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第57回(2008.6.15)日高病院6階大会議室9:00〜

9:00〜

総合司会  平成日高クリニック 近藤昭之

開会の挨拶 日高病院 安藤義孝 理事長

一般演題9:10〜 発表7分 質疑応答3分

座長:日高リハビリテーション病院 林高志  富岡クリニック 今井奈緒美

「演題1」 −リハビリテーション目的で他施設より入院した透析患者のFIMの検討−

 ○下田 一幸 日高リハビリテーション病院

脳血管疾患や大腿骨頚部骨折後に、在宅に向けたリハビリテーションを必要とする透析患者は年々増加しています。 当院ではリハビリテーションの評価に、国際標準基準として日本でも急速に普及しているFIM(機能的自立度評価法)を用いています。今回2005年1月から2007年9月までに県内外の他施設で急性期を脱し、当院にリハビリテーション目的で入院した52名の透析患者のFIMについて検討しましたので報告します。

「演題2」 −バスキュラールアクセス作成困難な患者に対する長期留置カテーテルの使用例−

 ○新井 幸子 白根クリニック

血液透析を長期に継続していくためには、内シャント等のバスキュラールアクセスの維持は必須である。しかし、透析患者の中には、糖尿病や心疾患の合併による血管の荒廃や、循環器障害がある患者など、内シャントの作成・維持が困難となるケースもある。その問題を解決する選択肢の一つとして、長期留置型カテーテルの挿入がある。今回、その長期留置型カテーテルを使用し、長期間維持透析を継続してきた症例を経験したため、ここに報告する。

「演題3」 −カーボスターの臨床使用経験−

 ○高橋 一貴 平成日高クリニック

【目的】新たに発売された酢酸フリー透析液カーボスター(味の素ファルマ社製)の溶質除去と代謝性アシドーシス是正効果、透析中の血圧変化を従来の透析液キンダリー液AF3号(扶桑薬品社製)と比較検討した。

【対象】当院で12週以上、維持血液透析を施行し、かつ紙面にて同意を得られた患者10例【方法】カーボスター使用前後にて、試験期間中の血圧低下時の処置件数、血圧変化率、血中の血液検査データ、透析前後の血中重炭酸濃度の比較を行った。

【結果】試験期間中の血圧低下時の処置件数は減少傾向であった。また、血圧の変動は変更前に比べ変更後に有意に少なくなり、、代謝性アシドーシスの改善も図れた。

【結語】今後、酢酸フリー透析液カーボスターを使用するにあたり、異所性石灰沈着に注意し、高P血症、インタクトPTHの正常化、栄養改善、心血管系合併症の減少、抗凝固剤の削減に期待したい。

「演題4」 −血液透析導入期の患者に対して「気持ちマネジメントシート」を継続使用する試み−

 ○斎藤 たか子 平成日高クリニック

【目的】「気持ちマネジメントシート」を入院から外来通院まで継続使用し、どのように活用できるか、活用の効果はどのようなことが期待されるかについて継続使用を試みる。

【方法】透析療法を導入することに関する患者の気持ちを聞く時間を設けシートに記載をする。導入2・3ヶ月後〜数ヵ月後にクリニック外来 通院中の透析療法を受けている間に、病棟から申し送られた同シートを用いて透析を受けている時の気持ちを聞く。

【結果】継続的シートを用いる体制をとることにより、当面必要なことのみを指導すれば、その後は通院時にクリニックで段階的な指導が保証されたため、患者の気持ちを理解する余裕ができた。またクリニックでも導入時の患者の気持ちがあるため看護師は導入時の患者の気持ちを時間の経過に沿って聞いていく姿勢がとれた。

「演題5」 −緊急時の離脱にも対処した透析穿刺針・回路の固定法−

 ○峯崎 望美 両毛クリニック

【目的】中越地震を経験した現地透析スタッフは、緊急時回路を切断して離脱する方法は危険性が大きく実用的でないとし、日常実施している返血回収手技と同じ抜針離脱を推奨している。当院では過去に本会でテープ固定法、緊急離脱方法についてそれぞれ検討し発表したが、今回緊急時にも対応できるように透析穿刺針・回路の固定方法と緊急時の透析離脱マニュアルを改良し、昨年の6月から実施しているので報告する。

【方法】従来帰宅する際に消毒後貼付していた止血用パッドを穿刺の固定時に貼付し、50mm幅のテープを70mmに切り、止血用パッドに1/3程度重なるように貼付する。回収時には、穿刺部に貼付してある止血用パッドの上から紙ガーゼで圧迫抜針後、止血用バンドを巻き、患者は、そのまま帰宅する。この方法を、旧法(25mm幅のテープを3枚使用し、1枚は針に平行に、さらに2枚のテープは針、回路を横切るように固定)、V字固定法(25mm幅のテープを回路に巻きつけて、2枚のテープがV字型になるように固定)、DSテープ法(50mm幅の滅菌テープ1枚で、針から回路を幅広く固定)、の各方法と比較検討した。

【結果】テープ固定が原因と考えられるテープ固定法別の抜針事例発生は、旧法では2年3ヶ月間(延べ透析回数71,702回)で25件(0.0349%)、V字固定法では2ヶ月間(延べ透析回数5,708回)で1件(0.0175%)、DSテープ法では2年4ヶ月間(延べ透析回数79,442回)で1件(0.0013%)、新法では11ヶ月間(延べ透析回数30,986回)で0であった。 1透析当たりの固定時と回収時に使う物品のコストは、旧法51円、V字固定法58円、DSテープ法79円であったが、新法では52円であった。 次に災害時の透析離脱マニュアルを変更した。内シャント例では、(1)回収して抜針をするか、返血せずそのまま抜針するかはその時の状況に応じる、(2)抜針し、止血用パッドの上から紙ガーゼで圧迫止血する、(3)止血バンドを巻く、(4)安全な場所に避難する。動脈またはグラフト例は、(1)抜針せず、クランプ針をペアンで止める、(2)回路を外し、ロックキャップをする、(3)ペアンを外し、テープで固定する、(4)避難したら抜針し、圧迫止血する、(5)止血確認後、消毒し止血用パッドを貼付する。

【まとめ】災害時の透析離脱にも配慮した透析穿刺針・回路のテープ固定法を検討した。旧法、V字固定法に比し、DSテープ法、新法でのテープ固定では抜針事例は激減した。安全面で同等であったDSテープ法に比し、新法では27円のコスト削減が得られた。災害時の透析離脱マニュアルは抜針離脱を原則とした。

「演題6」 −当院でのインシデント発生状況の検討−

 ○清水 美由子 富岡クリニック

【目的】平成18年度と平成19年度の2年間のインシデント発生件数や状況を比較し、平成18年度でインシデント発生数の多い二項目と平成19年度でインシデント発生数の多い二項目ついて分析を行う。

【方法】当院透析室で報告されたインシデントレポート事例から集計を行い平成18年度と平成19年度で比較検討した。

1)患者数、透析回数、スタッフ1日あたりの平均出勤数、スタッフ1名に対する患者数比率、インシデント発生率による比較

2)インシデント月別実数・インシデント月別実数とスタッフ1人あたりの患者数比率の比較

3)年間項目別によるインシデント発生数の比較

4)平成18年度でインシデント件数の多い二項目についての分析 (1)体重見間違いによる除水不備 (2)投薬ミス

5)平成19年度にインシデント件数の多い二項目についての分析 (1)監視装置操作ミス (2)投薬ミス

以上の方法で分析をおこない若干の考察を得ましたので報告いたします。

「演題7」 −血液透析終了後の抜針時に留置針の断片が血管内に残留したと思われる1症例−

 ○和田 好正 両毛クリニック

【症例】77歳,女性.原疾患は腎結石症.

【既往歴】腎結石により左腎摘出.

【現病歴】平成2年8月,血液透析導入.透析歴17年9ヵ月.シャントトラブルを繰り返し,人工血管移植術等を計8回施行している.現在は,採血,返血とも平成18年7月に左前腕に移植した人工血管(e-PTFE graft)をバスキュラーアクセス(VA)としている.

【経過】臨床工学技士がクランプ付のテフロン製留置針を使用し,返血側,採血側の順に穿刺して血液透析開始.穿刺トラブル等はなかった.特に問題なく血液透析を終了し回収操作の後,返血側留置針を圧迫止血しながら抜去したところ,留置針先端より13mmが欠損していた.留置針の断片が血管内に残留していることを疑い,すぐに医師に上申し,超音波診断装置等を使用して検索したが,留置針断片の発見には至らなかった.その後A 病院へ転送し血管造影等を行った結果,返血側穿刺痕直下の人工血管内に留置針断片らしき像が確認された.カテーテルによる断片の採取を試みるも採取できず,本患者の人工血管移植術を施行したY医師に相談したところ,できるだけ早く人工血管の血流を遮断し閉塞させて,留置針断片が血流で移動するのを防止するように指示があった.すぐに患者に来院してもらい,人工血管閉塞の処置を行った.翌日,H病院にて,Y医師により留置針断片の採取と人工血管再建を目的とした手術が行われたが,留置針断片は見つからなかった.

【考察】針メーカーに対し,欠損した留置針の分析と情報の提供を依頼した結果,留置針断端に金属内針によると思われる切断面が確認された.また,同様の事例報告が年に数件寄せられているとのことであった.今後は,留置針の性状を考慮して注意深く穿刺するとともに,もし,同様の事例が生じた場合は,速やかにVAの血流を遮断し,もしくはVAを閉塞させて,断片が血管内を移動するのを防止した上で,次の処置を講じる必要がある.

「演題8」 −透析アミロイドーシス  手関節部骨嚢胞,手根管症候群(CTS)の検討−

 ○桑山 怜 両毛クリニック

【目的】長期透析患者の合併症である透析アミロイドーシスは,長期例の増加に伴って重要な問題になってきている.今回,手関節部骨嚢胞とCTS発症について検討した.

【対象および方法】対象は当院維持透析患者216例(男137例,女79例).透析歴は0〜33年4カ月.定期的に撮影している骨塩定量検査(CXD法)の単純X線写真上の骨嚢胞とCTS手術歴を調べた.

【結果】患者の透析歴を5年ごとに区切って検討したところ,手関節部骨嚢胞は5年未満の例でも認められたが,透析歴が長くなるにつれて嚢胞を有する例の割合は高くなっていた.CTS手術例は10年未満では0,10年を越えると15年までの例は3例(9.4%),20年までは7例(35.0%),25年までは4例(40.0%),30年までは8例(66.7%),30年超では1例(100%)であった.

平成11年〜19年までの9年間,維持透析患者65例のβ2-MG値の推移を見たところ,平成11年時点の平均は34.4mg/Lであったが,平成19年時点の平均は25.9mg/Lと有意に低下していた.

【まとめ】1. 手関節部骨嚢胞は,5年未満例でも認められたが,透析歴が長くなるにつれて嚢胞を有する割合は高くなっていた.

2. CTS手術例は10年未満では0であったが,10年を超えるとその割合は高くなっていた.

3. 10年間追跡し得た患者の平均β2-MG値は,10年前より有意に25%低値となっていた.

 

特別講演 11:00〜

―特別講演― 『慢性腎臓病(CKD)の概念、疫学、対策』

『講師』

 自治医科大学透析部准教授 安藤 康宏 先生

閉会の挨拶 両毛クリニック 池内広邦 院長