日時：平成23年12月11日(日) 9：00〜
【総合司会】平成日高クリニック 金井美枝子
【一般演題座長】両毛クリニック 坂原将晃 日高病院 石崎さゆり
日高病院 安藤義孝 理事長
〇本多恵子 白根クリニック
【はじめに 】透析患者の高血圧発症には、ナトリウム、体液過剰の他に、レニンアンギオテンシン系過剰亢進が関与する例も多く、多剤併用にしても降圧不十分例が多い。そこで今回直接レニン阻害薬であるアリスキレン（ラジレス）を使用し、透析患者に対しての有用性を検討したのでここに報告する。
【対象及び方法】当院維持透析患者182名の内ラジレスを服用した患者6名を対象とし、ラジレス服用前８週間と投与後１２週間の透析前後の血圧、透析前K値、CTRを比較検討した。また、ラジレス投与量は全患者とも1日当たり１５０ｍｇとし、投与前降圧剤は同量にて併用使用とした。
【結果・考察】今回の調査においてラジレス服用前に、十分な降圧効果がみられなかった患者が、服用後より降圧される傾向が見られた、また副作用とされるＫ値の上昇等もなく安全に使用することが可能であった。しかし、一部の患者においては十分な降圧効果が見られなかった、今後、長期の観察も含め検討する必要性があると考えられた。
〇西澤広子 日高リハビリテーション病院
日本透析医学会統計調査委員会の報告によれば透析人口は２０１７年末の約３２万人をピークに減少に転じると推計され、高齢透析患者の割合は急速に増加し、年齢構成でみると２０２０年末には透析人口の８６％を６０歳以上が占めると予想されています。高齢透析患者に対する問題は多岐にわたり、（超）高齢者透析のガイドライン策定の提案もなされています。
今回、当院では高齢透析患者の抱える諸問題に対して、早期に介入できるよう、透析患者簡易リスクチェック表を作成して現状の把握を行いました。７５歳以上の後期高齢透析患者は、１６９名中６２名（３６．７％）で全国の２７．５％を上回っていました。
今後、身体的病態の進行、認知症など精神的病態の併発、老老介護などが問題となる高齢透析患者では、医師やＭＳＷ、患者家族を含め、情報の共有と綿密な連携が重要になると思われました。
〇下山大樹 富岡クリニック
今年３月上旬、東日本大震災により当院も透析中に地震を経験しました。それに伴い地震や火災が発生した際、現在のスタッフの人数で対応ができるのか、透析患者が増え、高齢で理解度やＡＤＬが低下している患者が増えてきている為、迅速に避難ができるのかという疑問を抱きました。
そこで、緊急離脱方法についてのアンケート調査、患者参加のもと避難訓練を実施し、その結果をもとに今後の災害時の対応を検討したのでここに報告します。
○丸山恵美子 両毛クリニック
【目的】インクレチン関連薬が販売されるようになって，�況薪�尿病の治療に大きな変化がもたらされている．糖尿病透析患者にビルダグリプチン（エクア(R)）を使用して，その効果を検討したので報告する．
【対象】インスリン使用例10例（インスリン平均使用歴は8.2年），非使用例14例．
【方法】インスリン使用例はインスリンを止めてエクア(R)に切替え，インスリン使用例および非使用例ともにα-グルコシダーゼ阻害薬服用者はそのままで，エクア(R)投与前後3ヶ月間の昼食前または夕食前血糖値およびHbA1c値の経過を検討した．
【結果】インスリン使用例の一日のインスリン使用量は2から20単位(平均9.7単位)であった．インスリン使用からエクア(R)2錠へ切替えた患者の血糖の推移では，大きな変化は見られず，エクア(R)内服前後の血糖値の平均値でも有意差はなかった．HbA1cの推移でも同様であった．インスリン非使用患者の血糖の推移では，エクア(R)内服で多くの例で血糖値が下降し，エクア(R)内服前後の血糖値の平均値も有意に下降していた．HbA1cの推移も同様にエクア(R)内服後に多くの例で下降し，エクア(R)内服前後のHbA1cの平均値も有意に下降していた．次に，HbA1c値とGA（グリコアルブミン）値を非透析外来糖尿病患者16名と糖尿病透析患者88名の相関をみたところ，両者は有意に相関していた．各患者のGA/HbA1cの平均は非透析外来糖尿病患者では2.9，糖尿病透析患者では3.7であった．
【考案】インスリンからエクア(R)へ変更した結果，インスリン使用による低血糖症状発現がなくなり，血糖の日内変動が小さくなってHbA1cの上昇もなかった．従って，一日のインスリン使用量が10単位ぐらいまでの�況薪�尿病例はエクア(R)に切替えられる可能性があると考えられる．一般に透析患者ではHbA1cが実際の血糖管理の状態よりも低値となるといわれており．非透析患者のGA／HbA1cは3であるが，透析患者では4程度といわれている．糖尿病透析患者のGA値のコントロール目標が20%以下とすれば，今回の検討で得られたGA／HbA1c値3.7から換算するとHbA1cは5.4％ということになり，今回，エクア(R)投与例でこの値をクリアしたのは24例中7例（22.2%）であった．しかし，エクア(R)投与後の経過は良好であり，エクア(R)の長期投与で膵島のβ細胞の保護・増殖作用の報告もあることから今後の経過に期待したい．
【結語】エクア(R)は，�況薪�尿病透析患者の血糖コントロールに安全かつ有効な薬剤である．インスリン療法中の糖尿病透析患者において，内因性インスリン分泌能が残存していれば，エクア(R)へ変更が可能である．
〇和田好正 両毛クリニック
当院では，最近までフィルムにX線を照射し撮影する旧来のX線撮影装置を使用していたが，今回新たにX線撮影システムを導入したので紹介する．
従来のX線撮影装置では，X線でフィルムを感光し，そのフィルムを現像，定着させ，画像を得る．そのため必ずフィルムを必要とし，フィルムの保管，運搬などが面倒，現像液，定着液が必要，撮影から画像を得るまで時間がかかるなどの欠点があった．
今回導入したコニカミノルタ社製AeroDRシステムは，X線検出器のカセッテ型FPD (Flat panel detector) ”AeroDR”，撮影の制御を行なうコンソール”CS-7”，読影や画像データの蓄積を行なう画像診断ワークステーション”I-PACS EX”等で構成され，それぞれの装置間は無線，または有線で接続される．
カセッテ型FPD ”AeroDR”の中にはX線を受けると発光する結晶が格納されており，その信号がコンピュータで影像化されデータとして蓄積される．影像はフィルムや紙への印刷や，CD，USBメモリ等にダウンロードして持ち運ぶこともできる．
カセッテ型FPD ”AeroDR”の外形は，縦384mm，横460mm，厚さ16mm，重量は2.9kgで同型FPDの中では現在世界最軽量である．耐荷重は300kg，バッテリーはリチウムイオンキャパシタを使用し，寿命は充放電20,000回，充電時間は最短30分で発火や発煙の危険はない．X線照射から画像プレビューまでの時間は1秒台．撮影間隔を表すサイクルタイムは有線で約10秒，無線で約17秒．撮影可能画像数は，60秒ごとに撮影した場合，2時間で120画像である．
本装置導入後も，約70名の準夜透析患者の胸部X線撮影は，撮影者1名で全員透析後に施行しており，デジタル化，フィルムレスの利点も加わって，大きな業務軽減効果が得られている．
〇安藤哲郎 日高病院腎臓外科
当院では2例の生体腎移植を行った、その経過と内容について画像をまじえて説明していく。
『講師』 新潟大学医歯学総合病院 血液浄化療法部 准教授 風間順一郎先生
両毛クリニック 池内広邦 院長