日時：平成29年7月23日(日) 9：00〜
【座長】富岡クリニック 高橋伴彰（たかはしともあき） 平成日高クリニック 丸山雅美（まるやままさみ）
日高病院 安藤哲郎 先生
〇永井七海（ながいななみ） 白根クリニック
【目的】2015/2016Flu流行期にOTVの予防内服を行った当院の維持透析患者における有効性、副作用につき検討した。
【方法】Flu発症患者が確認された際に濃厚接触者には積極的に、また濃厚接触者でない場合にも希望者に対してはOTV75�咾瞭�析後の単回投与による予防内服を行った。
【結果】月組、火組透析患者またスタッフにもFlu陽性者が発生したため、結果として全患者158名に予防内服の情報提供を行なった。予防内服を希望したものは計130名で、その後2週間以内にFluを発症したものはいなかった。副作用を認めたものは16名（12.3％）で、いずれも軽症であったが、めまいのうち1名は転倒し頭部、前胸部を打撲していた。
【結語】オセルタミビルの予防投与は有効と思われるが、投与に際しては予想される副作用を十分説明する必要がある。
〇高橋佑介（たかはしゆうすけ） 日高リハビリテーション病院
【目的】リドカインテープからリドカイン・プロピトカインクリームへの変更で穿刺時痛が軽減するかどうかを検討する。
【対象】リドカインテープで穿刺時痛が十分に緩和できていない当院透析患者12名。
【方法】透析1時間前に穿刺部位の一方にリドカインテープを、もう一方にリドカイン・プロピトカインクリームを使用し、それぞれの穿刺時痛の程度をVisual Analogue Scalｅ（ＶＡＳ）で評価し比較する(計6回）。
【結果】12名中11名で痛みの軽減が得られた。VASはリドカインテープ側の36.92±23.47ｍｍに対してリドカイン・プロカインクリーム側は12.92±19.30ｍｍと有意に低かった。
【考察】リドカインテープで穿刺時痛が十分に抑えられていない患者において、リドカイン・プロピトカインクリームは穿刺時痛を軽減させる。
○田村弘明（たむらひろあき） 両毛クリニック
【はじめに】AVF (arteriovenous fistula)による不自然な血流状態は，心臓血管系に大きな影響を及ぼしている．今回，DCM(拡張型心筋症)を呈した慢性維持血液透析例でCRT-D(両室ペーシング機能付き埋め込み型除細動器)を設置し，AVFを閉鎖して心機能の改善が得られた症例を報告する．
【症例】64歳，男性．原疾患は腎結石症．昭和62年，右尿管結石手術，平成11年，左腎臓結石破砕術を受けた．平成13年5月，A病院で血液透析を導入．その後間もなくから当院で維持血液透析を施行している．転院時のDWは60kg，心胸比46%，血圧180/90mmHg，BUN72mg/dL，Cr7.7mg/dL，Na142mEq/L，K4.3mEq/L，Ca8.7mg/dL，P5.8mg/dL，RBC272万，WBC6400，Hct25.9%であった．体重管理が不良で透析間体重増加量は3.5〜5.0kg，時に6kgということもあった．透析開始時の収縮期血圧が200mmHg位のことも多く，平成22年頃からは心胸比が50%を超えるようになった．平成28年1月，心胸比58.1%，BNP6460pg/mL，hANP438pg/mL．このころから透析開始時の収縮期血圧は100〜130mmHgで透析中に血圧下降し，十分除水できないことが多くなった．平成28年11月，BNP8440pg/mL，hANP535pg/mL心調律異常を自覚するようになり，A病院に紹介したところ，EF10%程度でG病院へ紹介されて同年12月22日，CRT-D埋め込み手術を受けた．平成29年1月，右上腕動脈の表在化手術を行い，これを使用して血液透析を行いながら，2月28日に手術で左前腕のAVFを閉鎖した．閉鎖前は透析がつらいと訴えていたが，その後は，食欲が出てDWを上げても心胸比は小さくなってきて，7月現在，DW62kg，心胸比50.5%，BNP648pg/mL，hANP115pg/mLとなっている．
【考案】AVFは血液透析には必要不可欠であるが，生体にとっては異常な循環動態であり，長期にわたると本例のように心機能の低下を招くことになる．体重管理がうまくできない例はもちろん，高齢透析患者では容易に心機能不全を招き易い．このような例のバスキュラーアクセスに動脈表在化は有効な手段である．表在化動脈の従来の穿刺法では瘤を作りやすいという欠点がある．しかし，ボタンホール穿刺では瘤が出来難い．本例もボタンホール穿刺を行っている．
【結語】血液透析患者の心機能の低下症例にはAVFの閉鎖と表在化動脈の使用が有用である．
〇下田富美子（しもだふみこ） 平成日高クリニック
2016年4月より、透析施設ですべての血液透析患者の下肢をチェックし、重症度の高い虚血がある患者を専門病院に紹介する「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設された。 これは末梢動脈疾患（PAD）の発症進展から、重症化して下肢切断に至るのを回避する目的 で作られた。
2004年当時の全透析患者377人中、1.6％にあたる6人の患者の下肢切断を経験した。さらに透析中、下肢の潰瘍、壊疽の処置が必要な患者もいて患者と透析スタッフが困窮する状態であった。 患者が足の潰瘍や壊疽を発症してから関わるのでは遅いのではないかと考え、全患者に対して足と血流のチェックを行った。その結果、定期的な観察、血流改善、セルフケア指導が必要な患者が多数いることが分かった。 そのため、2004年からフットケアを組織的に取り組むことを始めた。 フットケアチームを立ち上げスタッフ教育を行い、患者に対して足浴、爪切りを実施した。
患者の足の重症度に合わせて定期ケアを始めた。その後、フットケア外来の開設、形成外科・医療靴外来の開設、フットケア外来と形成外科の統合により、クリニック透析室と形成外科が緊密に連携できるようになった。このような変遷を経て2016年には下肢切断率は0.2％まで下がった。
このことから組織的なフットケアの取り組みにより、大切断を予防することは患者のADLやQOLの維持に重要となる。
〇松本晃（まつもとあきら） 富岡クリニック
【目的】年齢、運動、栄養素等摂取量は骨塩量に関連すると報告されている。今回、透析患者において、ADLの機能評価尺度であるBathel Index(BI)と骨塩量、栄養状態との関係を検討した。
【方法】透析歴１年以上の当院外来維持血液透析患者で、中手骨の骨塩量を測定し得た116名のBIと患者背景、定期採血結果、GNRIとの関係を解析した。
【結果】BIと年齢、GNRI、Cr、Na、K、IP、W-PTH、ALB、CRP、ALP間でそれぞれ有意な単相関関係が認められたが、骨塩量との間に有意な関係は認められなかった。また、骨塩量とALPの間で有意な負の関係が認められた。BIを従属変数とした重回帰分析では、GNRI、Na、K、ALPがそれぞれ独立したBIの説明変数であった。
【結論】今回、BIと栄養状態との関係は認められたものの、骨塩量との関係は認められなかった。一方、ALPはBIの独立した負の関連因子であり、ALPがADL機能を示す一つの鋭敏なマーカーとなる可能性が示唆された。
〇家富美穂（いえとみみほ） 両毛クリニック
【はじめに】便秘は透析患者に多い症状である．今回，当院透析患者の排便状況について調査し，排便困難例で新しい作用機序を有するリナクロチド錠（リンゼス(R)）の効果について検討したので報告する．
【対象および方法】当院透析患者197例（男性123例，女性74例）に対し，排便状況についてアンケート調査を行った．排便困難例17例にはリンゼス(R)を投与した．
【結果】下剤服用者は81例（全体の41.1%）で男性46例，女性35例であった．年代別の下剤服用者は50歳未満31.6%，50歳以上70歳未満32.6%，70歳以上51.1%であった．下剤服用開始時期は72.8%が透析導入後であった．下剤服用者は糖尿病例88例中41例（46.6%），非糖尿病例109例中40例（36.7%）であった．下剤の種類は大腸刺激性下剤単剤が71.6%，大腸刺激性下剤2剤が22.2%，その他（座薬，市販薬）が6.2%であった．下剤服用による排便状況は円滑54.3%，時々困難24.7%，困難21.0%（17例）であった．排便困難時の症状は腹部膨満感および硬便による排便困難は17例全例，残便感12例，過度の努責10例，腹痛8例，不快感2例であった．排便困難例に服用中の下剤はそのままで翌日の朝食前にリンゼス(R)2錠を服用してその結果によって，服用中の下剤の量およびリンゼス(R)の量を調節した．リンゼス(R)服用から排便までの時間は6例が2時間未満，2〜4時間未満5例，4〜6時間未満4例，6〜8時間未満2例であった．リンゼス(R)服用で排便困難，過度の努責，残便感および不快感は消失し，訴えは，3例で腹痛，4例で膨満感および腹鳴9例であった．ブリストル便形状スケールでは，硬便は0，ほとんどが普通便，一部軟便であった．服用後の排便に対する5段階評価は非常に良い9例，良い7例，どちらでもない1例であった．患者の評価は「便の悩み，ストレスがなくなった」，「今までの薬よりもスッキリする」，「排便時の恐怖感がなくなった」，「必ず排便があるという安心感がある」，「便に執着しなくなった」，「仕事に集中できるようになった」であった．
【考案】便秘は糖尿病，加齢に伴って増加するが，特に透析患者では食事制限による食物繊維の不足，透析中の排便忌避，運動不足，服用薬剤の影響等で多い．リンゼス(R)は服用後2〜3時間をピークに6時間程度でスムーズに排便を促し，大きな副作用がなく，患者の評価は良好であった．
【結語】リンゼス(R)は透析患者の排便コントロールに大きな副作用のない有用な薬剤である．
自治医科大学 慢性腎臓病病態寄附講座/腎臓内科教授 武藤重明 先生
【座長】日高病院腎臓外科・人工透析・移植外科部長 添野真嗣 先生
両毛クリニック 池内広邦 院長