンビ、職人技です。
唯一アレンジがちょっと薄っぺらい気がするのはワザとなのかな?エンディングで豪華さを
出してる辺り歌詞のストーリー性を引き立てる為の物だったのかもしれません。B面は
A面がこんなのならこう来るだろうなと云うべきゆるやかな哀しみを醸し出す曲。こういう
一面ものぞかせておかないと只のイッチャったおねいさんですものね。これはこれで
いい曲ではあります。
Lの悲劇
   阿木耀子/宇崎竜童/萩田光雄
C/W ダンシング・パートナー
   阿木耀子/宇崎竜童/萩田光雄
     キャニオン C-151 79.09.21.


オカルト歌謡三部作のオーラス。これもワナワナ震えるほどのかっちょいい曲です。
まずタイトルとキーワードからしてキャッチーじゃなくて?狂気の薄笑み浮かべたような
ドス効き声で♪L is Lucky〜と悪魔の誘いのように囁かれるだけで昇天しそうです。
ストーリー性に拘るがゆえの歌詞展開はテレビサイズ=ワンハーフでは内容が伝え
切れないような気もしますがもはや彼女にはそんなものはお構いなし、いい曲を創り
歌い上げていくという使命の下にシングルリリースしているとも云えますね。まぁこの
路線でもヒットは見込めないという判断で作り手の好きなように作られてしまったという
方が正解かもしれませんが。別れの手紙を読むという行為だけで人生の孤独まで
語ってしまうのは彼女の表現力だからこそ生きてくると思います。B面は前作と同じ
コンセプトで配置されたと思える軽い別れの曲。これも内容の深い歌詞で興味深い
ですね、「リボンもかけずゆずられてたわ/友達に」なんていいトコ突いてます。
荒木さんもこんな屈辱よくあることよ、とでもいいたげなふてぶてしい歌唱でさすが。
愛しかないのに
   門谷憲二/川口真/萩田光雄
C/W 花吹雪
   小林和子/萩田光雄/萩田光雄
     キャニオン C-169 80.03.05.


百恵引退と差し替えにするはずだった前の三部作が結局不発(あくまでセールス的に)
だったんですから路線変更は仕方ないでしょう、ラストシングルは微妙に演歌寄りな
歌謡曲。ところがこの曲もいいんだよなぁ!詩は前作までの修羅場巡りを経てオトコを
知り尽くした娼婦のようなオンナの優しさを前面に押し出したものになり、オトコだけが
生きる糧のような世界観を凝縮表現しています。サビの♪愛しぃ〜かぁ〜、ってトコの
ファルセットはデビュー当時から技法として使っていた幼さを排除し大人の鑑賞に耐え
得る作品に仕上げるポイントになっていると思うのですが。そもそもHSCでの勝負曲に
小川順子の「過ち」を選ぶ彼女ですから本来はこんな歌を歌いたかったのかもしれません。
B面は萩田光雄氏作曲の濡れたボサノヴァ、さすがに彼女も歌いきれていませんが
これが歌いこなせるようになるまで続けてたら素敵な歌手になっていたことでしょう。
曲中にセリフ部分があるので女優へのシフトチェンジも図っていたのかもしれません。
まぁ結局このシングルで打ち止めとなるのですが、ここまで聴いてしまうとやっぱり
復帰を機に歌手活動も再開してほしいですよねぇ。期待しております。

 アルバムは後日ご紹介の予定です。今しばらくお待ち下さいませ。



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