*

日両医学会
お知らせ
演題集
演題検索
日高グループ
両毛クリニック
事務局より
リンク集
履歴

第63回(2011.8.7)日高病院6階大会議室

日時:平成23年8月7日(日) 9:00〜

【総合司会】平成日高クリニック 萩原紘子

【一般演題座長】白根クリニック 小野隆  富岡クリニック 山崎淳子

開会の挨拶

 日高病院  安藤義孝 理事長

「演題1」−第56回日本透析医学会学術集会・総会へ参加して−

 ○林秀輝 島田美樹子 高橋一貴 新井俊之 横山真由美  平成日高クリニック

 第56回日本透析医学会学術集会における最近のトピックスを、参加したスタッフの手により、以下5つの議題にまとめました。

 

1.東レ・メディカル社製全自動化透析用監視装置TR-3000MAと従来装置との比較(O内科クリニック)

 従来型コンソールと3000MAの業務の効率化を検証するために、プライミングおよび返血の工程を操作開始から離床までの時間と操作回数を比較・検討した結果、3000MAの全自動プライミングでは、離床までの時間と操作回数が短縮され、業務の標準化、効率化が図れると期待された。

 

2.全自動コンソールTR-3000MA専用回路の汎用化への取り組み(S病院)

 3000MAの回路はAチャンバーが下入れ下出しの特殊形状をもつ専用回路であるが、回路の統一化を図るために形状を上入れ下出しの落とし込み型へ変更し、Aチャンバーの落とし込みの長さの異なる3種類の回路を使用し、各種操作の安全性と残血を目視により評価したところ、ほとんどの各種操作は問題なく行うことができた。返血操作において、1種類の回路で安全性に不安が見られた。残血は両者ともに問題は見られなかった。汎用性については3000MA以外でも使用できる可能性が示唆され、回路の統一化、回路コストの削減も期待できると考えられた。

 

3.透析患者のC型ウイルス肝炎診療ガイドライン

 スクリーニングからインターフェロン療法、感染予防まで含む包括的なガイドライン。定期的なトランスアミナーゼやHCV抗体検査の実施法、トランスアミナーゼ値の読み方の注意点、インターフェロン療法の適応の考え方、感染予防策などを詳説した、透析医療の現場に直結するガイドラインとなっている。

 

4.医療経済からみた透析医療の現状と問題点 〜オンラインHDFの医療経済〜

 オンラインHDF装置は認可されるも、診療報酬区分にはオンラインHDFは存在せず、「人工腎臓1」で技術料を請求した場合に比べ減額となる一方で、専用装置、透析液水質管理などに費用が掛かり人件費も増加する。ヘモダイアフィルタにおいても、オンラインHDFに見合った製品の開発が必要である。ただ、週3回の透析スケジュールで全ての患者に最大限の効率を提供できる療法であり、合併症低減が期待され透析経済によい影響を与えることは想像される。

 

5.透析患者の糖尿病治療ガイドライン作成WGコンセンサスカンファランス

 「透析患者の糖尿病治療ガイドライン」

 2010年に新規透析導入された患者の43.5%が糖尿病腎症を原疾患とし、全透析患者35.8%となり、もはや透析医療にとって糖尿病の管理は避けて通れない問題となっている。「透析患者の糖尿病治療ガイドライン」で、透析患者における血糖コントロール目標値として透析前血糖値で180mg/dL以下、グリコアルブミンであれば24%以下が望ましいというステートメント案を示した。これら以外にも、透析液ブドウ糖濃度、経口血糖降下薬の種類と用量、使用方法、食事エネルギー量、合併症管理などで案が示された。

「演題2」−透析患者への静注VD治療によるALPへの影響についての検討−

 ○小野塚幸代  白根クリニック

【背景・目的】わが国の慢性透析療法の現況(2009年12月31日現在)において透析前ALPと脳梗塞・脳出血・心筋梗塞・四肢切断の既往率との関連性が発表されているが、静注VD治療における透析前ALPの影響について検討された報告はまだ少ない。今回、静注VD治療における透析前ALPの影響について検討する。

【方法】当院維持透析患者181名のうち、2010年1月〜2011年3月までに静注VD治療を受けた患者115名を対象とし、オキサロール注(R)単独群、ロカルトロール注(R)単独群、両剤使用例でのALP・intact-PTH・Ca・IPについての調査を実施した。

【結果・考察】静注VD治療を受けた115例の中で、透析前ALPの維持・低下効果が見られた症例が86例(73%)見られた。静注VD治療による透析前ALPの安定・低下への効果が示唆された。

「演題3」−ビルダグリプチン(エクア(R))が有効であった糖尿病透析患者6例−

 ○福田友子  日高リハビリテーション病院

 DPP-4阻害薬は、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)の分解・不活性化を阻害し、活性型GLP1の血中濃度を上昇させることにより、インスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を抑制し、結果として血糖値を低下させて2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する薬剤である。

 今回我々は透析患者に対しても使用できるDPP-4阻害薬ビルダグリプチン(エクア(R))を6症例に使用したのでその結果を報告する。

「演題4」−当院の東日本大震災−

 ○石井雅美  両毛クリニック

【はじめに】当院では日頃から災害に備え、当医学会の発表等を通して災害対策マニュアルを作成してきた。2011年3月11日14:46三陸沖を震源とするマグニチュード9.0 最大震度7の地震が発生し、当足利地区は震度5強であった。幸いにも当院の建物、器物への被害は、ほとんどなかった。しかし、他地域へ出かけていて帰宅困難になった患者、被災地からの透析患者の受け入れ、計画停電による混乱を経験した。当院の対応と災害対策マニュアルの活用について報告する。 

【経過】当日は午前の部の透析が終了して、午後4時からの透析に備えている時間帯であった。直ちに院内の被害状況を把握し、機器には作動異常がないことを確認した。15時07分栃木県透析医会災害情報ネットワークへ被害状況を送信。16時災害用伝言ダイヤル「171」にメッセージを入力。夜間透析は通常通り施行。 翌12日、2名が他地域へ出かけていて、帰宅困難になっていたが、1名は東京で携帯していた「透析患者情報カード」に基づいて透析施行、1名は電車で一泊後高崎からタクシーで来院した。

 13日(日曜日)には計画停電が発表された。計画停電時の対応として、1.透析時間の検討、2.スタッフの勤務の調整、3.患者への連絡、4.停電時当院への連絡先の案内を行った。患者への連絡方法は、1.電話連絡、2.予定表の配布、3.災害用伝言ダイヤル「171」を活用した。

【考案】地域外で帰宅困難になった患者は当院の「透析患者情報カード」で他院で支障なく透析が施行できた。当院透析患者のアンケート調査では、災害用伝言ダイヤル「171」について222名中77%がかけて役に立ったと答えていた。幸いにして、透析中の離脱は経験しなかったが、普段の災害対策が重要であると考える。

【まとめ】1.帰宅困難者では「透析患者情報カード」が有効であった。2.災害用伝言ダイヤルが活用できた。3.震災避難患者2名を受け入れた。4.計画停電下でも透析時間の短縮を来たすことなく通常の透析を行い得た。

「演題5」−東日本大震災時の対応とこれからの課題−

 ○下山大樹  富岡クリニック

 今年、3月上旬に宮城県三陸沖を中心とし東日本全域を大規模な地震が襲い、約12時間の停電となりました。福島県にある原子力発電所が活動停止となり、その後も電力供給量不足に陥り、計画停電が実施されました。

 これまでに体験したことの無い地震や停電を経験し、その時の対応で苦慮した事があり、再度対応を振り返ることにより今後の課題を検討しましたのでここに報告します。

「演題6」−当院の電力使用状況の把握と節電の検討−

 ○武藤俊介  両毛クリニック

【目的】東日本大震災により、原子力発電所、火力発電所の多くが被害を受け停止したことから、電力需給バランスが逼迫する状況が続いている。工場や事業所、一般世帯への節電が求められる中、透析施設での節電方法を検討するため、当院の電力使用状況を調べたので報告する。

【方法】電力会社は契約者の電気使用量を計測するため、最大需要電力計(デマンド計)を設置して30分単位における平均使用電力(kw)を算出し、その月の中で最大の値を最大需要電力値とし、さらに月間電気使用量と合わせて電気料金を設定している。最大需用電力値は翌月以降でその値を上回った場合はその値で、下回った場合でもその値で1年間持続する。1年間の月間電気使用量と最大需用電力値を調べた。さらに、各透析機器の電気使用量をクランプメータで測定した。

【結果】月間電気使用量は、多い順に、2月54,912kwh、1月51,084kwh、8月49,332kwh、9月48,900kwh、3月45,846kwh、7月45,270kwhの順であった。2010年6月より12月までの契約電力は、過去の最大需要電力167kwhを超えることなく推移していたが、2011年1月に最大需要電力172kwhが計測され、新たな契約電力と設定されている。2011年7月21日、暑さもそれほど厳しくなく、冷房などの空調は使用していない状態でAM7:30から透析準備が始まり、8:30から透析を開始した一日の平均使用電力は、透析中の4時間は70kwから90kw、透析終了後の13:30には使用電力が減り、透析終了後、モニターの薬洗、洗浄の開始により14:30には再び使用電力が70kw台に増加していた。そしてモニターの消毒終了後のプリセット状態に移行した15:30には50kw以下に大幅に使用電力は減少した。透析機器の最大使用電力(kVA)はRO装置3台で44.09、供給装置3台で25.99、粉末溶解装置4台で5.2、モニター57台で10.97であった。

【結語】1.当院の電力使用量、最大電気需要量を調べた。2.透析周辺機器をクランプメータにて測定した。3.透析施設での需要電力の多くは透析液を加温するためのものであった。4.水道水を加温することでヒーター電力を抑えることができるが、新たな設備と燃料代などの費用の課題が生じる。

− 特別講演 − 『患者愁訴に着目した透析治療の考え方』

『講師』 医療法人社団清水会 矢吹嶋クリニック 院長  政金生人先生

閉会の挨拶

両毛クリニック  池内広邦 院長