六時産業 |
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記録:平成21年4月頃 | ||||||||
掲載:平成21年8月1日 | ||||||||
栗原市志波姫の農家 菅原 |
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「ロクジ産業」 と聞いて、仕事を終え午後六時からやりに行くカラオケとか居酒屋などの産業のことかと思った。なるほど、「六時産業」か、そういう産業分類もあるのだなと感心し、そして農作業後の疲労回復のためにも、この産業は重要であると思っていたら、「さにあらず」と妙に仰々しく高奥君が解説してきた。
つまりロクジ産業とは一次+二次+三次の「六次産業」のことで、今も昔も相変わらず低迷している我が日本食料自給率を死守せんとの秘策であり、陸海空一体のレイテ沖海戦にも似た乾坤一擲の起死回生策である。 などと、俺が「六時」産業の田んぼ居酒屋でも始めようかと想像している脇で、彼の口調は段々と熱を帯びてきた。まるで、明日にでも日本農業が滅びようとしているようかのようである。
さて、そんなレトロな布張り複葉機にも、さすがに近代化の波が押し寄せ、トラクターとかコンバインとか「科学の力」で空飛ぶ速度は速くなったが、最近ではインターネットの効果が大きくなり、直接、お米の消費者とつながることができるようになった。 この効果は大きく、前回紹介したような自然を愛する稲作農家もデジタル化してきたわけで、気が付けば、農業という一次産業に加え、インターネットを介しながらの営業・販売といった三次産業も営んでいる。
こうなると、残すところ「加工」分野の二次産業があれば、六次産業が実現するわけだが、考えてみると遠藤先生や木村君のところでは既に米粉加工を請け負い始めている。 なんのことはない、何時の間にやら、俺の周囲の稲作仲間は農業の六次産業化を実現しているのであった。 先日も遠藤先生のところで、新しい製粉機械を購入したとのことで、仕事後に製粉加工の試験作業を一緒にやってみることにした。遠藤先生のところで購入した自家製粉機は、工場製粉に比べ機械の能力が劣るため、あまり米粉の粒度が細くならないのが難点である。 それでも一度製粉した米粉を何回か、製粉機にかければ、だんだんと粒度は小さくなる。とは言っても、これには大きな手間がかかる。 この手間を解消するため、遠藤先生は大きい製粉機と小さな製粉機の二つを購入した。製粉は、まずは大きな機械で製粉し、次に小さな製粉機でもう一度製粉するという二段構えである。このあたり、二刀流の剣道を修練する遠藤先生らしい発想である。 で、俺達はこの二刀流製粉で試験作業してみたのだが、同じ機械で二度製粉するよりも効率が良いし、工場製粉に及ばないにせよ、米粉の粒度は結構細くなる。
このように、工場製粉に及ばずとも、自家製米粉は大きな可能性を秘めているのだが、今回頂の米粉ケーキが美味しく出来たのは、遠藤家の農薬を使わないササニシキと遠藤先生の製粉技術があって始めて実現できる妙であろう。そしてさらに、重要なのは 「奥方のクッキング技を無くして、この美味なる味は出来ませぬ。」 と俺は奥方にかしこまった、すると 「やだ、〜菅原さん、もう何も出ませんよ!」 などと、俺達の「六時」産業の夜は更けていくのであった |
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