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第70回(2014.12.14)日高病院6階大会議室 

 

日時:平成26年12月14日(日) 9:00〜

【司会】富岡クリニック 高橋 正臣(たかはしまさおみ)

【一般演題座長】両毛クリニック 桑山 怜(くわやまりょう)  平成日高クリニック 林 秀輝(はやしひでき)

開会の挨拶

 日高病院 安藤 哲郎 先生

「演題1」 −表在化動脈のボタンホール穿刺 〜当院の現状報告〜−

 〇田村 弘明(たむらひろあき) 両毛クリニック

【はじめに】当院では、5年前よりペインレスニードル針を使用したBH(ボタンホール)穿刺を開始し、現在では、約9割の患者にBH穿刺を行い、標準穿刺として確立している。今回、肘部表在化動脈へのBH穿刺を行っている14例について報告する。

【対象】表在化動脈使用症例は、男性5例、女性9例、年齢は53歳〜86歳、平均年齢71.4歳。平均透析歴は12年6ヵ月。原疾患は、糖尿病8例、非糖尿病6例。

【方法】17Gペインレスニードル針(留置針外径1.5mm、留置針内径1.1mm、留置針長25mm)、16Gペインレスニードル針(留置針外径1.7mm、留置針内径1.3mm、留置針長33mm)を使用。皮下から浅い位置にある表在化動脈への穿刺は、皮膚から20°の角度で穿刺し、その角度を保ったまま動脈腔に針先を留置して皮下と表在化動脈との間に12mm以上の皮下トンネルを作製する皮下から深い位置にある表在化動脈への穿刺は、皮膚から20°の角度で穿刺し、そのまま押し進め、皮下と表在化動脈の中間地点で角度を45°に傾けてそのまま動脈腔に針先を留置して皮下と表在化動脈との間に20mm以上の皮下トンネルを作製するようにする。返血は四肢の表在静脈を利用する。

【結果】表在化動脈の脱血側穿刺針は、17Gペインレスニードル針を男性1例、女性7例、16Gペインレスニードル針33mmを男性4例、女性2例で使用。

症例:70歳、女性。透析歴23年11ヵ月。DW45kg。原疾患は慢性腎炎。現在週3回5時間透析施行中。内シャント形成術2回、人工血管移植術3回、動脈表在化術2回。2012年3月9日に人工血管が閉塞し、同年6月27日より右上腕表在化動脈のBH穿刺を開始して、30ヵ月経過した現在までにBNP値、CTR値は、徐々に低下してきている。

【考察】透析患者の多くが使用しているVAに比べ、表在化動脈穿刺は、心臓への負担がなく、心機能の低下している患者に適したVAと考えられるが、動脈瘤の形成や皮膚の皮薄化が進行し、長期使用することが容易ではない。これは鋭利な穿刺針による血管の損傷を繰り返すことが原因で、BH穿刺は、同一部位を先端が鈍の針で穿刺するために血管の損傷が起こりづらく、瘤が形成されない。当院の14例も瘤を形成することなく、順調に施行できている。ただし、皮膚の穿刺孔の直下に血管の穿刺孔が位置すると止血困難な事態が生じるので、必ず一定距離の皮下トンネルを経てから血管内に針を挿入することが肝要である。

【結語】ペインレスニードル針によるBH穿刺は、表在化動脈においても長期使用が可能である。

「演題2」 −透析患者に対するリオナ(クエン酸第2鉄)の使用経験−

 〇高橋 正臣(たかはしまさおみ) 富岡クリニック

高リン血症は透析患者並びに保存期慢性腎臓病(CKD)の多くが、腎臓からのリン排泄が低下することで生じる疾患であり、特に透析患者では血管壁での石灰沈着にて動脈硬化の進行と原因になります。その結果末梢循環不全・脳梗塞・シャントトラブル・虚血性心疾患などの合併症が出現し、日常のADLの不良や生命予後の不良となります。高リン血症の治療には食事指導によるリン摂取制限・透析によるリン除去に加え消化管からのリン吸収を抑制する経口リン吸着薬の投与を行い、リンのコントロールが生命予後の改善につながると考えられます。

今回、当院で使用した高リン血症治療薬リオナは、クエン酸第二鉄水和物を有効成分とする薬剤で、第二鉄(3価鉄)のリン酸との結合作用にて消化管内での食事由来のリン酸を鉄と結合させて難溶性の沈殿物(リン酸第二鉄)を形成することでリンの消化吸収を抑制します。第二鉄(3価鉄)は、第一鉄(2価鉄)に比べ、消化管から吸収されにくいことが知られています。またリオナの有効成分であるクエン酸第二鉄水和物は食品添加物に使用される、クエン酸第二鉄とは製造法が異なり、比表面積が大きく溶解速度が速いという特性をもっています。そのため消化管で溶解しリン酸と結合して難溶性(リン酸塩)を形成することで、リンの消化吸収を抑制します。

今回、リオナを使用する経験を得られたので報告します。

「演題3」 −維持血液透析患者における抑うつ程度の実態−

 ○高澤 文弥(たかざわふみや)、高橋祐介、永野伸郎、石田秀岐、関口博行、伊藤恭子、安藤哲郎、筒井貴朗、安藤義孝 医療法人社団日高会 腎臓病治療センター

【背景】血液透析患者は週3回の透析を余儀なくされる。腎移植が普及しない本邦の現状では、透析離脱は死に至ることと同義であるが故に、透析患者は一般集団と比較して、抑うつ状態の頻度が高いことが報告されている。透析導入後の年数経過とともに、精神健康度は良好となり安定期に移行することも知られているが、これを否定する報告も混在する。

【目的】平成日高CLの外来維持血液透析患者の抑うつ度の実態を調査し、患者背景、送迎バスおよび車椅子使用の有無との関連を解析する。非透析患者集団(対照群)として、同じ空間で仕事に従事している透析スタッフの抑うつ度を調査し、両群間を比較する。

【対象と方法】認知症患者および医師・看護師が不適当と判断した患者を除き、試験の参加同意を書面にて得られた患者を対象に、一般心療内科で最も多用されている自己評価抑うつ尺度(Self-Rating Depression Scale; SDS)アンケート調査を実施した。同様に、透析センタースタッフ(医師、看護師、ヘルパー、管理栄養士、事務)を対象にアンケートを実施した。SDSの20項目における各尺度の合計点数を主要評価項目とし、透析患者を対象とした試験では、患者背景、通院手段、車椅子使用の有無を副次的評価項目とした。20項目の各質問を、1、2、3、4点で数値化し、総計点を算出後、春木の分類に従い判定した。

【結果】外来維持血液透析患者283人から調査票を回収し、277件の有効回答を解析対象とした。また、63名のスタッフからアンケートを回収し、以下の結果を得た。

・透析患者とスタッフ間で、抑うつスコア分布に差は認められなかったが、“中等度以上の抑うつの疑い”と判定された被験者割合は、透析患者で多かった。

・透析患者において、強い抑うつ状態因子は、性欲、希望の無さ、自己過小評価、日内変動、不満足であり、弱い抑うつ状態因子は、啼泣、憂鬱、悲哀、心悸亢進、精神運動性興奮、自殺念慮であった。

・透析患者において、単相関解析および四分位間の解析では、抑うつスコアと、年齢、透析歴、透析導入時年齢に関連は認められなかった。

・透析歴の五分位間の解析では、第2五分位群(中央値;2.7年)は、抑うつスコア低下を示したが、第3五分位群(中央値;5.5年)、第4五分位(中央値;10.4年)と移行するにつれて再上昇した。

・透析患者において、DM有りはDM無し、送迎バス利用者は非利用者、車椅子使用者は非使用者、午前透析患者は準夜透析患者と比較して、それぞれ高い抑うつ程度を示した。

【結語】透析患者において、抑うつの程度と、年齢、透析導入時年齢は関連しないが、導入後数年が経過すれば、抑うつ程度の一過性低下が認められ、その後、再上昇する可能性が示唆された。DM患者、送迎バス利用者、車椅子使用者、午前透析患者と、高い抑うつスコアとの関連が示された。

「演題4」 −当院透析患者の睡眠について−

 〇足立 絵里(あだちえり) 両毛クリニック

【はじめに】睡眠には心身の疲労を回復する働きがある。このため、睡眠が量的に不足したり、悪化したりすると健康上の問題や生活への支障が生じる。今回、当院透析患者の睡眠障害の現状を把握する目的でアンケート調査を行い、分析したので報告する。

【対象】対象は、男性131名、女性73名、計204名。平均年齢は、男性66.4歳、女性65.3歳。平均透析歴は、男性9年4ヶ月、女性11年8ヶ月。

【方法】睡眠について、本人の主観的な評価と睡眠の質を評価する尺度としてピッツバーグ睡眠質問票の日本語版(PSQI-J)を使用して調査した。

【結果】睡眠について、本人の主観的な評価は54名(26%)が非常に良い、96名(47%)が良い、38名(19%)が悪い、16名(8%)が非常に悪い、であった。主観的評価の男女別では、悪いのは男性24%に対し、女性が30%。年代別の主観的評価では、悪いのは50〜60歳代、70〜80歳代、30〜40歳代の順であった。男女別睡眠時間と年齢の関係では、男女差はほとんどなく、50〜80歳代の高齢者になるにつれて30〜40歳代ではみられない短時間睡眠者、長時間睡眠者が増えていた。眠剤服用者は204名中45名  (22%)で男性23名、女性22名で、高齢になるにつれて服用者が増えていた。睡眠時間別では、服用率は50〜60歳代の5時間未満者、70〜80歳代の5〜8時間者が高かった。PSQI-Jによる睡眠の評価では、良いが90名(44%)、悪いが114名(56%)であった。年代別のPSQI-Jは、年齢を増すごとに良い評価が減少して、悪い評価が増加していた。主観的評価とPSQI-Jによる睡眠の質の差では、どの年代もPSQI-Jの良い評価が減少していた。特に70〜80歳代では、良い主観的評価が78.9%であったのに対し、PSQI-Jでは37.8%とその差が大きかった。睡眠困難の原因には、入眠困難、早朝覚醒、排泄、呼吸困難、咳・いびき、寒さ、暑さ、悪夢、痛み等があるが、多いのは入眠困難と早朝覚醒であった。睡眠時間別不眠症のタイプでは、8時間超では入眠障害は0、5〜8時間では熟眠障害、中途覚醒、入眠障害、早朝覚醒の順、5時間未満では入眠障害、早朝覚醒、中途覚醒の順で、熟眠障害は0であった。

【考案】日本の一般人口を対象として行われた疫学調査で、成人の21.4%が不眠を訴えているという報告がある。今回当院透析患者の調査では、主観的評価で、睡眠が悪いは26%であったが、PSQI-Jによる睡眠の質は56%が悪いと判定された。さらに、高年齢層ほど主観的評価よりもPSQI-Jによる睡眠の質が悪い人が多くなっていた。

【結語】今後、睡眠の主観的評価に加えて睡眠の質を考慮した日常生活、睡眠習慣を確立するようにする必要がある。

「演題5」 −当院透析患者に対する事前指定書の検討−   

 〇森下 麗子(もりしたれいこ) 白根クリニック

【目的】透析医療の進歩と共に、患者のQOLが向上した反面、透析による合併症で苦しむ長期透析患者は、意思とは関係なく、治療が行われているケースも少なくない。終末期を迎えた患者の中には、このような症例があり、事前指定書を作成し、終末期に対する患者の意識調査を行った。

【対象】当院にて維持透析を行っている患者の内、事前指定書に関する調査に同意を得られた患者60名を対象とした。

【方法】事前指定書を作成し、対象患者に、調査目的で使用することを説明し、回答内容を考察した。

【結果】 終末期において自己主張が不可能となったときに、事前指定書があることにより、患者個人を尊重した医療の提供が可能であると、考えられるが、現状では、法律上、患者個人の意思による、医療の中止は認められていない。今回作成した事前指定書により、患者が望む終末期の医療とは、個々に考え方の違いあるが、回復が不可能ではない限り生命を維持したいという傾向が見られた。また透析治療に関しては自分で判断が出来なくなったときには、中止してほしいという希望が多く、患者自身が透析を苦痛と考えている傾向があるように伺えた。調査目的ではあるが、事前指定書を作成し、実際に患者が記入したことにより、患者の望む終末期というものが必ずしも提供される医療と合致していない可能性が考えられた。また、事前指定書が患者の意思を表明するものとして有効である可能性が示唆された。

「演題6」 −当院透析患者の介護施設利用の現状と課題−

 〇佐藤 絵美(さとうえみ) 日高リハビリテーション病院

【目的】自宅での生活が困難となる高齢透析患者では、最期まで過ごす場所に病院より施設を望む人が増加している。また医療費を抑える政策の方向性から、長期入院が難しくなってくることも予想される。当院では近隣の市町村にある介護施設を利用しているので、今後の方向性と課題を検討した。

【方法】介護施設入所時の条件を確認するとともに、透析患者を受け入れている施設の透析患者に対する意識を調査した。

【結果】7か所の有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅において、施設からの意見では、食事管理を常に気にしなくてはならない、急変時の対応に不安がある、施設自体での送迎は困難である等があげられた。

【考察】介護老人保健施設や特別養護老人ホームに入所するのは困難な状況から、自宅介護が困難な症例には地域の介護施設の利用は必要であり、患者のニードに合わせ病院、施設、地域で連携することが重要である。

「演題7」 −「次世代型デイサービス」太田デイトレセンター−

 〇松本 博(まつもとひろし)、大江一徳 エムダブルエス日高

2015年4月1日、群馬県太田市台之郷町に「次世代型デイサービス」の太田デイトレセンターを開設します。

この施設は群馬県東毛地区では日高会グループで初めての施設になります。

「次世代型デイサービス」とは一日の過ごし方を利用者自身で決める「自己選択・自己管理」のデイサービスであり、このシステムは2013年1月に高崎市井野町に日高会で開設した日高デイトレセンターで採用し好評を得られています。

今までのデイサービスに行きたくないという方にこそ試していただきたい、利用者皆様の表情が生き生きと輝いている革新的なデイサービスです。

− 特別講演 −『糖尿病と腎不全』

 医療法人社団三思会東邦病院副院長 腎臓透析センター長 植木 嘉衛 先生

閉会の挨拶

 両毛クリニック 池内広邦 院長