透析患者は透析前では、水分による血液の希釈があると考えられる。我々は、この希釈により赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値がどのように変化しているかを調べた。その結果、全ての数値は有意に上昇しており体重増加率によってその増え方が変わっていた。
平成11年厚生労働省から「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」が出された。この中で、従来広く行われていた血液透析終了時のエアー置換返血法は行ってはならないとし、生食置換返血法を指示している。当院では、静脈圧トラップからの最後の回収液は血液ポンプを止める、等の工夫で回収時の大事故は経験しないで済んでいた。しかし、より安全な透析を目指すために本年9月から生食置換返血法を実施し、その評価を行った。生食置換返血法の安全性については、スタッフ間の評価は良好であった。しかし、動脈側を自然落差、または生食パックを圧迫して生食を満たす回収は、表在動脈、シャント吻合部穿刺の症例では指先にしびれを訴えることがあった。また、動脈側の針先での漏れや詰まりあった場合、静脈側と違ってそれを知ることが難しく、圧を加えたところ穿刺部位が腫れたという事例があった。これらの症例では、方法を一部変更して対処することにしている。
透析療法における穿刺は、必要不可欠な手技であるがこれによる疼痛は、患者の負担の一部である。 当院では、穿刺時の疼痛を緩和するために貼用局所麻酔剤ペンレスを使用していた。しかし、ペンレスの使用によって、かぶれや掻痒感の問題があり、皮膚トラブルの原因となることもあった。そこで、今回かぶれや掻痒感等の問題があった貼用局所麻酔剤ペンレスに変わり、新たに、素材に織布を用いたユーパッチを使用することとなった。ユーパッチへ変更した患者に対して、穿刺痛、かぶれ、掻痒感について使用前後のアンケート調査をおこない、若干の考察が得られたためここに報告する。
JA長野厚生連佐久総総合病院 臨床工学科 看護部１） 内科２）
【目的】透析室安全管理の一環として「針刺し事故防止」を目的として開発された透析用安全針について臨床評価を行う。
【方法】「Ｎ社製、セーフティー機能付メディカットカニューラ」並びに「Ｍ社製、逆流防止弁付きハッピーキャスＶ」に付いて、小海分院透析室を含むスタッフ30名を対象に安全性、操作性、問題点等に付いてアンケート調査を中心に評価した。
【結果】誤針防止に付いては、法制化を執る国さえあり、透析室安全管理でも確実な誤針防止対策が有りながら、これを怠り事故に至った場合、管理上の過失責任を問われる事態も考えられる。今回２社の安全針の評価を行い、誤針事故防止は何れも有用と判断された。また、「逆流防止弁付きハッピーキャスＶ」は、緊急離脱にも有効な逆止弁と考えられる為、今後の検討課題としたい。
【目的】阪神淡路大震災から10年、地震列島であり台風の通過点と言われる日本において、どんな災害がいつあるかわからない、昨年10月23日には透析中に新潟中越地震があり、当院においても震度2を経験した。緊急離脱および避難について患者、スタッフ共に意識も高まってきている。しかし透析患者の高齢化も進み、自分で緊急離脱できる患者の減少が見られるため、5年前との離脱、避難について比較し、今回患者のレベルにあった対処方法をまとめたので報告する。
【方法】
1全患者へアンケート調査、分析、検討
2緊急離脱・避難訓練
3環境整備
4患者会を含め学習会
5上記による患者個人に合わせた対応の検討と実施
【結果】危機管理、災害対策についてスタッフ、患者とともに毎年「離脱訓練」「避難訓練」を行ってきた。５年前との比較を見ると高齢化が進んでおり、今回患者アンケートで介助者の増加がわかった。訓練後患者から「パニックになりそう」「自分の命は自分で守らないと」といった意見が見られた。患者個々に離脱方法、非難方法の用紙を渡すことで、患者個々の避難方法が認識でき安心感へとつながった。透析自体も自己血管から人工血管、テシオカテーテル等多様化されてきているため、離脱方法、避難方法を患者の選定をすることでスタッフも動きやすくなり、無駄が少なくなった。患者会と協力し学習会を行うことで災害に対して意識を高めることができた。スタッフも病院防災訓練時同時に訓練することで災害に対する意識も高まり、環境も整えることができた。当施設においても長野県内の透析施設災害ネットワーク加入により災害面への対処も自分たちが災害にあっただけでなく、他施設が災害にあった時の対応も考え、また一歩前進している。
【まとめ】災害時スタッフも自分の安全を図り、自分が被災者にならないようにし患者の安全を第一に優先されなければならない。それには患者層に沿った訓練、離脱方法を確立することは大切であり、スタッフの日々の意識と、訓練がたいせつである。
※倫理的配慮として研究に当たって患者へ趣旨を充分説明、理解していただいた上でアンケート調査等を行っている。
阪神淡路大震災、中越地震のような大災害では、広範囲で家屋の倒壊はもちろん、透析施設も甚大な被害を受け、透析不能になったことが報告されている。このような場合、直ちに透析患者および施設の状況を把握し、可能な限りの情報を収集し、対策を立てなければならない。一般公共機関からの情報はテレビ、ラジオ（手回し発電ラジオ）、電話（災害時優先電話、災害時伝言ダイアル「171」の活用）、インターネット（日本透析医学会災害時情報ネットワークの活用）を利用することとし、院内緊急伝達網として�／�場長、関連公共施設、病院、建物、電気、設備、機械、薬品関連会社、��看護師、�４擬圈↓て�析患者情報カード、�ゥ如璽燭諒歛犬砲弔い討修譴召貔鞍�することで、災害時の情報の収集・伝達システムの構築を試みたので報告する。
近年、高齢化社会に伴い介護保険を利用している要介護者も増加の一途をたどっている。透析患者も例外ではなく、透析の長期化や高齢での透析導入患者の増加により要介護者は増えつつある。そこで今回、介護保険を利用している透析患者の現状把握のため介護保険についての聞き取り調査を行ったのでここに報告する。
【目的】巻爪・陥入爪が原因で疼痛、歩行障害を有している患者に対し、超弾性ワイヤによる巻爪矯正を行い症状の改善をはかる。
【対象】平成日高クリニックの維持透析患者で巻爪・陥入爪があり、透析室で行っているフットケアでは巻爪が矯正できず、疼痛、歩行障害が持続している患者14名を対象とした。
【方法】爪に穴をあけ、超弾性ワイヤを挿入し徐々に変形を改善していく。
【結果】対象患者14名全員から巻爪・陥入爪の疼痛緩和、歩行時の苦痛緩和が認められた。また、爪周囲の皮膚色が暗赤色から健康な皮膚色に変化し、潰瘍を形成していた症例では潰瘍が瘢痕化し縮小した。
近年、医療制度の変革はめざましく入院短縮に伴い外来看護の役割は変化してきた。外来における看護師・コメディカルの役割は多様化してきている。短い外来診療の中で、看護師はじめ、コメディカルのサポートが患者自身の生活習慣変化に与える影響が大きいと考えられる。昨年から自ら患者自身が、生活習慣の行動修正につながる援助となるように看護師・糖尿病療養指導士の生活習慣の取り組みを始めたのでその経過を報告する。
○安藤哲郎1) 高木智恵子2) 伊藤 恭子3) 松尾英徳3) 日高病院腎外科1) 同腎内科2) 平成日高クリニック透析室3)
近年透析用ブラッドアクセスの閉塞に対して経皮的な血栓除去が施行されるようになり、良好な成績が得られてきている。Thrombuster��TM(Kaneka社、以下スロンバスター��)は、シングルルーメンのシンプルな構造で、シリンジの陰圧により血栓を経皮的に吸引するデバイスである。今回われわれは急性血栓性閉塞を来たしたブラッドアクセスに対しスロンバスター�兇鰺僂い瞳佝蘚�血栓除去術を施行した。全例(16症例20閉塞)における初期成功率は85.0%であった。人工血管(11症例14閉塞)では85.7%、内シャント(5症例6閉塞)では83.3％、出血量は1例を除き100ml以下であった。他の血栓除去カテーテルと比べ遜色ない良好な成績が得られた。スロンバスター�兇砲茲觀貔鮟�去術は有効であり、合併症頻度、および出血量の少なさから透析患者の血栓除去に対して適していると考えられた。