日本キリスト教団

西千葉教会

独り子をお与えになったほどの愛

2025年12月

 

ヨハネによる福音書 3章16節〜章節

 「むねあかどり」という絵本があります。神さまが天地創造をされた時、小鳥たちを造り、絵具で小鳥たちの羽に色を塗られ、色鮮やかなたくさんの小鳥たちが造られました。神さまはまた、一羽の灰色の小鳥を造られ、「お前の名前はむねあかどり」だと言って、飛び立たせました。
 むねあかどりは、自分がどんなに美しい姿かと思い、楽しみにしながら池の水に自分の姿を映してみます。ところがそれはただの灰色でした。むねあかどりはこのことが不満でたまりません。そこで神さまに文句を言います。「にわとりのとさかは赤いし、オウムだってきれいなえりまきをしています。なのになぜ、むねあかどりという名前をいただいたぼくだけが、こんなくすんだ色なんでしょう?」神さまは答えます。「わたしがそう決めたのだ。」むねあかどりは、どんなにがっかりしたことでしょう。でも、神さまはこうもおっしゃいました。「しかし、いつまでも そのままだとはかぎらないよ」。
 ある時、都のほうから大勢の人たちがやって来るのが見えます。悪いことをした男たちがはりつけになるというのです。三人のうちのひとりは茨の冠をかぶっています。優しそうなこの人はいったい何をしたというのでしょう。この光景を見ているうちに、むねあかどりはたまらなくなりました。茨の冠をかぶせられたその人は、額に血がにじみ、苦しそうな息遣いをしています。むねあかどりは、その人のところへ飛んで行き、額に刺さっている茨のとげを一本二本とくちばしで引き抜きました。すると、その人の額の血がむねあかどりの柔らかな胸を赤く染めたのです。

ダイヤモンド リリー
花言葉は「輝き」「華やかさ」「純粋な愛」

 「ありがとう」と、その人はささやきました。「今からお前は本物のむねあかどりだ」。その日からむねあかどりは、その名前にふさわしい小鳥になったのでした。
 絵本の終りの部分を読みます。「赤いバラの花よりももっと赤く、子孫の小鳥たちの胸を彩っています。あのエルサレムの外の出来事を思い起こさせるように、冬枯れの野に喜びを伝える、春のさきぶれのように。」
 小鳥の羽が灰色であったのは、まさに私たち誰もが思う心の色ではないでしょうか。心の中の暗さ、くすんだ心、そんな私たちの心を表している色のようです。小鳥はいろいろ努力をしたのです。それなのに色は変わりませんでした。そして神さまに文句まで言います。「どうしてぼくだけがこんなくすんだ色なんでしょうか?」と。
 ニコデモという人の心もきっと同じだったと思います。夜、ひそかに出かけて行く彼に、夜の闇が心の奥深くに入りこんでいたことでしょう。主イエスが「新しく生まれる」ことを語られた時も、彼はその意味をすぐに理解することはありませんでした。しかし、この時の主イエスとの出会いが彼の生きる方向を変えたのです。
 そして主の十字架に出会った時、その額ににじむ血の赤にふれた時、彼の灰色の心がまったく違う色に変えられたのです。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」ことを、ニコデモは自分に与えられた恵みの出来事として受け止めることができたに違いありません。

 この絵本の著者ラーゲルレーヴは、スウェーデンの作家です。1909年、女性として初のノーベル文学賞を受賞しました。もう百年以上昔のことですし、日本ではほとんど知られていないかもしれません。代表作である「ニルスの不思議な旅」というタイトルはご存知の方が多いと思います。他のラーゲルレーヴの作品として、岩波文庫から出ている「キリスト伝説集」がありますが、この絵本は日本基督教団出版局からも出されていますので、ご覧ください。

文:真壁 巌 牧師