日時：平成25年7月7日(日) 9：00〜
【総合司会】平成日高クリニック 飯塚昌代(いいづかまさよ)
【一般演題座長】平成日高クリニック 高橋伴彰(たかはしともあき) 富岡クリニック 松井孝介(まついこうすけ)
日高病院 安藤義孝 理事長
○麓真一(ふもとしんいち) 日高病院
【目的】緊急血液透析時に, 抵抗なく導入した男性患者の思いを明らかにすることを目的とする。
【方法】緊急透析導入後6カ月以上3年未満が経過しており, その間に10日以上の入院がなく, 定期的に週3回（又は週2回）の通院維持透析ができている男性患者に, 半構成的面接にて緊急導入時の思いを語ってもらった。 そのうち, 抵抗なく透析導入した患者の思いを, 質的記述的に分析した。
【結果】透析導入には抵抗がなかったと語ってくれた患者は8名であり, カテゴリーには＜治療効果への実感＞や＜透析を身近に感じる存在＞などが明らかになった。
【結論】看護師は, 患者の身体症状を良く観察し, 透析による症状改善を患者と共に確認・意味づけをすることや, 周囲で安定して透析を行っている人がいる場合, その人の社会生活を思い出してもらうような支援が必要である。 このことが, 抵抗なく導入する支援に繋がると考える。
〇菊池美咲(きくちみさき) 白根クリニック
【目的】ミルセラからネスプ変更時の貧血改善効果について検討する。
【方法】ミルセラ投与中の患者９名を対象に、1：1換算でネスプへ変更し、変更前後６ヵ月のＨｂ、フェリチン、ESA投与量、鉄剤投 与量を比較検討する。また、ミルセラ月1回投与とミルセラ月2回投与に分けて分析した。
【結果】ミルセラからネスプに切り替えたことによりHb値が上昇し、ESA投与量が減少した。 鉄剤投与量に差はなくフェリチンが やや下降する傾向がみられた。ネスプに変更後にHb10〜12ｇ/ｄｌ達成率が上昇した。切り替え換算比は切り替え６ヶ月後でネス プ：ミルセラ（全例）で1：2.38であった。
【考察】高用量のミルセラを使用している患者をネスプに変更することによって一部の症例においてＨｂが上昇しネスプの減量が 可能であった。多種となったＥＳＡ製剤を目的に合わせ使用する事により、Ｈｂ値をガイドライン推奨値に維持できると考えられる。
〇島田美樹子(しまだみきこ) 日高リハビリテーション病院
【はじめに】透析患者では動脈硬化や生命予後の観点からリンのコントロールは重要であり、リン摂取量を把握し栄養指導によって食事の内容が改善されることが望まれる。 昨年当院では簡便かつ継続的にリン摂取量の評価を行うためのツールとして、リンチェックシート（以下 ＫＮＩＴ ｔｅｓｔ）を考案した。今回、リン摂取量の調査に協力が得られた患者で、継続的な栄養指導を希望した２症例に対し、繰り返しＫＮＩＴ ｔｅｓｔを用いた介入を行った。その結果、患者のリン摂取に対する意識が高まり血清リン値の改善が得られましたので報告する。
〇野口隼矢(のぐちじゅんや) 富岡クリニック
透析患者の高齢化・長期化に伴い、カテーテル透析の割合も日本を含め世界的に増加している。２０１１年版の慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドラインにおいてカテーテルの名称がカフ型カテーテルと非カフ型カテーテルに統一された為、長期留置カテーテルをカフ型カテーテルと呼称される形式となりました。
カフ型カテーテルは、以前のシリコン製から特殊ポリウレタン製カテーテルに変わり、耐久性・抗血栓性に優れており、適応としてシャント作製・造設の困難、高度の心疾患をもつ患者、四肢拘縮の患者・認知症の患者などの穿刺困難や透析中の事故抜針によるリスクの高い症例、腎移植や他のアクセスが使用する前のつなぎとして使用されている。
今回、当院でカフ型カテーテル使用にて維持透析を施行した患者を対象に２００７年〜２０１３年５月時点での経過を再度調査し、比較検討する中でカフ型カテーテルの一種であるソフトセルでカテーテルカフ中枢より、内側の損傷の症例を経験しましたので報告します。
〇武藤駿介(むとうしゅんすけ) 両毛クリニック
【はじめに】今回私達は、バスキュラーアクセスとして使用中の人工血管（ウレタングラフト）が閉塞した症例で、人工血管の動脈吻合部を穿刺して針先端を動脈腔へ留置することによって十分な血流を確保して透析が施行できているので報告する｡
【方法】針はメディキット社製クランプキャスを使い、人工血管動脈吻合部から2〜3cmの閉塞したグラフトを穿刺し、外套を押し進めて吻合部から動脈腔に針先を留置する。返血は腕の表在静脈を使用する｡
【症例1】男性75歳。原疾患はANCA関連腎炎。透析歴は5年3ヶ月。平成18年6月、Gクリニックで右腕に内シャント形成術を2回。その後、J病院で左腕に内シャントを形成し、平成20年3月にJ病院で血液透析を導入した｡その後は当院へ転院して1回4時間、週3回維持透析中。当院転院後まもなく内シャントが閉塞し、Y医院へ紹介して左腕に人工血管を移植した。その後、グラフトの閉塞を繰り返し、その都度血栓除去および再造設を計8回行なった｡本年4月15日にも閉塞し、その後は閉塞人工血管（ウレタングラフト）で血流を確保している｡4月17日には新しく上腕動脈から正中皮静脈へ新グラフトを造設したが、現在まで新グラフトは使用していない｡
【症例2】女性81歳。原疾患は糖尿病性腎症｡透析歴は1年1ヶ月。平成24年6月、A病院でダブルルーメンカテーテルを留置して血液透析導入。その後、A病院にて内シャント形成術2回、ウレタングラフト移植を1回施行。同年9月、維持透析のため当院へ転院して、1回4時間、週3回血液透析施行中。平成25年1月12日に人工血管閉塞、その後は閉塞人工血管（ウレタングラフト）で血流を確保している｡1月23日にA病院で上腕にウレタングラフト造設。しかし、この新グラフトを使用しないでいたところ4月16日にはこのグラフトも閉塞した｡
【考案】人工血管造設の場合、E-PTFEグラフトが穿刺可能になるまでは数週間を要する。緊急時のバスキュラーアクセスとして中心静脈へのカテーテル挿入があるが、問題が多いことから当院では行っていない｡このような場合は内シャント吻合部穿刺、上腕動脈および橈骨動脈への直接穿刺、または大腿静脈穿刺で対応している。當間は高齢者や高拍出性心不全の患者に対して上腕動脈に盲端のウレタングラフトを移植してこれを穿刺する方法AAP(Arterial Access Port)で最長3年間使用できたと報告している。今回の2症例は、3ヶ月を超えて閉塞人工血管を穿刺して現在までに特に問題はない。
【結語】閉塞した人工血管（ウレタングラフト）を穿刺するバスキュラーアクセスは緊急時だけでなく持続的に施行できる方法と考えられる。
〇藤倉亜紀子(ふじくらあきこ) 両毛クリニック
【はじめに】透析患者で筋痙攣は、透析中にしばしばみられる症状である。今回、簡単な下肢の筋力強化法として「ミニ筋トレ」を考案して本年4月から施行し始めて筋痙攣の改善効果を検討したので報告する。
【方法】�［沼�で立ち、かかとを上げ下げする。�⇔沼�で立ち、つま先を上げ下げする。�Ｎ沼�で立ち、ひざを軽く曲げ伸ばしする。�な丗�ずつ、かかとを後ろへ上げ下げする。以上、4つの動作を各々5〜10回、1日1クールとして、やりすぎないよう注意して行う。
【対象】認知症や筋トレのできない人を除いた当院維持透析患者、男性131名女性81名計212名。平均年齢は男性65.8歳、女性66.5歳、平均透析歴は男性9年0ヶ月、女性10年6ヶ月。これらの患者にアンケート調査を行った。
【結果】筋痙攣を経験したことのある患者は男性82名、女性63名、計145名（68.4%）であった。筋痙攣が出現する時間帯は、透析中が84名（57.9%）、就寝中45名、透析後27名、非透析日25名であった（複数回答）。透析中の筋痙攣の部位は、腓腹部が62名でもっとも多く、その他、大腿部、下腿前面、足底部、足趾、足首、足背部、側腹部、胸部だった。透析中の筋痙攣出現とその時間当たりの除水量をDWの1%以上、未満でみると筋痙攣者の94%が1%以上であった。透析中に下肢の筋痙攣を経験した患者の内「ミニ筋トレ」を行っている患者は72名で、40名（55%）は効果があったと答えていた。この中で、つれなくなった22名、つれる頻度が減った14名、つれる程度が軽減した4名であった。透析中の下肢筋痙攣では、3、4、5月に透析中に下肢筋痙攣を起こした人数は、それぞれ26、18、10名であった。下肢筋痙攣の程度を重症度に応じて分類した。レベル�機Ы�水速度の調整、生食注入等の処置で総除水量の変更を要しない。レベル�供Л気僚菽屬砲發�かわらず総除水量の減量。レベル�掘Ы菽屬砲發�かわらず筋痙攣改善せず、返血。各月の推移は、レベル�機�5、4、5回、レベル�供�17、12、2回、レベル�掘�19、14、9回。レベル�気肋�数で変わらないもののレベル�供↓靴任老遒鯆匹Δ瓦箸妨詐�していた。
【考案および結語】筋痙攣は、特に透析患者では起こりやすいとされている。今回の調査でも約7割近い患者が筋痙攣を経験しており、そして筋痙攣出現がもっとも多いのは透析中であった。時間当たりの除水量では筋痙攣者の94%がDWの1%以上の除水設定を行っており、過剰な除水量設定も原因の1つであることが考えられた。「ミニ筋トレ」を試みたところ、わずか2ヶ月足らずで透析中の筋痙攣発作が56%で消失または軽減した。「ミニ筋トレ」は筋の強化と筋紡錘および腱紡錘の感度が改善された結果と考えられる。
日高病院循環器内科 部長 古賀敬史 先生
両毛クリニック 池内広邦 院長