日本キリスト教団

西千葉教会

より広い視野をもって

2020年02月

 皆さんは、「キリスト教文化」という言葉をご存知でしょうか。おそらく多くの人は、キリスト教の歴史やクリスマスを思い出すかと思います。しかし、「キリスト教文化」は単に歴史やイベントだけを指すのではなく、欧米では歌(音楽)、映画、劇などエンターテインメントの中でキリストを表すことを意味しています。もちろんそれは、キリスト教を伝道する目的が含まれています。韓国でも「キリスト教文化」は同様の意味で捉えられており、その活動は盛んに行われています。
 一般に、キリスト教に関することを思い起こす時、バッハなどの宗教曲や、キリスト教絵画などを思い浮かべることが多いでしょう。特にキリスト教音楽に関しては、クリスチャンの人がまず思い出すのは讃美歌だと思います。しかし、キリスト教音楽には他にも様々なジャンルがあります。例えば、昨年の秋の特別伝道礼拝に来てくださった関野和寛牧師は、ロックというジャンルの音楽で伝道をしています。しかし、ロック以外にも、実はほとんどのジャンルがキリスト教を伝える福音音楽の形で歌われています。若い人の多い教会では、様々な楽器を用いてゴスペルを歌います。しかし、日本、特に高齢者が多い教会では、讃美歌二一や五四年版讃美歌に掲載されている歌以外を礼拝で歌うことに違和感を覚える人は多いかもしれません。ちなみに韓国では、20年程前まではロックというジャンルは世俗的で悪魔の音楽だと言う人もいた程でした。しかし、ロックに慣れている人達にとって、自分たちの心にすっと入ってくる音楽を基盤として賛美をすることは、極めて自然なことでもあるのではないでしょうか。
20年前、私が高校生の時のことです。所属していた韓国の教会で、礼拝の中でギターを弾いていいのかという問題で、大人たち(特に教会組織の中心部にいる長老たち)が論争をしていました。それは、世代が変わっていく中で起こった現象といえます。あれから時が経ち、今の韓国の教会はというと、ギターはもちろん、講壇の隣にドラムが置いてあるのは当たり前の光景となっています。そのような教会から日本の教会にきた私は、初めは戸惑う時もありました。しかし今は、厳粛な空気の中で静かに讃美歌を歌うことに慣れ、このような礼拝スタイルもいいなと思うようになりました。
 最近、韓国で話題になった歌手がいます。この人の音楽のジャンルはラップです。皆さんラップはご存知でしょうか。私も詳しくはありませんが、分かりやすく説明すると、早口でカッコ良くリズミカルに歌うことです。その話題となった歌手も早口で歌うので、初めて聞いた人は歌詞の内容はよく理解できないかもしれませんが、この人は歌詞の中で、若者が理解しやすい言葉で自分の信仰告白や聖書の話をしたりしています。そう、この歌手はクリスチャンなのです。実際に歌詞を読むと、悪い言葉や下品な言葉が使われる傾向もあることから、ラップで賛美することはできないとの意見を持つ世代と、ラップでも賛美することができるという世代で意見が分かれたそうです。ある程度年齢の方だとラップという音楽に違和感を覚えると思いますが、今の若い世代はラップ、ヒップホップなどは日常的に親しんでいる音楽です。私たちは昔から既にあったものには慣れているので、違和感がありません。しかし、新しいものには警戒します。そうなると、伝統が正統となっていき、新しい試みは却下されてしまいがちなのです。
 世代だけではありません。2000年前にイスラエルで始まったキリスト教が、今や世界中に広まりました。しかし、世界中の全てのクリスチャンが同じ性格、同じ色を持っているわけではないです。その地域においてその地域の文化に出会い、独特なキリスト教文化を生み出します。北朝鮮には地下教会が存在しますが、同じ民族であっても韓国にある教会との違いが多くあると思います。
 このように、私たちは自分たちの文化や慣れ親しんでいるものに基づき、様々な形で信仰を表すことができ、福音を伝えることができます。教会は、広い視野をもち、福音伝道の可能性を見出していく必要があるのではないでしょうか。

文:金 ヨセフ伝道師