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第71回(2015.11.29)日高病院6階大会議室 

 

日時:平成27年11月29日(日)9:30〜

【司会】日高リハビリテーション病院 門間 千佳(もんまちか)

【一般演題座長】日高病院 麓 真一(ふもとしんいち) 富岡クリニック 松本 晃(まつもとあきら)

開会の挨拶

 両毛クリニック 池内 広邦 院長

「演題1」 −当院での慢性透析患者に対するHBVサーベイランスと感染対策−

 〇町田 千春(まちだちはる) 平成日高クリニック

【目的】透析患者でのHBVサーベイランス方法と感染対策を検討

【対象】平成日高クリニックで維持透析施行中の全患者492名(平均年齢67.8歳、平均透析歴8.7年)

【方法】HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体を測定。いずれかが陽性の場合にHBV DNAリアルタイムPCR検査を施行、ウィルス血症の有無を確認。

【結果】HBs抗原陽性患者6名/492名(1.2%)、HBc抗体陽性患者94名/492名(19.1%)、HBs抗原陽性かつHBc抗体陽性患者6名全員のHBV DNAが陽性。HBs抗原陰性かつHBc抗体陽性患者(既感染)88名のうちHBV DNA陽性患者2名(2.3%)

【考察】HBs抗原のみのサーベイランスでは、既感染のHBV DNA陽性患者を見落とす可能性があり、HBs抗原のみではなくHBc抗体検査を行い、HBc抗体陽性患者にはHBV DNA検査をする必要がある。

【まとめ】透析患者のHBVサーベイランスにはHBc抗体検査は必須であり、感染対策として、HBV DNA検査陽性患者のベッド固定を施行する必要がある。

「演題2」 −高齢透析患者に対する嚥下障害スクリーニングテスト−

 〇佐藤 梓(さとうあずさ) 日高リハビリテーション病院

【目的】高齢透析患者の嚥下障害症例を早期に発見する。

【対象・方法】対象は70歳以上の維持透析患者でテストに同意を得られた61名。方法は対象者に反復唾液嚥下テスト(RSST)、改訂水飲みテスト(MWST)、50ml水飲みテストを実施。

【結果】RSSTでは3回未満の嚥下機能低下者が男性6名、女性10名で全体の26%であった。MWSTでは評点が4点以下の患者はいなかった。50ml水飲みテストでは2名が評点3点以下であった。

【考察】嚥下障害スクリーニングテストで、RSSTが陽性であってもMWSTでは全員がむせや呼吸変化がなかった。透析患者は唾液の分泌が低下していることが知られておりRSSTでは偽陽性が出現しやすく透析患者には適切な嚥下評価法ではないと考えられた。高齢透析患者の嚥下評価にはMWSTや50ml水飲みテストを用いるべきだと思われた。

「演題3」 −簡易リスクチェクシートを用いた当院透析患者のリスク調査−       

 〇新井 和樹(あらいかずき) 富岡クリニック

 我が国は現在65歳以上の高齢者人口は3384万人で総人口に占める割合は26.7%となり人口、割合共に過去最高で80歳以上の人口が初めて1000万人を超える状況となりました。日本透析医学会の調査によると、2013年度の透析導入患者数は38,024人で導入平均年齢は68.68歳、透析患者全体の平均年齢は67.2歳、前年比+0.33歳と年々高齢化率が増加しています。今後の予想として年齢構成で見ると、2020年末には透析人口全体の86%を60歳以上が占めると予想されている。このことからも透析医療が高齢者医療とも言える状態となっていきている。

 高齢透析患者は合併症や感染、転倒、認知症などのリスクが高くADL低下により短期間で要介護状態に陥ることが考えられます。そこで当院における患者の年齢や家族構成、ADL状態、介護の担い手、生活活動度、通院手段などのチェックリストを作りスクリーニングを行い、過去のデータと比較し今後の日常生活の維持が困難になるリスクがどこに潜んでいるか調査を行いました。その結果若干の考察を得たので症例報告を踏まえ報告します。

「演題4」 −L-カルニチン注射液の投与量の検討−

 ○桑原 郁美(くわばらいくみ) 日高リハビリテーション病院

【目的】L-カルニチン注射液の維持投与量を検討する。

【方法】(1)L-カルニチン内服中の透析患者6名(平均DW57.6Kg)を注射薬に剤形変更して1000mg×1/週、1000mg×2/週、と増量していき透析前の遊離カルニチン血中濃度を測定する。(2)1000mg×2/週のL-カルニチン投与を3ヵ月間継続し透析前の遊離カルニチン血中濃度を測定する。(3)1000mg×1/週にL-カルニチンを減量し、3ヵ月後、6ヵ月後に透析前の血中濃度を測定する。

【結果】1000mg×1/週静注時、1000mg×2/週静注時、静注時の透析毎(前)の遊離カルニチン血中濃度は81.3μmol/L、70.6μmol/Lと推移した。1000mg×2/週投与3ヵ月後の遊離カルニチン血中濃度は中3日で220.2μmol/L、中2日で356.1μmol/Lであった。1000mg×1/週静注に変更3ヶ月後の遊離カルニチン血中濃度(静注日透析前)は136.3μmol/Lであった。6ヵ月後は81.9μmol/Lであった。

【考察】L-カルニチンを1000mg×1/週静注で内服時以上の遊離カルニチン血中濃度が維持できると思われた。

「演題5」 −高齢透析患者に対するエポエチンβペゴル(CERA)2週に1回投与の検討−   

 〇竹ノ内 恭兵(たけのうちきょうへい) 白根クリニック

【目的】75歳以上の透析患者に対するCERA2週に1回投与の有用性を検討した。

【対象及び方法】当院維持透析患者167名の内ダルベポエチンα(DA)を投与している75歳以上の患者21名を対象にCERA2週に1回投与へ変更し、ヘモグロビン(Hb)フェリチン、TSAT等について検討した。

【結果】DAからCERA変更時のHb10.2±1.0g/dl、フェリチン67.2±64.0ng/ml、変更後3ヶ月Hb10.5±1.04 g/dl、フェリチン56.6±40.3ng/mlとHbが上昇し、フェリチンが下降した。TSATに関しても変更時42.0±16.5%から3ヶ月後28.3±6.09%と下降した。

【考察】今回の検討では、若年者との比較は行ってないが、高齢者透析患者は、加齢に伴う代謝機能の低下の可能性があるため、半減期が長いCERAが長く停滞することにより、造血が効率よく行われ、鉄代謝効率が改善する可能性が考えられた。この事により、高齢の透析患者に対してDAからCERA2週に1回投与への変更はHbの維持及び鉄代謝効率に有用と考えられる。

【結論】高齢透析患者に対するCERA2週に1回投与は有用である。

「演題6」 −穿刺時の疼痛に関する検討−      

 〇佐藤 亜弥(さとうあや)  白根クリニック

【目的】穿刺時の針の刺入角度と刺入時間の違いによる痛みの差を検討する。

【対象】当院維持透析患者166名の内、穿刺時の動画撮影及び、痛みの程度の調査に対して同意を得られた患者30名を対象とした。

【方法】透析開始時の穿刺をデジタルカメラの動画機能で撮影し、撮影した動画の穿刺針の刺入角度と穿刺針の表皮から血管到達までの時間(刺入時間)を計測した。また、穿刺直後にVisual Analogue Scale(VAS)を使用し、痛みの程度の評価を行った。

【結果】刺入角度別痛みの程度では、25度から30度で最も痛みの程度が低くかった。刺入時間別痛みの程度では1.3秒から1.6秒において痛みの程度が低い傾向であった。穿刺時間と痛みの程度、穿刺角度と痛みの程度の関係においては、いずれも相関が認められなかった。

「演題7」 −ボタンホール穿刺の課題 〜6年間の使用経験から〜−      

 〇武藤 駿介(むとうしゅんすけ) 両毛クリニック

【はじめに】当院でボタンホール穿刺を導入して約6年が経過した。現在当院透析患者218名のうち203名(93%)に使用している。通常の内シャントはもちろん、閉塞したシャント吻合部穿刺、表在化動脈でも行っている。ボタンホール穿刺は穿刺痛の軽減、止血時間の短縮、血管への損傷軽減、穿刺失敗減少のメリットがある。一方、課題として穿刺部位の痂皮除去の困難な例、シャント感染を繰り返す例がある。今回、この課題の原因と対策を検討したので報告する。

【対象および方法】当院透析患者の消毒方法およびボタンホール穿刺を行っている193名について痂皮除去、感染について分析した。痂皮形成予防目的で湿潤テープ・クリアヘッシブ(R)(ハイドロコロイド被覆剤、以下クリアヘッシブ)を5名に使用した。

【結果】穿刺時の消毒は、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩・エタノール液(クロルヘキシジンエタノール)で浸したカット綿で穿刺部清拭(199名)、または最初に10%ポピドンヨードゲルを穿刺部位に塗布し、10分経過後に0.1%クロルヘキシジングルコン酸塩液含浸綿でゲルを拭き取り、穿刺時に穿刺部位に10%ポピドンヨード液を塗布(19名)している。本年7月から10月までのシャント感染は10名12回であった。症状は穿刺部位の腫脹、発赤、発熱、排膿で、高熱を呈して入院する例はなかった。細菌培養を行った2例で、黄色ブドウ球菌が分離された。いずれの症例でも抗生剤の投与で落ち着いた。消毒は1例が10%ポピドンヨード、他はクロルヘキシジンエタノールであった。ボタンホールの痂皮は、穿刺時にクロルヘキシジンエタノール綿、ポピドンヨード液に浸した綿棒で擦り取るようにしている。しかし、大きな痂皮や硬い痂皮では十分に除去するのは困難である。今回、痂皮形成抑制の目的で透析終了止血後、穿刺部位にクリアヘッシブを貼付してみたところ、痂皮が形成されない、または痂皮が容易に除去可能になった。それにより穿刺がスムーズになり、穿刺時の痛みも軽減、防水性に優れているために透析当日の入浴も可能になった。

【考案】ボタンホール穿刺法は多くのメリットがあるが、課題として痂皮形成とそれに伴う感染がある。穿刺部位の痂皮は硬く、ボタンホール穿刺針のような鈍な針先では突き抜けることは容易ではなく、穿刺孔以外の部位から穿刺針が挿入されると、ルートが外れ穿刺が困難となる。痂皮の除去は、穿刺をスムーズに行うためにも必要な作業である。また不完全な痂皮の除去もシャント感染の原因となりえる。そこで痂皮の形成を抑制する目的でクリアヘッシブを使用してみたところ、患者、スタッフともに良好な評価が得られた。

【結語】ボタンホール穿刺での穿刺部の感染予防、スムーズな穿刺には、痂皮除去が欠かせない。クリアヘッシブは痂皮形成抑制に有用である。

「演題8」 −リン吸着薬の処方状況ならびに服薬アドヒアランスの実態−       

 ○高橋 伴彰(たかはしともあき)、永野伸郎、石田秀岐、伊藤恭子、安藤哲郎、筒井貴朗、安藤義孝  医療法人 社団日高会 平成日高クリニック、日高学術研究センター、腎臓病治療センター

【背景】透析患者は種々の合併症に対する薬物治療に伴い、多薬剤処方(ポリファーマシー)下におかれている。その中でもリン吸着薬は、透析患者の1日服薬錠剤数の約半分を占め、服薬錠剤数の増加は服薬アドヒアランス低下、身体的健康スコア低下、血清リン高値と関連することが報告されている。

【目的】平成日高クリニックの透析患者におけるリン吸着薬処方状況と患者背景を解析するともに、リン吸着薬服薬アドヒアランスの実態を調査し、アドヒアランス低下の原因を考察する。

【対象と方法】平成日高クリニック 透析センターの外来維持血液透析患者全539名(2015年8月22日時点)のうち、8月度の定期採血データおよび経口薬剤処方記録のある521名を解析対象とした。また、リン吸着薬に関するアンケート調査を実施し、アンケート回答者295名中、リン吸着薬を服用中と回答した243名から、8月度のリン吸着薬処方歴の無い5名を除いた238名をアンケート有効回答者として解析した。

【結果】

【結語】リン吸着薬処方錠剤数の増加は服薬アドヒアランス低下の要因となり、血清リン値管理不良と関連する。

「演題9」 −高リン血症患者の服薬指導 〜しっかり食べて、しっかり服薬〜−       

 〇渡辺 文子(わたなべあやこ) 両毛クリニック

【はじめに】透析患者では、血清リン値が基準より高くても低くても、合併症の発症や生命予後に影響を及ぼすことが知られている。従って、リンのコントロールは極めて重要である。今回、当院透析患者の血清リン値を検討し、高リン血症例について食事調査を行い、食事の質や量に応じたリン吸着剤の服薬指導をした結果について報告する。

【対象および方法】当院透析患者208例のうち血清リン値が高値を示した37例に対し、リン吸着剤の服薬状況の確認と食事の聞き取り調査から、服薬方法の指導を行った。

【結果】日本透析医学会のガイドライン適正血清リン値3.5mg/dL以上6.0mg/dL以下を参考に当院透析患者208例を平均リン値から分類したところ3.5mg/dL未満は12例(6%)、3.5mg/dL以上6.0mg/dL以下は159例(76%)、6.0mg/dL超8.0mg/dL以下は33例(16%)、8.0mg/dL超は4例(2%)であった。208例中37例(18%)が6.0mg/dL超の高リン血症を示し、炭酸カルシウム換算のリン吸着剤処方量は2,585〜5,250mgであった。37例の一日の食事回数は3食32例(86%)。2食5例(14%)であった。リン吸着剤の指導前後で、「服薬している」は28例(76%)から34例(92%)へ増加し、「時々忘れる」は、7例(19%)から3例(8%)へ減少、「服薬していない」は2例(5%)から0であった。間食時のリン吸着剤の服用は指導前後で、「服薬している」は3例(8%)から14例(38%)へ増加、「服薬していない」は、24例(65%)から6例(16%)へ減少、「間食しない」は、10例(27%)から17例(46%)へ増加していた。「間食しない」が増加した理由は間食に対するリン吸着剤の必要量が不明なので間食を控えたためであった。食事に応じたリン吸着剤の量の調整は指導前後で、9例(24%)から26例(70%)へ増加した。リン吸着剤服薬指導後のBUN値はほとんど変化なく、血清リン値は低下27例(73%)、同じ2例(5%)、上昇8例(22%)で、16例(43.2%)は適正値となった。

【考案】透析患者の血清リン値は、食事の蛋白摂取量と相関するとされるが、過度の食事制限は患者のQOLが低下して、生存意欲も損なう可能性がある。摂食状況は患者個々によって異なるので、高リン血症の37例に対して摂食状況に応じた服薬指導を行ったところ、BUN値はほとんど変化なく73%に血清リン値の低下が認められ、43%が適正値となった。効果がみられなかったのは、認知症例、食事に対して無関心、理解不良または家族の協力が得られないような人たちであった。

【結語】血清リン値のコントロールには、一日の食事回数、食事量と質、間食の有無によってリン吸着剤を調節服薬することが肝要である。

「演題10」 −日高病院における腎移植の経過報告−       

 ○添野 真嗣(そえのまさつぐ)、久保隆史、安藤哲郎  日高病院腎臓外科

 腎移植は末期腎不全患者において、生命予後を大幅に改善させる腎代替療法であるが、日本ではあまり普及していない。群馬県においても透析患者数対する腎移植件数では全国平均を下回る状況であっ た。そのため当院では、県内における腎移植普及を目指して、2011年8月に生体腎移植を開始した。2015年11月までに48例の腎移植を実施してい る。ここ3年間は毎月1,2例の腎移植を継続しており、群馬県における腎移植の約7割を当院が占めるようになってきている。腎移植に対してどのような取り組みを行い、腎移植症例はどのような経過をたどっているかを報告する。

− 特別講演 −『患者とのコミニュケーション 〜医療者に必要なスキル〜』

 日本大学医学部内科学腎臓高血圧内分泌内科学 准教授 岡田 一義 先生

閉会の挨拶

 日高病院 安藤 哲郎 先生