9：00〜
総合司会 平成日高クリニック 麓真一
一般演題9：10〜 発表７分 質疑応答3分
座長：平成日高クリニック 高橋佑介 両毛クリニック 佐竹 恵美
○山中清美 石田秀岐 坂本陽子 関口博行 伊藤恭子 松尾英徳 安藤哲郎 平成日高クリニック
【目的】透析患者の貧血の程度を変えることなく、エリスロポエチン製剤使用方法の見直しおよび対策を行いその結果を報告する。
【方法】 1） 当院独自の鉄不足患者の基準を作成、毎月透析システムを利用して該当患者を抽出、鉄不足該当患者でエリスロポエチン製剤4500単位/週以上使用患者をリスト化し担当医師へ提出、リストをもとに担当医師が個々の患者へ必要な対策を実施した。
2） KT/V、BUN除去率を基準とした当院独自の透析量不足患者リストを作成、毎月、ダイアライザー、血液流量、透析時間、透析回数、透析方法を記載した除去不足患者一覧表を担当医師へ提出、リストをもとに担当医師が個々の患者へ必要な対策を実施した。
3） エリスロポエチン製剤オーダー方法を医師は週単位オーダーとし、コストの低い単位組み合わせ表を元に看護師がオーダーを実施する方法に変更した。
【結果】
1. Htの数値を診療報酬改定前のレベルを維持し、エリスロポエチン未使用患者の増加・フェジン使用患者が増加し、エリスロポエチン製剤1500単位・750単位使用患者が減少した。
2. エリスロポエチン製剤が包括対象となるHD実施患者275名を対象に試算した結果、約130万円/月のコスト削減につながったと考えられる。
〜体温計、血圧計、体重計、聴診器、血糖測定器（糖尿病例）について〜
○川瀬 範子 両毛クリニック
通院維持透析患者は1回4〜5時間、週3回以外は医療スタッフの管理下を離れた生活をしている。つまり生活の8割以上の時間帯の身体状況は、各個人の管理に委ねられている。今回、適切に自己の状態を把握する手段の所有とその活用状況についてアンケート調査を行い、検討したので報告する。
対象は、当院の通院維持透析患者、男性139例、女性72例、計211例。本人から聞き取り困難な9例については家族から聴取した。アンケート拒否2例。全例で体温計、血圧計、体重計、聴診器、血糖測定器（糖尿病例）の所有の有無、その活用状況について調べた。
〇野口理恵 富岡クリニック
透析業務は繰り返し行う操作が多く、ちょっとした油断や慣れからうっかりミスを起こしやすい。当院では過去２回にわたりインシデントの傾向と今後の課題についてまとめ日両医学会で発表している。今回当院は昨年９月に移転したことをうけて、業務環境の変化によりインシデントの発生状況にどのような変化がみられているのか、移転前と移転後の１年間に出されたインシデントをまとめ比較検討したのでここに報告する。
〇池田恵子 白根クリニック
透析患者の皮膚掻痒症の原因は様々の要因が挙げられる。その中でも皮膚乾燥の関与は大きいと考えられており、軟膏やローションなどによるスキンケアが主であるが、処方される尿素を含む軟膏などでは一時的な効果にとどまっていた。そこで今回、美肌水を使用し、透析患者の乾皮症に有効な効果を示したので、角質水分率計測器を使用し、美肌水による角質水分率の保持効果、及び、臨床効果を調査し若干の考察が得られたのでここに報告する。
○和田好正 両毛クリニック
【目的】今回当院では、多人数用透析装置の入れ替えを期に、薬液洗浄、水洗、透析液作成等の工程を自動化する透析液供給装置連動システム（連動システム）を導入した。これにより、透析液配管内の洗浄方法を、薬液を流した後翌透析日まで滞留させる方法（薬液滞留法）へと変更した。本連動システムについて紹介するとともに、洗浄力やコストについて検討した。
【方法】連動システムと薬液滞留法の導入前後の比較として、透析装置内配管の汚れに対する洗浄力、エンドトキシン活性値、コストの各項目を検討した。
【結果】透析装置内配管の洗浄効果は、汚れの少なくなった部分と変化のない部分とに分かれた。エンドトキシン活性値は、第1透析室系統では導入後に低値となったが、第2・第3透析室系統では透析開始時に若干の上昇が認められた。コストは薬液使用量が1/2となったため、大幅に削減できた。
【まとめ】今回導入した連動システムと薬液滞留法は、若干の検討の余地はあるものの、従来の洗浄力を保持しつつ、安全性向上、省力化、コスト削減などの面において効果が期待できる。
○山岸暢明 日高リハビリテーション病院
2001年4月の開院以来、当院の原水は水質分析に於いて常にFI値が高く、季節変動もありRO装置への供給水としては不適切な状態が続いている。4年間RO装置への供給水前処理に苦慮してきたが、今回、東レメディカル開発部と話し合いを重ねた結果、縣濁物質の除去を目的とした新しいRO前処理装置が開発され、2006年8月当院に導入となった。当院の水質分析と合わせて3ヶ月の使用経験を報告する。
○鷹野ふよう 新井修 芝田房江 坂本孝美 山口博 JA長野厚生連佐久総合病院 小海分院透析室
【目的】小海分院透析室は佐久総合病院透析室よりサテライトとして移行され本年で12年になる。その間分院自体も2回の施設変更が行われ一時は入院透析もできない状況が2年ほど続いた。今回２回目の移転に伴い亡くなられた透析患者の家族および、現在HD患者へのアンケートを行い僻地サテライトとしての今後の体制つくりへの検討を行った。
【方法】平成5年から平成17年までに亡くなられた22名の患者の家族および、現在透析を行っている方を対象にアンケート調査を行い、分析、検討を行った。
【結果】高齢化率30％を超える地域において透析患者の高齢化も進んでいる。通院や介護に関して患者家族の負担も大きい。入院を余儀なくされた場合、本院への通院は自家用車で現在の分院より30分の距離にあり、公共の交通機関を利用すれば時間的制限まで加わり家族にとって、かなり負担が増加する。分院での治療が可能であれば文院への入院希望が多く見られた。
今回、腎内科のDrの専任化、透析看護師の2人常勤化、臨床工学技師1.5人と、増員によりスタッフの充実画はかれ入院透析についても患者自身「安心して任せられる」といった意見がみられた。家族からは「医師の体制は大切である、今回本当に助かった」「近くなることにより面会の制限がなくなった」「家族だけでなく親戚なども喜んでいる」等の意見もよせられた。
【まとめ】今後も透析患者の高齢化に伴い、入院透析が増加することが予測される。山間部で通院困難な透析患者において、分院に入院することで患者家族への負担も軽減する。しかし、PTA・DSAなどの特殊検査、および外科的手術はまだまだ本院の力を借りている状況である。今後外科的対処についても臨時的な形をとりながら分院で行えるよう検討し、患者負担の軽減を図ってゆく必要がある。
※アンケートを行うにあたり患者および家族に対し趣旨を十分説明し理解していただいた上で回答をいただいている。また、スタッフの守秘義務についても説明している。
○高橋美歩、麓真一、下田富美子、菊地勘1） 平成日高クリニック透析室
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター血液浄化療法科1）
【目的】慢性血液透析中のヘリコバクター・ピロリ菌陽性、かつ鉄欠乏性貧血患者が除菌療法により貧血が改善するかを検討する。
【対象】当院で維持透析施行中の患者からヘリコバクター・ピロリ菌検査の希望があった全患者過去１年間と調査期間中に輸血を施行していない患者を対象とした。
【方法】
�� 便中ヘリコバクター・ピロリ抗原を検出する（ELISA法）便潜血検査を行う。
�� 便潜血陰性でヘリコバクター・ピロリ抗原陽性患者に LPZ 30mg・AMPC750mg・CAM 200mgを１日２回朝・夕食後に1週間内服させる。
�� 便潜血陽性患者は胃カメラを行い、出血性病変なければ 除菌療法を開始する。
�� 内服終了4週間後に便中ヘリコバクター・ピロリ抗原の定性で、効果判定を行う。
�� 血液検査として除菌前、除菌後毎月のＨｂ、Ht、Ａｌｂ、BＵＮ、Ｃｒ、 Fe、TIBC、フェリチンCRPを測定する。
�� エリスロポエチンの使用量を毎月集計する。
【結語】
1. 慢性血液透析患者70名の便中ヘリコバクター・ピロリ抗原陽性患者は22名（ 陽性率 30.9 % ）だった。
2. ヘリコバクター・ピロリ陽性患者22名中17名が同意し除菌療法を行った。
3. 副作用と思われる腹痛の訴えあり、１名が１日間で服薬中止となった。
4. 17名中17名の患者が除菌に成功（除菌率：100%）した。
5. ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することにより、鉄欠乏性貧血を改善することができた。
講師：東京女子医科大学腎臓病総合医療センター血液浄化療法科 菊地 勘 先生